弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
「よし、友崎。今日来てもらったのは他でもない!」
「えっと、レトロゲームをやるんだっけ?」
「そうだッ!」
「テンション高いな」
夏休みのとある1日。
俺は友崎を家に呼んだ。
昨日の夜にLINEをして、俺が最近買ったレトロゲームをやろうという話をしたのだ。
「それはいいんだけどさ、なんで急にレトロゲーム?」
「俺の趣味だ。ほら、そこの棚みろよ。結構あるだろ?PS1〜PS3までの名作(迷作)達に、ファミコンやスーファミとかもあるぞ!」
「おぉう。同年代でファミコンの実機を持ってるやつはあんまりいないんじゃないか?さすがに」
たしかにそうかも?
まぁそれは父さんのなんだけどね。
それに今は実機がなくても最新ゲーム機のオンラインサービスに加入していれば無料で遊べる過去ハードのソフトも結構あるしな。
とは言えコアなソフトは配信されていないから、その辺りはやはり実機が必要だ。
「まぁまぁ。今回はプレミアもついてるレトロなゲームを手に入れたからな、ゲーマーの友崎とも共有しようと思って!!」
「お、おう。一応わかった。ところでなんてゲーム?部屋の真ん中にドンと置いてあるし、PS3ってことだよな?」
「その考えは甘い。この名機、PS3さんはなんとPS1互換機でもあるのだ!昔の時代はメモリーカードなるものが必要だったんだが、PS3でPS1をプレイするときには内部に仮想データを「いや分かったから」」
長い話は嫌いか?
ならやはりレトロゲームの素質あるな。
もっとレトロなやつはフィールドにポンと投げ出されて、あとは好きに始めろと訴えかけてくる時代だったようだし。
「おーけーおーけー、今日やろうと思うのはPS1のソフト、これだ!」
そう言ってパッケージを棚から取り出して友崎に手渡す。
「えっと。『バーガーバーガー』、か?」
「うむ。クソゲーとバカゲーの狭間にある伝説の逸品だ」
「いやどっちだよ」
「やりゃわかる。どっちかはお前が決めろ」
そう言って、友崎からパッケージを受け取りつつケースを開いて説明書だけ友崎に渡す。
渡された友崎は「説明書が紙だ……」とか当たり前のことをつぶやいている。
なに言ってだお前。
そして俺はPS3にディスクを入れて起動。
「えーっと、経営シミュレーションゲームって事か」
「そうだな。変わってるところはハンバーガーの商品は自分で作るってところか。パンに何を挟むか自分で決めて商品を作る。値段とかも気にしてな。このゲームの見どころは″味″をシステムに落とし込んだところだ」
「なるほど。意外と面白そうだな」
「つーわけでさぁどうぞ。俺はお前がプレイするのを見て楽しもうと思う。ちょっとだけ知識あるから、何も知らないやつのプレイをみようかなと」
「ミリしらってやつか。俺はいいけど」
おれは動画見て結構知っちゃってるしな。
それにこのクソ……バカゲーをやって、友崎がなんだこれ!って悩むところを横で見ていたい。
「じゃあとりあえずゲームスタートだな。えーと、店舗名を決めるのか?」
「そうだな。友崎バーガーでいいんじゃね?」
「ダッサ」
そう言いながら友崎が入力する。
『nanashiバーガー』
「ここでもその名前か」
「ほっとけ」
まぁ、いいんじゃない?
名前で変わるのは店のロゴマークだけだし。
画面にはでかい『N』マークのカンバンが出来上がっていた。
「次は社員の選択?24人もいるのか」
「みたいだな。あ、宇宙人は禁止な」
「なんで?っつかなんで宇宙人がハンバーガーショップの店員をやろうとしてんだよ」
「チート級だからダメ。運次第だけど、中盤からゲーム壊れちゃう」
「宇宙人が経営に強いってなんだかなぁ」
既に怪しい気配を感じ取り始めている友崎。
まだまだ序の口だぞ。
「じゃあこの謎のウサギでいいや」
そして怪しいうさぎのぬいぐるみみたいなやつを社員に選ぶ友崎。
どうしてそのチョイスなのか。
でもそいつ、開発力はNO1だから始めの社員としては正解なんだよなぁ。
ふざけたゲームだ。
「お、始まった。nanashiバーガー開店か。えっと、1店舗目の場所を決めてください、か。どこでもいいのか?」
「立地で人の入りが変わる。店を建てると立地の人気が星の数で表示されるはず。1〜5で」
「なるほど、建てないとそれは分からないのか……。とは言え人が多い場所、駅前とかにするべきだろうな」
おお、さっそくゲーマーらしくなってきたな、正解だ。
そうして星3の初期で選べる最高峰の立地に店舗を構えた。
「なぁ、下に見えるのは資金だよな?」
「あぁそうだな」
「すごい勢いで減ってるんだが」
「まぁ、人件費とかあるし」
「ふむ……ヒントは?」
「ゲーマーらしく考えろ。△でメニューだ」
言われるまま開く友崎。
項目を上から確認していき、キッチンのコマンドを開く。
「おお、これが」
「一番の目玉、ハンバーガー作りだな。いいね、オリジナルバーガーを作ろう」
そしてさっそく作成開始。
「バンズは『????』ばかりだな」
「初期だしな、普通のしか選べん。なんか社員旅行とかノウハウの拡張とかで増えるらしい」
「じゃあ普通のバンズを選んで、あとは食材か」
そう言って挟む食材を選び始める。
パンに、パティ60g、ピクルス、チーズ。
調味料にケチャップを選択。
追加の調味料に唐辛子をケチャップに一振り。
……ちょっと辛くしただけのチーズバーガーじゃん。
「名前も決めるのか。チーズバーガーだ!」
「普通だなおい、やる気あるのか!」
「はぁ?やる気しか見当たらないだろ」
「遊びが足りねぇ!何年ゲーマーやってんだ!」
「ゲーマーは何時でも真剣なんだよ、エセゲーマーめ!」
「エンジョイ勢と言え!俺だって何時でも真剣に楽しんでいる!」
そんなしょうもないやり取りをしながらバーガーが1つ完成。
値段付けは、おすすめ価格として表示されるがままに280円。
へっ、まだまだ甘いな。
「ちなみにメニューに空きがあると客の印象が悪くなるらしいからメニューが埋まる8個作るのがおすすめ」
「そんなに作るのかよ」
「どれ、せっかくだから俺にも作らせてくれよ」
そう言って手を出しコントローラを受け取る。
「見てろよ。まずは、とうふ!生とか揚げるとかあるのか、じゃあ生で」
「初手に冒険ッ!」
「続いて玉ねぎ!もちろん生。あとは、カイワレ菜とかあるのね。これでいいか」
「これ、パンいらなくね?ただの冷奴じゃん」
「次に調味料か。あれ、醤油がないぞ。じゃあ味噌でええか」
「おでんかなんかだろ、これ!」
「名前は、でんがくパン!」
「生だったよな!?」
「おすすめ価格は250円?は、450円だ」
「その強気はどこから来た!?」
友崎もノリノリじゃねぇか。
楽しんでくれているようで、オレぁうれしいよ。
「まぁこんなもんだな。あと、今は物価高騰してるから値段はこれくらいでいいんだよ!」
「……パッケージを見るとこのゲームの発売日は1998年。少なくても25年は前だな。よくは知らないけど、100円でハンバーガー買えてたっていう時代じゃないか?」
ごちゃごちゃうるせぇ!
食べてみたら美味いかもしれんだろ、でんがくパン!
しかし25年以上前とは、俺が生まれる前からこんなものが世に出ていたとはなぁ。
そんな感じにバカをやりながら俺と友崎で4個ずつ、8個の商品が完成した。
友崎のは、どこかで見たようなもの(パティ2枚、ポークとてりやきソース、パティに目玉焼きとベーコン)ばかりだ。
俺の方は、まぁ、遊び心(ささみチーズ、ツナマヨチーズ、煮た大根とネギに白菜のソテーを挟んだ鍋バーガー)でつくられたものばかり。
「これで4:4か、売り上げ勝負といこうじゃねーか」
「これがまともなゲームなら、火を見るより明らかなんだけど」
「その自信、いつかお前の足元をすくうぞ」
「せめてまともなハンバーガーを作ってから言ってくれ」
「それこそ売り上げを見てから言ってくれ」
言いながらバチバチと睨み合う俺と友崎。
俺たちにはゲーマーとして負けられない何かが、きっとある。
たぶん。
そして友崎はメニューに作成したバーガーを並べていく。
準備を終え、ホーム画面に戻るが……。
「まて、資金が底をつきそうになってるんだが」
「あー、いい忘れた。ハンバーガー1つ作るのに100万かかるわ。初期資金は5000万でいきなり大型店舗建てたから-4000万、さっきのバーガーが-800万で残りは200万切ったな。あと、今赤字だからどんどん減っていく」
「先に言えよ!0になったらどうなるんだこれ!?」
「もちろんゲームオーバー」
「うおおぉぉーい!」
何を今更。
どうせ先に言っててもメニュー揃えるのが正解なんだ、慌てる必要はないだろ。
「で、店もたってメニューを埋めたのに資金が減っているのはなぜ?」
「……売り上げが悪いバーガーがあるんじゃないか?コマンドメニューの明細から見れるはず」
そして明細を確認する友崎。
そこには月の売り上げ評価が表示されている。(出品したばかりのハズだが)
どれどれ……。
「この中に2つほど、明らかに売れていないハンバーガーがあるようだな?相原」
「アーアー、聞こえなーい」
内訳を見ると、でんがくパンとささみチーズが二桁しか売れておらず明らかに売り上げが低くなっている。
なぜだ、ささみとチーズとか合わないわけないだろ。
豆腐は、知らん。
「……値段を高くしすぎたか?」
「たぶんもっと根本的なところだろ。これメニューから消すぞ」
「そんな殺生な」
俺の言葉を無視して店のメニュー画面を開き削除する。
あぁ……。
改めてホームに戻ると。
「おお、ついに黒字だ!」
「めっちゃゆっくり資金が増えてるな。黒字額いくらだろ」
「お前の商品全部消せばもっと黒字になるかもな」
「はぁあーーー?さっきの明細よく見たか?お前の月見バーガーは売り上げがさっきの2つの次に悪かったぞ」
「え、嘘だろ?あの月見バーガーだぞ?」
再度明細画面を開く友崎。
どれどれ。
明細を見ると、月の黒字は7万円か。
やっす。
これじゃあ店舗拡張もできないしすぐ潰れるな、月500万くらいはないと話にならん。
「げ、マジだ。個数しか見てなかったけど売り上げでみると月見バーガーがドベになってやがる。しかもその次はてりやき」
「月見バーガーなんて、限定に誘われた奴が買うだけで別に美味くなんてないからな」
「その発言は色んなやつを敵に回すぞ!?」
そんなことを言いながら月見バーガーを外そうとする友崎。
けど一旦ストップをかける。
「まあ外すのは待てって。R1ボタンで時間を進められるんだが、ゲーム内で数日が経つと品評会が行われるんだ。見てみようぜ」
「へぇー。分かった」
そして時間を進める友崎。
言った通り、作ったハンバーガーの品評会が行われた。
―――
友崎のが……
チーズバーガー
250円
見た目:グッド
カロリー:グッド
総合:★★★★★(良い評判
てりやきバーガー
280円
見た目:グッド
カロリー:グッド
総合:★★★(そこそこ
ダブルバーガー
260円
見た目:バッド
カロリー:普通
総合:★★★★★(良い評判
月見バーガー
280円
見た目:バッド
カロリー:普通
総合:★★★(そこそこ
俺のは……
450円
でんがくパン
見た目:バッド
カロリー:グッド
総合:★★★(そこそこ
ささみチーズバーガー
440円
見た目:バッド
カロリー:グッド
総合:★★★(そこそこ
鍋バーガー
340円
見た目:バッド
カロリー:グッド
総合:★★(バッド
ツナマヨバーガー
400円
見た目:バッド
カロリー:普通
総合:★★★★(平凡
―――
「鍋バーガー、何が悪かったのか分かりませんが売れてません。トレーにも食べ残しが目立ちます。だってさ?」
「まぁ俺でもそんなん出されたら残すわな」
「なんで作ったんだよ!?」
さぁ?
ヘルシーかなぁって。
「つーか、1番納得がいかないのは何で売上でこの酷評受けた鍋バーガーに俺のてりやきと月見が負けてるんだ、おかしいだろ!?」
「原価安いし……」
「原価?あ、値段だな!?」
気づいたか。
おすすめの値段はちょっと安く設定されてるからそのままだと赤字になりやすい。
ちょっと釣り上げるのがコツではある。
……高くしすぎてでんがくパンとささみチーズは売れなかったが。
さっそくメニューを開き友崎の作った商品の値段を100円ずつ上げる友崎。
リアルにこんな事起きたら暴動もんだぜ。
「あ、ささみとでんがく100円ずつ下げてまだ販売してくれよ。たぶん売れるから。鍋バーガーは、捨てよ」
「なるほど、こっちは高くしすぎて……ってマジで高かっただけなのかよ!」
もう一度明細を見て驚く友崎。
1位2位はチーズバーガーとダブルバーガーがぶっちぎりトップ。
そしてその後にツナマヨバーガー、ささみチーズ。
月見とてりやきが同じくらいで、最後にでんがくパンだ。
「でんがくパンはイケると思ったんだけどなぁ、解せぬ」
「てりやきと月見がささみチーズやツナマヨに負けてることのほうが解せないんだが」
だから月見は期間限定だから売れてるだけなんだっての。
てりやきは、わからんね。
あと、ツナマヨは絶対美味いだろ。
パンがマフィンだったらもっと美味い。
「さっきに比べてめちゃめちゃ黒字になったな。リアルの秒間で1万円くらい入ってるじゃん」
「さっきの100倍だな。楽しくなってきた」
「とりあえず黒字だし資金稼ぐために1ヶ月進めようぜ」
「あぁ。空いた枠のバーガー作りたいしな」
そして1月進める。
「お、月1でライバル店との比較があるのか」
「売り上げは1位だな、さすがnanashi」
「こっちは、先月末の総資産か」
「ライバル店は6000万とかの中、1000万もいかずにぶっちぎり最下位だな、さすがnanashi」
「売れないバーガー作ったやつがいたもんなぁ」
「作成費の100万ぐらい誤差では???」
そうしてリザルトをすすめていく。
「ん?店舗数?」
「あぁ、このゲームは店舗を100件だせばクリア」
「はぁ、結構先が長いな」
「途中からは月を進めて建てるだけだから意外と直ぐだ」
「それはゲームとしてどうなんだよ」
ぶっちゃけ半分でもよかったと思うね。
最後は消化試合になるんだから。
………
「あれ、なんかイベント起きた」
「不定期イベントはいろいろあるらしい」
「これは、新しい食材を仕入れたのか」
「あぁ、社員が仕入れ業者から食材ルートを確保したって言ってるな。……ペキンダックを仕入れたらしい。さっそく使って空いてる一枠埋めようぜ!さぁつくれ、ペキンダックバーガー」
「絶対合わないよな、ハンバーガーにペキンダック……」
そう言いながらメニューを開く友崎。
こんなのにはマニュアルは通用しないだろ?
さぁさ作るんだ。
「パンにペキンダックって、何が合うんだよこれ」
「まぁ鶏肉だし、それっぽいの入れろよ」
「わっかんねぇ……」
そうして友崎はペキンダックにサラダ菜、トマト、サウザンドソースを挟む。
「よし、完成……名前は、ペキトマバーガー」
「nanashiバーガーとかにしなくていいのか?」
「コレにnanashiの名前を持たせるほどの自信はない。ってたっか、オススメ価格がすでに490円!?チーズバーガーの倍くらいあるぞ!」
「ペキンダックを仕入れるの高いんだろうな」
「く、このままで」
そして品評会……
490円
見た目:グッド
カロリー:グッド
総合:★★(バッド
「何が悪かったのか分かりませんが売れてません。トレーにも食べ残しが目立ちます。だってさ!鍋バーガーと同レベルだな」
「くそ、見た目とカロリーはグッドなのになんで★2なんだよ!そもそもハンバーガーにペキンダックが合うはずないだろ、仕入れたやつ誰だよ。他店のスパイだろそいつ!」
「あー、見た目とカロリーってたしか全体評価の5%ずつくらいじゃなかったっけな。9割は食品パワーと組み合わせ相性で決まってるぞ」
「あんなにデカデカと評価して1割かよ!?9割は評価してくれないの!?」
馬鹿な話をしながらレトロゲームをすすめていく友崎。
それを見てゲラゲラと笑っている俺。
果たして友崎は無事に100店舗達成することができるのか?
続くな
***
10店舗ほど建てたところで休憩として昼食を取る。
近場のハンバーガーチェーン店だ。
「やっぱりてりやきバーガー美味いよな。なんで売れ行き良くなかったんだろ」
「わかる、つくるのはともかく本当に食べるなら普通のが一番だな。チキンフィレオめっちゃうめぇ」
「フィレオ……。あー、フィレオフィッシュとか魚のメニューもありか?」
「タルタルソースは隠し食材だけどな」
「マジかぁー」
こうしてすっかりバカゲーにハマってしまった