弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
ある夏休みの1日。
俺は定期的に総合体育館でトレーニングルームを利用しているのだが、その際に体育館の掲示板に貼られている1枚の紙が目に入った。
″キャンペーン中。体育館の予約利用が1時間500円!″
他にも体育館のコートの予約について予約方法やら利用範囲やらいろいろ記載されている。
へぇ、500円って結構安いな。
利用目的の例が、バドミントン、バレー、ソフトテニス、バスケット、フットサル等、か。
気になり貼られているQRコードからスマホで予約状況を確認してみれば、数日先なら結構空いているみたいだった。
どうやら平日などは結構空くみたいだな。
俺たちみたいな学生はちょうど夏休み期間なので、平日とかあんまり関係ないけど。
俺は思いつきのまま、キャンプ合宿をしたメンバーにLINEを送った。
『これ見てくれ、体育館この値段で借りれるらしい。
みんなでバドミントンしないか!
場所代、ラケット代は割り勘になるけど……』
それから各々反応があり、全員の日程の合う日でバドミントンを行うことになった。
***
夏休みは意外とみんな暇しているもので、無事に全員が集まれる日があった。
俺たちは体育館の外で待ち合わせをしつつ、既に来ているメンバーと会話をしている。
女子たち4人、みみみ、たま、日南、泉と全員集まっている。
男子もあとは友崎だけだな。
「ところでなんで急にバドミントン?」
「最近マンガ読んだからかな、やりたくて」
「へぇー、何読んだんだ?」
「アオのハコ」
「……バド描写は少なくないか?面白いけど」
「いうほど少なくはないけど、たしかにラブコメよりかも?あと、スマッシュって漫画が昔から家にあるな」
「ほー、どれどれ。2006〜2010年連載。古っ!」
スマホ片手に作品を検索したらしい水沢。
いいんだよ、とりあえず俺は今バドがやりたいんだ!
フットサルとかもやりたくはあったけど、そっちは敷居高いしそもそも人数も集まらんだろうし。
「すまん、待たせた」
「お、オマタセシマシタッ!」
そうして待っていると、最後のメンバーも集まった。
「おー、来たか友崎。妹ちゃんも」
「は、はい!今日はよろしくお願いします!」
そう、友崎(兄)と一緒に今日は妹ちゃんもいる。
「ははっ、よろしく。そう固くならなくていいって、コイツに無理に呼ばれたんでしょ?」
「そーそー。それに優鈴と同じでバド部なんだって?兄の方よりよっぽど運動できそうじゃん」
「つーか、ワンちゃんの方こそ運動できんのー?」
そう言って俺の背を軽く叩く水沢に、便乗して話に乗っかりつつ友崎をいじる中村と竹井。
それに、「水沢先輩に中村先輩……」とか小さく呟いている妹ちゃん。
ナチュラルに竹井を省いたりするそういうところ、俺は嫌いじゃないよ。
「俺、なんできたんだろうな……」
「冗談だって、友崎。バドとか俺も初心者だからゆるく楽しもうや」
そう言って、若干落ち込む友崎に声をかけつつガッチリ肩を抑える俺。
帰らせねぇぞ、人数はおまえを入れて10人でちょうどいいんだからな。
「それじゃあ全員集まったよね?入りましょうか」
「うぃーす!」
人数を確認した日南がそう言って場をまとめ、全員で体育館に入っていった。
今日は10:00〜12:00の2時間で一区画を予約している。
予約をしているのは俺のため、先頭の日南に続いて入り受付の人に話をして体育館へ案内をもらう。
「おぉー!こういうところって誰でも借りられるんだね!」
案内された体育館の中を見渡しながら声を上げるみみみ。
たしかに、自分で体育館借りるのはなかなかない経験だよな。
「借りられることは知っていたけど、俺も借りるのは初めてだな。意外と安くてびっくりした」
「へぇー、はらみーはどこで知ったの?」
「んや、ここにはたまに、というか週一でトレーニングルームの利用に来てるから。その時に掲示板に書いてあったの見つけた」
「トレーニングルーム?」
あー、総体で何ができるかってあんまり知れ渡ってないよな。
「おう。最近あれじゃん?ジムとか結構流行ってるじゃん?チョコザップっとかCMやってる奴」
「あー、あるある。ユーチューブ見てるとよくでてくるやつ!」
「そうそうそれそれ。で、ああいうの月額3000円〜とかって言ってるけどさ、実は総合体育館って同じように体鍛える器具を1回利用200円とかで使えるわけ。ランニングマシンとかいろいろあるよ」
「へぇー!」
まぁそのへん俺も中学のJrユース時代に知ったんだけどな。
あのときは、子供料金でさらに安かったっけ。
「とまぁ、スポットで利用するなら月額でジムに入会するよりお得なのです!総体ならだいたいどこも並のジムくらいにマシンも揃ってるのでオススメ!」
「じゃあ、足を早くする筋トレ方法とかもある?」
「あるある!マシンで言うとレッグカールだな!俺も結構お世話になってる」
「あはは、はらみーめっちゃイキイキしてるねぇ」
「う、すまん。語りすぎた……」
「いやいや、聞いてるのも結構面白いよ」
ついつい、好きなことになるとつい早口になってしまう。
悪い癖だ。
幸いみみみはそれを面白がって聞いてくれていたようだが、気をつけないと……。
そんな会話をしながら体育館のレンタルしたコートに移動する。
それぞれ準備ができ次第、用具室からネットとポールを取り出しコートの準備を開始。
とりあえずポールをたて、向きを合わせる俺。
……はて、どうやってネット張るんだっけ?
「どいてどいて、ネットつけるよー」
「あ、失礼しますっ」
と思っていたところ泉と妹ちゃんが手慣れたようにネットを運んできては張り上げた。
「さすがバド部、頼りになるなぁ」
「えへへ、でしょ!」
そう言ってむん!と胸を張る泉に、慎ましくえへへと言っている妹ちゃん。
うん、いいね。眼福眼福。
そんな感じで準備がすすみ、コート自体は体育館の片面に張るだけで終わりのためすぐに完了した。
さてどうするかな、と思ったところで日南から視線を受けているのを感じた。
たぶんだけど、このあとの段取りはどうするつもりなの?という視線に感じる。
……日南ってグダグダになるのは絶対に許さないみたいな所あるからな、俺がノープランなら『仕方ないまとめてあげよう』くらいに考えているのかもしれない。
けどまぁ俺も何も考えてないわけじゃない。
勝手に失望されるのも嫌なので動くか。
手をパンパンッ!と叩きながら「んじゃあ、集合ー」っと声を上げる。
中村あたりが「んだよ」、みたいなことをいいつつも全員集まってくれた。
「うっす、まずは。今日はこの俺のために集まってくれてありがとう!」
なんてボケると「別にはらみーのためじゃないけどね?」なんてツッコミを入れられる。
みみみはツンデレかな?
「それで今日の方針。ここは2時間借りてるので12時まで使えます。というわけで、このあとは5分ほど各自で準備運動。その後10分くらい全員で対面で打って慣らしつつ、ダブルス5組でリーグ戦をします!その後は、元気が有り余ってる人の自由で。何か質問や意見は?」
「じゃあ私から一つ」
俺が言い終わるや、挙手する日南。
「ダブルスの組はどうやって決めるの?」
「各自好きな人と組んで下さいな。ソッチのほうがいいでしょ。余った人は先生とでーす」
俺がそう言うと、友崎の方から「ぐっ」みたいな声が聞こえた。
聞かなかったことにしよう。
そして次は元気な声でみみみが手をあげる。
「はいはーい!優勝者には何かありますかー?」
「……ぁー、俺からの賛辞と賞賛の一言がもらえます」
「いらなっ!」
みみみの反応に全員に笑いが起きる。
何も考えてなかったわ、まぁいいだろ。
その次はたまからも質問が上がる。
「じぁあ、試合のルールは?」
「人数多いし、11点1ゲームマッチ。10-10になったらタイブレークありで。スコアボードも使っていいみたいだから、審判は休んでる人が誰かやってね。コートも2面
あるから、片方は試合専用。もう片方はアップ用に仲良く使うって感じで」
「ん、オッケー」
「よっしゃ、ほかはー?……うし、なさそうだな。というわけで以上。20分から対面打ちするんで各自適当にアップよろしく~」
一通り確認したところでそう切り上げた。
さぁさ、運動前には動的ストレッチ。
慣れないスポーツするならしっかり準備しなきゃな。
………
「相原、ど下手くそだな。羽根が帰ってこないぞ」
「ぐぬぬ……ほとんど初めてなんだよ!でも慣れてきたところだ、打ち方はわかってきた!」
対面で打ち始めたが、この会をやりたいといい出した俺がボロボロで、水沢の言葉と強がりを言う俺に周りも笑わっていた。
いや、強がりってだけじゃないが。
なんとなくコツは掴んで来ている。
ここ1年くらいで学んだんだが、俺は結構他人のマネってのが上手いらしい。
どことなく上手い水沢やバド部女子の2人を見習って打ち方を真似つつ、よく見て当たるように……ふんっ!
「あっはっは!はらみーまた空振ってる!」
「……もうちょっと!もうちょっとでたぶんコツつかめる!!」
「相原みてるとちょっと安心する」
うぉい、友崎ぃ!
試合ではぜってぇお前には負けねぇ!
大丈夫大丈夫、マンガ読んでイメージはできてる。
あとはちょっとズレを直すだけなんだ……たぶん。
そんなこんなで慣らしをすること10分ほど軽く打ったあと、試合に向けてペア決めとなる。
「そろそろいいよな。時間だし、ペア決めして試合しまーす!で、言ってた通り各自適当にペア組んでくれ」
俺は……友崎の妹ちゃんと組むことにするか。
呼んだのは俺だし、一人学年違うなかで自由にくんでと言われても困るだろう。
「はらみ「んじゃ、妹ちゃんよかったら俺と組まない?バド部の力を借りたいな」
「え、えぇっ!?私でいいんですか!」
と、言うことで俺は友崎の妹ちゃんと組むことにする。
……ってか、今誰か呼んだか?
「いやいや、待てよ相原。妹ちゃんは俺と組もう。妹ちゃんも俺と組むほうがいいよね、ほら?」
「はわわ、私の奪い合いが……」
そう言ってこっちにやってきた水沢。
妹ちゃんも水沢から誘われてうれしそうな表情をしている。
しかし友崎家の人たちって、結構面白いよな。
そして水沢は俺に視線で横を見ろというように合図を送ってくる。
それに従い視線の先を見ると、中村と泉、葵と竹井がペアを組んだようだ。
友崎兄もたまと組むようで、空いたみみみがこっちを見ていた。
あぁそういう……?
まぁ、うん、いいか。
「むぅ。まぁ、そこまで言うなら……。じゃあおれは、みみみ〜組まないか〜?」
「ふーん、私は2番目に誘うんだ?」
そういってジト目で見ながら歩いてくるみみみ。
うわぁ、面倒くさいやつ発動してんじゃん。
水沢になんかフォローない?って視線を送るがスルーされた。
ひどいヤツだ。
とりあえず余計なことは言わずに謝り倒すことにした。
「……ごめんって。頼むよ、みみみしかいないんだ」
「ふぅーん?たしかに、私が残っちゃったもんね。余っているの私だけかぁ〜?そんな余り物でいいやって?」
「い、いや、そういう意味じゃなくて!」
どうやら余り物扱いされたことに拗ねているらしい。
俺は水沢と妹ちゃんが練習に羽根を打ち始めたのを見てから、小声でみみみに言う。
言い訳くらいはさせて欲しい。
他人を売るような言い方で心苦しくはあるが。
「ほら、妹ちゃんをここに誘ったのは俺だったし、学年の違いもあるわけで。なら孤立させるわけには行かないじゃん?その点、みみみは誰と組んでも盛り上げてくれそうだったし」
「はらみー、口だけは達者になっていくね。羽根もまともに打てないのに」
「あ、言ったな!ってかもう慣れたし!ちょっとコートのそっち面に立てよ、ちゃんと打てるってこと見せてやる!」
「あっはっは、試合の段取りははらみーがするんでしょ!打てるかは、試合で見てあげるから。ほらあっち」
一応、みみみも許してはくれたらしい。
みみみは笑いながら、コート上から「早くしろよ」と目線で訴えかけてくる日南や中村たちを指さした。
あの人たちどんだけやる気満々なのよ、勝負事大好きよね。
「はいはい、今行くよ。試合の勝敗管理はそこのホワイトボードでするから。試合順は……まぁ適当でいいか。そんじゃやる気満々のお二人さん方のチームから始めますか。初戦の審判は俺やるよ。どっちがサーブかは適当に決めて」
促されるままコート横に向かっていき、スコアボードの前でそう説明する。
もうすぐにでも始める気満々だ。
「っしゃ、勝つぞ優鈴」
「うん!バドミントンなら葵にも勝てるかも!」
「ふふ、私も負ける気なんてサラサラないから」
「そういうことっしょー!」
こうして初戦からえらく熱い試合が始まった。
***
その後も試合を続け、全試合無事に完了となる。
俺とみみみもそこそこ健闘はしたつもりだが、結果は4位。
……ブービーかぁ、納得いかん。
ちなみに、1位は全勝をした日南と竹井のペアだ。
「あはは、負けちゃったね」
「もっかいやれば、勝つ……!」
「いやいや、何いってんの。はらみーのミスが目立ってたじゃん!」
「つ、次は打つさ!」
「その自信どこから来るの!?」
「ええい、なら試してみるか!ほら、試合は終わりだが時間はまだある。シングルスやるぞ!!」
「あはは、オッケー!」
そう言って空いているコートでまた試合を始める俺とみみみ。
試合数こなしてコツは掴んだ……今度は予想とかではなくマジに!
隣のコートでもどうやら日南と中村達が再戦しているようだ。
こうしてバドミントンは延長戦に突入。
みんなそれなりに楽しんでいたようだし今日は開催してよかったな、なんて思った。