弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
ある夏休みの1日。
スマホが震えたのを察知して、俺はスマホの画面を開いた。
相原からLINEが着たようだ。
『これ見てくれ、体育館この値段で借りれるらしい。
みんなでバドミントンしないか!
場所代、ラケット代は割り勘になるけど……』
メッセージと共に添付をされている画像を開く。
それは総合体育館をレンタルできるというポスターだった。
こういう体育館って誰でもレンタルできるのか。
相場とかは分からないけど、1時間500円で借りられるって聞くと安くは感じるな。
相原からの誘いに運動は得意じゃないんだけどなぁとは思いつつも、こういう時の積極性が経験値になるんだろうと考えると断る選択肢はない。
今は夏休み中で暇は暇だもんな。
……燻っていた期間の遅れも取り戻したいし。
そうしてLINEに参加可能なことを返信したら、今度は個別に相原から連絡がくる。
『友崎の妹もバド部だよな、呼ぶことできない?
人数も9人だからあと一人いるといいなぁって』
んん?
あの妹を呼ぶのか?
というか1人学年が違うところに放り込まれて大丈夫なものなのか。
とは言え別に俺が断る理由も特にはないし、妹に判断を任せるか。
そう思って、俺は自室から出てリビングへ。
そこにいた妹へと声をかけた。
「なぁ、お前さ」
「ん?なに、お兄ちゃん」
妹は声をかければ反応したものの、顔からは用がないなら話しかけんな、という雰囲気がダダ漏れしている。
俺も用がなきゃ話しかけねぇよ。
「相原が今度体育館でバドミントンしたいって言ってて人数ほしいらしいんだけど、来れたりする?」
「相原さんが!?」
「あ、あぁ。ただ他は全員2年だから無理はしないでいいって言ってるけど」
「う〜ん、他に私が知ってる人っているの?」
「何人かは知ってると思うけど、ちょっとまて。これ」
口で言うより見せたほうが早いと判断した俺は、LINEグループのメンバー一覧をだして妹にスマホを手渡す。
こっちのほうが断然早い。
「相原さんに、泉先輩!……水沢先輩に日南先輩!?……ほかにも……!?」
なんか異様に驚いている妹。
この前キャンプの計画で家に来た時も騒いでたっけ。
日南や水沢やみみみあたりは選挙の件もあって、2年では特に目立っているからわからんでもないか。
あー、あとは泉は同じバド部なんだよな。
「結局どうする?無理なら断っておくけど」
「い、行く!私も行くから!」
「あ、あぁわかった。伝えておく」
妹の勢いに気圧されながらもそう答えた。
「あ、悪い言い忘れてた。体育館のレンタル代は割り勘だから少しお金が掛かるらしい」
「え、いくら……?」
不安そうに聞いてくる妹。
まぁ体育館のレンタルと聞くと結構高そうだもんな。
送られて来ていたLINEの内容を確認する。
相原が料金の内訳をもう出していたはず。
「200円+各自の移動代だってさ。移動代の方は定期圏内の駅から歩ける距離だから気にしなくていいかも」
「安っ!」
というわけで相原に伝えたら新設したLINEグループ内に妹が追加された。
「まさかお兄ちゃんがあんなにイケてる先輩たちと連絡をとってるなんて……。この前は相原先輩が直接うちに来たし。こ、これが脱オタの本を読んだ成果なの……?」
勝手に言ってろ。
***
そして当日。
予定していた体育館にてバドミントンが開催される。
「へぇー、じゃあ意外と泉もしっかり先輩やってるんだー」
「意外とって何!?超しっかりしてるし!ねー、ザッキー!」
「あはは!はい、泉先輩優しいです!」
で、段取りの方は相原があらかじめ準備していたのか、つつがなく練習や試合が行われている。
その合間合間では、相原がちょくちょく妹のところにやってきては話しかけているようだ。
俺は試合をしている最中だが、後ろの方で話をしている声が耳に入ってくる。
「10-5。マッチポイントな」
「友崎、集中!」
「う。す、すまん」
ペアを組んでいるたまちゃんから叱咤の声が上がる。
というかそもそもの話、俺の運動能力に問題がありすぎるんだ。
別に気を抜いているわけではないのだが身体が追いつかない。
そう思っているうちに俺が返した羽根が日南によって打ち込まれ、すごい速度で俺の足元に転がった。
「はいはい、ゲームセット。11-5」
「いよっしゃー!勝ちっしょ!」
「ありがとうございました。ふふ、たまー。私の勝ちね。友崎くんも」
「うぅー、悔しい!」
試合終わりに挨拶をしっかりするあたり、日南らしいなと思う。
しかし、運動が苦手とは言え負けるのは悔しいな。
それを察してか日南はこれ見よがしに、どうだ?とでもいうような表情をしていた。
こいつ……。
とりあえずは1試合終えたのでコートを開ける。
それと同時に次の試合として水沢と妹、それに泉と中村がコートに入る。
審判はたまちゃんがやってくれるようだ。
「妹ちゃんがんばれよー」
「は、はい!」
「お、相原は俺たちを応援してくれんの?」
「いやお前は敵だから。妹ちゃんだけ応援してる」
「はは、どういうことだよ」
そんなやりとりを聞きながら、コートからでた俺は相原とのところに向かう。
いわゆる経験値稼ぎだ。
今日ずっと思っていたことを相原に聞く。
「相原、うちの妹とそんなに仲良かったっけ?」
「なんだ、その質問?妹が気になる?」
「いや、別に」
「つまり……俺が気になると!」
「はっ倒すぞ!?」
「キャー!襲われるぅー!」
一瞬持っていたラケットで引っ叩こうかと思ったが、ギリギリのところで踏みとどまりため息を1つつく。
「まぁなんだ。年齢も違うところに無理に誘っちゃったから孤立しないようにとか思ってたんだが……水沢とか泉とかいるし本人自身が社交性ありそうだから余計なこと気にする必要なかったな。それはそれとして、普通に友崎家の人間は面白いなぁと」
なるほど、そんなこと考えていたのか。
主催側だとそういうことも気にしないといけないのか、集団ってのはむずかしいものだ。
というかさぁ。
「それ褒めてないだろ」
「褒めてる褒めてる、面白いは最高の褒め言葉だよ。みみみもそう言ってた。面白いと芸人みたいは褒めてるんだとさ」
「お笑いが好きすぎだろ」
面白いはともかく、『芸人みたい』は絶対に褒めてないだろ。
中村に言ったらブチギレそうだ。
「はらみー!空いてたらアップしよー」
「そのみみみに呼ばれてるぞ」
「おー!んじゃ、ちょっと行ってくる」
そう言って空きコートで羽根を打ち始める相原とみみみ。
見てると、結構な速度で羽根を打ち合っているような。
なんか、相原さっきより上手くなってないか?
「どう、今日の課題は達成できそう?」
「日南。あぁ、試合数は多いからどこかで決められるとは思ってる」
俺が一人になったのを見計らってか、日南が話しかけてくる。
どうやら今日の課題の進捗確認らしい。
課題として、バドミントンの試合でスマッシュを1回は決めろ、だとか。
いつもの課題よりは易しいように思いつつも、そもそもの体力がなさすぎて難航中だ。
「本当に?さっきの試合見てると、まるで動けていないようだったけど?」
「あれは、お前らがうますぎるんだよ!けど、さっきの試合でわかったことがある。前衛の真ん中寄りに立っていればそこまで動かなくても大体手が届くし、スマッシュを撃つならここに立つのが1番だ」
「まぁそうね。相手がちゃんと作戦立てるような試合ならともかく、内輪でのバドミントンなら十分通用すると思うわ」
内輪じゃなきゃ通用しないのか。
まぁ、素人の付け焼き刃だしそれはそうか。
「だろ?で、次は相原とみみみとの試合だからそこでなら決められるんじゃないかって」
「作戦はバッチリってことね。それじゃあ期待しているわ」
言われなくても、やってやろうじゃないか。
ゲーマーにとって縛りプレイなんて日常茶飯事、
……自分でそう思って少し悲しくなってきた。
「葵ー、友崎も。何の話してんの〜?」
「友崎くんがね、試合で活躍したいんだって。だからアドバイスしてたの」
「へぇ〜!ワンちゃんやる気満々じゃん!あ、妹にいいところ見せたいとか?」
「いや、……まぁそんなとこ」
自然と会話に入ってきた竹井。
俺たちそんな仲良かったっけ?とか思ったけど日南に話しかけたついでか、と納得する。
試合で云々は、別に妹は全く関係なかったが否定するのも面倒だったので適当に話を合わせてしまった。
「お、いいじゃん!俺そういう熱いの好きだわ!俺も友崎に協力するっしょ!」
そんな事を言う竹井に促され、相原達が練習している横に連れて行かれ練習することになった。
体力温存しておきたかったんだが……。
ただ、撃つ時の感覚を確かめられたので無駄ではなかったとは思う。
結果として、俺は相原みみみペアとの試合でスマッシュを、打つことはできた。
ゆるく上がった羽根に対して俺は思いっきり振り抜き、一応は相手のコートへと落ちた。
……ガットに当たってスイングの割にはめちゃめちゃ遅かったけど点にはなったからOKでいいだろう。
見ていた竹井なんかは『ワンちゃん何そのフェイントー!』とか言って笑っていた。
日南の方をちらっと見ると渋い顔をしていたか、及第点ってことにしよう。
***
全試合が終わったあと、時間的には片付けの時間を除いてもあと20分ほどは残っていた。
まだまだ元気で打ち合ってる組と周りで会話する組に分かれており、俺は当然ながらこれ以上動くのが辛いのでコートの外で元気に打ち合っている相原とみみみを観戦している。
「お、チャンスボール!SMAAAASH!!」
「あ!くー、はらみー本当に上手くなってる?」
まるでゲームのキャラがする様な掛け声と共に羽根を叩きつけ、素人では拾えそうにない速度でみみみのコートに吸い込まれた。
「さっきバド部2人に教わった。8割くらいの力でいいから高い打点でキレイに振り抜けば速くなるらしい。つかサッカーのシュートと同じだったわ、正しく当てる事が大事」
「試合中にやってよ、それ!」
……元気だなぁアイツラ。
「よ、文也。バテバテになった感じ?」
「水沢。まぁ、そんなところ」
「はは、たしかに頑張ってたもんな。最下位だったけど」
「うっせ」
試合を眺めていた俺に話しかけてくる水沢。
歩いてきた方向を見ると、もう一つのコートでは中村と竹井がバド部2人のペアとの勝負していた。
「水沢はあそこ混ざらないのか?」
「あー。アイツラはバカでバカなコンビだろ?俺ってクールだから、休めるときは休むのよ」
「自分でクールとか言うなよ」
「ははは。ま、たまにああいうのも羨ましくはなるけどな」
ああいうのが?
と思ったが特に突っ込むことでもなかったのでふーん、と相槌を打つ。
「それで言うと、文也も今日はちょっとバカみたいになってたな。あ、いい意味で」
「いや、バカにいい意味なんてあるのかよ!」
「はは、いいね友崎。さっきからのツッコミも俺の真似ってやつ?」
「ぐ……そ、そうだよ」
少し前に水沢や相原のしゃべり方を真似していることを本人たちに知られてしまっている。
しかし、改めて言われると少し恥ずかしくやってくる。
それから水沢と会話しているうちに、相原とみみみの試合は終わる。
「ま、負けた……。はらみーさっきまで下手くそだったじゃん!手を抜いてたの!?」
「手なんて抜いてねーって。コツをつかんできたの!フッ、自分の才能が怖いぜ」
「もう1セット!今度は私が勝つから!」
「このコート、誰も使わないならいいけど。……水沢達使う?それか日南達も」
そう言ってこっちをみてくる相原とみみみ。
俺は疲れているので首を振る。
そこで日南から声が上がる。
「じゃあ私やろうかな。誰かもう一人、ダブルスしない?」
「お、じゃあ葵はわたしとー!陸上部コンビ結成だー!」
「お笑い組むみたいな言い方だな……。友崎はリタイアみたいだし、水沢かたまちゃんやらん?」
そしてあと一人必要になったところで、水沢が俺にだけ聞こえるくらいの声で1言放つ。
「まぁ、たまにはバカみたいに騒ぐのもいいかもな」
そう言いながらコートへと歩いていった。
「いいぜ、余り物の相原と組んでやるよー、しょーがないからー」
「ちょ、1言余計なんだよ!」
「はは。それでどうする?負けた方には罰ゲームでもつける?このあと昼メシおごるとか」
「お!いいね!葵がいれば負ける気しないし罰ゲームつけよう!」
その水沢の姿を見てキャンプでの一幕を思い出す。
誰とでもうまくやることができるゆえに、熱中することが少ないといっていた水沢。
でも、相原とか、あと俺をみて、少しバカになるいいかもな、なんて言っていたな。
……しかし、しれっと昼食を一緒にとる約束をたてつけてるのは流石だなと思った。
書きたい話はあるけどまとまらないので、次話遅れるかもです。