弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
「はぁー。中村は休みなのか」
「たぶんな。よし子関連でサボりだろ」
「あぁ、あの。つーかまたか」
夏休み明け二日目の学校だが、いきなり中村は休みらしい。
水沢の話から察するに、度々起こる親とのケンカってことだろう。
……親とケンカで学校休んだときは日中どこにいるんだろうな。
自室に閉じこもっているのか?
学校行くふりして公園にでも行くのか?
はたまた、ゲーセンで1日潰すのか?
どれにしろバカらしくて少し笑えるな。
この会話聞いていた友崎も気になったのか水沢に質問を投げる。
「それって結構よくあることなのか?中村が親と喧嘩することって」
「ま、そこそこな。でもアイツのことだからまた来たくなった時に来るだろ」
そういうもんかね。
「ちなみに俺は、そんな不良生徒と違って高校に入ってからは遅刻すらない皆勤賞です!褒めてもいいんだぜ?」
「へー、すごいすごい」
「ここまで心の籠もってない賞賛は初めてだぜ」
***
そんな会話をした金曜日が終わり、土日を挟んでから月曜日。
先週と同じように水沢の近くで俺と友崎、それに竹井なんかと会話をしていた。
「……え?中村まだ休みなん?」
「マジ?たぶんこれ最長っしょ」
「そ。ほら、こんなLINE来てた」
そう言って水沢は俺たちにスマホの画面を見せた。
都合が悪そうな水沢のメッセージはすべてスルーしつつ、最後の1行にはこう書いてあった。
『川村に今週いっぱい休むって伝えといて』
「今週いっぱいってマジか」
「これって、流石にヤバいんじゃ?」
「そーだな。サボりとは言え、授業も受験対策が始まった所だし初っ端に休むのは痛手だろう」
そりゃあそうだ。
今は今後の進路に向けて新しいプリントやら冊子やらの配布とか説明とかが多い時期だ。
それらの授業にでれないのは、そこそこまずいだろう。
「ったく、何やってんだよ修二ぃ〜!」
竹井の頭でもそこそこヤバいだろう事を理解して、自分の頭をワシャワシャとかきむしる。
とは言えそこはただの自業自得だしなぁ。
サボるってことはそういうことだし、そのうちふらっと戻ってくるんだろ。
「球技大会までには戻ってきてほしいわな。あいつ、めっちゃ戦力だから」
水沢は軽い口調で首裏をかきながらそう言うが、表情は真剣そのものでそこそこ心配しているようだった。
そんな会話の中、朝のホームルームが始まるチャイムが鳴ったため中村の心配はすれど、特に解決に向けての方針はないまま各々が席へと戻っていった。
………
「それじゃあ球技大会の種目について希望を決めるぞー!」
その日の最後の授業のロングホームルーム。
球技大会は2週間後だがそれに向けて各クラスから種目の希望を取る必要があり、今日はそのための話し合いに時間を使うらしい。
キャプテンとなった竹井と平林さんが教壇に立って取り仕切りをしている。
そして、まずは男子側の競技だ。
「おーし、やっぱサッカーだよなぁ!」
「各クラスで協議する必要があるため、第一希望から第三希望ほどまで決めておくといいだろう。うわさによると竹井はじゃんけんが弱いらしいからな」
「せ、先生まで!?」
張り切る竹井の横で川村先生からそんな補足が入れられる。
……竹井はじゃんけんでグーしか出さないからな。
とりあえず黒板にはサッカーの文字が書かれる。
「まぁ第一希望はサッカーでいいよな!」
なんて張り切って言う竹井だが、クラスからは他の声が上がった。
「いやいや、バスケっしょ!」
バスケ部の橘だ。
たしかにこのクラスはバスケ部もそこそこいるしなぁ。
サッカー部は3人でバスケ部も3人だっけ?
試合の人数は11人と5人の違いもあるから、人数割合的にはバスケのほうが経験者が多くてチーム的に強くなるかもな。
竹井は、「ええーまじかー!」なんていいつつも黒板にバスケの文字を追加する。
「そしたら俺はソフトがいいんだけど」
野球部からも声が上がり、黒板には更にソフトの文字が追加された。
そしてクラス内ではバスケ部は多いから勝てそう、野球部もそこそこいるなー、などの会話がされていく。
俺もなんか言っておくか。
「バスケでいいじゃん、試合は5人で済むし俺は外野で応援してたい」
「相原ー!お前はサッカー部だろー!」
なんて、割と本音をいったら竹井に突っ込まれて笑いが起きる。
とりあえず第三希望まで必要なため、後はこれらの優先順位付けとなり、最終的には多数決になった。
その結果は
サッカー:4人
ソフト:5人
バスケ:9人
だ。
まぁバスケは俺が言ったみたいに試合の参加人数が少ないから運動が苦手なメンツの票が集まった感じだな。
ふと思ったが、なんかクラスにまとまりがないなーと感じていたが今は中村がいないからか。
もしかしたらアイツがいて、サッカーって言ってればそんな空気になったかもだけど今はサボり中だもんな。
とりあえずは男子側は内容が決まり、次は女子の方になったが……。
どことなく空気が重いなと思い周りを見渡せば、紺野が機嫌悪そうに頬杖をつきながら「私やる気ないでーす」という雰囲気を出していた。
流石はクラスの女王様。
それに対して平林さんが萎縮しながらも司会として競技の希望を取っていく。
「それでは、何かやりたいものはあるでしょうか?」
「はいはーい!私はバスケがいいでーす!私と葵がいれば優勝間違いなし!」
そう言っていの一番に手を挙げたみみみ。
あー、みみみと日南は中学はバスケをやってて特に日南はワンマンチームで全国2位まで持っていったとか言う化け物だからな、優勝する可能性は高いだろうな。
……日南は生徒会長だから半分くらいしか試合にでれないことを除けばね。
「バスケですね。他にありますか?」
竹井が黒板にバスケと書きつつ、それを見ながら平林さんが司会を続ける。
「はい。私はバレーがやりたい」
今度はたまがバレーを提案し、黒板にバレーの文字が追加された。
みみみの後とは言えは紺野のやる気なさそうな雰囲気を出し続けているこの空気の中で、やりたいものを提案していく胆力、流石は俺達のたまちゃんだ。
「他には、何かありますか?」
「えぇと、私はソフトがいいかなぁって……」
それに続くように泉もソフトを提案。
泉がこういう時に提案をするのはちょっと意外だな。
その後は特に案は出ないので優先度を決めることになる。
「それじゃあ、それぞれやりたい理由などはありますか?」
川村先生が初めに話し合いで決めたい、と言っていた事もあってか平林さんはそう言って理由を聞き始める。
最初から多数決を取った竹井とは対照的だな。
そして、俺のとなりから威勢のいい声が上がる。
「はい、やりたいからです!」
「…グッ、ンン!」
完全に油断してた。
俺は顔を伏せゴホンと咳き込むふりをしつつ笑いを誤魔化す。
そしてチラッと横を見ればたまからなんだお前という顔で見られていた。
なんだお前、はこっちなんだが。
「ん、ンン。やりたいから、は理由になってないんだが。ん、ぐふっ!」
「気持ち悪い笑いはやめる!」
だったら笑わせるなよ!
「でもたまー、それじゃシンプルすぎだよー!」
「みんみまで!?」
そんなみみみの突っ込みまで入り、裏切られたような顔をしたたまに周りまで笑いが伝播していった。
「えっと、では次は泉さんは……」
そんな感じで話し合いは進んでいくかと思ったところで、女王様からの不機嫌な声で遮られた。
「てかさあ、意見割れてるんだから多数決取ればいーじゃん」
「えっと、そ、それは。そうですけど……」
決め方は人それぞれだし話し合いで決めることもありだとは思うが、そもそもやる気が無い紺野に取っては話し合いは無駄でしかなくサクッと決められる多数決にしたいのだろう。
平林さんにこういった司会など含めた準備を押し付けておいてなかなかに図太い、流石は女王様か。
「まぁそう言うな紺野。私もいきなり多数決を取るのはどうかと思うタイプでな、話し合いで決められないか試してみたかったんだ。よし、ここからは私が聞いていこう」
そう言って平林さんの司会を引き継ぐ川村先生。
その横で平林さんは一歩下がり、目に見えるくらいにホッとした表情をしていた。
困ってたら割って入ってくれる川村先生カッケェ。
このあとは話し合いを継続し、最後に多数決をもってバスケが第一希望、ソフトが第二希望にとなった。
***
そしてホームルーム明けの放課後。
「よぉ友崎、何書いてんのだ?」
「おわっ!な、なんでもない!?」
なんか小さめの手帳なものをにらめっこしていた友崎に話しかけると、慌てたように隠してしまった。
隠したいものなら深く聞きはしないが……。
「なんだぁ慌てて。さてはエロいスラングでも覚えていたな?」
「そ、そんなわけないだろ!」
深く聞かないがイジるくらいはいいだろう。
「放課後だからってぼーっとしてると日が暮れるぞ。じゃ、お先」
「あ、相原ちょっとまってくれ」
「ん?」
慌てて手帳を隠すもんだから都合が悪いのかと思い去ろうとしたら、呼び止められてしまった。
「あのさぁ、球技大会で紺野たちがやる気を出すためにはどうしたらいいと思う?」
「紺野がやる気ぃー?無理だろ、ソレ」
急に何を言い出すんだと思ったが、まぁさっきのロングホームルームが原因なのは違いないか。
「そ、そうか……」
「というか急にどうした?いやさっきのロングホームルームは確かになかなかだったけど」
「いや、せっかくやるんならさ。全員で楽しみたいなって思って」
マジか。
自分がやる気出すだけに終わらず他人までやる気にさせたいとは、コイツヤベェな。
けど、真剣に聞いてるんだよなぁこれ。
反射で答えてしまっていたが、改めて考える。
「まぁ、周りの人間がやる気を出せば紺野もやる気出すんじゃねぇの?なんつーのかな、あぁ言うタイプって少数派は恥ずかしいって思ってる所あるし、何かとそういう雰囲気には敏感だから」
「なるほど。たしかにそのイメージはあるかも」
「なー。つーかみんな多数決が大好きだよなぁ。人数多いほうが偉いみたいなの、なんなんだか」
「はは……」
賛同も否定もしない相槌を打つ友崎。
これが処世術ってやつか。
それで紺野の話はそれで一旦終わり、友崎とは適当な話をしていたのだが。
話題が最近学校に来れていない中村についての話になった時に水沢と竹井が話に加わり、さらには中村が気になって仕方ない泉とそこに一緒にいた日南まで加わってきていた。
「修二、流石に今回のはマズイよなぁ……」
「っても俺たちにできることはなかなかなぁ」
「まぁ、本人が何も言ってこないうちはねぇ」
中村を心配する竹井だが、水沢の言う通りでこちらとしては特に出来ることが無い。
日南もそれに賛同するように呟いた。
「え、なんで?私たちがやれることを探してやってあげたほうがよくない?」
「優鈴っちの言う通りっしょ。修二が困ってるなら、助けないと!」
いや、そんな簡単な話じゃないだろこれ。
そう思い俺も口を開く。
「でも、中村の家の問題だろ?俺等が割って入っていい話ではないと思うんだが」
「そこなんだよなぁ」
家族間のケンカだからな、俺らがなんかできるとかそういう話じゃなくて、踏み入っちゃいけない領域だろう。
中村に、拗ねてないで早く学校来い!っていうくらいならありだと思うけどさ。
そんなことしたら逆に来なくなるだろうけどな。
「うん、私もこの問題に無理やり立ち入るのはよくないと思う。それじゃ、こっちからの押し付けにしかならないもんね」
「そっかぁ……」
日南の言葉に、泉が暗い顔をしたまま頷いた。