弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
「というわけで、中村の家まで溜まったプリント類を届けに行きたいので先生に1言お伝えしておこうと思いまして」
「なるほどな。そういうことなら分かった。ただし君の家は逆方向だったと認識している。遅くならないよう帰宅するように」
俺は職員室川村先生に中村の家にプリントを届けに行くという建付けていた。
そして、それも特に問題なく許可がもらえた。
こりゃー俺の日頃の行いの賜物だな!
「ありがとうございます。僕は中村と違って素行良好で真面目な生徒なのでご心配なく!」
「おっと、たしかに一応はそうだな。生徒会選挙の時はグレーなこともやりたい放題やっていた気がするが。しかし青春らしくていいじゃないか、友人の為に動くなんて」
グレーなラインの提案したのは友崎なんですけどぉ!
僕はただの実行犯です。
…。実行犯のほうが悪いか。
「一応っすか……。まぁあんな奴でもいないと教室がさみしいので」
「そうか。中村に会ったら早く来るように伝えておいてくれ」
「はい。わかりました」
と、これで話は終わったので教室に戻ろうとしたところで川村先生に呼び止められた。
「あぁそうだ。ちょうど相原に聞きたいこともあったんだが、もう少しいいか?」
「えっと、説教ならイヤです」
「ははは、そういう話ではないしすぐ終わるさ。しかし君も去年に比べると変わったな。もちろんいい意味で」
「はぁ、そうですか?あ、きっと川村先生のおかげですね。おかげさまです」
「そうそう、そういうところがな。君は去年と比べてずいぶんと話しやすくなった。生徒達がみんな変わっていく、いやぁ若いってのはいいなぁ」
「まぁ男の子は3日で変わるらしいので刮目してみていただければと。あ、それで話というのはなんでしょうか?」
去年からクラス替えとかはありつつも、俺の担任は持ち上がりで変わらず川村先生だ。
去年の俺は教師からしたら悪い意味で目立っていたかもしれないし、言いたいこともわからなくはないか。
「そうそう、話は最終進路調査の内容だ。進学先が専門学校から大学に変更していたが、この内容は間違いないか?」
進路調査かぁ、そういえば先週末に出したっけ。
先生はもう目を通しているんだ。
生徒も30人くらい持っているはずなのにすごいな。
「あー、はい。母さんと話しまして、今は大学に進もうかと思っています」
「そうか。学校としてはそちらのほうがありがたいが、以前の調査の時に君は明確にやりたいこともあったようだし、大学と専門学校でどちらが上というものもないんだ。まだ迷いがあるようなら、教師として力になるぞ」
「それはまぁ。提出した内容で僕も納得していますし大丈夫です。細かいことは、三者面談のときにでも」
「そうか、分かった。引き留めて悪かったな」
「いえ、ありがとうございます。それでは遅くならないうちに中村の家に向かうおうと思いますので、失礼します」
そう言って、職員室からでて教室に戻る。
川村先生って、いい先生だよなぁ。
生徒のやりたいことを可能な限りやりたいようにさせてくれるし、結構本気で俺たちのことを見てくれているんだから。
***
で……。
それから中村の家に行き、泉が中村の母さんから原因を聞き出したらアタファミをやりすぎて禁止されたから喧嘩したとか、しょうもない理由だったわけだ。
けど、アタファミが大好き過ぎる友崎にとってそれは解決するべき事象だったらしく、なんか妙にやる気出し始めてしまった。
あと、なんかしらんが日南もやる気出し始めた。
「友崎くんに相原も、期末の順位はどれくらいだった?」
「期末?たしか40位くらい」
「ぬ、まぁ俺も40代くらいだから、ぼちぼち……」
40位くらい、と40台には大きな違いがある。
友崎が見栄でもはっていない限り明らかに俺の順位が負けているわけだ。
く、悔しい……。
「えー!相原はもっと下だと思ってた!?」
「なんで!?ま、残念だったな。下なのは泉と竹井だよ」
「えぇ〜!?俺もそこまで悪くないから!」
そういや竹井はどっからどう見てもアホだけど別に勉強ができないわけではないんだっけ。
泉は……まぎれもないアホだけど。
つまり、泉は竹井よりアホ。
かわいそうに。
「なら、相原も友崎くんも修二よりは順位が上ってことだよね?」
「まーそうだろうな。修二のやつは、たしかほぼ平均とかだったはずだから」
「うん、だったらやっぱり大丈夫そう!」
ということで改めて日南が話を進める。
……
…………
「数学の小テスト、ねぇ」
「そう、いま一学期のテストの話を持ち出すのは不自然だし数学のテストは明後日に受けて、今週末には返ってくるんだからちょうどいいでしょ」
ゲームやりすぎてアタファミ禁止されて親と大喧嘩した中村のドアホゥを助けるために、中村の母さんに『アタファミをやっててもテストの点数はいい、なんなら頭の運動になる』くらいの話をするためにアタファミ大好きメンバーでテストで高得点を取って持っていくみたいな話になっていった。
「ま、俺は数学得意だからいいよ。90点以上って言うなら少し真面目にすればたぶん余裕で取れる」
それで、テストでいい点を取る役目の対象のアタファミ大好きメンバーは、俺と友崎と日南だ。
日南もアタファミやってたんだな、知らんかった。
……いや嘘、前々から若干怪しかったな。
友崎と中村がバチバチやりあった時とか、いつぞやの買い物で俺と友崎が電気屋の試遊台で遊んでたときに食い入るように見てたりしたしな。
というわけで俺と日南は問題ないが、友崎はどうなんだろうな。
キャンプの時とか石取りゲームでも数字に弱そうだった雰囲気を醸し出していたが。
そう思って友崎を見ると若干顔が引きつっている。
……やっばりな。
「おれ、数学苦手なんだけど」
「うん。でも修二を助けるためだし、頑張ろう?」
「お、おう……」
そんなにっこりスマイルで有無を言わせない日南に負けて友崎は苦手な教科に立ち向かわないといけなくなったようだ。
「まって!私もやる!」
「え?」
と、ここで挙手をした泉。
どうやら中村を助けるために何かがしたくてたまらないらしい。
「私も最近アタファミやってるの!それに、そろそろ修二とも戦えそうって友崎からのお墨付きもでた!」
「そうだな、そこはおれが保証するよ。今は十分中村といい勝負出来るだろうな」
「そ、そっか!なら、一緒に頑張ろう」
「うん!!」
今度は友崎が巻き込まれた意趣返しか、なんやかんや日南が泉の圧に押し込まれているところを更に背中を押すように焚き付けていた。
……まぁいいんじゃない?
点数高かった人の分だけ持っていけばいいんだし。
「あとはどうやって修二に話をつけるかだけど……」
「たしかに、修二にも話しは通さないとだよな」
あぁそっか。
そりゃ中村に話し通さず、いきなり中村の母さんに俺たちアタファミ大好きだけど点数いいです、アタファミは関係ないですよ、禁止する必要なんてありません。なんていいに言ったら、中村が「何勝手なことしてんだ」と気を悪くしかねない。
だから中村の許可、みたいなもんが必要になるわけだ。
「私がやる、任せて!今週末に修二と会う約束があるから、流石の修二でもいきなりブッチはない!」
とまぁ、本当にやる気満々な泉が買ってでてくれた。
「……たぶん」
「いや、自信ないんだ?」
友崎にまでツッコミを入れられる泉。
急に不安になるようなこと言うなよ。
「ま、流石にドタキャンはないだろ。……たぶんな」
「ちょっと、タカヒロは自信持ってよ!?」
とりあえずこうして日南発案のもと、俺たちが行動する方針が決まった。
***
「つまりな、数学の教科書は絵本なんだよ。だから書いてあることの半分以上は読まなくていい。図が書いてあるこれとこれの内容理解すれば問題集のこのページは全部解ける。絵の内容だけ見ればいいから絵本みたいなもんなわけ。分かったな?」
「え、分かんねぇよ……」
「それに、図の内容の理解も雰囲気でいいんだよ。問題を数問解きながら実践で頭に入れてけばいい。ゲームと同じだ、公式はスキルで問題が敵。スキルの説明なんてじっくり読まないで概要だけ知ったら実際に使って覚えていくだろ?」
「いやスキル説明はしっかり読むだろ」
「……そうか。とりあえず問題ときながら覚えよう。間違えた部分や悩んだ部分こそ覚えていくからな」
中村の家に行った日の翌日。
明日が小テストということで、俺は放課後に教室で友崎へ数学を教えていた。
その横では日南が同じように泉に数学を教えている。
俺より日南の教え方のほうが断然優れている気がするが、一旦それは考えないことにしよう。
「えっと、ここは……わかんない。Xが、なにを……?あおいぃーたすけてぇー!」
「優鈴、よくうちの高校受かったね」
「ひ、ひどい!?」
……と思ったが、泉の方も苦戦してるみたいだ。
とはいえ切羽詰まっていると言うわけではなく和気あいあいと勉強をしている。
「ま、とりあえず数学の学習は数こなすしかないな。そういえば脳がない生物だって経験から学習していくらしいぞ。つまり経験の数こそ学習の要なのだ!」
「へぇー!脳がない生物って例えば何がいるの?虫とか?」
「俺が聞いたのはイソギンチャク」
「イソギンチャクが何を学習するんだ」
さぁ?
俺も聞いただけだから知らん。
学習かは知らんけどアイツラ実は泳ぐらしいな。
イソギンチャクは置いておいても、とりあえずテスト範囲の問題を解いてみればわかるが数ページ内にある問題の解き方の情報は教科書1ページ内の一部に書かれている公式くらいだ。
ほとんどがそれの応用なわけで。
つまり問題を解いて公式の使い方を体に刻むしかない。
「う、駄目だ分からん……」
「なぜ分からんのだ。考えて計算するだけだろ。どの問題だ?あー、これはこの公式を使うとこういう分数になって」
なんて事をやりながら二十分ほど。
少しは勉強できただろうか。
「俺はそろそろ部活行かなきゃ。日南と泉もじゃないか?」
「あ、もうそんな時間!?」
「そしたら、あとは各自で勉強かな?」
「そ、そうだね……」
どことなく自信がなさそうな泉。
90点を取るのが目的で、まぁ4人もいれば1人くらい足りなくても別にいいとは思うが。
友崎はそんな泉の様子を察知したのか提案をしてくる。
「なぁ相原。日南もなんだけど、俺まだ不安なとこあるからさ、部活終わったあとに少しだけ教えてくれないか?ファミレスとかでさ」
「んん〜……」
どうするかなぁ、別に予定とかはないんだよな。
あるとしたら、ただ面倒くさい。
「えーと。でも私、部活終わるの遅いよ?」
「大丈夫。俺も図書館で勉強しようと思っていたから、部活が終わるくらいにそっちに行けばいいしさ」
「あー、そういえば友崎はよく放課後に図書館に行ってるんだっけ」
「そうそう、たまに本借りて読んでるんだけど今日はそこで勉強しようかなって」
なるほどなぁ。
菊池さん目当てかと思っていたがちゃんと本読んでたんだな。
そういえば、その菊池さんとはうまく行っているんだろうか。
ま、それは知ったこっちゃないといえばそれまでなんだが。
「ついでに、泉も来るか?」
「あ!そうさせてもらえるとすごい助かるかも!」
わぁお、友崎だけだったなんて断ろうかと思ってたのになんか一気に断りにくくなったぞ?
おのれ友崎、謀ったな!
まぁでも日南がいれば別に俺は居なくていいか。
とりあえず俺は90点くらいならたぶん取れるし。
「んー、お「うん、それじゃあみんなでやろっか?相原もそれでいいよね?」
「やったぁ、ありがとう葵!」
わぉお、日南から一人だけ逃げるのは許さんというような雰囲気を感じた。
おのれ日南、謀ったな……。
しゃーないか。
なんか珍しく日南が人間らしい八つ当たりをしたように見えて面白かったから、それで良しとしよう。
死なば諸共、の精神は嫌いじゃない。
「りょーかい、それでいいよ」
「相原も、サンキューな」
「いいっていいって。でもこれで90点取れなかったら許さねーから」
「お、おう」
そうして、開いていたノートを片付け各々が部活や図書室へと散っていった。