弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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月曜日。

朝から、中村の許可も取ったから今日こそ中村の母さんを説得しに行くと泉がやる気になっていたところ、なぜか中村は普通に登校してきていた。

 

サボりをやめて登校すること自体は喜ぶべきことなんだろうけど、せっかくあれだけ勉強していたのになんか徒労に終わって今更ながら無駄に疲れた感覚が襲ってきた。

まだ月曜の朝なのにな。

 

「人騒がせなやつだな。1週間ぶりくらいか?」

「そっちが勝手に騒いでただけだろ」

 

そんなやるせなさを隠すように1言中村に物申したら、至極真っ当な返しをされてしまった。

そのとおりなんだよなぁ。

泉とかが騒いでそれに付き合わされてただけだわ。

 

「う〜ん、一理ある。けど俺もめっちゃ頑張ってたのに」

「そーかい。ってか、お前も数学だけは元から得意って言ってただろ」

「おぉ、よく覚えてんな」

 

……ぁー、1学期の期末の時に点数でマウント取ってたからか。

 

「けどこれからはサボらないってことでいいんだな?」

「ま、少なくてもしばらくはな。つーわけでもうコイツの発案で変なことしなくていいから」

 

そう言いながら中村は泉にデコピンをした。

 

「いったー!ちょっとぉ!」

「そりゃ助かる。これで泉のわがままに付き合わされなくて済むな」

「相原まで、なにそれー!」

 

でこを抑えながらそんな事を言う泉を見ながら全員が笑う。

まぁ疲労感はあるが、とりあえず心のなかでつぶやこう。

『よかった、これで解決ですね!』

 

あ、ちょっとだけ元気出た。

というか、タイミング見計らって口にすればよかった!

言いたかったな、失敗した!

 

 

***

 

 

その後、1限が終わり小休憩になれば、最近いなかった分を埋めるかのように中村に俺と水沢と竹井と友崎、更には泉や日南までと大人数で話をしていた。

 

そんなガヤガヤとした中に更に他の生徒からも声がかけられる。

 

「修二、久しぶりじゃーん。てかサボりすぎじゃね?」

 

声の主は紺野エリカからで、自席で座った椅子を後ろに傾けながら話しかけていた。

 

その椅子の前足を浮かせるのやめたほうがいいぞ?

結構マジで危ないから。

反応が怖いから声には出さないけどね。

 

「ま、気分?」

 

中村が短くそう返すと紺野は席を立ち上がり、話していた神前真央・秋山美佳の2人とともにこっちの方へと歩いてきた。

 

「てか何でサボってたの?だるかったとか?」

「そんなとこ。別に進級できればよくね?」

 

何処となくこの2人の会話は剣呑な雰囲気がして苦手なんだよなぁ。

マウントとるための腹の探りあいみたいな。

 

けどまぁこの場には、元から7人もいたのに更に3人来て10人もいる。

適当に話を聞きながら流しておこう。

 

なんて、思っていたら紺野は友崎の方を見てひとこと。

 

「なんでここに友崎がいんの?浮いてね?」

 

ぁー。

1学期にとんでもないことしでかしてたもんな。

そりゃ嫌われるというか、目の敵にされるわ。

紺野たちは今でもたまに教室の隅で本人に聞こえるように悪口とか言ってるしな。

 

フォローでもしようかなと思ったところで、友崎が紺野に反論する。

 

「う、うるせー。浮いてねーし。地面に足ついてるし!」

「はぁ?」

 

ほんとに『はぁ?』だよ。

みみみに聞かれてたら返しがつまらなすぎてお前の株価大暴落してたかもな。

いや、アイツになら逆にウケる可能性も少しあるか……?

 

紺野の視線が更に厳しいものへとなったので、仕方なく俺もフォローをと思って口を開く。

 

「友崎さぁ、せめてもっと面白いこと言えよ。例えば

。浮いてるから飛んできちゃったー!とか」

「お前もつまんねーから相原はちょっと黙ってよーな?そういえばエリカのその髪って自分で巻いてんの?」

「あ、わかるー?さすがタカヒロ」

 

俺はわざわざ身振り手振りでぴよぴよと羽ばたくようなジェスチャーまでつけてボケたところを水沢に流されてしまった。

そんな水沢のツッコミが周りの笑いを誘い、さらに髪についての話題を振られた紺野は嬉しそうに話に食いつく。

 

「こりゃ手厳しい。ぁー、俺は浮いてるから飛んで逃げるわ」

 

紺野と水沢や中村、泉なんかが盛り上がり始めたので、俺はそう言って自席に戻ることにした。

 

「あはは……わ、私は嫌いじゃなかったよ?」

 

そんな俺を見かねたのか神前からフォローをされ、その優しさが俺の心をさらに傷つけた。

今度は面白いことを言える男になろう……。

 

そう思いながら自席に戻ると、俺の机の上に座りながら隣の席のたまと話していたみみみがいたので、「どいたどいた」と声をかけてからしっしっと机から離してから俺は椅子に座る。

まったく、机に座るなんて行儀の悪い。

……あぁ、自分の机になりたい。

別に他意はないがね。

 

しかし、俺が抜けた後もあの中に入り続けてる友崎はなかなかの胆力だな。

正直一緒に抜けるかと思ったけど、あの8人の中に混ざったまんまだ。

たしかに地面に足ついてたかもな。

会話には参加していないようだけど。

 

「なかむー、戻ってきてよかったね。みんなあんなに頑張ってたもん」

 

俺の机の上からのけられ、今度はたまの机に寄りかかっていたみみみは、俺の視線の先に気づいてかそう声をかけてきた。

 

「まぁねー。おかげで数学の小テストは満点だったわ。けど作戦は無駄になったんだけどね。説得前に中村がサボりから復帰したから」

「えっ、満点!?というか、例の作戦は実施前だったんだ?あはは、ごくろーさま!」

「ほんと、とんだ無駄な苦労だったわ」

「言い方ー!」

 

そんなやりとりを見ていたたまは話の内容が気になったらしく、事の流れをみみみから聞いていた。

 

「いやぁーでも友人を救うためにアレコレするのって、青春だねぇー!」

「たしかにそうかもな。青春してるわ、泉と中村」

「それに付き合うはらみー達もだと思うけど。ね、たまー?」

「うん。ちょっとだけ羨ましいというか、憧れるかも」

 

そんな事言ってもね。

君等が1学期終わりに騒いでたことのほうが青春してたよ、たぶん。

あれからはもう2人のベタベタ具合がパワーアップしてるし。

まぁそこには触れずに軽口で答える。

 

「じゃ、俺が学校サボったら2人は助けるためにいろいろしてくれる?いやぁ、いいねぇ~」

「んー、調子に乗りそうだから私はパス」

「たまが一緒じゃないなら私もパスー」

「……君等さ、最近俺にあたり強くない?」

 

ま、全然いいんだけどね。

冗談だってわかるし、俺は勝手に親愛の証として受け取るから。

 

「あはは、日頃の行いじゃない?」

「相原ならいいかなって。あ、ごめんちょっと言い過ぎた?」

 

しかしこういうところでちゃんと謝るのがたまのいいところだよなぁ。

まぁ別に不快というわけではないけど。

 

「いや、なじられるのも有りかも。もっとなじっていいよ♡」

「うわァ……謝って損した」

「ガチドン引き!?はぁー、いいよいいよ。俺ももう2人が困ってても知らん顔するし!」

「あはは!拗ねない拗ねない」

 

そんな話をしているうちに小休憩の終わりのチャイムも鳴った。

後ろの方からは中村の「チャイム鳴ったろ、散れ散れ」なんて声が聞こえてくる。

それを聞きながら、あー普段通りに戻ったなーなんて考えていた。

 

 

***

 

 

中村が復帰してから数日後の放課後。

今日は全校的に部活が休みの日で、この後どうすっかなぁなんて教室で中村、水沢、竹井なんかと話をしていた。

 

なにもなければまぁサクッと帰るのもいいし、前みたいに中村が持ってきちゃってるアタファミで対戦するもいい。

なんなら帰りにどっかによるのも悪くない。

 

で、どうする?なんて話をしていたところに泉がこちらに近づいてきて、中村に声をかけた。

 

「ね、ねぇ修二。部活無いならさ、一緒に帰らない?」

 

おぉー!

泉やるじゃん!

いままではこんなストレートな手段とらなかったのに変わったな!

 

これを聞いた中村も、「まぁ、いいけど」なんて若干照れてそうな返事を返した。

 

俺たち、部外者3人は「おう。んじゃまた明日〜」なんて言いながら中村と泉が出ていくのを見送った。

 

そして2人が教室を出ると、それを聞いていた友崎、それに日南とみみみとたまが素早くこちらに寄ってきた。

 

「ちょっとちょっと、今の聞いた!?」

「あぁ、ついに優鈴が覚悟決めたみたいだな」

「これは、後をつけるしか無いよねー?」

 

なんてほぼほぼ満場一致で2人を付けていこうなんて話になっていた。

みみみや水沢あたりが乗り気なのは分かるが、意外に日南もノリノリなんだな。

 

とは言え……。

 

「ぁー、俺は遠慮しておく。流石に尾行するってのはちょっとね」

「えー、はらみーノリ悪くない!?」

「人の恋路を覗き見なんて野暮な真似はしたくねーの。そりゃどうなるのかは気にはなるけどさ」

 

結果は気になるからそこは明日本人たちに直接聞いちゃうけどね。

中村にしろ泉にしろ、なんだかんだ答えてくれるだろ。

そもそも中村は俺との夏休みの合宿で話をした勝負のこともあるから隠すこともないだろうしな。

 

「つーわけで俺は帰る。んじゃまたなー」

「あ、待って。やっぱり私も帰る」

 

俺がそう言ってスクールバッグを担いだところで、たまがそう発言した。

 

「えぇ〜、たまもー?」

「うん。たしかに、覗き見はちょっとよくないかなって」

「そんな!たまは私じゃなくはらみーを取るって言うの!?」

「人を取るんじゃなくて自分の考えを取ったんだろ。ってかもたもたしてたら中村達見失うんじゃねーの?」

「たしかにな。ま、行きたいやつだけで行けばいいだろ。さ、行くぞ」

 

俺の言葉に同調するように水沢がその場をまとめた。

そうして、俺とたまはそのまま帰宅を。

残りのメンバーで中村たちを追っていったようだ。

 

 

翌日、俺は中村から直接聞きにいったところどうやら中村と泉の2人は付き合うことになったそうだ。

ただ、結果以上の話はしてくれなかったので2人の間でどんな会話がなされたのかまでは聞けなかった。

 

やはり俺も後をつけるべきだったろうか?

いや、俺は人として在るべき姿勢を通したんだ、後悔はしちゃいないさ。

たぶん……。

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