弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
【お弁当デビュー?】
「あれ、はらみー今日はお弁当?なんか珍しー」
机の上に弁当箱を置いたところ、前を通りがかったみみみがこっちを見てそう言ってきた。
「まぁな。前までは学食とかパンだったんだけど、ちょっとね」
簡単に言うと、少しは節約をしろと母に怒られたわけだ。
今までは1食1000円、はいかないまでもそこそこのお金がかかっており、弁当を作ればもっと安く済むだろうと言うことで二学期からはお弁当デビューだ。
「へぇー、お母さんに作ってもらってる感じ?おいしそう」
「いや、自分で作っている……というほどでもないか。自分で詰めている、だな。ほとんど前に母さんが作ったおかずの残り物と冷凍食品で自分で作るのは玉子焼きとかちくわのチーズ焼きとか簡単なの1、2品くらい」
「え、じぶんで作ってるの!?」
「まぁ、それもいろいろあって……」
原因は、直接ではないけど祭りの時の金魚だ。
金魚を育てるために諸々の環境、水槽とかカルキ抜き剤とかフィルターとか、他にもいろいろと金魚を育てるためのものが入り用で金がかかったわけだ。
それ自体は両親を説得して、昔から預かってもらっていたお年玉とかを貯金から下ろして揃えたんだが、その際に両親から「何かある度にお金を下ろす気なの?」と言われて何かしら行動しざるを得なかったという。
交換条件ってところだ。
「へぇー。あ、私の分は?」
「なんであると思った?」
「んー、サプライズ!はらみーは私の事が大好きだからそれくらいあるかなぁって」
「自意識過剰、乙」
「ふぅーん」
そしてみみみはにやにやしながら少しこちらに近づき、片手で口元を抑えながら小声で言う。
「私にあんなに熱く告白したのにー?」
「おまっ」
それを持ち出すのはレギュレーション違反だろ!
こいつ、いつか泣かす……。
あ、そういえばその時に何回か泣かせてたわ。
「みんみ、いつまでイチャついてるの。ご飯食べるよ」
「「イチャついて(ないから!)(ねーよ!)」」
「息ぴったりじゃん」
そう言ってたまは席を動かしてみみみと並び、お弁当を取り出した。
「あ、はらみーもせっかくだしこっち来る?お弁当同盟だね!」
「みんみは今日は購買のパンだけどねー」
「細かいことは気にしない!」
「おー、じゃあせっかくだしお邪魔しまーす」
そう言って机をたまとみみみの方に向けた。
「たまちゃんも弁当なんだ?たまに学食でも見るけど」
「毎日学食は流石に高いから。あ、私も自分でお弁当作ってるよ」
「おぉ、流石はたまちゃん。で、俺の分は?」
「なんであると思ったの?そもそも自分のがあるよね」
「聞いてみたら出てきたりしないかなぁって」
「出てきたら私が食べる!たまの愛妻弁当は私のだから!」
「そもそも出てこないから!」
そりゃそうだ。
適当な会話をしつつも机も寄せて、いただきますもしたので食べ始める。
「……ねぇはらみー。その玉子焼き、1個ちょうだい?」
「ん?みみみは今日はパンだからそもそも箸がないだろ」
「そこはー、じゃあ箸も貸して?」
えっ、いやそれは。
これ普通に食べ始めたから口付けちゃってるけど?
あれ、なんて答えるのが正解なんだこれ?
「まぁ、うん?き、気にしないならいいけど。はい」
「ありがと、よっしゃ玉子焼きもーらい!へぇ、これがはらみーの手作り、どれどれ」
そう言って俺から弁当箱と箸を受け取ると玉子焼きをヒョイとつまんで食べるみみみ。
あれぇ、俺が気にしすぎ、なのかな?
俺がそんな風に考えている間にみみみはすでに玉子焼きを咀嚼し、飲み込んだようだった。
「おお、普通においしい!甘さ控えめっていうか、あれ?普通においしい!?」
「いや、なんで2度言った?味はまぁ、甘いのはあんまり好きじゃないから砂糖を入れないで、代わりに塩と巻く時に少量の粉チーズを入れてる」
「甘いのは好きじゃない、へぇ〜……。というか、普通に凝ってる!……じゃあ、こっちも1個もらうね!」
「あ、おい。いやまぁ1個くらい別にいいけども……」
止めるまもなく今度はちくわのチーズ焼きをつまみ、自分の口に入れるみみみ。
「ん!これも、ちょっとピリッとしてて普通においしい!?どうなってるの!?」
「どうもなにも、誰が作ってもそうそう失敗しない料理だろ。それも味付けは俺の好みで市販のピザソースに一味唐辛子を少し振ってるけど。チーズをのせてオーブントースターに突っ込むだけ」
「いやだってー、はらみーが料理できることにそもそも違和感が。てっきり玉子焼きには卵の殻くらい入ってると思ったのに」
「なんでそれで食べようと思った?」
「いやぁなんででしょう?テヘッ。あ、これありがとね。おいしかったよ、ハイ」
「おう」
そう言ってお弁当と箸を返すみみみ。
まずかったら笑ってやろうとか思ってたってことか?
でもおいしかったと素直に言われると少し嬉しくはあるな。
失敗しようのない簡単なものとは言え。
そして返された箸を持ち、弁当を突こうとして手が止まる。
あれ?これは普通にあれなのでは?
いや、やっぱり俺が考えすぎなだけ……?
「んふふー?はらみー手が止まってるよ?どしたー?」
そう言ってにっと笑いながらこっちを見ているみみみ。
あぁ、これは確信犯だったわ。
それを知ったら俺ももう引くわけには行かない。
「べ、別に?」
そう短く返してから気にしない体を保ちつつ昼食を再開した。
やべ、顔あっちぃ……。
「はいはい、ごちそうさまごちそうさま」
「たま、まだ半分も減ってないよ?残りは私が食べようか?」
「そういう意味じゃない!」
…………。
それからは適当な会話を続けながら昼食を取り終えた。
「ごちそうさま」
食べ終えたのでそう言いながら弁当を片し始める。
その時、自分の弁当箱を見てふと思ったのでみみみに質問をする。
「そういえばみみみさ、祭りの時の金魚は元気に育ってる?」
この弁当を作るきっかけがあの祭りで金魚を育てることにしたからなんだよなぁ。
「ちゃんと元気にしてるよ。朝も餌あげてきたし。そ、それにしてもどうして急に金魚?」
なんか若干顔赤いぞ。
今の質問に照れる要素なんかあったか?
「いやー、自分の弁当見てたらなんか思い出して」
「お弁当で、金魚!?た、食べたの!?」
ふぁ!?
「いや!金魚を食うわけないだろ!何だ急に」
「いやいや!急にははらみーでしょ!金魚を取る時に責任がーとか言っておいて、お弁当で金魚って!?」
「いやいやいや!金魚は家で元気にしてるわ!」
「2人ともうるさい」
というすれ違いをして、みみみに説明するのに無駄に5分ほどの時間を使うことになった。
そもそも金魚って食えるのか?
食べれたとしても飼っている分だけ禁忌感あり過ぎて絶対に食べたくはない。
みみみは説明を聞いてもどこか納得しきれなかったらしく、今度俺の家にまで本当にちゃんと育っているのか確認にくるそうだ。
ま、いいけどね。
ぜひ来てくれ、ぜひ。
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【ディフェンス?】
ホームルームが終わった放課後。
部活に移動前に友崎から話しかけられた。
「これから部活か?そういえば相原って、サッカー部ではディフェンスやってるんだって?」
「お?そうだけど、なんだよ藪から棒に」
「いや、そういえばみみみがこの前言ってたなぁって。ディフェンスなのに夏休みの練習試合で点を決めてたとか」
「あー。お前が約束破ってこなかったときの話な!」
「ぐ……それいつまで言われるんだろう」
「はは、まぁ忘れるまでずっと言うだろ」
そう言って茶化しながら友崎の反応を見る。
なんか言いたそうだな。
「なんだ、俺がディフェンスやるのは何か不思議か?」
「あーなんだろ。イメージ的には攻める方が好きそうに思って。アタファミでも待ちよりは攻め、みたいなアグレッシブな方だからさ。そもそもアタファミに関しては守りを固めたほうが有利なのに」
たしかに。
いわれりゃ俺ってアタファミでは攻撃的、『守ったら負ける、攻めろぉ!』って感じのプレイスタイルだ。
「うーん、そだなぁ。サッカーは前回のワールドカップの試合ですげぇなぁって思ったことがあって、その時にディフェンスがめちゃくちゃカッコいいって事に気付いたから、かなぁ」
「前回のワールドカップ?何年前だっけ」
興味ない層からしたらそんなもんよね。
「あぁ、3年前かな?その予選リーグで日本の入ったグループEは強い相手だらけて日本にとって死の組とか言われてたんだけど、知ってたりする?」
「えっと、あまり興味なかったから詳しくは……」
「だよな」
そして、はははと笑う俺。
若干顔引きつってるぞ友崎。
「何があったかという、その予選リーグのグループ分けが日本、スペイン、ドイツ、コスタリカって4国のリーグだったんだが、友崎は各国の強さはわからないよな?」
「あぁ、正直よくわからない」
「そうだな、力関係をアタファミで言うと。日本が俺で、スペインがお前、ドイツがNO NAME、コスタリカが中村くらいなんじゃねーかな」
「いや、日本勝ち目ないじゃん」
全く持ってその通り。
「そう!で、そんな中でなぜか日本はスペインとドイツのどちらにも勝って決勝トーナメントに進みましたとさ」
「は?いや、それじゃあ本当は日本が強かったってことで、さっきの力関係の話しが盛り過ぎなんじゃないのか?」
「それがなー。本当に力関係はさっき言った通りだと思うぞ。それを証拠に、サッカーって試合後にボール支配率ってのが見れるんだけど、どっちの試合も日本のボール支配率は2割くらいで相手が8割だったからな。試合全体を見れば2:8の割合でボコボコに押されてたわけ」
「へぇー、よく勝てたな」
本当にな。
今でも稀に話題になるし、アレは伝説になるぞ。
「だから当時は日本中が沸いてたわけ。いくら攻められようが全て止めれば勝てるんだ!ってそんな姿勢がかっこよくて、かな?俺がディフェンスやるようになったのは」
「思った以上にまともな理由だったんだな」
「一言よけいだろ」
そう言いながら友崎の脇を軽く小突く。
言うようになりやがって。
大体の理由はそういうところだけど、実は他にもあって……
「ってのはまぁ正直建前。本当は、俺ってロボゲーならリアル系よりスーパー系が好きでさー。鉄の城とか偉大な勇者とか」
「え、あ、うん?急に話題変わったな。というか、そういえば前にそんな話は聞いたような」
そういや、アタファミやりながら言ったかもな。
「鋼のボディに不屈の闘志。耐えて耐えて、最後に必殺技ですべてをひっくり返す、そういうのが好きなわけ!だからディフェンスやってんの!相手を止めて、"今何かしたか?"とか言いたいのよ!」
「めちゃくちゃだな!建前以上のことは聞きたくなかったわ!」
「ははは、結局ポジションなんてみんなそんな感じだから。点決めて目立ちたいとか、なんか性に合ってるとか、そのレベルの話。漫画みたいなカッコいい理由なんてないっての。あ、そろそろ部活だから行ってくるわ。じゃーなー」
釈然しない顔の友崎を置いて俺は部活へと向かった。