弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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「ところで友崎さあ?」

「ん、なんだ?」

「この球技大会の裏で何してたんだ?」

 

今日が球技大会当日。

中村のゴタゴタからさらに1週間と少し経ったが、それまでの間に球技大会関連で色々変わったことがあった。

 

例えば、女子キャプテンが泉に変わってたこと。

例えば、日南が神前に「エリカこういうの嫌いだよねぇ。最悪代打だけでもいいって伝えておいて?」とか伝言を残していた事。

例えば、水沢がそれとなーく紺野に「中村は運動出来るやつが好きらしい」みたいなことを言っていた事。

 

全部がこいつの仕業とは言わないが……。

多分これら裏で動いて悪巧みはしてたんだろうな。

つか、ぶっちゃけ日南の件はわからんが泉と水沢の件は絶対こいつだろ。

紺野をやる気にさせる方法はあるか?とかこの前聞いてたんだから間違いねぇ。

 

「う、裏というか。クラス全員やる気になれたらいいなぁって、色々……」

「ふーん。まぁいいか」

 

聞いてはみたものの、そんなの気にしてもしょうがないか。

 

「あーしかし、バスケなあ。得意じゃないんだよねぇ」

「むしろ相原はサッカー以外に得意なものあるのか?」

「アタファミ」

「俺に勝ってから言え」

 

無茶言うなアホ。

 

「日本1位に勝たないと言えないのはつれぇなぁ。もしもスポーツ大会の種目がアタファミだったら間違いなく俺らの優勝だったな」

「そもそもアタファミはスポーツじゃないだろ」

「いやほら、eスポーツとかあるじゃん?」

 

なんて友崎とバカ丸出しの会話していた。

でもまぁバスケは苦手と言ったが運動量が物を言うスポーツだし、もしかしたら俺も並以上には働けるかもしれん。

 

「そういう友崎はなんか無いの、実はバスケ得意ですとかそういうやつ」

「無い……あー、いや。レイアップシュートなら出来ると思う」

「え、うっそ、マジで?あ、漫画見て練習したとかか?庶民シュート!」

「庶民?あぁまぁ、そんなとこ」

 

いいなぁ、俺も置いてくるだけ!とか言いながらレイアップ決めたい。

やり方知らんけど。

 

「よっし、なら組もうぜ友崎!」

「組む?いや俺達元々同じチームじゃ……」

「そりゃそうだけど、2人で作戦立てようぜってこと!俺は体力あるがシュートは撃てん。お前は、逆だろ?それとも実は体力に自信あったりする?」

「しないな」

「だよなー!」

 

ということで友崎と軽い打ち合わせ。

つっても即興コンビの素人2人なんだ、難しい話は無し。

俺がとって友崎に渡す、その打ち合わせだけだ。

 

 

***

 

 

「オッケー、取ったぞ!上がれ上がれ!」

 

俺が敵の外したボールをキャッチしてドリブルする。

あ、これリバウンドってやつか?

 

そう思いながら数歩進んだところで前線を確認。

よっし友崎、作戦通りだな頼むぜ!

 

「友崎!」

 

名前を呼びながらゴールの近くでフリーな位置にいる友崎へとパスを出す。

そもそもマークはバスケ部の橘とか体育の時だけ元気な竹井、それにこれまでほぼ全試合にでている水沢等が集中的に付かれている。

 

向こうは攻められてる時でも敵陣に残っている友崎を人数合わせとしか見ていなかったようでどフリーになっており、パスが渡っても″だからどうした?″みたいな雰囲気を出していた。

 

「お、おう!」

 

若干おぼつかない姿勢になりながらもボールを受け取りゴール下にドリブル。

そのままフリーでリングのしたからジャンプし、ふわっとした軌道でボールはリングの中へと吸い込まれていった。

 

「うぉー!友崎、ナイス庶民シュート!」

「さ、サンキュー!」

 

まじで庶民シュート決めたじゃん友崎やるぅ!!

 

「え、文也……?」

「うおー!ワンちゃんナイス!?」

 

相手チームは友崎のことを運動できないやつ、みたいに思っていたようで驚いている。

……どころかたぶん味方チームのほうが驚いている気がする。

 

それでも友崎は水沢やバスケ部の橘等から声をかけられて、まんざらでもなさそうにしていた。

 

しかしそこから相手チームも対策が早く、友崎にも武器があることを理解したようでしっかりマークを付け始めた。

けどまぁ、そっちを付けるともう片方が開くわけで……。

 

「橘よろしく。ワンオンワンなら負けんだろ?」

「とーぜん!」

 

っとバスケ部に渡しちゃえば、するするっと抜いて決めてくれちゃうわけだ。

友崎にもマークが割かれているのは無駄にはならない。

勝ったなガハハ!

 

そんな感じで、ぱぱっ橘がシュートを決めて現在スコアは13-10。

結構いい勝負なのは、相手もかなりガチ目のメンバーだったっぽい。

たぶんバスケ部3人くらいいねーか?

 

でもバスケはあれだな。

フットサルに通じるものがあるから意外と俺の動きも悪くない、と思う。

ドリブルとかは見様見真似でしかできけど、オフザボールの動きなら得意なんだ。

 

この球技大会のバスケの試合は、クラスも多いので1試合10分の1本だ。

時計を見ると、残り時間は30秒ってところだな。

もう勝ちはほぼ確定で、そんな中で再度俺は敵から奪ったボールを持って数歩ドリブル。

そして前線の友崎を見る。

 

一応マークはまだ付かれていて、そのまま出しても先に相手に取られるだろう。

……そのままならな!

 

こっちを見た友崎と目が合う。

そして事前に打ち合わせをしていた作戦第二弾。

 

俺は友崎がいる位置数歩分前の誰もいないスペースにボールを山なりに投げ込む。

マークを付かれたとき用の対策、1発芸を打ち合わせて決めていたのだ。

 

ボールを持ったら友崎の前の誰もいない場所にボールを投げるから受け取れ、と。

ついでに覚えていたら、俺がボールを持ったら俺の目を見ろ、と。

 

アイコンタクトで意志が通じ、友崎は相手よりも早く反転してボールの位置へと走り込み余裕を持ってキャッチ。

本日2本目のレイアップシュートを決めた。

 

「やったな文也!」

「うおおぉーーー!ワンちゃん!!」

 

更に友崎は竹井と水沢に背中をバシンと叩かれていた。

いいねぇー、俺もシュート決めてみたかった。

これで15対10なので、まぁ勝ち確定だな。

 

そして残り十数秒はあったが相手は勝てないのを悟ってか明らかにやる気のないパスワークをしだした。

あまりにも甘いパスが出て、たまたま俺がそれをインターセプト。

 

ならせっかくだからとそのままドリブルで中央に入っていき、スリーポイントになるギリギリからジャンプをして両手で高くシュートを放つ。

たぶん試合終了とピッタシだな、ブザービーターってやつか。

そして俺は着地とともにゴールに背を向け、右手の握り拳を高くかざす。

……ふっ、見なくてもわかるぜ。

 

後ろでボールが地面を叩く音が聞こえた。

 

「何カッコつけてんだお前!リングにカスリすらしてしてねーじゃねーか!」

「あはははは!相原、だ、だっさー!ぽ、ポーズだけカッコいいし、あははは!」

「相原、シュートは片手で撃つもんだぞ。まぁ女子なら両手もあるけど。実は女の子だったのかな??」

 

水沢、竹井、橘がここぞとばかりにイジってくる。

こいつら、覚えとけよ。

 

とりあえず試合は勝ちで終わった。

試合終わりの挨拶をしてからコート脇へと移動する。

お、女子も見に来てたんだな。

 

「はらみー、おつかれ……ふ、ふふふ!だ、駄目、はらみーの顔みたら、さっきの思いだして、あははは!めっちゃドヤってたのに、あは、あはは!」

「いや、笑いすぎだろ」

「あはは、ご、ごめ、ちょっとこっち見ないで!あはは!」

 

近くに行くなり、人の顔を見て爆笑するみみみ。

ひでぇ、深く傷ついたわ。

こっち見るなと言われたから俺はクルッと回ってみみみに背を向ける。

ついでに右腕を大きく上げさっきと同じポーズをとる。

 

そうすると後ろからはみみみの笑い声が加速し、さらにはみみみ以外の吹き出す声が聞こえた。

笑いが伝播したんだろうか。

吹き出したのは一緒にいたのは、瀬野さんとかか。

 

「あはははは!はらみー、そ、それ卑怯でしょ!ははは!」

「はぁ。楽しそうで何より」

 

そしたら近くにいたたまちゃんが見かけたのか俺にビシッと指をさして口を開く。

 

「相原、笑わせすぎ!……ふ、ふふっ!」

「お前もかよ!」

 

その一方で横の方を見れば友崎は水沢と竹井と中村、それに一緒に試合に出ていた橘なんかに賞賛の言葉とともに和気あいあいとしていた。

解せぬ。

 

「そ、それにしても、タカヒロなんかはこの球技大会でさらに株を上げたよねぇ」

「水沢?」

 

俺の視線の先を見てか、話題を変えるようにみみみはそんな話をする。

……でも笑いこらえるのに必死で声震えてんぞ。

 

「そーそー!今日は全試合出てたんだって?それにさっきとかもシュート決めてたのがかっこよかったからねぇ。これは女子はほっとかないかもって、ねぇー」

「あぁ、なるほど。たしかに全試合出て、しかもかなりの活躍をしてたな。帰宅部なのになんであんなに運動できるのか」

 

それを聞いてみみみは、「たしかに!タカヒロの謎は深まる!」なんて言っている。

しかし球技大会で活躍すりゃモテるのか。

 

俺もサッカーだったら……って無駄なこと考えるのはやめるか。

そもそも俺は競技を決めるときからサボる前提でバスケに投票してたし。

 

「ちなみに、俺の株は上がんないの?ちょー頑張ったんだけど」

「わたし的には、最後のだけで満点!…くっ、ふふ……」

「わー。うれしーなー」

 

プルプル震えているみみみを見ながら棒読みでそう返した。

 

「相原、私からも満点あげる」

「おお、意外にもたまちゃんから」

「たしかに面白かったよ。……ふ、ふふ」

「だから笑うな!」

「あはは、冗談!面白かったのは本当だけど」

 

冗談かい。

この前の授業中、競技決めの時にたまの「やりたいからです!」って理由を笑ったことの意趣返しかもしれん。

 

「それで、女子の方はどうなってるん?そういえば男子のバスケはさっきの勝ちでまだ1試合残ってるけど優勝ほぼ確定らしいぞ」

「おおーそうなんだ!こっちもいま勝ってて、最後の決勝戦がこの後からあるよ!まぁ任せておきなさい!」

「さすが。じゃあこっちの最後の試合の区切りがついたら見に行くわ」

「おっけー!是非ともたまの勇姿を見にきてね!」

「そこは自分の勇姿にしようよ……」

 

 

そして、最終的には男子バスケはそのまま順当に優勝。

女子のソフトも紺野の予想以上の活躍などもあり、我らがクラスは男女ともに球技大会を優勝で締めくくることとなる。

 

ちなみに中村は最後の試合に時間終了とともにスリーポイントを決めていた。

俺への当て付けかな???

 

「よっしゃー!俺たちが、最強っしょー!」

「「「「おぉー!」」」」

 

竹井が腕を上げてそう言ったので、俺もそれに続くように腕を振り上げ声を上げる。

他、いつもはクール振ってる水沢や意外とシャイな中村までそれに乗って腕を上げているあたり、みんななかなかに盛り上がっているらしい。

 

「やったね、しゅうじー!」

「あぁ」

 

泉もそう言って中村とイチャイチャしだしていた。

 

こんなふうに男女共にクラス全員で喜びあう姿があったのだが……。

その数日後からどんどんクラスの空気が悪くなっていくなんて、このときは誰も想像していなかった。

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