弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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ゲーマー達+1と伝説の樹の下

「おじゃましまーす!」

「はいはーい。マジで来たよ」

「そりゃあね、行くって言ったじゃん?」

 

呼び鈴とともに開かれた玄関に向かうと、そこには友崎と、やけにハイテンションなみみみがいた。

先日友崎と積みゲーの消化するから暇ならこいよと誘った時に、近くにいたみみみも「なら私も!」と乗ってきたのだ。

とりあえず前と同じように俺の部屋まで上がってもらおうとする、が。

 

「あ、はらみー!金魚ここに置いたんだ!」

 

そう言って玄関の横に置いてある水槽を指さすみみみ。

 

「そういえば、夏休みの途中からここに金魚の水槽が置かれてたな」

「あー、はじめは俺の部屋に置いてたりリビングに置こうか悩んだりしてたんだけど、玄関に落ち着いたんだ。水替えが一番やりやすくてね」

 

なるほどー、と友崎もみみみも納得したような反応をしていた。

そういえば前にみみみが金魚をしっかり面倒見ているのかチェックしにいく!とか言ってたっけ。

存分に見てもらうとしよう。

 

「ほれ、ちゃんと元気にしてるだろ、うちの子は。水も気をつけてるし、餌あげだって……本当は俺がやりたいけど俺よりも母さんがあげてるな」

「そこは自分であげろよ」

「俺より母さんのほうが金魚にご執心でなぁ。餌を食べる姿がかわいいんだと。ほら、そこに餌をやったら名前を書く餌やり表があるだろ」

「あはは!この表、母って記載ばっかりだよ!」

 

一応朝晩にちゃんと餌やりチェックをしているんだが、俺より先に母さんが餌をあげてるんだよなぁ。

まぁ別にいいんだけど、餌をあげすぎないかだけは心配。

 

「金魚、前は見なかった気がするけど飼い始めたのって最近なのか?」

「この前の夏祭りからだな。ほれ、友崎が菊池さんに告白したっつう祭りの。あの時からーってな」

「え!?なにそれなにそれ!?」

「い、いや……その、なんだ……?」

「おおっと!これは詳しく聞く必要がありそうですねぇ!」

「はいはい、そろそろあがってくれ」

 

目を輝かせてグイグイいくみみみにあわてる友崎。

そういや、そのへんの細かい話はみみみ知らないんだっけ。

しかし、これ以上金魚の横で騒ぐと金魚のストレスにもなりそうだったのでぱぱっと上がってもらう。

 

「改めておじゃましまーす。うーん、はらみーの部屋ってなんか落ち着くよね!どれどれー?」

「我が物顔でクローゼットを開くな。……変なとこ漁るなよ?」

「えー。あ、この前読みかけだった漫画の続きある?」

「知るか。呼んだら元の本棚に戻せよ?」

 

みみみは好き勝手に本棚を物色し始めた。

完全に勝手知ったる他人の家、という態度だ。

俺は苦笑しつつ、友崎に向き直った。

 

「さて、積みゲーの消化を始めようか」

「積みゲーの消化って、今日はなにをするんだ?」

「あぁ、買うだけ買ったけど未プレイの名作たちがな。そこの棚」

 

そう言って『未プレイ』とラベルシールが貼られている棚を指差す。

俺が少しずつ集めたコレクションが入っている棚である。

 

「ほんと、結構の数あるよなぁ」

「これ全部買ったのに遊んだことないってこと?なんで買ったの?」

「ぐぅっ。これら全部名作なんだ、いつかやろうと思って……」

「今やりたいのだけ買えばいいのに」

「この気持ちは、ゲーマーにしか分かんねぇよ。なぁ友崎!」

「俺に振るなよ。たしかに、分からなくはないけど」

 

友崎が苦笑しながら何本かパッケージを手に取り床に置く。

すると、横からひょっこりとみみみが顔を出した。

 

「なになに?どんなゲームがあるの?ん?」

 

みみみは棚にあった1つ目に入ったものを手に取った。

パッケージには、美少女のイラスト。

 

「わ、なにこれ女の子が描かれてるー。……へぇ〜?はらみー、こういうのもやるんだー?」

 

みみみがニヤニヤしながらパッケージを俺に見せつけてくる。

げ、みみみの持っているソフトは……。

あの有名な恋愛アドベンチャーゲーム、『ときめきメモリアル』だ。

 

「いや、なんだ?ゲーマーの間ではかなり有名でもはや伝説の作品なんだぞ。100円だったからつい買ってしまった」

 

買ってからアーカイブ配信などもされてることに気づいたんだけどな。

まぁこっちのほうが安かったからいいか。

 

「伝説?」

「ゲーマーなら一度は聞いたことあるくらいの作品だぞ。高校生活で女の子とイチャイチャする作品、の始祖的な感じ?……なぁ友崎」

「だから俺に振るなよ」

 

我関せずという感じを出した友崎に振るがぶっきらぼうにそう返される。

みみみはパッケージ裏の説明を読み上げ始めた。

 

「『伝説の樹の下で女の子から告白されると、永遠に幸せになれる』……だって!キャー、ロマンチックじゃん!」

「そういう伝説がある高校が舞台らしい」

「いいじゃんいいじゃん、これやろうよ!はらみーが女の子にデレデレするとこ見ててあげる!」

 

そう言って俺に手渡してくるみみみ。

マジかぁ。

俺のことフッた女の子の前でときメモすんのかよ、俺。

友崎に『助けろよ』という視線を送るが巻き込まれたくないのか、絶対に視線に気づいているのにスルーしやがった。

 

「まあいいけど、ちょいまち。説明書を読む。どれどれ……このゲームは1995年から1998年の3年間が舞台になっています?俺たち生まれてねぇな」

「古いゲームだしな。1995年というと、30年前か」

「30年前!?うっそ、私達が生まれるさらに10年以上前じゃん!?」

「みてぇーだなぁー。歴史を感じるねぇー」

 

みみみは目を丸くしてパッケージをまじまじと見ている。

俺はそれを横目に説明書を読み進める。

 

「ふんふん。平日に勉強や容姿のステータスを上げて、休日に女の子とデートすればいいらしい。卒業式の日に女の子から告白されるのが目的、だとか」

「告白するんじゃなくてさせるのか。案外女々しいな」

「女の子もメインはパケ絵の子が幼馴染みたいだけど、他にも数人いるみたいだな。……お、ブルマ姿の女の子が写ってる。いまじゃもう見れないから、レアだな」

「ちょっとぉ!はらみーのえっち!」

「イッツ!!」

 

みみみが俺の背中をバシーンと叩く。

めっちゃいい音がした、過去一レベルでいってぇ。

とりあえず一通り目を通したので説明書を友崎に渡す。

 

「よし、じゃあ始めるか」

 

そうして起動し、ゲームをスタートした。

 

『あなたの名字を教えてくれる?』

「うおっ、しゃべった!」

「え、驚くところ?普通じゃないの?」

「この時代のゲームとしては珍しい、ような。……言われてみれば普通か?」

 

名前は『相原みなと』、あだ名は悩みつつも『はらみー』で入力完了。

そうしてオープニングが始まった。

 

「この早乙女って人、メモ帳に女子の情報書いてる。普通そんなことする……?」

「するする。水沢とかも女の子の情報をメモしてるかもよ」

「あ、たしかにー!でもタカヒロならメモ帳じゃなくて脳内にぜんぶまとめてそう!『あの子の誕生日は〇月〇日』って!」

 

そりゃたしかに、アイツ本体スペックたけぇしなぁ。

でもそういうやつは頭に入れる過程でノートとかどこかにしっかり残しておくイメージもある。

……つかいま、一瞬メモの話で友崎がピクッと反応しなかったか?

まぁいいや。

 

「それで、攻略対象って誰にするんだ?結構キャラがいるみたいだけど」

「そりゃあお前、パッケージのど真ん中にいるこの子だろ。藤崎詩織ちゃん」

「へぇ〜。はらみーってこういう子が好みなんだぁー?」

「……なんだよ、その含みのある言い方。つか一番目立っているんだから、難易度も一番簡単に違いないだろ?」

 

みみみがニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んでくる。

『藤崎詩織』、いわゆるメインヒロインってやつだろう。

 

「まあ、初見ならそれが無難なのかな?」

 

友崎も特に異論はないようで頷く。

 

「よし、目標は詩織ちゃんとのハッピーエンドだ。行くぞ!」

 

……ちなみに、『藤崎詩織』がラスボスと言われるくらいに難易度が高いことはあとから知ることとなる。

 

ゲームが始まると、まずはパラメータ画面が表示された。

文系、理系、芸術、運動、容姿、根性、雑学……。

 

「うへぇ、パラメータ多くない?」

「おー、数字がいっぱい」

「これ、全部上げなきゃいけないのか。育成シミュレーションに近いな」

 

友崎が画面を見ながら分析を始める。

 

「とりあえず、詩織ちゃんの好みに合わせればいいんじゃない?」

「好みって言ってもしらんしなぁ。そもそもこの子、容姿端麗、頭脳明晰としか書いてないぞ。よくわからんし、とりあえず適当で行くか」

 

俺はコマンド選択画面で迷わずダンベルのアイコンを選んだ。

運動だ、男は黙って筋肉。

フィジカルさえあれば大抵のことはなんとかなる。

 

「なぜいきなり筋トレに」

「あはは!はらみーっぽい!ゲームの中でも筋トレするんだ!」

「うるせぇ、スポーツ万能な男がモテないわけないだろ」

「相原、モテてるのか?」

「うるせぇ!」

 

ひとこと余計じゃボケっ!

 

「というか、こういうものはバランス良く上げるものじゃないか?」

「ゲーマーの経験則か?」

「いや、常識的に考えて」

「そうかぁー?最近のゲームは極振りとかのほうがつよいだろー?それに、俺は1点に特化して誰にも負けない特技を持ってる人間のほうが好感わくけどなぁ。ロマンを感じるし!」

「いやこれ女の子と仲良くするゲームだろ。……なんか、俺もそういうの得意ではないところで言うのもアレなんだけどさ。女子に相原の考えの理解を求めるのは無理がある気がする」

「たしかに!はらみーがモテない理由がよくわかるねぇー」

「は、はぁー?べ、別にモテたいわけじゃないしぃー!?」

「ま、ほら。進めろって」

 

釈然としない言われようではあるが、仕方なく今回は友崎の忠告も受け、とりあえず平たく能力を上げていく。

数週間が経過し、下校時に藤崎詩織を見かけるイベントが発生した。

 

「おっ、チャンス到来か!選択肢がでた。よし、一緒に帰ろうぜ!」

「行け行け〜!」

 

コマンド『一緒に帰る』を選択。

 

『一緒に帰って噂とかされると恥ずかしいし……』

「ぐはぁっ!」

「おぉ、ネットで聞いたことのある言葉。この子のセリフだったのか」

 

断られた。

しかも、なんかすごい精神的ダメージを負う断り方で。

 

「あははっ!噂されると嫌だって!はらみーと一緒じゃ恥ずかしいって言われちゃったよ!あははっ!」

「みみみ、笑いすぎだろ!いやでも、これはリアルに言われたらダメージでかいだろ……」

「幼馴染だろこいつら。女子ってこわい……」

 

俺はテレビ画面に向かって抗議する。

これをみみみとかに言われたら俺の心は壊れてしまうかもしれん。

そんなみみみは横でお腹を抱えて笑っている。

 

「あ、あははは!どんまいどんまい!次があるよ次が!」

「これは、もしかしてパラメータ不足だったのか?」

 

友崎が腕を組んで考え込む。

 

「運動は上げてるけど、容姿とか他の数値が低いから『隣を歩くのが恥ずかしい』って判定されたんじゃないか?」

「世知辛ぇ。イケメン以外は隣を歩く権利もないってか」

「シビアなゲームだな」

「あーでも隣を歩く人にはカッコよくいてもらいたいっていうのはちょっとわかるなぁ」

 

みみみがしたり顔で言う。

現実は非情である。

いやゲームだけど。

ひとしきり笑った後、ふと友崎が画面を見ながら呟いた。

 

「この『基準に達してない男は隣を歩かせない』って感じや、プロフィールの容姿端麗・頭脳明晰とかさ。なんか、まるで日南みたいだな」

「あはは、言えてる!葵って、自分にも他人にもストイックだもんね」

「あー、たしかに日南だ。中途半端な覚悟で誘ってもこう、笑顔で断られそう」

「めっちゃ想像できる!『恥ずかしい』とかは言わないかもだけど、ここがダメってキッパリ断るやつだ!」

 

みみみは楽しそうに、けどどこか誇らしげに言う。

というか、日南ってそんなに厳しいこと言うか?

断るは断るだろうけどキッパリたいうかやんわり断るだろ、たぶん。

 

そこからしばらく進めると、イベントなどで他の女子キャラとも知り合う。

文系少女に、スポーツ少女、芸術肌の子など、個性豊かだ。

1日50キロ走ってるとかとんでもないこと言っている子もいるが、まぁ聞き流しておこう。……俺がランニングマシンで1時間走ったときでも15キロもいかなかったんだけどなぁ。

ニコニコペースをキープする走り方ではあったけどさ。

 

けどま、今の俺の心は詩織ちゃん一筋なわけだ。

他の女の子には目もくれず、各パラメータを伸ばしながら詩織ちゃんにデートのお誘いをする日々を送っていく。

ふと、コマンドの中に『部活』という項目を見つけた俺は、迷わずそれを選択した。

 

「こんなのあったのか、気づかなかった。部活に入部できるのか。サッカー部一択だな」

「そこはブレないね」

「運動パラメータも上がるし一石二鳥だろ。これでエースストライカーになってモテモテよ。なんかしかも詩織ちゃんもサッカー部所属らしいじゃん。マネージャー?」

 

意気揚々とサッカー部に入部した俺。

部活動を行い、着実に運動と根性のパラメータを上げていく。

しかし、数週間後……。

 

日曜のみできるコマンド、『電話』コマンドを選び早乙女から女の子の情報をもらう。

そしてその日が何事もなく終わったと思った瞬間、鳴り響く電話の音。

 

「んん?留守電にメッセージ?部長から?」

『君は今日部活を休んだね。退部だ』

 

急すぎる部長からの連絡。

強制退部イベントが発生した。

 

「退部?」

「えっ、なんで!?1ヶ月くらいしか入ってないんですけど!?1日休んだだけで!?」

「急展開すぎるでしょ!」

 

友崎もみみみもドン引きしている。

友崎はパッケージから説明書を取り出し読み始める。

 

「あ、書いてあった。……どうやらこのゲーム、第三日曜日は部活に参加しないと退部させられるらしい」

「一発アウトかよ!厳しすぎんだろ!」

「あっはっは!はらみーからサッカー取り上げたら何が残るのー!」

「男前だよ!」

「あっはっはっはっ!」

 

笑い過ぎぃ!

ともあれ俺のサッカー人生、開始一ヶ月で終了。

何なんだこれは。

 

「くっそ、部活は諦める。帰宅部エースとして生きていくしかない」

 

気を取り直してパラメータを上げていくことにする。

そんな中、早乙女から女の子の評価を聞いた時に変なアイコンがあるのを発見した。

 

「なんだこれ?爆弾?」

「……なんか不穏なアイコンだな」

「え、爆弾?なになに、なにか爆発するの?」

 

友崎が眉をひそめる。

俺も嫌な予感がして、説明書を取り出してペラペラとめくった。

同じ轍は踏まんぞ。

……しかし。

 

「えーっと。どこにも載ってねぇぞ?」

「つまり、隠しパラメータってことか?」

「爆弾ってことは、放置したらドカーンってなるってことだよね?」

 

みみみがそう楽しそうに言う。

友崎は画面を見つめて、ゲーマーとしての勘を働かせていた。

 

「おそらく、女の子の不満とかが溜まってる状態なんだろ。なにか嫌われることでもするとつくんじゃないか?」

「何もしてないぞ?そもそも知り合っただけだから、あるとしてもたまに下校中に顔合わせたけど一緒に帰らなかっただけだし」

「『何もしてない』から怒る……のか?向こうは知り合いになったつもりなのに、声もかけないから、とか……?」

「それは、理不尽すぎない?」

 

みみみも目を丸くしている。

 

「これが爆発したらどうなるんだろ」

「その人の評価が下がるとかか?」

「んー、でも俺は詩織ちゃん一筋だから他の人の評価とかどうでもいいよな。放置でいいか。直し方とか知らんし」

 

判断に迷った末、俺は詩織ちゃんとの関係に実害はないだろうと判断して放置することを選択した。

そう高を括っていた俺が甘かったことを思い知らされたのは、それからゲーム内で半年が過ぎた頃のことだった。

 

『ドカーン!』

画面から、ふざけた爆発音が響く。

 

「あっ」

「今の音は……」

「なにかが爆発した!?」

 

みみみが楽しそうにしている。

何嬉しそうにしとんねん。

電話が鳴り親友、早乙女からの連絡が入る。

 

『お前、女子の間で〇〇ちゃんの事を傷つけたって噂になってるぞ』

「いやなんもしてねぇだろ!下校時に見送ったくらいで」

「誘ってくれなかったから傷ついたってこと……?」

「女子の間って、早乙女の言い方もしかして全員の評価が下がったってことか?」

 

しかし、それだけでは終わらなかった。

さらに翌週……。

 

『ドカーン』

「え?」

「あ、連鎖爆発ってやつか。一人が爆発すると、全員の評価が下がる仕様ゆえに他の子の評価も下がって、他の子の爆弾が誘爆……」

「核分裂かな!?」

「鬼畜ゲーだな、これ」

 

友崎も流石にドン引きしている。

みみみは横で腹を抱えて笑っていた。

早乙女に女の子の評価を聞けば、地道に上げていた詩織ちゃんの評価もがくって落ちており、その他の女の子もほぼ最低だ。

 

「あははは!自業自得だね。女の子を蔑ろにするからだよ?」

「楽しそうだなぁおい!」

 

ここからは地獄の『爆弾処理』作業が始まった。

本命の詩織ちゃんとのデートどころではない。

爆弾がついた女の子には電話をかけ、機嫌を取るためにデートに誘う。

10人近くいる女子に爆弾が付くたびに予定付けるのと実際のデートで1人2週間ずつ、さらにはデートに断られて1週間を無駄にする事もザラだ。

 

『今度の日曜、空いてる?』

『ええ、いいわよ(怒)』

「めちゃめちゃ怒ってるやん!?」

「……これ、なんのゲームだっけ?」

「爆弾処理シミュレーションになったな」

 

さほど親しくもない女の子と公園に行き、当たり障りのない選択肢を選び、機嫌を直してもらう。

その翌週には別の女の子に爆弾がつき、またデートに誘う。

俺のスケジュール帳は、好きでもない女の子との予定で埋め尽くされていく。

 

「今日はどの女の子とデートをするかなぁ!……はぁ。何言ってんだろ」

「はらみーサイテー。2股どころか5股以上かけてない?」

「俺だって好きでやってるわけじゃねぇよ!」

「このゲーム、リソース管理が厳しすぎるな。パラメータ上げと爆弾処理のバランスが崩壊してる」

 

みみみからの「サイテー」という罵りを受けながら、俺は必死にコントローラーを操作する。

俺はただ、詩織ちゃんと伝説の樹の下に行きたいだけなのに、なぜ名前もうろ覚えの女の子とデートをしているんだ……。

 

 

そして迎えた卒業式。

伝説の樹の下。

誰もいない、風が吹いているだけだ。

 

「……誰も来ねぇな」

「まあ、あれだけ悪い噂が流れればな」

「風が吹いてるねぇ」

 

と、そこへ一人の男が現れた。

主人公の親友キャラ、早乙女好雄だ。

『お前も1人か!俺たち、ずっと友達だよな!』

それは、男同士の熱い友情エンドだった。

 

「……まあ、お前がいい奴なのは知ってたよ。いつも情報ありがとな」

「ある意味、ハッピーエンドだろこれ」

「あはは!男の友情もいいんじゃない?」

 

俺は疲労困憊でコントローラーを置いた。

エンディングロールが流れる画面を、3人でぼんやりと眺める。

 

「はぁ。女の子は裏でこんなに爆弾抱えてるってか」

「パラメータ化されてないだけで、現実も似たようなものかもな」

 

友崎がしみじみと言う。

現実には『評価画面』も『爆弾アイコン』も見えない。

だからこそ、いつ爆発するかわからない恐怖がある。

 

「あはは!たしかに!」

 

みみみが手元のお茶を一口のみ、明るく笑い飛ばした。

 

「見えないだけで、実はみんな抱えてるのかも。私の爆弾も、爆発しないうちになんとかしたほうがいいんじゃない?」

「「えっ?」」

 

俺と友崎が顔を見合わせる。

みみみはニシシと悪戯っぽく笑う。

 

「油断してるとドカーン!って爆発しちゃうかもよ?気をつけてね?なーんて♪」

「……はいはい、わかったよ。ったく、肝に銘じておきますよ」

「むぅ、なんか扱いが雑!私だって悩み多き乙女なんですケド!」

 

みみみが俺の背中をバンバン叩く。

俺はため息をつきつつ、降参するように両手を挙げた。

 

「痛いって!それじゃあ、連鎖爆発しないように今度はたまちゃんでも誘うか?」

「あ、それは名案!たまも誘ってどこか行こうよ!」

 

屈託なく笑うみみみを見て、俺と友崎もつられて笑う。

そうそう、みみみに限ってそんなドロドロした爆弾を抱えてるわけがない。

……ない?

 

「ほらほら、次はどうする」

「そうだな。爆弾のない平和な世界に行きたい。とりあえず、ゲームは休憩しよう」

 

みみみの笑顔は、いつも通り明るくて、まぁその、可愛い。

ただ、ふと友崎と目が合った時、あいつの目が少しだけ思案するような色をしているのに気づいた。

まるで「今のは冗談なのか……?」とでも疑っているような。

 

まあ、友崎は考えすぎなところがあるからな。

それを横目に俺は、爆弾の有無は水沢に聞けばわかんないかなぁーなんてどうでもいいことを考えていた。

 

目の前のみみみは、楽しそうに笑っている。

今はそれでいいだろう。




新年度なので久々に更新……
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