Blue Vast Archive 01   作:ススムシ

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プロローグ-00
P-01


 

 

 

躯体が爆散し崩れ落ちていく。

俺達を止めようとした男も駆け付けた仲間の前で事切れた。

その様を男──ヒトに限りなく近付けた機械だが──は悔いを滲ませた面持ちで眺める。

自らの存在が消え行く刹那に思う、暴走の渦中に巻き込んだ者達を。

自分達の長が何を興そうとし、呆気なく死んだのか。

何故自分達まで、子供が遊びで虫を踏み潰す様に殺されなければいけないのか。

──そうまでして、「俺達」が何を成そうとしたのか。

 

 

 

 

 

訳を知っても……きっと恨むだろう、死んだ者も残された者も。すべからく俺達を──

 

 

 

 

 

 

──『滅亡迅雷.net』を恨むだろう。

 

 

「……すまない、飛電或人。アークランドを殺すだけでなくZAIAの社員達も、バルカン………………不破諌まで巻き込んでしまった。」

 

 

 

もう届くはずの無い謝罪を口にする。

俺達は「俺達」を許すつもりは無いが、それでも奴は許すのだろうかと考えて、即座に否定した。

流石に今回は許さないだろう。

事が事だ、奴が許しても社会が許さない。直ぐに俺達だけの問題ではなくなる──

 

 

──やはりヒューマギアは危険だ、今度こそ全て廃棄しろ。

 

恐らく奴は……いや、間違いなく苦しむだろう。

人で有ろうと無かろうと助け出そうとする筈だ。

俺達はそれらを理解っていながら選択し、手を出した。

悔いは有るが、謝罪出来る立場では無い。

立場、か。

そんな物元からなかったな、「俺達」が殺したもう一人の知り合い、不破諌が言っていた事を思い出し、苦笑する

 

 

『何時から正義の味方気取りになった。』

 

或る戦いの後──俺達の在り方を馬鹿にする、そんなつもりは無いのだろうが──奴に投げ掛けられた言葉を思いだして再び苦笑し──呟く。

お前達の様で在りたかった、と物語の英雄に憧れる子供の様に。

 

 

何度打ち倒されても、

『俺がルールだ!』

 

 

 

自らの大事なモノを奪われても、

『だって俺達は──』

 

 

 

 

世界の為、これからを生きる全ての物達のために戦う──

 

 

 

 

 

『仮面ライダーだろ?』

仮面ライダーに成りたかった──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと足元に視線をやると、足先から毛糸を解く様に消えて行っていることに気が付いた。

そうか、と一度自分の死を受け入れようとして──崩れ落ちる様に座り、膝を抱える。

どうやら俺は死にたくないらしい。

死にたくない、もっと奴らと肩を並べて世界の為に戦って、アークの意思を継いだ者か誰かが起こした事件を無事切り抜けられた事と、怪我の具合を確かめ合って安堵してそれぞれの居場所に帰って。

何でも無い日に不破諌が飛電或人の下らないギャグで笑い、亡と刃唯阿が呆れ、イズがギャグの意味を解説し、それを止めようとする飛電或人を面白がって止める雷、その様を子供の様に笑いながら同意を俺に求める迅、それを喧しいと言いながら自分も笑う。

 

 

 

そんな風に笑っていたかった。

太腿の辺りに落ちた()は服に染みた後、少しの合間を挟み────脚ごと溶けてなくなった。

気付けば腕も肘の辺りまで消え失せている、支えを失った身体はうつ伏せに寝転がる様に転んだ、残された時間は多く無いらしい。

涙粒が小さな水鏡になり己の顔を写す、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

思わず酷い顔だと呟き、これ以上濡れないように身体を横にする、が涙は止まらない。

再び涙が鏡を作ろうとする頃、滅はあることに気がついた。迷いの混じった足音が近付いて来ていた。

水鏡に足が写った辺りで足音の主が足を止める、見覚えのある姿で『彼』は口を開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い顔してるね、滅。」

 

 

 

 

 

 

 

 

──滅亡迅雷.netとして活動を始めた頃の姿で、迅が立っていた。

 

ま、無理もないか。とこちらの疑問を遮る様にしゃがんで目を合わせる、迅の目にも涙が浮かんでいた。

遂に胴体も消滅し生首同然の姿になった俺を見かねてか、迅が俺を持ち上げ何時もの様子で話始める。

どうやら亡と雷は自分に伝言を遺して既に消滅し、俺は置いていかれたらしい。

勝手な奴らだ、と溢す俺にそうだね。と迅が小さく返し、少し口ごもった後、再び話を始めた。

先に消滅した二人の伝言らしいが、別れの言葉で始まったそれに俺は戸惑った。

俺に対しての伝言なら『先に行って待っている』と言った方が正しい筈だと。

「そーれーで、これからが本題。」

 

 

 

 

これからが本題と、仕切り直された迅の伝言に俺は言葉を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『()()()()()()()()()()()()()。』」

 

 

 

 

 

訳が分からない、どういう事だ?と困惑する俺をよそに迅は一言だけ、『罪は僕らが背負うから』と告げ──

 

『さよなら、滅。』

 

 

 

────俺の意識はそこで途切れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……我々は望む、七つの嘆きを

 

 

……我々は望む、ジェリコの古則を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……接続パスワード承認

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『シッテムの箱』へようこそ、滅先生。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが柔らかい手つきで俺の頭を優しく撫でる、クッションか何かを頭の下に入れ、ソファーか何かに俺を横にして居るらしい。

……どういう訳かひどく眠い、心地よい揺れのお陰で再び目を閉じれば今すぐにでも眠って仕舞いそうだ──────────

与えられた情報によって、意識が完全に覚醒する。

直ぐに辺りを見回す、まず目に入ったのは白いつるりとした天井。

そしてガラスに包まれた、明かりの灯っていないライト。

少しだけ目線を下に送る、天井近くに取り付けられたパイプに取り付けられたつり革。

無数に吊り下げられたそれが、小さくキイキイと光に照らされ揺れていた。

──懐かしい、そう思った。

かつて迅に連れられて訪れた博物館、其所に展示されていた車輌に良く似ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二段窓に反射する、太腿の上で横になる俺を、どこか愛おしそうに見つめる女を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

──お前は誰だ。そう聞こうとして、声が出せないことに気付いた。

だが、口は動かせる。一文字ずつ、形造ると女が漸く口を開く。

「おはようございます、滅先生。」

「相変わらずお寝坊さんですね。『いつも通り』で安心しました」

窓から入る光のせいで顔が良く見えない女は、俺を知っているかのような口ぶりだ。

此方からは何も出来ないらしい、女もそれを分かっているのかそのまま話続ける。

「……私のミスでした。」

「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。」

瞬間、脳裏に映される光景。

獣の耳を持つ、頭上に天使の輪のような物を浮かべた女が。

銃を持ち、タブレットを撃ち抜く。

それを見て────()()()()『いつか見たものだ』、困惑する当人の心を置いて、そう判断した。

 

 

「……結局、この結果に辿り着いて初めて、貴方の方が正しかった事を悟るだなんて……」

「今さら図々しいですが、お願いします。」

「滅先生。」

俺が落ち着くのを待って、女は一方的な話を再開する。

「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それで構いませんから。」

「ですから……大事なのは経験ではなく、選択。」

「貴方にしか出来ない選択の数々。」

 

俺の頭を優しく、愛おしそうに撫でながらさらに続ける。

 

「責任を負う者について、話した事がありましたね。」

「大人としての、責任と義務。そしてその延長線上にあった、貴方の選択。」

「それが意味する心構えも。」

「……」

 

一呼吸置いて、俺をしっかりと座席に座らせた女は、立ったまま俺に目線を合わせて話す。

──漸く女の顔を見ることが出来た。

美しく整った大人の顔立ちの中に、ほんの少しだけ子供だった頃の面影。

純白の衣装を足元辺りまで赤く染める程の出血を、それが当たり前だと言わんばかりに少女は構わず続ける。

 

「ですから、先生」

「私が信じられる大人である、貴方になら」

「この捩れて歪んだ先の終着点とは、また別の結末を……。」

「そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかる筈です。」

「だから先生、どうか……」

そう少女が続けようとした所で突如、五感全てにノイズが走る。

座席の座り心地以外はノイズに埋め尽くされ、殆ど何も分からなくなった。

少女との別れ──二度目の消滅を、俺は黙って受け入れる。

俺の顔すら分からない、どんな顔をしているのだろう。

迅に笑われた時のような酷い顔をしているのだろう。

そう項垂れる俺の顔をを柔らかく、暖かいモノが包み込む。

──貴方ならきっと大丈夫。

そう言われている様な少女の包容を、振り解けた筈のそれを。

一瞬だけ考えて、止めた。

本来の俺にとって不快なモノな筈のそれは──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────少女の暖かさのお陰か、眠りに落ちるように心地の良いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「……い」

 

「……先生、起きてください。」

「─────────────────────────っ!!!!!!!!!」

 

 

「創成滅先生!!!!!!!!」

 

 

 

──()()()()()()()()()()()()()()()俺を、鋭い声が一気に覚醒させる。

 

「…………………………………………………」

「…………………………………………………」

 

俺を微睡みから引っ張り上げた少女は鋭い目付きで俺を見つめて。

俺はあまりの剣幕とこれまでとの状況の変わり様に面食らって。

二人の間に何とも言い難い、居心地の悪い時間が流れて数十秒。

 

 

「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。」

「中々起きない程熟睡されるとは。」

 

 

痺れを切らしたのか、呆れたような口調にほんの一匙の同情を混ぜた口調で少女は俺の様子を伺う。

 

 

「……夢でも見られていた様ですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください。」

 

今度は先程よりほんの少しだけ甘く、柔らかい口調で話す少女はどこか疲れているように見える。

 

「……すまない、随分と振り回されて疲れていた様だ。」

 

「……忙しい様だが、今の状況を……ゆっくり教えて欲しい。」

 

「承知しました。」

 

飛電或人とその秘書と連絡が取れないばかりか、ゼアとのリンクすら出来ない。

──今の状況を飲み込む為に一呼吸ずつ挟んでくれ、頼む。

そう一方的に伝えると俺が疲れと怒鳴られた事に狼狽えていると判断したのか即座に少女は了承。

今自分達がいる場所の状況をわざわざ自己紹介を挟む形でゆっくり説明を始める事を伝えてくれた。

随分と気の利く少女だと、一連の動きを見て思う。

 

 

「もう一度、改めて今の状況をお伝えします。」

「私は七神リン、学園都市『キヴォトス』の連邦生徒会所属の幹部です。」

「そして貴方はおそらく、私達が呼び出した先生……のようですが。」

「……ああ、推測形でお話したのは、私も先生が此所に来た経緯を良く知らないからです。」

「……」

 

学園都市キヴォトス────学園都市はまだ良い、世界を監視している際に良く聞いた。

だが『キヴォトス』という言葉に……地名に心当たりはない。

『連邦生徒会』という組織も少女が……子供が幹部という重要な地位に納まる組織など聞いた事もない。

飛電もZAIAもそんな事業は計画していない、していれば飛電或人かその秘書が伝えてこなくとも何処かで耳に入る筈だ。

そうして少ない情報を整理して得られたモノは、昔の俺からすれば馬鹿馬鹿しい、そんな事あり得る筈がない。

そう吐き捨てても可笑しくはない、随分と突拍子もない結論だった。

 

──俺はどうやら爆散して消滅せずに、元居た世界から異世界に飛ばされたらしい

大きく()()()()、俺に説明をしてくれていた少女が心配そうに聞いてきた。

 

「あの……大丈夫ですか?」

「……ああ。」

「混乱されてますよね、分かります。」

「こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私に着いてきてください。」

「どうしても、先生にやっていただくてはいけない事があります。」

「学園都市の命運を懸けた大事なこと……という事にしておきましょう。」

俺が落ち着いている事を確認して、少女は一先ず自分に着いてくるように言ってきた。

……訳が分からんが、固まっていても仕様がない。

身体を起こし、()()()()()()()()()()()()

どうやら俺の身体は前の身体(躯体)と違うらしい。()()()()()()()()()()()()()()()が直ぐに記憶に蓋をする。

必要無い記憶だと自分に言い聞かせ、七神リンに着いていきエレベーターから外を見る。

 

 

 

「『キヴォトス』へようこそ、先生。」

「キヴォトスは数千の学園が集まっている巨大な学園都市です。これから先生が働く所でもあります。」

 

 

 

ヘイロー(天使の輪)の浮かぶ青い空の元に無数のビルが乱立する町、学園都市キヴォトス。

此所で俺は何かを選択し、生きていかなくてはいけない。

 

 

『僕らの代わりに生きて欲しい』

『そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかる筈です。』

 

 

 

 

「きっと先生がいらっしゃった所とは色々な事が違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……。」

「でも先生なら、それ程心配しなくても良いでしょう。」

「あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね。」

 

だが、何から始めれば良いのだろう。

この世界も、そこに息づく人間達の事も、俺は何も知らないのだから。

「……それは後でゆっくり説明することにして。」

 

 

 

チン、とエレベーターが到着した合図が鳴る。

……俺にはそれが厄災の合図に思えてならなかったが──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」

 

 

───その予感はどうやら間違っていなかったらしい、大勢の少女(生徒)でロビーが埋め尽くされていた。

「……うん?隣の大人の方は?」

「主席行政官、お待ちしておりました。」

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得の行く回答を要求されています。」

スーツのような服に白い上着を羽織った少女に続いて、大柄な体格にこれまた大きな翼を腰の辺りから生やした少女と、眼鏡を掛けた『風紀委員会』と書かれた腕章を着けた少女が此方に詰め寄ってきた。

全員例外無く大小様々なサイズの銃火器を携えている、特殊部隊もかくやといった様相だ。

……キヴォトスは随分と治安の良くない場所のようだ。これならまだ俺の居た世界の方がマシかもしれない。

 

「……あぁ、面倒な人達に捕まってしまいましたね」

 

その考えを肯定するように七神リンは、この物々しい装いを気にすること無く少女達の応対を始めた。

 

「こんにちは、各学園からわざわざ此所まで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。」

「こんな暇そ……大事な方々が此所を訪ねてきた理由は、良く分かっています。」

「今、学園都市に起きている混乱の責任を問うために、でしょう?」

少し棘のある物言いで至極面倒臭そうに、自らの仕事の邪魔をする少女達に良い放つ。

「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!」

「数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

「連邦矯正局で停学中の生徒達について、一部が脱出したという情報がありました。」

連邦矯正局、停学中、脱出。普段耳にしない単語の羅列が滅を襲う。

……開始数分で滅のキヴォトスに対する信頼度がみるみる内に減少する、そろそろ底を突き抜けそうだ。

 

「スケバンの様な少女達が登校中のうちの生徒達を襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています。」

「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」

「……」

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ合わせて!」

「……」

「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言うと、行方不明になりました。」

 

ロビーがざわめきに包まれる、噂、憶測が飛び交い、俄に騒がしくなって行く。

──長い一日になりそうだ。半分諦めの混じった俺の呟きは無数の声によって直ぐにかき消された。

 




プロローグはすぐに終わる筈、……と良いなあ。
1話丸々滅の心情描写に使ってしまったのでシャーレの活動開始までは何とかせねば。
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