Blue Vast Archive 01   作:ススムシ

3 / 3
残念だったな、トリックだよ(アビドス編)


P-03

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────『シャーレ』奪還から数日後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

通勤・通学の人々──ロボット時々犬──でごった返す車内。

これから向かう場所を簡単なパンフレットで軽く復習しておく。

初めて訪れる場所、俺の知らない世界。

 

ごうっ、という音が途切れる音と共に車内に朝日が差し込む、長く続いていたトンネルを漸く抜けたらしい。

キヴォトスの広さを実感しながら、パンフレットを閉じて振り向く。

朝の柔らかな日の光に包まれる学園──目的の場所が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミレニアムサイエンススクール、通称ミレニアム。

他二つの学園の様に長い歴史を持つわけでは無いが、この学園にしかない特色を持つ新興の学園だ。

 

 

 

 

『ミレニアムは【千年難題】と呼ばれる7つの難題に立ち向かう研究者達の集まりから始まりました。』

 

『【千年難題】に取り組む過程で、無数の実験・検証を経て幾つもの研究機関が誕生。』

 

『その機関達を纏め上げ、現在のミレニアムサイエンススクールの形になりました。』

 

 

────駅に置かれたパンフレットより

 

 

 

始まりはとある問題を解決する為に集まった研究者達の小さな集まりだったが、その過程で多数の研究者が集まり無数の機関が設立、それらを纏め上げ現在の姿になったと言われている。

勿論今もその問題の検証も続けており新技術の研究や開発もその一環。

特に科学技術に力を入れており、キヴォトスにおける最先端技術の殆どがここミレニアムの研究開発によってもたらされ、恩恵を受けている。

その為か他の学園に匹敵する程影響力が高く、今ではキヴォトスにおける三大学園の一つとして名を連ねている。

── 飛電やZAIA(元の世界における最先端の技術)に並ぶ力を持つこの学園ならば助けになってくれる筈。

これからのゼロワン運用に置いて、複数の障害を解決する為、俺はここミレニアムへと訪れていた。

「……全てが新しいな、この学園は。」

モノレールの車窓から見た景色は、人類(かつて居た世界の)が思い描いた未来都市その物だった。

整理された区画に並ぶビルに、発電用の風車やソーラーパネル。

整備された人工の草地でどこかの部活が二足歩行型のロボットの歩行実験を行っている。

聳え立つ巨大なタワーを中心に広がる広大な学園都市が俺を出迎えていた。

此処を初めて訪れる者なら、期待に胸を膨らませるであろう景色を、

「…………」

滅はどこか悲しげな面持ちで見つめていた。

 

 

 

「……さて。」

モノレールを降り、人々の間を縫う様に改札口へと向かう。

事前の連絡通りなら既に生徒の一人が迎えに来ている筈だ。

改札を通り、辺りを見回す。

……数名の生徒を除いて、立ち止まる者は居ない。

あっという間に駅前から人々が去っていく、迎えの生徒はまだ来ていないらしく、俺の方へ向かって来る様な気配は無い。

連絡を取ろうと端末を取り出すとメールが一通届いている事に気がついた。

メッセージを開くと『とある理由で少し遅れる』との連絡がモノレール乗車中に入っている。

景色に見とれて見逃して居たらしい、……俺らしくない失敗だ。

 

メールに従って待つこと5分、タイヤがアスファルトを滑る甲高い音と共に何かがこちらに走ってくる。

近未来的な乗り物(車だろうか)に乗って 今回用がある部活の生徒が現れた。

「初めまして先生。エンジニア部の部長、白石ウタハだ。」

車が停車しない内に後部座席のドアが開かれ、一人の少女が飛び出すように現れる。

紫色の長髪に鋭い目の整った顔の少女、連絡を取っていたミレニアムの部活の一つ。

──エンジニア部の部長 白石ウタハ。

自己紹介もそこそこに、ウタハに車内に引きずり込まれると同時に車が発進する。

到着早々即発車とは……随分と楽しみにしていたようだ。

浮足立つ車内の様子を、座席とウタハに挟まれつつ感じる。

エンジニア部。今回俺の所望する物を作って貰うことになった部活で、主に武器の制作・修理を行う部活だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────遡ること一日前、俺は幾つかの問題に直面していた

 

 

 

ゼロワンが戦闘で使用する武装や装備が無いのだ。

 

 

ゼロワンには本来、本体の戦闘を補佐する武装とバイクが存在する。

アタッシュカリバーを始めとして、アタッシュショットガン、アタッシュアロー等の武装(アタッシュウェポン)

逃走する目標の追跡を行う小回りの効くバイクに、戦闘に使用出来て救命も行える巨大装備。

勿論それらを使用せずに高速戦闘や移動に使える形態は存在する。

だが生身で移動及び簡単な戦闘を行う場合、変身せずに使用できるバイクや武装が必ず必要になる。

巨大装備も瓦礫や戦車の残骸の撤去や、変形させればジェット機の様に高速で長距離の移動が可能になる。

だが飛電の様に企業のバックアップや準備は無い、勿論一人でそれらを製造出来る手段も無く。

途方に暮れていた時、アロナがとある提案をして来た。

 

 

『ミレニアムで一番武器に関して技術力のあるエンジニア部なら可能かも知れません』と。

 

 

すぐに連絡を取り、作って欲しい武装とその理由を話すと

 

 

『明日こちらに来てくれると約束してくれればすぐに取りかかろう。』

 

 

とあっさり快諾してくれた。

……妙に興奮気味だったのが気になったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういう経緯で俺は此処(ミレニアムサイエンススクール)に居る。

 

 

 

 

「いきなり引き寄せてすまなかったね、すぐにでも回収したかったんだ」

あの後何かから逃げるようにジグザグに、時に地下に潜り。

高速らしき道路に乗ってから、何処かへ向かう車内でウタハが漸く俺の上から体をどける。

 

「回収……?」

 

「うん、メイド部から逃げる為にね」

隠した意味は無くなってしまったけれど、と一度後ろを確認し前に向き直る。

バックミラー越しに後ろを確認する、装甲車の運転席と助手席に一人ずつ、側面に捕まる形で二人。

メイド服を着た少女達の姿が見えた、側面の二人は今にも飛びかかりそうだ。

助手席に座る少女と側面右側の少女、見覚えがあった。

───シャーレからずっと俺の後をつけてきた少女達だ。

 

「……他の少女達が合流した理由は?」

尾行されていた事実を暗に伝え、ウタハにメイド部と呼ぶ少女達に追われる理由を聞く。

「……私達は技術を生み出すと同時に問題を起こす事も多くてね」

キヴォトス一のスーパーコンピューターを起動しようとしてミレニアムの電源を落としたり、自立稼働する戦車を作れば暴走して手が付けられなくなったり。

そして今日も試作したレールガンの射撃テストでミレニアムタワーに穴を開けたばかりだと。

……聞けば聞く程頭の痛くなる話だ。

どうしてそんな物ばかり作るのか、という問いにウタハ当人は技術者魂かな、と軽く返す。

何らかの武器や機械を作成し、騒ぎを起こす。

ミレニアムで一番の技術者集団と同時に学園一の問題児集団。

キヴォトスに毒されたかと、噂を詳しく調べなかったことを悔やんだ。

 

「そして先生は最近出来たばかりの良く分からない組織の顧問だ」

「そんな人物が問題児に拐われた、となれば追いかけられるのは必然だろう」

ウタハは俺と同様冷静に努めながら、追ってくる相手を解説する。

「Cleaning&Clearing、略称C&C、通称メイド部。凄腕のエージェント集団」

「彼女達に襲撃された組織は数知れず、綺麗さっぱり『掃除』されると専らの評判。」

 

その言葉と同時に側面の二人が車に飛び乗って来た。

「やっほー先生、さっき振り!」

 

「……ああ。」

 

 

 

窓を開け、冷静に返す。楽しそうに笑う少女に敵意は見えなかった。

ウタハの方に飛び乗った少女も同様だ。

武器を下ろし、此方を見つめているだけだ。

さっき一目見ただけの俺を『先生』と呼んでいることから、シャーレ奪還の一件は既にキヴォトス中に伝わって居るらしい。

……あれだけ派手にやれば無理もないが。

「……何か用か。」

「うーんとね、車が走って来たと思ったら先生の前で止まったでしょ?いきなり連れ去られた様に見えたから追ってきたの。」

 

 

「……それだけか?」

「それだけ!」

 

そう言って少女はまた楽しそうに笑う。裏の無い笑顔で。

小柄な少女の方を向き、此処に来た要件を手短に伝える。

 

「エンジニア部に護身用の武器について用があっただけだ。」

「……分かった、邪魔したな。」

 

嘘は言って居ない、が核心(ゼロワン)には触れて居ない。

これ以上は時間の無駄だと察したのか、短く返し少女は装甲車に飛び乗り中に入っていった。

もう攻撃の意思は無いらしく、運転手の少女はそのままミレニアムに戻る車線に変更。

金髪の少女は別れを惜しみながら、去り行く車に飛び乗って分岐点まで手を振っていた。

「驚いたね、メイド部相手に一歩も引かないなんて。」

メイド部の装甲車が見えなくなってから暫くして、ウタハが口を開く。

「……腹の探り合いは慣れている。」

窓を閉めつつ、冷静に返す。

ウタハ当人はそうでは無かったようで、自分から話しかける俺を見て冷や汗をかいたようだ。

成る程、評判通りの先生だ。彼女はそう納得し、呟く。

一呼吸挟んで、ゼロワンの装備について話し始める。

 

「装備に関してなんだが、簡単な物は既に製作済みだ。」

タブレットを操作し、出来た物の写真を見せる。

確かにアタッシュカリバーを始めとした武装類が完成した状態で写っていた。

バイクと巨大装備も殆どが完成しているらしく、彼女曰く部員達の興が乗ったとの事で一晩中部室に籠っていたとの事。

「残すは先生の言っていたドライバーに追加する装備位だね。これに関しては──」

……部室に着くまで、ウタハの話が止まることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よし、後はヴェリタスに任せるだけだ。」

コードに繋がれた作成途中の装備から離れ、ウタハが休憩室に戻って来た。

コーヒーを淹れ、俺の前に置く。

追加装備はヴェリタス──ソフトウェアについてはエンジニア部よりも一日の長が有る──に一切の情報を口外しない事を条件に仕上げを任せ、それを待つのみとなった。

──完成するのは何時になるか分からないけどね。

ウタハによるとヴェリタスの部員達はあまり纏まりが無いらしく、部長も何らかの活動に引き抜かれている為、直ぐに取りかかる事は無いだろうとの事。

 

「それまでは今ある物で対処するだけだ。」

 

完成している武器やバイク、巨大装備を見て少しだけ安堵する。

これだけ有れば生徒の力に頼ること無く、不良や荒くれ者を撃退させることが出来る上、駅やバス停に行かずとも移動できる。

 

……たとえ善良な大人の手の届かない、砂漠の向こう側でも。

一通の手紙を取り出す、私達の助けになって欲しい、アビドスという辺境(見捨てられた土地)から届いた切実な願い。

……休憩後に控えている装備の最終確認を終えれば、既に纏めている荷物を積んで直ぐに向かうつもりだ。

手紙を懐にしまう俺を見て、ウタハは静かに口を開く。

 

「……急がなければいけない様だし始めようか、先生。」

そう促され席を立とうとした時、端末のメッセージアプリに通知が届く。

一体誰からの連絡だろうか。

 

 

 

ウタハに一言入れ、メッセージアプリ──モモトークを開く。

 

『先生、お久しぶりです。』

 

 

 

 

『少し聞きたい事があるのですが、今 お時間頂けますか?』

 

 

 

 

 

相手は……早瀬ユウカ。シャーレ奪還の際、手助けしてくれた(無理矢理巻き込む形で)生徒だ。

何の用事だろうかと考えて、すぐに思い至った。

タワーの制御権を回復し、ゼロワンの運用に目処が立った後。

弾薬費や無理矢理巻き込んでしまった事への迷惑料として少女達に報酬を少し多めに払っていたことを思い出す。

連絡してきたのがユウカだけなのは、彼女がミレニアムの委員会の会計担当で、確認の為に(普段のからの癖)だろう。

──一気に詰め寄り、俺に淡々と言葉攻めをかける姿を何故か想像してしまった。

大人としてはすぐに返信するべきなのだろう。

……が、何故か俺の心は『安易に出てはならない』と警鐘を鳴らしている。

一度見なかった事にするかと考えたが、それは先生(大人)として相応しい行いではない。

……正直に言うとしよう

そこまで必要無い筈の覚悟を決め、返信する。

 

『モモトークでなら可能だ。』

『用事は何だ。』

 

返信して数秒、すぐに既読が付く。

 

 

『報酬の明細を見てすぐに気付いたのですが……』

 

『賞与の額が他の子と比べても明らかに大きいんです。』

『計算、間違えていませんか?』

 

 

成る程、用事はそれか。

シャーレ奪還で縦横無尽の大活躍──勿論他の少女達も活躍したが──を見せた為、賞与金として多めに渡したのだが。

どうやらそれがユウカには計算を間違えていると思われたらしい。

他の少女達の報酬と比べて多いという事をわざわざ連絡を入れてくるとは、几帳面な性格なのだろう。

丁寧な文面から普段の仕事振りが見て取れる。

 

 

『早瀬ユウカ、お前はシャーレ奪還の際、先陣を切ってくれた』

 

『そのお蔭でシャーレも、タワーの制御権も取り戻せた』

 

『その賞与は正当な物だ、そのまま受け取ってくれて構わない』

 

『個人的にはもっと多くしても良いぐらいだ』

 

『予算なら気にするな、俺の好きにして良いとリンから聞いている』

 

 

 

 

そうメッセージを返し、端末をしまう。

「……相手は誰だったんだい先生?」

「早瀬ユウカだ。報酬金が多いと連絡して来た」

「成る程、先生が渋い顔をしているのも納得だ」

彼女──早瀬ユウカが資金の使い道に神経質なのはミレニアムで誰もが知っている事だからね。

生徒会(セミナー)の冷酷な算術使い』を相手に研究資金を確保する事については私達も手を焼いているよ。

『どれだけガラクタを作れば気が済むのか』なんて言われるのは自分達に限った事じゃないからね、これまで何千回聞いた事か。

やれやれと言った様子でウタハは呟く。

……自業自得では無いのか。喉から出かかったがなんとか堪えた。

エンジニア部や他の部活から計上される予算案や材料費に頭を抱える姿が容易に想像出来る。

 

ピコン。

 

 

工房の機械音が微かに聞こえる部屋に、モモトークの特徴的な通知音が響く。

端末を取り出す間も通知音は止まず、アプリを開く頃には10件を軽く越えていた。

相手は…………全て早瀬ユウカ。

メッセージを見る限り、随分と怒らせてしまったらしい。

今何処にいる。

そんなメッセージの羅列だ。

エンジニア部の部室に居る、と返信すると直ぐに既読が付き、

『今からそちらに向かいますから!』

その連絡を最後に、ユウカからのメッセージはパタリと止んだ。

 

「……彼女は随分と君にご執心な様だ。」

そのやり取りを後ろから見ていたウタハが、同情するよと言った風に工房へと戻って行く。

まだ装備のテストが終わっていない、と言うと。

「構わないよ、もっと時間が欲しかった所だからね。」

「あんなに凄いモノを作らせてくれているんだ。幾らでも此処を使ってくれて構わないよ。」

「……ああそうだ、生憎と紅茶は切らしていてね、コーヒならそこだ。砂糖も同じ所にある。」

そう言って彼女は面倒事は御免だと言わんばかりに、さっさと休憩室を出ていった。

……空調の音が嫌に煩く聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私は何も先生に怒ってる訳じゃありません。」

10分後、エンジニア部の部室に着いたユウカの言葉は俺の想像していた言葉とは違うものだった。

怒りの言葉でないのなら、一体何だと言うのだろう。

……言葉を待つ。一つ、また一つと彼女は言葉にしていく。

端的に纏めると生徒への報酬等、予算の分配を全て俺一人で行わなければいけない、そんなシャーレの業務実態に対して怒っているとの事らしい。

……アロナの補佐が有るからと、そう言うものだと思い何も言わなかったのが不味かったようだ。

次からは私も手伝います、とユウカが言う。

他の学園同様広大な自治区を持つ学園の生徒会、その経理担当。

先程のウタハの発言をそのまま信じるなら、通常の仕事以外にもミレニアムに通う問題児達が日々起こしているであろう、多数の問題を抱えている筈だ。

シャーレの仕事を手伝うだけの余裕は無いだろう。

自分の仕事は良いのかと聞くと、私一人で回してる訳じゃありませんし、それに生徒会に所属しているだけあって優秀な子達ばかりですから。と前置きして

 

「……無理を押して倒れられる方が私としては辛いですから。」

……と自分の事よりも俺の体を気にしている様だった。

「……俺はお前の家族ではない。それにお前は自分の仕事が有るだろう。」

いくら俺が重要な立場の人間だとしても、赤の他人である俺を気にする必要は無いだろう。

自分の仕事を優先しろ、俺の事は気にしなくても良い、と主張するが彼女は引き下がってくれない。

それどころか彼女の厚意を切り捨て、シャーレの仕事から遠ざけようとする俺を『先生は自分の事を心配してくれている』と受け取り、噛み締める様に呟く。

──先生は立派な人ですね。優しげなユウカの言葉が俺の胸に突き刺さる。

 

 

まただ、と俺は思う。

先生だから、と俺の言葉を信じて疑わない少女達。

今朝会ったメイド部の面々も、今も部室で作業を行っているエンジニア部も、目の前にいる早瀬ユウカという少女も。

たった一言で、(罪人)を信用してくれる。

此処に来てから何度も感じた、慣れない感情。

今の俺にはとても耐えられないモノが、溢れ出さんと渦巻いている。

 

 

「……それで、先生はどうして此処にいるんですか?」

「……訳を話そう、着いてこい。」

 

 

ユウカ相手では隠し通すのも難しいだろう、そう考えて部室へと入っていく。

人一人が入れるだけの小さな扉を開いて中に入り、ライトを付ける。

少しの間を置いて、中に鎮座していた物が姿を現した。

 

「……これが今日此処に居る理由だ。」

「…………何ですか、これ。」

完成したゼロワンの大型装備であるパワードスーツを見せる。

見たことの無いモノを前にして、絞り出すような声でユウカは俺に説明を求めた。

──これは何だと。

ユウカが見つめる中、機械のように淡々と目の前の物とそれが必要な理由を説明する。

「……仮面ライダーゼロワン。今俺が必要としている力を万全な状態で使える様に、今日エンジニア部に来ている。」

 

「……どうしてですか。」

何故その力が必要なんですか、そう彼女は俺に聞く。

 

「アビドスでの活動に必要だからだ。」

 

アビドス高等学校。

キヴォトスの砂漠に埋もれかけた、廃校寸前の高校。

既に届いている要請から見て、校舎は暴力組織に狙われ今にも奪われるかも知れない。

連邦生徒会は大量の仕事に忙殺されて動けず、頼りになる筈の大人は耳を貸さない。

助けられる大人は、俺しかいない。

選択の余地は無いとユウカに向けて呟く。

 

工房を通り抜け外へと行くと、ウタハ達エンジニア部の面々が装備の最終確認の準備を行っていた。

小型のロボットから大型の戦車、二足歩行型の顔部分が大砲になっているロボットまで、ありとあらゆる兵器が集められている。

 

「……おや、君も見学に来たのか。」

「……何よこれ、戦争でも始めるつもりなの!?」

 

おおよそ学園の部活に似つかわしくない物ばかり集めて何を始めるつもりなのかと、ユウカがウタハへと詰め寄る。

「……言っておくが、これを用意させたのは俺だ」

 

ドライバーを手に持ち、ユウカ達の元へと歩いていく。

何の事だかさっぱり分からない、と視線を送るユウカを置いて所定の位置に付く。

 

《ゼロワンドライバー!》

 

 

「……ユウカ、お前は何故俺の事を気に掛ける。」

 

ドライバーにプログライズキーを翳し、ドライバーを返信待機状態へと移行させる。

俺の問いに対し、親に叱られる子供のように。

掠れた声で、少女は答えを返す。

 

 

 

「……先生だからです」

 

「……理由にならん」

 

 

 

 

 

 

突き放すように姿を変え、エンジニア部が用意した仮想敵へ切りかかる。

全てを破壊するのに、5分もかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理由と呼べる理由は、正直言って無い。

ただ、あの時私達を心配してくれた。

只それだけ、それだけで私は『この人の力になりたい』と思った。

……思ってしまった。

どうにかあの人の力になりたい、そう思ってあの人に黙ってシャーレの仕事を調べた。

「……見つけた。」

 

シャーレの仕事量、そして報償金の額。

報酬に関してはあっさり躱されてしまったけれど。

それでも仕事は手伝える。

そう、思ったのに。

 

『……俺はお前の家族ではない。』

 

突き放されて、食い下がったけれど。

 

 

 

 

 

あの人はたった一人で飛び立つことを選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うーんスランプ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。