IS~白い閃光~ プロローグ1
プロローグ 1 ラインアーク攻防戦
ここで企業間の経済戦争の中で大きなターニングポイントとなる戦闘が行われようとしていた。
企業連が反体制勢力であるラインアークの唯一の拠りどころであり、最大の戦力でもある
ホワイト・グリントへの本格的な攻撃を決定したのである。
このミッションには、カラードランク1オッツダルヴァに加え、ランク17のCUBEまで
投入するというところが企業連が本気になった証拠だ。
これでは、いくらホワイト・グリントがトップクラスの実力を持つネクストでも
十全な戦力にならないことは火を見るより明らかである。
しかし、ホワイト・グリントを駆る彼はそれでも戦場へ向かった。
◆
海上都市ラインアークの近くに二つの影があった。一つはオッツダルヴァが搭乗リンクス
であるステイシスで、もう一つはCUBEが搭乗リンクスであるフラジールだ。
「政治屋どもリベルタリア気取りも今日までだな、貴様らには水底が似合いだ
いけるな? フラジール」
「はい、そのつもりです」
辛辣な言葉を吐いた男がオッツダルヴァで、淡泊に答えた男がCUBEだ。
「フン・・・それはよかった。じゃ、いこうか」
その答えに最初からどうでもよかったというように返すと、オッツダルヴァは
ステイシスにOBを発動させた。
それに続いてCUBEもフラジールにOBを発動させる。
そして、ラインアークの主権領域に差し掛かったと同時に通信が入った。
◆
「ラインアークに対し、企業連の本格的な攻撃が開始されようとしています。
この攻撃にはカラードランク1のステイシスに加え、ランク17のフラジールが
投入されるという情報が入っています。この情報が確かなら
いくらホワイト・グリントとアナタでも厳しい戦闘になると予想されます。
そこで我々は、ストレイドにラインアーク防衛を依頼しました。
カラードランクは31と低いですが、今までの実績を見る限り腕は確かです。
アナタはストレイドと協働して敵ネクストの排除にあたって下さい。
それでも厳しい状況には変わりないので、十分に注意して下さい」
彼はオペレーターであるフィオナ・イェルネフェルトの通信を聞きながら以前あった
ラインアーク襲撃の事を思い出していた。
彼自身はその戦場にいなかったが、記録映像でその戦闘を見たのである。
(ストレイドというとアイツか、確かにアイツの腕なら僚機として十分だが、
今回はそれでも厳しいな)
「ちゃんと話を聞いてるんですか?
アナタが撃墜されればラインアークは最大の戦力を失い崩壊することになるでしょう。
この戦闘にラインアークの命運がかかっているんです、集中して下さい、
それに何か嫌な予感がします、気を付けて・・・」
ブリーフィングの途中で上の空だったのがいけなかったのかフィオナから注意される。
彼は「わかった」と短く答えると考えを中断し気持ちを戦闘に向け切り替え、
ブリーフィングルームから退出して自分の愛機へと向かう。
デッキに到着するとそこに居る整備士と軽く言葉を交わしネクストに乗り込む。
コクピット内で愛機の準備が整ったことを確認するといつもと同じようにフィオナに通信を入れた。
「ホワイト・グリント出撃する」
そう言うと、ジェネレーターとブースタに火をつけ、OBを発動させて戦場に向かった。
◆
僚機のストレイドと合流し敵ネクストがいると思われる地点へ向かうその道中で
フィオナがストレイドに向け通信を開いた。
「ホワイト・グリントオペレーター、フィオナ・イェルネフェルトです、
ご協力に感謝します、共に幸運を」
「・・・・・・・」
中々返答がないので何か問題でもあるのかと考えているとストレイドのオペレーターから通信が入る。
「すまないな、ソイツはあまり他人と話したがらないんだ、気に障ったなら謝る」
それを聞いて彼は、自分もそんなに他人とよく話すような性格ではないが
このリンクスよりはマシだと思った。
「いえ大丈夫です、気にしないで下さい」
そう言い終えると、すぐにフィオナは彼に通信を入れた。
「まもなく戦闘領域に入ります。戦闘に突入する前に敵ネクストに対し最終勧告を出します、
それでも敵ネクストに交戦の意志が見られるようなら速やかにこれを排除して下さい」
「了解」
「・・・・・・」
彼はフィオナの通信に短く返すと戦闘領域に突入して行った。
ホワイト・グリントとストレイドが戦闘領域に突入すると、すぐにレーダーが二つのネクストを捉えた。それに対しフィオナがオープン回線で呼びかける。
「こちらホワイト・グリント、オペレーターです。
貴方達は、ラインアークの主権領域を侵犯しています、速やかに退去して下さい。
さもなければ、実力で排除します」
敵ネクストはこの問いかけに対しすぐに返答をかえしてきた。
「フン、フィオナ・イェルネフェルトか。アナトリア失陥の元凶が、何を偉そうに」
言葉を吐くのと同時に、オッツダルヴァはステイシスにOBを発動させこちらに向かってくる。
続いてCUBEもフラジールにOBを発動させる。
「・・・・・どうしても、戦うしかないのですね」
その行動を見てフィオナは呟いた。
フィオナの言葉を聞きストレイドのオペレーターが指示を出す。
「ミッション開始。ホワイト・グリントと共同し、企業のネクストを撃破する。
敵ネクスト、ステイシスおよびフラジールだ。
ステイシス・・・ランク1、オッツダルヴァか、企業連も本気ということだな・・・」
その通信を聞き終わると同時に、ホワイト・グリントとストレイドもOBを発動させ
敵ネクストの迎撃に向かう。
時速1000㎞以上で飛行する四機のネクストは急激に互いの距離を詰め、すれ違うと同時に
“ドヒャァ!”と音がし、四機は示し合わせたようにQBを使い急速にターンした。
その時の速度は時速2000kmを超えるもので常人では反応できる速度ではないが、リンクスである彼らは違った。
ホワイト・グリントはターンしている一瞬の間に両腕のライフルを牽制のために撃つ。
ステイシスとフラジールはQBをもう一度使い回避し、すぐさまステイシスはレーザーバズーカで
フラジールはマシンガンで応戦する。
それをホワイト・グリント、ストレイドの両機は火力の高いレーザーバズーカを避けることに集中しマシンガンのダメージは無視した。
そして回避に成功した両機はラインアークへの被害を避けるため海上に移動する。
「ホワイト・グリント・・・大袈裟な伝説も今日で終わりだ、進化の現実ってやつを教えてやる」
オッツダルヴァはそう言うとステイシスをホワイト・グリントへ向け海上に出た。
ストレイドは何とか2対1の状況に持ち込もうと考え、ステイシスを追おうとするが
その意思を理解したフラジールによって阻まれてしまう。
これによりホワイト・グリントはステイシスとの1対1を強いられてしまった。
この状況にストレイドは焦りホワイト・グリントの援護に向かおうとするが、
フラジールがぴったり自分の後ろに張り付いてきて思うように行動できない。
このことが益々ストレイドを焦らせていく。
それを見かねてか、オペレーターから通信が入った。
「何を焦っているんだ、目の前の敵に集中しろ。心配するなホワイト・グリントならたとえ
ランク1が相手だろうと遅れはとらん」
通信を聞きホワイト・グリントとステイシスが戦闘をしている空域に目をやる。
そこには凄まじい操縦技術で高機動戦を行う二機の姿があった。
常人には認識できない速度で戦闘を行う二機の姿は見惚れるくらいだった。
すると、突然ストレイドのコクピット内に至近弾を知らせる警告音が鳴り響く。
ストレイドのリンクスは戦闘中に一瞬でも動きを止めていたことに愕然とし、肝を冷やした。
◆
ホワイト・グリントは腕部兵装のBFFライフル、背部兵装の分裂ミサイルを使い分け
ステイシスを攻撃するが、何度もQBを使用して回避される。
もちろんただ回避するだけでなく、突撃型ライフル、レーザーバズーカの射撃も織り交ぜている。
ホワイト・グリントも二段QBを使用して回避していくが、徐々に回避できない攻撃が現れ始めホワイト・グリントが押され始めた。
(さすがにランク1のリンクスは手強い、それに機動戦は軽量二脚のステイシスに分があるか)
彼は戦闘が始まる前から軽量二脚のステイシスと中量二脚のホワイト・グリントでは
機動性で差が出るのは分かりきっていた。
だから二段QBを使用し差を埋めようとしていたのだが、オッツダルヴァも二段QBを使い始めた事によってそれは意味をなさなくなってしまった。
二段QBはそう簡単にできる操縦技術ではないのだが、それを当たり前のように扱える事から
彼とオッツダルヴァの操縦能力の高さがうかがえる。
(このままじゃジリ貧か、それなら・・・・・)
彼は何かを決意するとOBを発動させステイシスとの距離を詰め始めた。
OBの使用やステイシスからの攻撃による被弾でPAとAPが減少していくが
そんなことは気にも留めず接近する。
ホワイト・グリントに緑の光が集束されていくのを見て接近の意図を理解したステイシスは攻撃をやめ離脱を試みるが、既に白い光が膨張し視界を埋めようとしていた。
次の瞬間、視界を白い光が埋め尽くした。ホワイト・グリントがAAを使用したのである。
しかし、二機の戦闘に決着はついていなかった。
ステイシスはギリギリで離脱に成功し軽微の損傷を負っただけだったのである。
(やはりこの程度じゃ墜とせないか、だがそれは予想通りだ)
彼は離脱したステイシスをロックし、ライフルのトリガーを引いた。
AAの衝撃により体勢を崩していたステイシスにそれは吸い込まれるように直撃する。
その射撃によるダメージは大したものではなかったが打ち所が悪かった。
「メインブースターがイカれただと !狙ったか、ホワイト・グリント!」
そう、彼はステイシスのメインブースターを狙い打ったのだ。
メインブースターを失ったネクストが飛行を続けていられる筈もなく下降を始める。
そしてオッツダルヴァにとって最悪だったことはここが海上だということだ。
「よりによって海上で・・・クッ、ダメだ、飛べん!」
相当な重量のネクストが水に浮いてられる筈もなく海に沈み、それは当然コクピットにも及ぶ。
「・・・浸水だと? 馬鹿な、これが私の最期と言うか! 認めん、認められるか、こんなこと!」
オッツダルヴァは叫びながら、ステイシスと共に海の底へと落ちていった。
(なんとかうまくいったか・・・あとはフラジールを墜とすだけだな)
彼は少し安堵し、フラジールと戦闘を行っているストレイドの援護に向かう。
ストレイドと合流しフラジールに攻撃する。
フラジールもマシンガンとチェインガンで反撃してくるが、どの武器も近距離で喰らわなければ
問題は無いのでストレイドとホワイト・グリントは中~遠距離を保ち攻撃を続ける。
このままフラジールを撃墜して戦闘が終了すると思っているといきなりホワイト・グリントに異常が発生した。
機体の制御がきかなくなったのだ。
(操縦不能!? ダメージを貰い過ぎたのか?)
ステイシスに接近する際にPAで軽減できなかったダメージが大きかったのだ。
だから脅威にならない筈のマシンガンを数発喰らっただけで異常が発生してしまった。
コントロールがきかなくなったホワイト・グリントは先程のステイシスと同じように海に沈む。
浸水が始まりコクピットの中には警告音が鳴り響き、遂にコクピットも浸水を始めた。
そして、コクピット内は完全に水に浸かる。
「ホワイト・グリント、戦闘不能です・・・彼はもう、あなたの助けになれません、ごめんなさい」
彼は視界が黒く染まり意識が薄らいでゆくなかで、フィオナの声を聞いたような気がした・・・
初投稿です!!
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