数年前にオレの勧めで心弥と共に運営、展開する“ コークアイ”というホームページを作成し、お悩み相談から、お手伝い、ヘルプの依頼等を請負う(お小遣い位の依頼料を要相談の上で頂戴する場合もある)サイトに仕上がったのだが、心弥曰く
「少年の探偵ごっこ、探検隊ごっこの延長戦」という。…オレは複雑な心持ちだ。
複雑な心持ちになる理由というのが、ホームページにはオレと心弥のプロフィールを公開しており、心弥の母の謎の手紙(読んだが、当事者でないオレには謎ばかりだ!)にある『 鳶色の眼』をした誰かが、心弥のプロフィールを見て接触して来るかも知れない。と、淡い期待を抱いている。…これが実のところホームページ開設の主たる目的なのだが…。
何でも屋宜しく、ちょっとしたお悩み相談や手軽に数合わせの要員に、ちょっとした小間使いに出来ると結構ヒットしている。 全然、思惑通りではない。
そんな中。数日前にホームページに持ち込まれた久々の有償での依頼のメールが飛び込んできた。
『匿名︰ちょっと気になる事があるので…
メール受信日︰○月○日 17:38
先日、夫婦水入らず、国内旅行でもしようとネットで調べていましたら、何か奇妙な旅行会社がヒットしまして…。
とてつもなく安価なのですが、内容が不気味で…。
娘に相談した所、娘が貴サイトを見つけ、メールをした所存です。
何でもその旅行ツアー、誰ぞやの埋蔵金だか遺産金だかの在りかを暴こうというのがテーマだ様で、見つけた者にはその金を全額受け渡すという事です。
気味が悪いのはそれを運営している会社なんですが、その会社のHPにとんでもない文字を見かけまして…。集団自殺だとか…。何だか物騒でして。どんな集団なのか突き止めて頂きたいのです。
どうか、老いぼれの我が儘をお許し下さい。』
メールには、その問題のサイトのURLが添付されていた。
さっそく添付されていたURLからサイトへ飛んだのだが、ページは見当たらない。
これが、嘘ではないとしたらそのページは裏サイトだった可能性がある。有償とはいえ、これは度を越してるように思えたが、自身の今月の支出と供給の関係が、著しくバランスを欠いていたことが原因になり、受け持つ事となる。
その後も該当する様なページが無いか探したが、それらしいページは無かった。
話を終えて、しばらく心弥の眼を覗き見る。
光の加減なのか、今日は綺麗な青色の中心にうっすらと赤色が見える。いつ見ても、ガラス玉の様で瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
その瞳はオレを見ているようで視界にオレを捕えてはいない。
伏せ目がちだった瞳が、不意に不安に揺れ、オレなど見えないその眼で、ぴたりと視線を合わせてきた…ような気がした。
「何か、嫌な感じがする…。」
心弥は疑心を漠然と感じての発言なのか、それとも未来視による、そう遠くない事実を見たのかは言わなかった。
だが、物事は確かめ、行動してみなければ分からないものだ。
「よし、さっそく行ってみるか!」
「…どうやって行くのさ。幸いメールに詳しく場所を指定してくれているみたいだけど。」
「山岳クラブの連中に頼んで近くまで送ってもらうのさ。
確か、クラブの知り合いが、この近辺の山に登りに行くとか行かないとか聞いたからな。」
「テル、君のその“自分の都合の良い様に解釈する”悪癖…、直した方が良い。相手にいい迷惑だ。」
小言を漏らす心弥を余所に、椅子から立ち上がり、二人で部屋を後にした。