コークアイ   作:山背としや

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[孤島の山荘と困難]

あぜ道を進んでいくと程無くして橋が掛かっていてそれを渡り、目には輪郭はまだ不明瞭だったが、建築物の姿が映る。

 

進むごとにその建物は次第に輪郭をはっきりとさせていき、その建物が鴉間山荘だと疑い様が無い位、建物の周りに烏、烏、烏。

 

屋敷を囲う柵の先端にも烏を型どった像が付いていて、烏のオンパレードといった出で立ちに肝を冷やした。

 

真っ白な建物とは対称的に辺りの森は暗く沈んでいて、それが更にこの建物を浮き立たせて気味が悪い。

 

輝は大きな扉を押してみた。

 

ギイと錆びた鉄が軋む音を立てただけで、重い扉は開こうとしない。

 

横でギイとまた音がする。

 

首を回して確認すると、心弥がいとも簡単に扉を引き開けていた。

 

 

「押して駄目なら引いてみろって言うけど意外と当たるね。」

 

 

輝も押していた柵を手前に引っ張り、眼前の屋敷の玄関口へ並んで歩いていった。

 

扉の前に立った輝達は、扉をノックしてみると、暫くして中からがっちりと髪を固め、場違いなスーツに身を包んだ男が顔を出してきた。

 

 

「あなた達は...? こんな霧の中どうされたんですか?」

 

 

いかにも困った様な表情を作って輝は、前もって考えてきた台詞を口にした。

 

 

「実は…、下山途中で霧が出てきて、道に迷ってしまったんです…。

 

宜しかったら、一晩だけでも、御一緒させてくれませんか?」

 

 

人の良さそうな、スーツのその男は、体を扉の横へ移動させながら、心弥の肩に手を軽く持ってゆき、中へと招いてくれた。

 

 

「それはそれは...。大変でしたね...さぁさぁ、中へどうぞ!」

 

 

容易く潜入に成功したようだ。

 

スーツの男が、何か思案する様に、口元に拳を作り、俯きがちの体勢から、ふと拳を解き、こちらに顔を上げ、ニコリと懐っこそうな表情でこう提案してきた。

 

 

「お会いできたのも何かの縁だ!

 

どうでしょう?お若いお二人も、私達のツアーに参加してみませんか?

 

実は私達はちょっとした宝探しをしていましてね...。」

 

 

やはり、ここで財産探しは行われているようだ。上手くツアーに参加させてもらえるよう取り合い、不審がられる事なく、ツアーにも堂々参加する事となった。

 

そこでツアー客をスーツの男が呼び出し、簡単に紹介してくれた。

 

 

「…こちらが大久保様です。大久保様はご夫妻でこのツアーに参加されていまして、旦那様の勝博様は歴史の先生をなさっています。」

 

 

「宜しく」

 

 

短く二人が言葉を紡ぐ。少しその言葉の中に不信感が混じっている。

 

 

「こちらは熊谷様。お医者様をされていらっしゃいます。」

 

「はっ。子供がしゃしゃり出てきやがって。」

 

 

この人はあからさまに悪意をぶつけてきている。

 

心弥は、初対面に対してもこの下劣な言葉遣いをする医師に対して、心の中だけで悪態をついた。

 

 

「そして、卯野深雪様と...あれ?

 

町田様が見られませんね...?」

 

「…あ、先輩。この山荘に入って、すぐに色々と歩き回ってるみたいで...。」

 

「困りましたねぇ。不用意な行動はこちらとしても困りますので...。

 

夕飯までに戻ると良いんですが...。」

 

「あ。はい。すいません...。」

 

 

卯野と紹介された子が喋り終わるか終わらないかの所で後ろの森の方からドーンと物凄い音がした。暫くしてガラガラと何かがぶつかりあう音。

 

そして、最後にはバチャンと水の音。

 

そういえば、あぜ道に入ってすぐの所で、深い渓谷と地と地を繋ぐ桟橋があった。

 

水の音の正体は橋の下の川だろうか。

 

 

「なんの音だ...?」

 

「橋の方からだ。見に行ってこよう。」

 

 

勝博と紹介された、男が背後に消えていく。

 

その後を、横に居たはずの輝が続いた様で、すぐ近くを空気が素早い動きで動いた。

 

 

「心弥!悪いけど待っててくれ。俺も見てくる!」

 

 

慌ただしく空気が、入ってきたばかりの玄関口へと流れて消えた。

 

 

 

 

先程渡って来たばかりの吊り橋は、深い渓谷に落ちていて、自分達を嘲笑うかの様に烏の群れが喚き立てていた。

 

 

「おいおい、此処を繋ぐ橋はこれしか無ェとか、あの小林とか言うガイドが言ってやがったぞ...。

 

俺達は此処に閉じ込められたんじゃ無いだろうな?」

 

「何か外と通信出来るものも、山の中じゃ圏外だし...困りましたね...。

 

えっと...。大久保さん?でしたよね、オレ、何処か他に下りれそうな所がないか探してみます。」

 

「おう。俺はどうすりゃ良い?戻ってこの事を報告するか?」

 

「そうしてください。出来るだけ皆さんが不安がらないよう言葉を選んで...。」

 

「分かった。なるべく努めるよ。」

 

 

短いやり取りの後、大久保は山荘に戻る道を行き、オレは上流に向かって谷を登ってみた。

 

徐々に獣道もか細くなり、終いには道は途絶えてしまった。道なき道をどんどん上流に向かって進んでみた所、渓谷は繋がることなく、滝にその道を断ち切られてしまった。

 

渡れる場所は上流の方にはなかった。

 

次に輝は、下流に向かってまた元来た道を戻る。

 

吊り橋の所まで来て、辺りは真っ暗になってしまい、これ以上は危険だと判断して一度山荘に戻ることにした。

 

明日、明るくなってから複数で探すのも手だろう。輝は一旦山荘に戻った。

 

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