無人島試験を終えた俺たちは、しばらくの休暇を謳歌していた。
この後には船上試験が控えているが、それを知っている生徒は俺以外にいないため、みな気が緩み切っている。船の上で豪遊しているDクラスを見るとなんだか悲しい気持ちになってくるが、俺も豪遊する側なのでそんな他人事のように言える立場ではない。
無人島試験での圧勝を経て、Dクラス生まれた心の余裕は計り知れないもので、山内や池なんかは特にはっちゃけている。
朝から晩まで船のあっちこっちへ行き、飲んで遊んでたまにナンパして。と、あまり健全とは言えないが、楽しい生活を送っているようだった。
そんなこの高校の過酷さを忘れるような二日間を過ごした次の日。
無人島試験から三日後にそれはやってきた。
「いやあ、食った食った。やっぱあそこのハンバーグは格別だな」
「だとしても食いすぎだろ、山内。あんな量あるのにおかわりとかよ」
「うまいもんいくらでも腹にはいるって。池の方こそ一人前のドリアだけでいいのか?」
「二人前も食えないよ」
俺の前方を歩きながら、先ほどの昼飯の話をする山内と池。高級レストランの料理をタダで食えるということもあって、生徒間で人気のレストランに行った帰り道。高級レストランなら量が少ないのではと思ったが、生徒仕様なのかしっかりと腹を満たせるぐらいの量で、一人前で十分だと俺は思った。が、山内はそう思っていなかったようで、もう一人前ハンバーグを注文して平らげていた。
「お前らどっちもすくねえんだよ。それにもっとがっつりしたもんが食いたいぜ」
「お前は食いすぎだよ。お店の人引いてたぞ」
「あんな量食べたら、俺の体はちきれそう」
オムライス三杯という山内以上の量を平らげた須藤の意見に乗るほど、彼らは愚かではないらしく、どちらからも賛同を得られていないようだ。
山盛りに積まれたオムライスが物の数分でなくなっていく光景は、なかなか爽快感があってよかった。が、見てるだけでおなかがいっぱいになる光景だった。そのせいで大して食べていないのに大盛りのラーメンでも食べた気分だ。
「今度大食い大会でもやろうぜ。勝ったらポイントをもらえるって感じでよ!」
「お前が勝つ未来しか見えないのにやるわけないだろ!!」
「そうだそうだ!俺たちからポイントを巻き上げるのが目的だろ!」
「やるとしたら山内と池でチームでも組まないとな」
もし本当にやるのなら、それぐらいのハンデは必要だろう。
ハンデありでやっても須藤に分がありそうだけど。
「俺たち二人でも無理だろ、こいつに勝つの。斑鳩もチーム組もうぜ!須藤VS俺らでよ!」
「ずるすぎるだろ!三対一っていくらなんでも無理だぜ」
「なんだ須藤、ビビってるのか?」
「なんだと池、てめえ。誰に向かって言ってやがる!」
須藤のヘッドロックが池に決まろうとしたその時。
携帯からキーンと高い音が鳴る。この音が携帯からなったときはたいてい重要な内容のメールが学校から送られてきたときだ。
今までは行事の変更であったりその程度だが、俺たちは数日までに特別試験を乗り越えたこともあり一気に緊張感のある雰囲気に包まれた。
ポケットから携帯を取り出した山内がメールを開くより先に。
船内アナウンスが入った。
『生徒の皆さんにご連絡いたします。先ほど生徒の皆さんに学校からの連絡事項を記載したメールを送信いたしました。各自携帯を確認し、その指示に従ってください。また───』
「連絡?」
「ああ、なんか来てるわ」
池が山内の方を見ながら聞く。
アナウンスを聞き流しながらメールを開いた山内の顔から、楽しそうな雰囲気が消え去った。
「なんかまたやるっぽいぞ」
「またかよ!もうこのまま休みでいいじゃねえかよ!!」
「今度はなにさ~。前みたいなやつはごめんだぜ」
須藤と池の愚痴を聞き流しながら、俺もメールを確認する。
内容をまとめるなら、特別試験を開始について、その試験の説明をする場所と時間についての二つ。一応ペナルティーの話もあるが、これはいいや。
「18時40分からだってよ」
「ほんとだ。まだちょっと時間あるね」
「え?俺19時20分って書いてあるけど?」
「なんだ、連絡ミスか?」
須藤と池の集合時間は同じ、山内は別。
それも40分も違う。
「斑鳩は?」
「俺は20時から」
「どういうことだ?」
「俺たち二人が先に試験やるってことじゃねえの?」
「いや、それだと生徒間に不公平が生じる。一部が先に試験ってのはありえない」
一応、どうして時間が分けられているのか知っているが、それっぽいことを言って否定しておく。
優待者を当てるイメージしかなかったが、事前説明の段階でここまで生徒を困らせていたのかこの試験は。
状況がいまいち掴めていない彼らではあるが、とりあえず全員の呼び出しが終わった20時30分に件のレストランに集合するということで話をまとめた。
その後も須藤、池の集合時間まで一緒に過ごしたが彼らにわずかに残った平穏を謳歌するほどの精神力はなく。会話はずっと次の試験のことでもちきりとなった。
何をするのか、何が得られるのか、また何を失うかもしれないのか。期待と不安の混ざった会話を俺たちは限界のないテーブルの上に広げ続けた。