性転換して魔法少女になったけど、いつの間にか淫魔と戦うドスケベ魔法少女の仲間にされていた 作:名護十字郎
普段はほんわかしてる雰囲気のため忘れがちだが、ラフィーは……スタイン・ホーリーシアンは、本当はとても強い。
『……ダイン・ゴーシュ!
私の、ありったけの魔力を流し込む!』
西部で突然動き出した超大型デザイア……監視塔のデザイアにトドメを刺したのもラフィーだ。
『……言いたいことは、それだけですか』
サビーを侮辱する魔法少女の傭兵達に本気で怒った時は、様々な技を使いこなしてあっという間に一掃してみせた。
「……なのに」
……どうして、こうなるんだろう?
私の目の前にはそんなラフィーが、先ほどの勇姿からは想像も付かないほどあられも無い姿を晒していた。
「あっ、やっ!はひ、だめぇ……っ!!」
……全身ヌルヌルまみれでなんか気持ち良さそうにしながら。
――――――――
ラフィーが……その、少しみっともない姿を晒すまでは少し前に遡る。
病院の面会時間を終えた私は、マキナから離れたくないと拒否するもラフィーに力ずくで病院の外に連れ出されて渋々帰路に着くところだった。
「……むぅ」
「も、もういい加減機嫌直してくださいよリオンちゃん……」
病院前でマキナの病室に戻る戻らないで少しラフィーと揉めてる間にバスが行ってしまい、次のバスを待つよりは歩いた方が早いため二人で静まった半斗浦の夜道を歩く。
今思い返せば子供っぽく拗ねていた私とラフィーは何の会話を交わすこともなく歩き続けていた。
面会に来た他の人たちはバスを利用して帰っていたため見渡す限り私たち以外には誰もいない景色がずっと続く。
そんな時間がずっと続いたからか……いや、それが無くとも私たちの前をいつの間にか歩いていた女の子は少し変わっていた。
背は私より更に低くて10歳くらい?の小さな子だ。
それほど冷える夜でもないのにフードを深く被り、背負ったバッグと両手いっぱいに大きなペットボトルを限界ギリギリまで抱えている。
そのどれも水が満タン近くまで注がれているのにキャップは付いておらず、その子が歩くたびに水が揺れる音が無音の夜の街に流れ出ていた。
「……あの子、事情は分からないけど大変そうですね」
ラフィーはそう言って小走りにその子に近づくと、膝を折ってその子に視線を合わせて言う。
「ねぇ、そのお水重くありませんか?
良かったらお姉ちゃんが運ぶのを手……伝……」
と、そこまで言いかけるも最後まで言い切る事はできず、女の子もビックリして動きが止まったようだった。
二人の間に何が起きてるのか分かりかねた私はラフィーの真似をするように小走りで二人に追いつこうとして……。
「う、わああああっ!」
「あっこら待ちなさい!
『スタイン・ホーリーシアン、ブライト!』」
女の子がいきなりペットボトルを投げ捨てて逃げ出し、ラフィーは何故か変身してその子を追う。
「アトラ!貴方も早く変身を!」
「いきなりどうしたのシアン!?
あの子を見るなり変身して!」
「レナです!
あの子はイロージェスタの構成員、淫魔のレナですよ!
ちょっと前に襲ってきたエルクの妹!」
「えぇ!?なんでそんないきなり!
……あぁもう、『スーサレッド・アトラナクター、リザレクション!』」
ラフィーに言われるがまま変身して、急いでラフィーに合流して逃げ出す淫魔を追おうとする。
けど……幸運にも、私は遅かった。
「待ちなさ……きゃっ!
み、水が動いて……!離れ、なさい……!」
私がヴァルーシアを飛ばしてレナの背中を刺せないか距離を測っている間に、先ほどレナが捨てていったペットボトルの中の水が蠢き出した。
ペットボトルからはただの水じゃなくてスライム状のものが吹き出てあっという間にラフィーを取り囲み、その四肢にへばり付く。
ちょうどレナが走りながら捨てていったペットボトルは追い縋るラフィーを取り囲むように捨てられており、四方を塞がれたラフィーには僅かな抵抗の時間も与えられない。
「は、離しな……ひゃうっ!
そ、そんな激しくしちゃ……んぅっ!」
……後はもうスライム状のそいつにされるがまま。
こうして今に至り、ラフィーは超大型デザイアの時の勇姿は何だったのかと言うレベルで好き放題されている。
「へへ、上手くいった!
私のリキッドサクガンの奇襲は完璧でしょ?」
さっきまで必死に逃げていた女の子……レナは後ろで響く嬌声を聞いて成功を確信したのか足を止めてこちらに振り返った。
深く被っていたフードを脱ぐと、そこにはエルクのものより一回り小さい角……彼女が人間ではない証拠だ。
「初めましてアトラナクターちゃん、私はレナ。
この前エルクお姉ちゃんがやられた仕返しに来たよ」
そう言って、背負っていたバッグを前に持ってきて中身をひっくり返す。
バッグにぎゅうぎゅうに詰め込まれていたペットボトルからは大量の水が流れ出し、それらはラフィーを拘束しているのと同じように巨大な実体を形成した。
スライム状の身体を持つサクガン……リキッドサクガンだ。
「アトラちゃんもこの中に閉じ込めて、いっぱい遊んであげるね?
気持ち良すぎて虜になっちゃうかも」
そう言って笑うレナの輪郭がリキッドサクガン越しに歪んでいく。
現れたリキッドサクガン達はレナの正面に防壁を貼るように立ちはだかった。
これでは正面から攻撃を通すのは無理だろう、それに無差別に周囲を破壊し瓦礫を量産してくれたデザイアとは違いサクガンは物理的な破壊能力には乏しい。
つまり、戦っても周囲を破壊しないため飛ばせる弾が限られる。
……ヴァルーシアを使うしかないか。
「……はっ!」
「ひゃあっ!
……び、ビックリしたけどそんな脅しは効かないよ!」
私は思い切ってヴァルーシアを地面に叩き付ける。
それと同時に、ヴァルーシアを結ぶ糸の結合を弱めた。
レナは単なる威圧だと思い込んだけど私の狙いはそこじゃない。
……地面に叩きつけたヴァルーシアが、割れる。
その断片を糸で飛ばして、サクガンを迂回して直接レナを狙う。
刀身の大半が砕け落ちたヴァルーシアを指揮棒のように振るって糸を繋ぎ、砕けた刃を斜め45°に飛ばしてから更に別の糸に刃をパス。
左右から挟み撃ちにする二つの軌道の刃がレナに迫る。
「やばっ!?や、止めて許して!!」
レナがそんな悲鳴を上げるけど、私の刃は止まらない。
糸が導く通りに、その身体を両断するまで貫き続け……!
「……なんてね♪」
断片とはいえ私の武器だからか、ヴァルーシアの異変は手に取るように分かった。
いや、逆だ。
『手に取られている』。
「お姉ちゃんがくれた戦闘用ハンドサクガン『デフィンガー』。
これがある限り、そんな飛び道具いくらでも防いじゃうんだから!」
レナの自慢するような物言いに追従するようにリキッドサクガンの横から自律する手……ハンドサクガンが姿を現した。
とは言え、その姿は私が以前見たハンドサクガンとはにても似つかない。
この前のように日常で使われる手袋ではなく、まるで騎士の甲冑のような精巧な腕甲のサクガンだ。
この前戦ったハンドサクガンは単なる手袋を数の暴力で使役していたが今レナを守っているのは真逆。
大量の軍勢ではない少数の精鋭、それがレナの言うところの『デフィンガー』なのだろう。
それはさながらお姫様を守る騎士のように威風堂々と私の前に立ちはだかり、投擲したヴァルーシアの刃片をキャッチしている。
正面はリキッドサクガンが不壊の盾となり、側面からの奇襲はデフィンガーが防ぐ。
……隙がない。
「これで分かったでしょ?
お姉ちゃんと私が力を合わせれば最強なの!
貴方も、すぐそこのシアンちゃんと同じ目に遭わせてあげる!」
レナの言葉に合わせて、リキッドサクガンが蠢く。
そしてその水の身体から何本もの触手が生み出されて私に迫った。
「くっ!」
刃の欠けたヴァルーシアで何本かは切り落とすけど、私が切り落とすよりも向こうが生み出す触手の方が何倍も多い。
万全な形のヴァルーシアならそれでも捌けたかもしれないが、今はあのリキッドサクガンに対処する術はなかった。
攻撃を断念しバックステップを繰り返してなんとかリキッドサクガンの触手のリーチからは逃れるも、ここから打つ手はない。
「……シアン!ねぇシアン聞こえる!?
あのハンドサクガンどうにかできない!?」
「はひ、やっ!
……くぅぅぅん!」
「駄目だこりゃ……」
ラフィーに助けを求めてみるも、水と快楽に二重の意味で溺れてるラフィーの耳にはまるで届かずに快楽に身体を捩るだけ。
あのリキッドサクガンは体積から伸ばせる触手は限られるからこのまま後退し続けたら逃げられるけど、ラフィーを置き去りにするわけにはいかない。
リキッドサクガンとデフィンガーの二重の守りを破るには……前と同じ手だけど、賭けるしかない。
少し長い短剣程度のサイズになったヴァルーシアを、先ほどと同じように地面に打ちつける。
「まだ分からないの?
剣も飛び道具も、私には届かないよ!」
レナの笑い声に混じって、アスファルトにヴァルーシアが突き刺さる音が響いた。
ただ今度はヴァルーシアを結ぶ糸は強固なまま、結果アスファルトだけが砕かれて破片が散らばる。
その残骸をヴァルーシアで掬い上げて空中にばら撒き、その空間を無数の糸で囲う……以前エルクに使った糸の散弾だ。
「ケレスター・ショット!」
引力糸で弾丸になる物の全方位を覆い、一箇所だけ糸を解除して受けていた圧力を解放して広範囲を撃ち抜く……マキナが即席で考えた必殺技をレナのリキッドサクガン向けて放つ。
引力糸の牢獄から解き放たれたアスファルトの残骸はそれまで受けていた力に押し出されて高速の散弾となりリキッドサクガンに喰らい付いた。
……けど。
「ふふふ、無駄無駄。
お姉ちゃんからその技は聞いてたもんね、どれくらいの水があれば防げるかも計算済み!」
アスファルト片は水の城壁を破ることはなく、リキッドサクガンに飲み込まれるだけに終わる。
そもそも短剣サイズのヴァルーシアではアスファルトを上手く砕けず弾丸が足りなかったのもあるが……少なくとも、エルクに使った釘の弾丸でもリキッドサクガンを破れたかは分からない。
……最も、レナが散弾を防御するためにサクガンを限界まで伸ばしただけで私には十分だった。
リキッドサクガンの触手はあくまでも身体の一部を伸ばしているだけで、全体の体積は変わらない。
つまり、今のように大きな盾のようにサクガンを広く引き伸ばしている時は触手を生成するだけの体積はない……つまり。
今のリキッドサクガンは触手を使えない。
「しまっ……!」
例え飛ばせるものがなくてもヴァルーシアの刃の大半を奪われても、魔法少女の私に備わった身体能力までは奪えない。
盾となったリキッドサクガンが元の形状を取り戻して触手を伸ばす前に、レナの所まで回り込んでヴァルーシアを突き立てるなんて容易いことだ。
サクガンの横から突っ込む私を見てレナが息を呑むが、抵抗の隙を与えるつもりはない。
「……助けてデフィンガー!」
だが、私の一撃はまたもデフィンガーに阻まれる。
レナの助けを求める声に応えるように背後から現れた二体のデフィンガーが刃を掴んだまま拳を握り、私を迎撃するために殴りかかってきた。
このサクガンの能力は未知数だが、糸の力で飛ばしたヴァルーシアを難なく掴めるだけのパワーとスピードを持ち合わせているのは確実。
短剣サイズのヴァルーシア一本で捌き切るのは無謀だろう。
……まともに打ち合えば、の話だが。
「私のヴァルーシアを、返して!」
「……ぐっ!
そっちが勝手に投げてきたんでしょ!」
私の狙いは最初からこいつらだ。
残ったヴァルーシアを向けて糸を飛ばし、二体のデフィンガーを縛り上げる。
予想通り、そのパワーは凄まじいものがあり宙に縫い止めるので精一杯。
逆に操ってレナを殴らせるなんてことはとてもできそうにない。
最もそんな事最初からやろうとは思っていない……私がやっているのは、デフィンガーの指一本一本に糸を掛けてその拳を開かせる事だ。
指一本につき糸を一本では力が足りない、二本、三本、四本と一本ずつ糸を増やしていき……とうとうデフィンガーの抵抗を上回りヴァルーシアの刃が地に落ちた。
それをすかさず糸で回収して大きく後方に跳躍、一拍遅れてリキッドサクガンの触手が先程まで立っていた場所に迫る。
「あぁもうちょこまかと!」
レナの苛立った声が夜の街に響き渡る中で、リキッドサクガンから距離を取って着地した私はヴァルーシアの刃を元に戻す。
散弾攻撃をレナが都合良くリキッドサクガンの体積限界まで使ってガードする事、デフィンガーを出し惜しみせず二体ともけしかけて来る事、刃の奪還までにリキッドサクガンの形状復帰が間に合わない事……。
幾つもの賭けに勝った結果は最初に投げたヴァルーシアの刃の奪還だけ、レナには何のダメージもない。
「……折角の奇襲もデフィンガーに邪魔されて残念だったね!
剣の一部は取り戻されちゃったけど最初に戻っただけだし、リキッドサクガンに剣なんて効かないよ!」
レナの言う通り、これだけ危険な橋を渡っても振り出しに戻っただけだ。
……けど、レナは一つ見落としをしている。
私が得たものはヴァルーシアの破片だけじゃない、それに先の攻防を「私の奇襲をデフィンガーが撃退した」と思い込んで勝ち誇っているけど……ここまで来ればもう私の勝ちだ。
「ヴァルーシア!」
私の掛け声と共にヴァルーシアは刃ある鞭へと姿を変え、リキッドサクガンを切り裂いた。
……これで倒せるとは思っていない、どうせ切られた側から復活するだろう。
けど、ヴァルーシアの一撃はリキッドサクガンの中にある「ある部位」を正確に叩いている。
「ッ!コアが!」
私がヴァルーシアで狙ったのはリキッドサクガンそのものじゃない、その内側に組み込まれていた結晶状の固体、コアだ。
この手の無限に再生する奴にはありがちな弱点、やっぱりコイツもそういうものを持っていた。
コアの具体的な形は先ほどレナの懐に飛び込んだ時に目視で確認している。
ケレスターショットによるコアの被弾を恐れたのかコアをレナのすぐ側まで寄せてくれたおかげで、リキッドサクガンのコアがどんなものかはすぐに目視できた。
そしてリキッドサクガンの身体は元は水、一度形を覚えればそれが何処にあるのかは一目見ればすぐ分かる。
ヴァルーシアの変幻の軌道で同時に全てのリキッドサクガンのコアを撃ち、サクガンの身体からコアを弾き出す。
コアを失ったサクガンは急速にその体制を崩して見る見るうちにただの水へと戻っていった。
しかし、最大の武器を失ってもレナの表情に焦りはない。
むしろ笑いながら、
「……ふふふ、後一歩だったねアトラちゃん?
リキッドサクガンのコアは、そんなすぐ割れるほど脆くないんだ」
水の鎧を剥がされてアスファルトを転がるコア、そこに再び水が集まっていく。
水と完全に切り離されても即座に復活する再生速度と、ヴァルーシアの一撃を受けてもヒビ一つないほどの堅牢さ……確かに、リキッドサクガンはレナが誇るほど厄介な相手だ。
……だからこそ、私の勝ちだ。
「だから剣なんて効かないって言ったでしょ?
これからリキッドサクガンの中で快楽に溺れさせてあげ……ごぽっ!?」
リキッドサクガンのコア、水を失った直後の固体に糸を伸ばして勢いよく投げつける。
狙いは、レナの口の中。
「ごっ、ごぼぼぼぼ!?」
リキッドサクガンの超絶的な再生能力はコアがレナの口の中にあっても遺憾無く発揮され、大量の水がレナの口に迫る。
淫魔も呼吸が必要なのは私達人間と同じのようで、大量の水に顔を覆われてレナは一気にパニックに陥った。
ドン!とデフィンガーが必死にレナの背中を叩き、なんとかコアを吐き出した次の瞬間にはまた別のコアがレナの口に迫る。
「ごぼぼぼ!ごぼっ!」
息を塞がれた直後は、どうあっても本能で口を大きく開かざるを得ない。
そして、デフィンガーの数はたった二体なのに対してリキッドサクガンの数は倍以上、つまり4個以上のコアをレナの口に向けて放り投げられる。
再生直後のリキッドサクガンを即座にリスキルしてコアを摘出、レナに投げ付ける。
私はリキッドサクガンのリスキルとコアの投擲だけに専念すれば良い一方でレナは長い窒息から一瞬解放された次の瞬間にはまた水責めが始まる。
これが続けば、どちらが先に限界が来るかは明白だ。
「……ぷはっ!
やっ、やめ、もう許し、て……!
……ごぼ、ぼぼぼ……」
やがてレナの苦悶の声は絶え、魔力源を失ったのかリキッドサクガン達は単なる水に還ってゆく。
それと同時に、さっきから横で地味に喧しかったラフィーの喘ぎ声も止まった。
……私が飛んだり跳ねたり飛ばしたり必死に戦ってる最中でも終始嬌声を上げっぱなしだったし、私もレナもよくスルーできたものだと思う。
「……さて、トドメを」
水の城塞を失い、無防備に倒れ伏しているレナに向かってヴァルーシアを構える。
そして刃を伸ばして最期の一撃を加えようとした所で……デフィンガーが突っ込んできた。
さっきと同じように拳を固めてこちらに向かい、しかし途中で静止する。
怪訝に思い防御用にマンホールを引っ張ってきた所で……デフィンガーが、弾けた。
「……ッ!
私がやったみたいな散弾!」
レナを守るための最終手段なのだろう、デフィンガーは膨大な魔力によって内側から爆ぜてその甲冑の破片を散弾銃のように撒き散らす。
幸運にもマンホールの盾は間に合い直撃は回避できたが……その一瞬の間に、もう片方のデフィンガーは気絶したレナの首根っこを掴み夜の闇の中に消えていった。
「……逃した、か。
……もうラフィー、いい加減起きてよ」
「は、はっ、はひぃ……
くうぅん……」
逃したものはしょうがないので代わりに寝そべっているラフィーの手を掴み、そのまま引っ張り上げた。
長らくリキッドサクガンに集られていたせいで全身ずぶ濡れのびしょびしょ。
……部分的にとてもよく濡れてる部分があるのは意識の外に追いやることとする。
ラフィーはサクガンの搾精を受け続けて完全に腰が抜けてるみたいで、立てずに私にしなだれかかるばかり。
「ラフィー、ラフィーってば!
む、胸……当たってるから!早く自分で立って!」
「た、勃つなんて言わないでくださいよ恥ずかしい……
確かにリオンちゃんに二つ押し当てちゃってますけど」
「?
……いいから、どいてってば!」
「むーりぃー……。
余韻強すぎて、動けません……」
「ラーフィー!はーなーれーてー!」
奇しくも病院でやったような揉み合いを、今度は攻守逆転して繰り返す。
こうして戦いに次ぐ戦いの一日だった半斗浦西部の探索は、徒労感にまみれて幕を閉じるのだった。
――――――――
「げほ、げほっ……。
アトラちゃん、本当に容赦がないんだから」
夜の町の片隅、そこで一人の少女が咽せながら愚痴を吐く。
アトラとの戦いに敗れ、リキッドサクガンも片方のデフィンガーも失った淫魔レナだ。
最も、デフィンガーはともかくリキッドサクガンの喪失には特に未練もない。
「全く、あんな急拵えで戦えなんて酷い事言うよね」
エルクとレナの淫魔姉妹の関係はイロージェスタの中でも有名だ。
互いに溺愛し合う仲でとっくに姉妹で一線を超えているとも嘯かれている中、唯一趣味の合わないものはサクガンの方向性だ。
エルクは最低限の侵食に止めてとにかく数を用意し物量で押し潰すのを得意とする一方でレナは真逆。
一体のサクガンに徹底して手間暇掛けて巨大化多機能化好みのデザインまで仕上げるのが本来のレナのスタイル。
先のリキッドサクガンもレナからすれば遊び心が無さすぎる、機能性だけを考えたデザインはどちらかと言うとエルクの趣味だ。
「で……これで満足?」
そう言ってレナは周囲を見やる。
……夜の街の建物の影、そこに溶け込むように三人の少女が立っている。
彼女達はエルクやレナのように角や翼を持たずに、手には各々の武器を握る……魔法少女だ。
イロージェスタの傀儡でなく正式メンバーとして所属する魔法少女はいない、協力関係にある魔法少女グループもない。
あくまでもイロージェスタにとって魔法少女は獲物だからだ。
だがこの状況は、どう見てもレナの方が彼女達の食い物にされている。
……三人のうちの一人が締め上げている、淫魔によって。
「もういいでしょ……お姉ちゃんを返して」
三人組の一人……和装を着込み、袖には猛禽の羽をあしらった少女が捕らえているのはかつてアトラが戦った淫魔エルクだ。
片腕でその首を絞め、その上に短刀を突き付けている。
「レ……ナ……」
エルクが最愛の妹に呼びかけるも、その声は夜の街でも聞き取れないほどか細い。
単なる衰弱ではない……その肩には、一本のメスが突き立てられている。
麻痺毒を塗り込まれたメスが。
「……話が違いますよレナ、私達はアトラナクターとホーリーシアンの戦いを見せて欲しいとお願いしたはずです。
奇襲で無力化しては意味がない」
そう言って、黒いナース服に身を包んだ少女がメスをレナに突き付ける。
その隣で、エルクの首筋に短刀の先端が食い込み淫魔の柔肌から一筋の血が伝った。
「貴方は何も分かってない。
シアンちゃんは先制で無力化しておかないと戦いにすらならないよ。
さっきのリキッドサクガンも、真正面から戦ってたら一瞬で蒸発させられてた」
「別に貴方毎蒸発しても、我々に害はないのですが?」
「……ッ。
それでもシアンちゃんと同じ魔法少女!?」
苛立ちを隠せなくなりレナは叫ぶ。
レナはこの魔法少女達に姉を人質に脅されていた。
姉を返して欲しければアトラナクターとホーリーシアン両名の戦闘を見せろと。
趣味の合わないリキッドサクガンを採用したのも、サクガンを用意する間も与えられずすぐに襲撃しろと指示されたからだ。
人質を取ったり暗に戦って死ねと要求したり、目の前の三人組の魔法少女ほど悪辣な手段を取る恥知らずは、少なくともレナの知るスタインヘックスには居ない。
どうしてそんな連中が、チョロくてすぐエッチなことに負けても絶対に正義を貫き続けるホーリーシアンと同じ魔法少女なのか。
不快感と憤りは募る一方だった。
「どうします、もう一度襲撃させますか?ミズク、グラ」
「その必要はないよカリ、ラアムが西部で起きた魔法少女同士の衝突の報告書を手に入れた。
ホーリーシアンの戦いぶりはそっちで補おう」
三人の魔法少女。
カリと呼ばれた、黒いナース服のような衣装に身を包みメスを握る魔法少女。
ミズクと呼ばれた、和装の袖に梟の羽根をあしらい短刀をエルクに突き付ける魔法少女。
グラと呼ばれた、黒いコートにコスチュームを覆い隠して両腕に鎖を巻きつけた魔法少女。
憤怒に顔を歪ませるレナとは対照的に、彼女達は何処までも無表情だった。
「君たちの……サクガンだったかは役に立ったよ。
何しろデザイアと違って管理局が探知できない上に個人が制御できるから威力偵察には持ってこいだ。
アトラナクターの戦闘を見れただけで良しとしよう」
「……ッ」
レナは淫魔としては非力で、直接的な戦闘は特に苦手だ。
そんなレナにとってサクガンは自らを大きく見せつけるための強大な武器であり、イロージェスタ内の地位を築き上げた努力の象徴でもあった。
それを、こんな奴らに利用されている。
それも搾精という本懐ではなく、単なる使い捨ての尖兵として。
そう思うだけで腑が沸繰り返りそうな思いだった。
「ミズク、カリ、帰ろう」
そう言ったコートの魔法少女は右腕だけをレナに向け……次の瞬間、右腕から、あるいは右腕に鎖で縛り付けられている何かから高速の刃がレナの首目掛けて射出された。
「……ッ、デフィンガー!」
それを間一髪で受け止めるのはエルクの残したデフィンガー。
しかし高速かつ重量のある刃はデフィンガーでも受け止めきれず、レナの背後でデフィンガーが刃に吹き飛ばされてビルに叩きつけられる音が響く。
同時にデフィンガーとの魔力のリンクも切れた……アトラナクターをあれだけ苦戦させたデフィンガーを、だったの一撃で。
文字通り最後の手を切ってまで攻撃を防いだレナに、三人はやはり全くの無感情のままだ。
コートを羽織る魔法少女は、粛清が失敗した事に軽く舌打ちするとそのまま闇に身を溶かす。
続いて和装の魔法少女がエルクを突き飛ばして解放してから後を追い、最後に黒ナースが続いた。
「解毒薬です、今のうちに飲ませれば命に別状はないでしょう」
そう言って薬の入った袋を適当に床に投げつけ、あっという間に三人とも最初から闇そのものだったかのように姿を消している。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
「レ、ナ……」
袋をすぐに破って中の薬を取り出し、レナの口に押し込む。
そうしてエルクの両手を祈るように握りながら最愛の姉の名前を叫び続けるレナ。
エルクとレナ、二人の胸中は同じだった。
モースで何度も相対した魔法少女たち、輝石の魔女スタインヘックス。
彼女達は軒並み快楽に弱く、だが絶対に正義の立場を崩さなかった。
対してこの街の魔法少女は平気で人質を取り、用が済めば使い捨てようとする。
「この街の魔法少女は、どうなってるの……?」
その問いもまた三人組の魔法少女のように、夜の闇に溶けて消えていった。
最も、その問いかけに答えられる人間は果たして半斗浦の中にいただろうか。
半斗浦の魔法少女を知る者であればあるほど、レナの問いに答えることはできなかっただろう。
R-18版に需要はありますか?(本編ifの敗北シーンや舞台裏のシーンがメイン)
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需要はある
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本編ifの敗北シーンのみ需要はある
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舞台裏のシーンのみ需要はある
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需要はない