性転換して魔法少女になったけど、いつの間にか淫魔と戦うドスケベ魔法少女の仲間にされていた 作:名護十字郎
「改めまして、スタイン・ホーリーシアンことラフィー・エルカトネットと申します。
先刻はイロージェスタの撃退にご協力頂きありがとうございました」
淫魔エルクとの騒動を終えて、私とマキナは新たにラフィー……スタイン・ホーリーシアンを加えた三人でマキナ宅に戻っていた。
賠償金免除のためのイロージェスタ調査のためにはまずしっかりと情報の共有と今後の方針を固めておいた方がいい、というマキナの(苦渋の)判断のために一人暮らし用の狭いアパートの一室に三人が詰め合っている。
「わ、私は矢口あ……リオンと言います。
さっきは略しちゃったけど魔法少女名は正式にはスーサレッド・アトラナクターです」
「私は先程名乗ったので必要ありませんね?
早速本題に入りましょう、イロージェスタについてお教え頂けますか?」
マキナは机の上に散らばった私物とプラモデル……『ルミナーク』というロボットアニメのグッズらしい……とその他雑多なゴミを適当に端に寄せてからノートを置き、手に持っていたビニール袋をその辺に置いてから席についた。
……先ほどの騒動のあとスタッフ専用口の奥で縛られていた店員さんを助けたら凄く感謝されて買おうとしていたものを頂くことになったのだけど、その時マキナは「誤ってカゴに入れたものがある」と言って中身の3割近くを棚に戻したので、マキナが持っていたビニール袋の中はエルクに襲われる前よりだいぶ少ない。
曰く、「レシート無いしバレない悪戯ほどつまらないものはない」だとか。
閑話休題、イロージェスタの説明を求められたラフィーさんはサクガンの時のように自信げに話し出すかと思いきや、
「そうですね……どこから説明したものか」
そう言ってむむむ、と唸りながら顎に手を当てて固まってしまう。
しばらくむんむん言ってから段取りが付いたのか、ラフィーさんは改めて口を開く。
「イロージェスタについてですが……。
その設立は人類と魔王軍の終戦まで遡ります」
「……いやいやいや待て待て待て、待ちなさい!
え?ま、まおうぐん?……は?」
ラフィーさんの説明開始後約10秒でマキナのストップがかかる。
危ないところだった、マキナが停止させてなければごく自然に「まおうぐん」を受け入れて聞き流すところだった。
「? 私なにかおかしな事言いました……?」
「言いました言いました言いましたよ可愛らしく首傾けんな!
なんですか魔王軍って!?」
「……あの、もしかして『軍って何』『兵士って何』『戦うって何』みたいな、簡単な単語にも無限に説明を求める子供じみた事がしたいんですか?
『聖紀何年何月何日何曜日何時何分何秒太陽が何回出てきた時〜』的な……」
「なんで私が悪い子みたいになってるんですか!?
言いたいのは軍じゃなくて魔王の方ですよま・お・う!
今日日そんなの大真面目に名乗る奴いる訳が……」
ラフィーの子供を慈しむような目線に耐えきれなくなったのか、マキナ渾身の台パンが炸裂する。
それだけでは苛立ちが収まらなかったらしく、犬のようにがるるるる、と唸り出す始末。
「私の知ってる限り三体はいますけど……」
「……えぇ……」
……それでも天然力の塊であるラフィーさんには全く通用せず、三人は魔王を知っていると言うマジレスと悪戯っ子に向けるような慈愛の眼差しに同時に刺されていよいよマキナの反骨心は萎んでいった。
「二代前が魔王デューダクトで先代が魔王リリス、今はアリスフィリアが魔王の座にいますね」
「……どうしましょうリオン、調べたけどデューダクトなんてラスボスが出てくるゲーム無いですよ……」
「マキナ、もういい加減ラフィーさんを可哀想な人扱いするの諦めようよ……」
スマホを何回かタップして……恐らくは出された魔王の名前をゲームキャラかどうか確認し、望む結果にならなかったのかとうとうマキナは机に突っ伏した。
私もできればラフィーさんの言う魔王軍がアイドル配信者が冗談混じりで言う「◯◯星出身」とかと同類であって欲しかったけど……残念ながらラフィーさんはそんな上手く猫を被れるほど器用な人じゃない気がする。
「話を戻します、私たち人類と魔王率いる魔物たちの魔王軍は何世紀にも渡ってずっと戦争を続けてきました。
最早何が発端で始まった戦争だったのか互いがどんな仇なのか……恐らくは魔物達にも分からないほどに。
誰が悪いでもないのにみんな死んでいく……私が輝石に適合して戦うようになった時には、もう戦争は疫病のようなものでした」
「……やっぱり実際の戦争は、何処もそんなものですか」
ラフィーの言葉に釣られて、突っ伏して脱力していたマキナが起き上がり、ゆっくりとペンを握り直した。
それまで真っさらだったノートに「向こうの人類」「魔王軍?」「終戦」と相関図を書き込んでいくマキナの顔に、先ほどまでの嘘臭い話に呆れる表情はない。
……私は小さかったから覚えていないけど、マキナは5年前の怪人事変をその目で見ている。
ラフィーさんの言葉というよりは哀しげな口調に、真剣さを感じ取ったのかもしれない。
「そんな時に現れたのが大淫魔リリス、後の魔王リリスです。
彼女は当時最強と謳われた勇者を暗殺するために彼の寝室へ侵入し、そこで勇者と愛を結んで魔王に反旗を翻したとされています。
最終的にリリスと勇者によってデューダクトは倒され、新たな魔王として君臨したリリスは人類との終戦を宣言しました」
「それだとリリスは人類に寝返った裏切り者です。
それを咎める魔物は……居なかったのですね」
「はい……、魔物たちも、とにかくもう戦争は御免だとリリスの裏切りを不問にしたようです。
しかし、リリスの統治を認めない者達がいました。
マリスフィア……リリスの長女で現魔王アリスフィリアの姉です。
彼女は継戦を主張して私兵を組織し、独自に人間達への攻撃を続行しています」
「それがイロージェスタですか?」
「はい、そして私たちスタインヘックスはイロージェスタを追っていたのですが……まさかこんな遠くまで逃げ込むとは」
こんな遠く、と言いながらラフィーは部屋をぐるりと見回した。
とはいえ今の彼女は目の前の視界に入るマキナの部屋を指して遠くとは言ってはいないだろう、恐らくは半斗浦の事だ。
今更モースという国が何処にあるのか、なんて質問はするだけ時間の無駄と分かってきた。
ラフィー・エルカトネット、またはスタイン・ホーリーシアン。
彼女は……異世界からの来訪者だ。
「……まぁ、この街の魔法の力も一説では異世界由来と言われています。
きっと、あるんでしょうね。異世界」
そう言って、今度はマキナがうむむと唸り込んでしまった。
最も、もう結論自体は出て後はどう自分を納得させるか、という所で悩んでいるみたいだ。
私は……マキナが異世界説を信じたのなら、信じようと思う。
けど、それとは別に気になることがあったので右手をそっと上げながら発言する。
「でもなんで半斗浦の人を襲おうとしたのかな?
仮にここが滅んでもモースって国にも魔王軍たちにも関係ないはずだし……」
「それは……分かりません。
イロージェスタがこの地で何を企んでいるのかは知りませんが、リオンちゃんを捕まえようとした時点で搾精を行うつもりではあるようです」
「人が外世界に進出する目的なんて大体似たようなもんだと思いますよ、土地、資源、労働力です。
ルミナークでやってました。
そうですね……ルミナークだと確か惑星間兵器のエネルギー確保のために侵略する展開があったはず。
イロージェスタがそういうものを持っている可能性はありませんか?
こう……膨大なエネルギーを必要とするけど稼働したら勝ち、みたいな」
「いえ……聞いたことはありません。
ですが、私もその3つから探って行くのに賛成です」
マキナは先程まで唸っていたのから一転して得意げに仮説を語り出した。
出典元がロボットアニメの『ルミナーク』なのはともかくとして……言っていること自体は真っ当に聞こえる。
ラフィーさんも(惑星間兵器、が伝わったかはさておき)概ね同意見のようだ。
「最終的な目的は、更なる調査が必要と……。
ともあれ、これで初報くらいは書き上げられそうです。礼を言いますよラフィーさん」
マキナはそう言ってノートに書き連ねた単語にペンを向けて、何処から書き加えていくか悩むようにページのあちこちにペン先を突き付けていく。
対するラフィーさんはマキナの思案を中断させるように、机を両手で叩きながら切り出す。
「どういたしまして!
それで、明日からどう動きますか?」
「ラフィーさん……貴方さっきの局員さんの話聞いてましたか?
本登録が終わるまでは本格的な戦闘は出来ません。
それに、何か行く宛でもあるのですか?」
ノートの上に手を乗せられて若干鬱陶しそうにするマキナ。
確かにさっきの会議の間に具体的に何をするかは決まっていなかったが、ラフィーさんには真っ先に行動すべきと思っている最優先事項があるみたいだ。
「私より先に半斗浦に来たスタインヘックスの仲間が一人……いえ、二人いるはずです。
ただ、どちらとも接触できてなくて……」
「……なるほど、その二人と合流できれば一番早い。
報告書書くついでに捜索願も出した方が良いですね。
特徴を教えてください」
「片方はエリィ・バサトゥーラ。
スタインヘックスの隊長で私の先輩です。
戦争末期からずっと大活躍している私たちスタインヘックス最強の魔法少女です!
普段はちょっとおっちょこちょいですけど戦いになると頭も回るし戦場全体を見渡せるし指示も迅速適切でスタインヘックスの核のような人で!
魔法少女としての名前は『エスタイン・アッシュ』で武器を持たせたら一騎当千!どんな武器でも使いこなして淫魔もサクガンもバッタバッタと斬り倒しちゃうんです!
あとあとそれから……!!」
「あーもう分かった分かりましたよ!エリィさんね!
こういう手合いは推し語りさせたらキリがない!
もう一人は!?」
語り出していく内に先輩語りが際限なくヒートアップするラフィーさんをマキナが諌める。
昔『ルミナーク』について語ってたマキナみたいだ、と言ったら怒られそうだから静かにしておくことにした。
マキナに二人目の情報を聞かれると、ラフィーさんは一転して自信無さげに答え出す。
「もう一人は……分かりません。
先輩がこの街に来たのは今から約半年前なんですが、3ヶ月前に一度本国に通信が入って『大きな時計が見える住宅地に拠点を設けた』『適性の高い現地の少女を発見した、じき仲間に引き入れる予定だ』と言ってました。
ただ通信はあくまでもイロージェスタの調査がメインだったのでもう一人スタインヘックスがいる、って事しか分かっていないんですよね」
「大きな時計……?
マキナ、半斗浦にそんなのある?」
「うーん……聞いたことないですね」
「やっぱりそうですよね……。
私も今お世話になってる人に聞いたんですけど『そんな建物この街には無い』って」
ラフィーさんはそう言って、先ほどまでの興奮気味にエリィ先輩について語っていた表情から一変、力無く萎れるように俯いてしまう。
先ほどの話だとラフィーさんはいつもエリィさんと行動を共にしていたのだろうし、今自分が一人と改めて知って心細くなったのかもしれない。
そんなラフィーさんを慰めるように、マキナはこう締め括った。
「ともあれ大時計っていう手掛かりはあるんです。
時計自体は無くても何かと見間違えたのかもしれないし、管理局に研修に行くときに一緒に確認すれば良い。
…………焦ることはありませんよ」
「大丈夫、私たちならきっと二人を見つけられるよ!」
「……そう、ですね。
ありがとうございます、マキナ!リオンちゃん!」
マキナと私の言葉にようやく落ち着いたのか、ラフィーさんはその体型に見合わない子供のような満面の笑みを浮かべた。
そしてそのまま両手を大きく広げて、私の方に寄ってくる。
その広げられた手をちょっとだけ捕食者の顎だなと思った直後には、その例えが当たらずしも遠からずだったと思い知る。
「ぎゅうううううーっ!
ん〜やっぱり見込み通りリオンちゃんちっちゃくて可愛くて抱き心地抜群!」
ラフィーさんの意外に力のある細腕に背中からガッチリと押さえ込まれて、顔面いっぱいに押し付けられる……その、暴力的なまでの胸が。
まだこの身体になったばかりで女の人が自分と同性という認識は私の中で出来上がってない。
……恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!あと息できない!!
「ま、マキナ助けてぇ……!」
「ちょ、ちょっと!何仲間からNTRかましてくれるんですかこの女!?
ええいリオンは私のです離しなさい!」
女三人よれば姦しいとはまさに言葉の通りで、狭いアパートの中で私たち三人の叫び声が騒々しく響く。
結局マキナの救助は間に合わず、
「……きゅぅ」
「り、リオン!?」
私はラフィーさんの胸に押し潰されるように意識を手放すのだった。
R-18版に需要はありますか?(本編ifの敗北シーンや舞台裏のシーンがメイン)
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需要はある
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本編ifの敗北シーンのみ需要はある
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舞台裏のシーンのみ需要はある
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需要はない