性転換して魔法少女になったけど、いつの間にか淫魔と戦うドスケベ魔法少女の仲間にされていた   作:名護十字郎

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6話 半斗浦と魔法少女の歴史について/闇と時に埋もれた疑念

「はい、じゃあ今日はここまでー。

ここ大事だからしっかり復習しておくのよー」

 

リオンを管理局に送り出してからも、私……真藤マキナは普通に学校生活だ。

昨日一昨日はユクモの捜索やリオンの登録など外せない用事があったため休んだけど、そう何日も休み続けるわけにもいかない。

……そういえばリオンも落ち着いたら学校に行かせなきゃいけないのかと思うと手続きの多さに頭が痛くなる。

確実に転校することになるだろうし……また『あの女』に頼み込む事になるかもしれない。

 

「ねぇ真藤さん、放課後カラオケ行かない?」

 

「あーごめんなさい、今日ルミナークあるんでパス!」

 

「あー今日だっけ?

毎週リアタイで見るなんてほんとルミナーク好きよねー。

……分かった、じゃまた明日ねー」

 

「はーいまた明日ー。

……けっ、魔法少女じゃない方ですよ」

 

皆が去って無人になった教室で忌まわし気に吐き捨てるも、幸運にも誰も書かれていない。

何しろこの半斗浦で人気なのは『輝光閃姫ルミナーク』、私が心の底から愛するのは『輝光戦機ルミナーク』の方だ。

閃姫ルミナークの方は元々は長寿の歴史を持つ「輝光戦機ルミナーク」の派生コンテンツのひとつで、ロボットもの作品のルミナークを思い切って擬人化して魔法少女化した作品。

……なのだがアニメの出来がやたら良く、更に半斗浦の住人は常日頃から魔法少女コンテンツばかり見て育った魔法少女至上主義のためこの街でルミナークと言えば魔法少女の方なのだ。

典型的なマジカルウォッシュだ、上手くいった分なおタチが悪い。

ちなみに帰ったらリアタイするのは本当だ、ロボットの方のルミナークは半斗浦ではネット配信でしか見れないけど。

 

「……さて、報告書報告書。

まずは何から書きますかねー」

 

そう言って私は忘れ去られた白銀の巨人の静かな怒りをなんとか鎮め、静かな図書室に行ってノートを開く。

幸いにも今は私の貸切状態で、誰かに見られる心配もなさそうだ。

別にこの街の機密情報とかを扱ってるわけではないけど、大真面目に「搾精玩具」なんて書いてるの見られた日には頭のおかしいセクハラ女の烙印を押されてしまうのは目に見えている。

 

「えーっと、あの時襲撃してきたのはデザイアではなくサクガンなる新種の魔法災害であり正式名称は搾精玩……この報告書では私がゴッドファーザーって事でもっとカッコいい名前にこっそり変えられないもんですかね。

サクガン、サクガン……『サクリファイス・ガンド』、生贄ノ呪指とか」

 

そんなくだらない戯言を呟きながら報告書の一行目で既にペンが固まってしまっていた。

単なる百均の騒動から急に異世界規模までスケールが拡大した話まとめ切れないのもあるし、小っ恥ずかしくて書きたくないのもある。

けどそれ以上に私の集中を削ぐのは、やはりリオンのことだ。

『あんな事』があったのにリオンの首がとても綺麗だった事もだけど……。

 

「……リオン、まだ女の子になって二日目だって言うのに順応が早すぎやしませんかね」

 

性転換なんてこの魔法溢れる半斗浦でも前例がゼロではないというだけでまだまだレアケース。

それ故に漫画やアニメを比較対象にしているのが悪いのかもしれないが、それにしてもリオンの立ち振る舞いは自然に馴染み過ぎている。

例えば口調、リオンが「目が覚めて」から一度として『僕』だの『俺』だのと言った記憶はない。

これが例えば営業トークが身に染みついた熟達のサラリーマンとかであればプライベートの一人称まで『私』になったりするのかもしれないけど、13歳の少年が?

 

「それに……女の子の衣服への着替えも実に手慣れていた。

最初は私が手伝ってあげようかと思ったけど、あの子一人で全部やってのけた」

 

思い返せば思い返すほど、今の立ち振る舞いには戸惑いが見られない。

まるでずっと女の子として育ってきたかのような振る舞いだ。

いつも心の片隅にあったこの疑念は、追求すると必ずある出来事に行き着く。

私が2年間逃げ続けてきた、私と矢口姉弟……ユクモと武網の仲を引き裂いた『あの日』の出来事に。

 

「リオン……いえ、武網。

貴方は『あの日』、ユクモと何を……?」

 

――――――――

 

「……何度見ても普通の建物」

 

大波乱の魔法少女初日を終えて迎えた翌日。

私は魔法少女本研修を終えるために再び魔法管理局を訪れていた。

本来なら仮登録から一週間くらいは待つ事になるけど、今回はスケジュールの都合が良かったらしくすぐに研修を受けられるという。

管理局内で受付に認定カードを見せて中の会議室に通され、研修で使う資料が置かれた席に着く。

隣に目を向けると、見慣れた……とは言っても昨日知り合ったばかりの人が。

 

「ラフィーさん?

ラフィーさんも研修受けるの?」

 

「ラフィー、で良いですよ。

私、この半斗浦に着いたばかりで仮登録も最近したばっかりなんです。

モースでは長いんですけどね」

 

そう言ってラフィーさん……ラフィーは笑う。

ラフィーは向こうの世界では戦争を戦い抜いたような歴戦の魔法少女なのに、半斗浦では全くの駆け出しの私と同じ扱いを受けるというのはおかしな感覚だ。

最も、ラフィーはそれに怒ったり不満を感じている様子はないから私が気にしすぎなのかも。

そのまま日本語は読めるの?とかモースではどんな闘いをやってたの?とかラフィーと雑談をしていると時間はあっという間に過ぎていって、定刻になると管理局の職員さんが入室する。

 

「今回は貴方たち二人が本登録するのね。

今回貴方たちの研修を担当します鳴雨(めいう)です。

早速研修を始めましょう」

 

鳴雨さんはそう言うとさっそくホワイトボードにペンで資料の要項を書き込んでいく。

まず最初に書かれたのは、一人の女の子の名前だ。

 

「今から7年前、ある一人の女の子が突然魔法の力に目覚めました。

その子の名前は、麻央・トライハート」

 

その名前は私でも聞いたことのある、半斗浦で一番有名な名前だ。

「最強の魔法少女」「半斗浦の守護神」等の彼女の異名は幾らでも耳にする、名実共に半斗浦の魔法少女の頂点。

最も、異世界出身のラフィーは麻央ちゃんの知らなかったようで鳴雨さんに質問する。

 

「本名ですか?」

 

「いえ、本名は伏せられています。

彼女が普段何処で何をしているのかはこの街のトップシークレットなんですよ」

 

彼女の事を過去の戦歴と名前以上に知っている人は殆どいない。

時たま大きな事件に突如として現れては圧倒的な力で全てを解決し、用が済めば霧のように消えていく。

さながらロールプレイングゲームに出てくる召喚獣だ。

とは言え、ここまで有名になってしまった以上はそれくらい秘匿されていた方が麻央ちゃんも幸せなのかもしれない。

 

「国は突然現れた魔法少女の存在に驚きました。

もし魔法の力を軍事利用できたら世界のバランスは滅茶苦茶になるし、証拠が残らない以上どんな犯罪だってさせ放題。

政府は魔法の力を悪用しようとする人達から魔法少女を守るため、ここ半斗浦を『魔法少女特別市』として国中の魔法少女を集めて……保護することにしました。

今から6年前です」

 

保護、という言葉を口にする時、鳴雨さんの表情が少し歪んだ。

思えば学校の先生やテレビの司会の人が半斗浦の歴史に触れる時、いつも「保護」という言葉を使う時には少し困った表情をしていたのを思い出す。

それが何故なのかは、私にはまだ分からない。

 

「半斗浦の中に魔法少女が集められると、魔法がある社会でも秩序を維持できるように魔法管理局が設立されました。

しかし管理局が設立されてから1年後、この街に最大の危機が訪れます。

『怪人事変』です」

 

ホワイトボードに半斗浦が徐々に発展していった事を示すように建物や人々の絵を書き加えながらも解説は続き、怪人の名前が出た途端に鳴雨さんの口調が一転して神妙なものに変わる。

その意味は私でも分かる、『怪人事変』……半斗浦を襲った最大最悪の災厄だ。

 

「自らを怪人と名乗る人型の怪物達が半斗浦西部から突如として出現、街への攻撃を開始しました。

その目的は今でも不明、分かっていることは彼らが破壊を好んだという事だけ。

多くの建物が壊され、多くの人が怪我をして、多くの人が……殺されました」

 

ボードに細々と書き込まれていた、半斗浦の人々や建物の絵、それに鳴雨さんは大きく×印を付けた。

今鳴雨さんが軽々しくボードに引いたたった二本の線は、しかし惨劇を想像させるに余りある。

そして、×印をつけられた人々の絵の中にはマキナのお父さんもいる。

チラリと視線を横に向けると、ラフィーは口を小さく開けて固まっている……相当ショックを受けているようだ。

 

「そんなときに立ち上がったのが麻央・トライハートです」

 

そういうと、最初ボードに書き込まれていた麻央ちゃんの名前を大きく囲う。

そこからは、凄惨な被害を語る口調は消えてさながら英雄譚を語るかのようだ。

 

「彼女は怪人達を次々と打ち破り、最後には彼らの王である怪魔王アバドンを打ち滅ぼします。

支配者を失った怪人達は慌てふためいて半斗浦西部へと退散し、姿を消しました」

 

麻央ちゃんの活躍を語り終えた後に鳴雨さんはボードから「怪人」の名前を消す。

たった二文字の漢字、それの一切の跡も残らないような入念な消し方は鳴雨さんなりの私情も混じっているのかもしれない。

 

「それで、この街は平和になったんですね!」

 

鳴雨さんの語りに乗せられて明るい表情を取り戻したラフィーがそう質問した。

確かに、それで怪人たちはいなくなったけど……。

 

「ううん、全然」

 

「えっ……?」

 

私がそう返すと、ラフィーはまた固まった。

そこからは、また鳴雨さんが教えてくれる。

 

「怪人は確かにいなくなりました。

しかし怪人が齎した半斗浦に対する甚大な被害は魔法管理局の正当性を危ぶませるものであり、『無能な管理局を打ち倒す』と主張する組織が幾つも現れたんです」

 

そうして怪人の代わりのように次々とボードに書き込まれる、今となってはどれも悪名高い組織の名前たち。

次々に書き込まれていく無数の組織名は管理局が倒した敵対組織の名前であると同時に半斗浦を襲った悲劇の数でもある。

大体3年前くらいまでテレビもネットもこういう事件の話題で持ちきりだったから、怪人との戦いが終わってから大体2年近くは管理局は休む暇もなかっただろう。

 

「それと……いえ、この話はやめておきましょう」

 

そう言って鳴雨さんはボードに何かを書きかけて、それを途中で消した。

こうして研修の「半斗浦の魔法史」が終わり、それからの内容はデザイアについてや魔法少女と武器の関係やアサルト、ブリッツ、カノン、ディファレンスの分類分け、チームをくむときはABCがバランス良く揃っているのが望ましい事などの適性検査でやった事のおさらいのようなものがほとんど。

 

「……さて、研修はこれで終了です。

晴れてお二人は半斗浦の魔法管理局所属の魔法少女として本登録が完了致しました。

今後の活躍に期待していますね」

 

鳴雨さんがそう言ったのはちょうど時計が正午を指した頃で、私たちはお腹を鳴らしながら研修を行なっていた会議室を後にするのだった。

 

――――――――

 

「『野菜天ぷら定食プチトマト付き』……!?

わ、私これにする!」

 

「えっと……うーんと私は……」

 

本登録を終えた私たちが立っているのは管理局内にある食堂だ。

午前いっぱいに頭を使った反動でお腹の中はもう空っぽ、食堂の券売機を一目見て幸運にも私のお目当てのメニューはすぐに見つかった。

 

「ラフィーは何か食べたいのある?」

 

「えーっと……どれも初めて見るものばかりでどれが良いやら」

 

隣のラフィーはうーんと唸るだけで動かない。

聞けば、そもそも券売機に書いてあるメニューが何のことか分からないみたいだ。

 

「……そうだ、ラフィーお箸使える?

こう……挟むやつ」

 

「は、挟む!?

し、触手にならされた事ありますけど……」

 

「?」

 

そう言って指でものを掴むジェスチャーをしてみるけどラフィーの返答は要領を得ないものばかり。

そうなると券売機の中で食べられそうなものは絞られてくる。

お箸要らないものといえば……。

 

「ならパスタとかサンドイッチとか良いんじゃないかな?」

 

そう言ってラフィーの分の食券を買おうとしてボタンに手を伸ばす。

でもその指がボタンに届く前に手首を掴まれた。

掴んだ手から視線を辿ると、やっぱり止めたのはラフィーだ。

 

「ま、待って!

私がやります!それくらい私にだって……!」

 

そう言ってラフィーは私が教えたメニューの名前を券売機から探し始める。

まず券売機をどう使うのか、私が教えたメニューはどのボタンか、お金はどこから入れるのか、多分どれも分かっていないけど自力でやりたいらしい。

ラフィーも、案外意地っ張りなところがあるみたいだ。

 

「分かった分かった、それじゃ先に席で待ってるね」

 

そう言い残して食券を見せてお待ちかねの野菜天定食を受け取り、積まれた好物のプチトマトに喉を鳴らしながら空いてる席に着く。

そしてお箸を手に取ろうとして、声をかけられた。

 

「……ここ、良いかしら?」

 

そう言うのは黒髪ロングの女の子。

職員というにはまだ若いくらいの歳だし多分この子も魔法少女だろう。

私が小さく頷くと片手でサンドイッチが積まれたトレーを置いて、私の前の席に座る。

 

「ありがとう。

ごめんなさいね、貴方とお話がしたくて」

 

そう言って席に着いたその子の右肩が不自然に揺れる。

……いや、揺れてるのは袖だけだ。

そこに本来通されるべきものは恐らく、ない。

彼女は小さく「いただきます」と呟いてから、左手でサンドイッチを持ち上げては口に運んでいく。

 

「……野菜定食じゃない、ダイエットしてるの?

もっとちゃんとしたの食べなきゃ駄目よ」

 

そんなお小言を言われて、実際間違った内容ではないと思うけど流石に初対面の人に言われても困る。

私はお肉が嫌いだ。

私は少しむっとしながら小さく手を合わせてから茄子天を口に運んだ。

飲み込むのを待ってから、目の前の人は続ける。

 

「昨日の戦い、見事だったわ。

あの……サクガンと言ったかしら、の群れを一撃で全滅させるなんて」

 

「あの……何処でそれを?」

 

目の前の女の子は昨日の私の戦い振りを褒めてくれたけど、嬉しさよりも先に疑念が来る。

イロージェスタに関する報告書もマキナはまだ仕上げていないはずだし、サクガンの名前を知りうる機会があったとは思えない。

 

「あーそうね……現場に駆けつけてきた管理局の子が居たでしょ?

その子に聞いたわ」

 

「あのお店を襲ったのがデザイアだとは思わないんですか?」

 

「デザイアは分裂したりしないのよ。

デザイアっていうのは何百何千人の似た願いを仮面で無理やり一つにして実体を保ってるんだから、分裂なんかしたら仮面で押さえ込んでる個々の願いが抜けてって終わりよ」

 

どうやら手袋の群れがデザイアではあり得ない事には相応の理由があるらしいが、それでも疑念は消えない。

職員の人が、軽々しく事件のことを口外するとは思えないからだ。

あの場所を監視していたか、あるいはこの子も管理局で働いていて職員から現場の状況を聴取できるような強い権限を持っているとか以外で説明が付くとは思えない。

 

「特に釘の散弾なんてよく思い付いたものね。

ブリッツタイプの魔法少女であんな広範囲の面攻撃できる奴なんて早々いないわよ」

 

そう言って私を称賛してくれるけど、すぐにその声色は変わった。

 

「……でも、釘は良くないわね」

 

目の前の子は、先程までの緩い口調を一変させて不快気に言う。

 

「やっぱり、危なかったですか?

こう……後始末の時とか」

 

昨日の事件の後、騒動の後始末をしてくれたのは管理局の人だった。

もしかしてその中にこの子も居たのかな、と思ったけどどうもそれだけではないらしい。

 

「後始末ね……それもあるけど、釘は縁起が悪いわ。

私にも、貴方にもね」

 

そう言うと、彼女は続けて冷たい声色でこう言い放った。

 

「釘は……隔離と分断の象徴よ」

 

その物言いは酷く恐ろしくて、まるで私の後ろに彼女の「敵」が立っていて、それを見据えたような口調だった。

その冷酷さすら感じる物言いに、思わず背筋が震える程に。

 

「……言いたいことは分かるわよ。

釘って物をくっ付ける時に使うわよね、普通はね。

けど例えば、箱の中に物を入れながら箱の蓋を釘で打ったらどう?

そしたら箱の中身は誰も取り出せない。

箱の中と外は、永久に分断される」

 

続く言葉は謎かけのようで、具体的に何を指しているのかは私には分からない。

けれど、彼女にとって釘は何かに関連付けられて、それは彼女にとっての「敵」である……と言う事は感じ取れる。

そしてそれは私にも縁起が悪い、とも言っていた。

 

「……あ、ごめんなさい!

別に責めるつもりは無いの。

そうね……次からはベアリング球とかパチンコ玉とか良いんじゃない?あの散弾技は強力なんだからどんどん使っちゃいなさい」

 

言葉の端々からの威圧感に震えていた私を見かねたのか、彼女は慌てて話題を変えた。

慌てて不穏な話題を私へのアドバイスという形で締めくくり、いつの間にか空っぽになっていたトレーを片手で持ちながら席を立つ。

 

「……ごちそうさまでした。

さて、私はそろそろ行くわね。

これからも頑張って」

 

そう言って彼女は、私に名前も教えずに右袖を揺らしながら雑踏の中に消えていった。

……私への不思議な警句を残して。

 

そこからしばらくして、ようやく私本来の待ち人がやってきた。

両手に抱えられたトレーには山盛りのパスタとフォークが乗せられている。

どうやらちゃんと欲しいものを買えたみたいだ。

 

「や、やっと買えましたー……。

あれ?リオンちゃんまだ食べてなかったんですか?」

 

私の隣に座ったラフィーにそう言われて私のトレーが全然減っていない事に気が付いた。

さっきの子との会話にばかり気を取られていて、手を付けたのは茄子天を人齧りのみ。

もう少し冷めてしまってるかもしれない。

 

「ね、リオンちゃん一緒にやりましょう。

この国の食べる前の作法、誰かとやってみたかったんです」

 

けど、不思議と少し冷めたご飯が不味そうとは思わなかった。

誰かと一緒にご飯を食べるのも、私がリオンになる前はあまり無かった気がする。

だからラフィーと一緒に両手を合わせて。

 

「「いただきます」」

 

――――――――

 

閉庁期間を過ぎて無人になった管理局の廊下。

音の主がいないはずの空間でコツコツという靴音が二つ響く。

双方反対側から互いを通り過ぎるように靴音を響かせ、交差するところで止まった。

 

「……随分無茶するじゃない。

本登録済ませてなかった二人の騒動には介入する、私の有給一日潰して即座に本登録させる、挙句適正試験の結果まで盗み見る……。

やっぱりあの子も、貴方と同じ?」

 

「えぇ、間違いないわ。

アイツらも目を付けてきたでしょ?それが何よりの証拠」

 

密談しているのは二人の女。

片方はスーツを着込んだこの管理局の職員。

もう片方は相手に比べ一回り年下の、黒い長髪の少女だ。

右の袖を空虚に揺らすその様は、しかし彼女の立ち振る舞いを卑屈にする要因にはなり得ない。

 

「……はぁ、貴方は一度火がつくとほんと好き放題するんだから」

 

「……ごめんなさい、有給使わせちゃって。

今度何か埋め合わせする」

 

「そう?それじゃ新作のゲーム機でも買って貰おうかしらね」

 

「……またいつもの?

この前はタバコでその前はビール、さらにその前はパチスロそのまた前は競馬……趣味新規開拓してはすぐ辞めるでしょ。

できればお金をドブに捨てないような埋め合わせが良いんだけど」

 

両者の視線が互いの瞳を捉える事はない。

それは互いに利用し合っているだけか、それとも並べるのは、預け合うのは目ではなく肩と背中だからか?

それは当人たちにしか分からないだろう。

 

「そうね……それじゃ、また行ってほしい所がある」

 

「はいはい、次は何処を襲えばいいの?」

 

「人聞きが悪いわね。

もうタネは掴んでるから摘発するだけよ」

 

「そう……じゃ行ってくる。

『……リザレクション』」

 

それまでの雑談に比べて、話の本筋は驚くほど単調だ。

女性から地図を受け取った少女はそれをポケットに収めると、左手に魔力を込める。

……6つの、黒いキューブ。

それは即座に砕かれて魔法の力を解き放ち、少女を魔法少女へと変えた。

片腕の魔法少女は音もなく廊下を掛けていき、すぐに闇の中に消えていった。

きっと明日の朝には、小規模な残党組織がひとつ壊滅している事だろう。

ただ一人残された女は彼女が消えていった闇の中を見やり、小さく呟いた。

 

「……アズサ」

 

それはこれから戦地に赴く魔法少女を慮ってか、それとも彼女が自らに課す使命を憐れんでか?

きっとそれは当人にも分からないだろう。

R-18版に需要はありますか?(本編ifの敗北シーンや舞台裏のシーンがメイン)

  • 需要はある
  • 本編ifの敗北シーンのみ需要はある
  • 舞台裏のシーンのみ需要はある
  • 需要はない
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