性転換して魔法少女になったけど、いつの間にか淫魔と戦うドスケベ魔法少女の仲間にされていた   作:名護十字郎

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特に2〜3話


9話 スタイン・ホーリーシアンの本気

「は、はは……ははははは!

マジかよ、本当にアタシらであのデザイアぶっ倒しちまった!

おい、アタシらは勝者だぜ?勝った側が這い蹲んなよオラ起きろ!」

 

廃墟どころか更地と化した半斗浦西部、動くものも物音も消えたその場所でサビーの高笑いだけが響く。

疲弊と消耗でその場にへたり込んでいた私は気分が高揚したサビーに腕を掴まれて立たされるけど、まだ引力糸を人に繋いだ反動は頭から抜けない。

まだ足元がふらついて、バランスを保つことも難しい状態だ。

 

「アトラちゃん、危ない!」

 

上手く立つこともできずに前のめりに倒れかけ、慌てたラフィーにしがみついてどうにか転倒せずに済んだ。

そのラフィーも一度に大量の魔力を使いすぎたからか、顔には疲労の色が滲んでいる。

そんな私たちとは打って変わって、サビーは限界に近い私たちの状況が気にならないほどに舞い上がっているみたいで、虚空に向けた狂ったような笑い声は止まらない。

サビー自身も大小様々な負傷をしているのに、まるで意に介していないようだ。

 

「う、嬉しそう、だね……」

 

「あぁ!?当ったり前だろ!

あの忌々しいデザイアをアタシらで直接ぶちのめせたんだ!

丁度日光遮ってて邪魔臭かったし、威張るしか能のない管理局の連中ができなかったことをやり遂げたって思うとすげー気分良くてよ!

ははははは!ざまぁみやがれ役立たずの管理局!」

 

「……サビーさん。

その、管理局と何かトラブルが?」

 

「……あぁ」

 

マキナから事前に「管理局と仲の悪い魔法少女グループがいる」とは聞かされていたけど、サビーの反応は仲が悪いの一言ではとても収まりきらない。

それを訝しんだラフィーの一言に対して、サビーは電源が切れたように唐突に笑い声が掻き消えた。

そして、そこからの言葉はこれまでの笑い声から一転して、まるで絞り出すかのよう。

 

「今から5年近く前だ、アタシは昔に魔法の暴発で事件起こしかけたんだ。

対象をアタシの手元に転移させる魔法……うっかりそれで知らない相手の金を盗みかけてな」

 

「……そいつが財布から金出すのを見て、一瞬だけ欲しいと思ったら魔法が勝手に発動してた。

勿論すぐに金を返して謝ったさ、その人も許してくれた。

けどさ、やっぱり同じ事が起きたらまずいからって管理局に相談しに行ったんだよ。

そしたら……」

 

自らの過去を語り続けるサビーの拳はいつの間にか硬く握られ、声色も僅かに震えていた。

多分、サビーは5年以上前の恐怖から未だ抜け出せていないのだろう。

 

「そしたら、暗い独房に連れて行かれて……。

そこで、ずっと『点字の勉強』させられたよ。

すぐ必要になる、って言われながら」

 

「……ッ」

 

私もラフィーも、それが何を意味するのか分からないほど馬鹿じゃない。

意識してやった訳でもない、すぐに返還して和解した事件に対して管理局が宣告したのは……視力の剥奪。

一生暗闇の世界で二度と光を見る事が叶わない……それがどんなに恐ろしいかは、サビーの身体の震えを見れば一発で想像がつく。

……でも、私たちが想像した恐怖なんて、サビー本人が味わったそれのごく一端に過ぎないのだろう。

 

「……だからアタシは隙をついて管理局から逃げ出したのさ。

怪人事変が終わった後には麻央・トライハートや何人かの魔法少女が管理局の改革を成し遂げたらしいが……そんなの知らないね。

……魔法管理局は、信用できない」

 

そう言って、サビーは深く俯いた。

彼女の語る管理局と私たちがお世話になっている管理局は、名前こそ同じだけどまるで似ても似つかない。

麻央ちゃんによる改革のおかげか、今でこそ魔法少女を守る組織としてやっているけど……それでも、昔の暴政で傷付いたサビーの心が癒えるはずもない。

 

「そうして管理局から逃げて廃墟の西部に隠れ潜んでたら今度は最凶テロリスト、焼けた法典からの襲撃……あんまりだ。

アタシは、前世でよっぽど悪い事したんだろうぜ」

 

そう言ってサビーは空虚な笑いを浮かべる。

虫のさざめきほども響かない、か細い笑い声。

 

『その通りだ、お前は生まれた時から地を這う運命なんだよサビー・バルチャー!』

 

……それを更に塗り潰すかのような嘲笑が、遠くから送られてきた。

声がした方向を見やると、四人の人影が立っている。

その手には各々武器を握っている……魔法少女だ。

 

「ずっと猿山の真ん中に篭られて手が出せなかったが、取り巻きが全滅した今なら楽にテメェをブッ倒せる。

管理局からの脱走に西部の不法占拠、それから……建造物の損壊に民間人の誘拐未遂と魔法少女への傷害も加えてやる」

 

「何のことですか!?」

 

四人に向かってラフィーが怒りを露わに叫んだ。

脱走はともかくとして不法占拠も建造物破壊も、単なる言いがかりだ。

民間人の誘拐?魔法少女への傷害?

きっと電線に中途半端に絡まれているマキナと、最初に糸の接続で意識が混濁した私を正気に戻した時の頬の傷の事を言っているのだろうけど、無茶苦茶だ。

 

「前科モノの罪状なんて少し盛っても誰も確認しないさ。

こういうのは盛れば盛るほど、凶悪犯を捕まえた功績もデカくなる。

……管理局の職員には子飼いの魔法少女に暴れさせて功績を荒稼ぎする奴が居るみたいでね、私らの雇い主も二番煎じにあやかりたいそうだ。

……個人的な恨みはないが、そういう事だから悪くも思うなよ」

 

言いたい事を言い切った連中の下卑た笑い声が響く。

奴らがサビーを狙っているのは明確だ。

立ち上がって戦うべきだけど……私は、まだ立ち上がることすらできない。

 

「……チッ」

 

改めて四人組に対してナイフを構えるサビーの体幹は、僅かながら揺らいでいる。

その身体中のあちこちに擦り傷や裂傷が刻まれている。

先程の戦いでサビーは倒壊したビルの中を瞬く間に駆け巡った、その時は自身の負傷なんて気にしていられなかったんだろう。

一対四の上に満身創痍……残念ながらサビーに勝ち目はない。

 

「……言いたいことは、それだけですか」

 

激しい怒りを剥き出しにして、しかし一帯が凍り付くほどの冷徹さを含んだ声色でラフィーはそう言うと、サビーを庇うように前に立った。

私からはラフィーの背中しか見えないが……あんなに冷徹なラフィーの声色は今まで聞いたこともない。

自身の身長より長い大杖を、何の躊躇もなく四人組に向ける。

 

「何だお前は?

私らは管理局員の命を受けている、妨害するなら容赦はしない」

 

「……ごめんなさい、先輩。

私はこの力を、人相手に使います」

 

ラフィーは相手グループからの威圧などまるで意に介さずに小さく先輩への謝罪の言葉を吐く。

そして……。

 

「……『フレイ・マージュ』」

 

その杖から高熱の火炎弾を解き放った。

ラフィーが普段使う火炎魔法の魔力を大きくチャージしてから放つ、強烈な威力を込めた火炎弾。

それも一発ではない、ラフィーの怒りを体現するように、杖からは次々と炎弾が打ち出されて敵対者へと向かう。

 

「カーマー!防げ!」

「……駄目だ、防ぎきれな、ぐあああっ!」

 

そうして四人組の一人が構えた大楯は、ラフィーのフレイ・マージュを一発防ぐだけで炎上した。

思わず大楯から手を離した持ち主……カーマーに続く第二弾が着弾し一撃で吹き飛ばす。

 

「トゥーサ!アーセクト!助け……いやあああっ!?」

「す、スティル!?」

 

チームの盾役が崩れて隊列が乱れた隙にラフィーの追撃は最適な形で撃ち込まれた。

四人の中で最後尾に陣取っていた、木の杖を持った魔法少女……スティルに向かい三発目が命中。

咄嗟に巨木を生やしてガードするがそんなやわな盾がラフィーに通用するはずもなく、巨木の城砦をスティルごと粉砕する。

 

「よくも二人を!ウオオオオオオオ!」

「待て、ヤケになるなトゥーサ!」

 

一瞬でチームの半数を倒された怒りに任せてラフィーに向かい突っ込んでくる魔法少女が一人。

トゥーサと呼ばれた彼女は両腕のグラブを開き、その中に仕込まれた牙を全て解放すると面頬を外して歪に巨大化した自分自身の犬歯を剥き出しにし、3つの顎を全てラフィーに向けて大きく跳躍する。

 

「……『プシュケー・ゼスト』」

 

対してラフィーは避けようともしなかった。

ただ杖を大きく振ってプシュケー・ゼスト……先のデザイア戦では単なる移動技として使っていた熱波を雑に前方に放つ。

 

「あ、がああああああ!!」

 

それだけ、たったそれだけで敵対者の喉に入り込んだ熱波が彼女を内側から焼き尽くす。

勿論ラフィーも手加減しただろうし相手も魔法少女だから死にはしない。

けれど喉を焼かれる熱を前にして苦しみ喘ぎ、無様に瓦礫の山へと墜落した。

 

「……さぁ、次は貴方です」

 

そうして、残った一人に対しても杖先を突き付ける。

最後の一人……スティルから「アーセクト」と呼ばれていた魔法少女は、大きく後退りした。

 

「……う、わああああああ!」

 

そして、他の三人とは違い杖を向けられている恐怖だけに屈してラフィーに背を向けて走り出す。

その最中何かに躓いたのか瓦礫に倒れ込み、それきり音は絶えた。

 

「……ふう。

サビー、怪我はありませんか?」

 

「あ、ああ……助かった」

 

倒れ込んだ先に火炎弾を撃ち込んで気絶したと判断したラフィーは杖を下ろし、サビーに向き直る。

サビーは自分が助かった安堵よりも、驚愕が大きかったみたいだ。

 

「お前……そんなに強かったんだな」

 

「言ったでしょう?

このスタイン・ホーリーシアンは負けません、と。

……エッチな事されない限り」

 

「あぁいや、そうだったな……」

 

……正直、私もサビー同じ気分だ。

ラフィーがエッチなことされない限りは負けないとは何度も自称していたけど、まさか本当にここまで強いとは思わなかった。

 

「……アトラちゃん、そろそろ帰りましょう。

マキナも病院に連れて行かないといけない」

 

ラフィーに言われ改めてマキナに視線を向けると、デザイア戦の負傷からか完全に気を失っている。

襲撃者たちに気を取られていたけど、マキナの容態も分からない今時間の余裕はない。

それに西部に救急車は通れないから、一度ここから運び出す必要がある。

そうしてマキナの方に駆け寄ろうとして……。

 

「おっと動くな!

……コイツの命が惜しいならな」

 

次の瞬間には、地面から這い出てきた魔法少女……アーセクトがマキナの首筋にドリルのような武器を当てていた。

周囲には細かく粉砕された瓦礫の跡……こいつ、潜ってきたんだ!

 

「テメェ、いつの間に……!」

 

「悪かったな、私は地中を自在に潜行できる魔法が使えるんだ。

そこの女、さっきは私のチームをよくもやってくれたな……だが今回は見逃してやる。

サビー・バルチャー、こいつを殺されたくないなら変身を解いてこっちに来い」

 

「マキ、ナ……!」

 

このノロマな身体は、まだ糸の反動から回復してはくれない。

せめて何かを飛ばせないか周囲を見回そうにも……使えそうなものは既にデザイアに粉砕された後。

見回す限りでは小石程度のものか、持ち上げるのに時間のかかるものしかない。

愛剣のヴァルーシアを飛ばして当てられるならいいけど……今の私はヴァルーシアを支えにして何とか起き上がっている状態、これを飛ばしてしまえばまた倒れ込み、正確な座標への攻撃なんてとてもできなくなる。

そらに私もサビーも立っているのがやっとと言う有様。

ラフィーもマキナを避けて正確にアーセクトだけを狙うことは難しいだろう。

 

「さぁ早くしろ!

お前のような前科モノ一人と引き換えに民間人が一人助かるなんて、こんないい取引、き……を……?」

 

私たち三人が手を出せず歯噛みしてアーセクトが勝ち誇っていた時……彼女が大きく揺らいだ。

それと同時に、鋭い飛翔音と共に瓦礫に細長い何かが突き立てられる。

 

「なん、だ……?

身体が、動かな……」

 

そう言い切ることもできずにアーセクトは倒れ込み、意識を失ったのか変身も解除された。

瓦礫に突き立てられたものを見やると、それは一本のメスだ。

手術に使うような銀色の刃、その先端に何かが塗られている。

 

「間に合いましたか」

 

メスの射線上の先、そこにはまた新たな魔法少女の姿がある。

矛盾するような物言いだが黒い白衣。

病院の看護師が着るような服装に似て、しかしそれを真っ黒に塗り潰したコスチュームを身に纏っている。

ただし今度の魔法少女は私たちを襲う気はないようだ。

その証拠に、彼女はアーセクトの無力化を見届けると即座に変身を解く。

 

「お前……ルルか!

無事だったんだな!」

 

その姿に心当たりがあるのか、サビーは歓喜の声を上げた。

その口ぶりからして、ここに元々居た魔法少女グループの一員だったのだろうか。

 

「……お前も魔法少女になったんだな」

 

「はい、なったのはほんの2、3日前ですが」

 

「……?

魔法少女グループなのに、魔法少女じゃなかったんですか?」

 

「魔法少女グループ、ってのも外の連中が勝手に呼んでるだけなんだよ。

魔法少女じゃない奴もいたさ。

抜尾ルル、コイツもその一人だった」

 

サビーが安堵と喜びの声を上げる中で、ルルと呼ばれた少女はアーセクトを退けてマキナの隣に屈み込む。

そして、首筋や手首を触り始めた。

 

「……大丈夫、脈は問題なくあります。

今から病院に運べば大事には至らないでしょう。

でも右手に何かが食い込んだ跡がある、ガラスだとレントゲンに映りづらいから、CTで診てもらうように医者に伝えなさい」

 

マキナの脈を測っていたみたいで、彼女の無事も教えてくれた。

それだけでなく病院での検査の指示をしながら、抱えていたバッグから薬品を取り出してマキナの右手に当てる……消毒だろうか。

 

「よ、良かった……!

あの、ありがとうございます!私アトラナクターと言って」

 

糸の感覚も段々抜けてきた。

マキナに手当てをしているルルにお礼を言いいながら

立ち上がってマキナの元へと急ぐ。

……その時、さっき聞いたばかりの飛翔音がまた聞こえた。

 

「お、おいルル……?

お前、何やってんだ……?」

 

「ルル、さん……?」

 

私の後ろで、サビーとラフィーの声が聞こえてきた。

そして、私の足元にはアーセクトを昏倒させた毒メス。

そして、ルルの方を見ると……その右手はメスを投げ終わった動きの手をしていた。

 

「スーサレッド・アトラナクター、貴方はサビーを助けてくれました。

なので貴方の友人の真藤マキナを助けました、これで貸し借りはゼロです」

 

ルルの目はどこまでも冷たい。

左手に何本ものメスを掴み、その中からまた一本を右手で掴み、刃先を明確にこちらに向ける。

……そこには、明確な敵意が乗せられていた。

 

「次会ったら私は貴方を殺さなければならない。

もう出会わぬ事を……互いに祈りましょう」

 

そう言い残し、ルルはマキナをゆっくりと寝かせると跳躍して姿を消した。

デザイアのような怪物にでもなく、アーセクトのような利益目当てでもない……それでいて確たる意思の元に向けられた敵意。

勿論心当たりなどないが……きっと私はそれから逃げる事はできない、そんな気がした。

R-18版に需要はありますか?(本編ifの敗北シーンや舞台裏のシーンがメイン)

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