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「ふぇー、便利らよら、おふぁふぇの
「もうお姉ちゃん、ソファでお菓子食べないでよ~」
ソファに座りながらお菓子を食べている星歌は、
今日は休日で、結束バンドのみんなと夕方から集まって練習の予定がある虹夏は、それまで家の掃除をすると兼ねてから決めていた。時間もあるので窓も吹いたりとかなり大がかりな掃除となっているが、普段一人でやるのとは効率が違っていた。
そう、あろうことか虹夏は『世界』に掃除機をかけさせたのだっ!!
閃いたのは前日。自分に幽霊が着き始めてからある程度の日数が経過した虹夏はこの幽霊がある程度自分の意思を読み取って行動してくれることを理解していた。しかも幽霊といいながら、初日に菜箸を手に取ったように物体に触れられることも知っていた。
ここで普通なら他人に見えないことを利用して悪事の一つや二つを働こうとするのが人間だが、あるいは『世界』の元宿主はその固有能力を引き出し、取るに足らない人間を支配しようとしていたが、ここで幽霊に掃除をさせるあたり、虹夏の人の好さがうかがえる。
掃除楽になるじゃんっ!と喜んだ虹夏だが、一つ懸念があった。
姉にばれたらどうしよう、と。
確かに幽霊は物も持てるし、ふたりでやれば効率がいいのもそうなのだが。
いかんせん他人には幽霊の姿が見えないのだ。おそらく他人から見たら物が宙に浮いてるという状況。どう考えてもパニック間違いなしである。
出来れば幽霊と一緒にさっさと掃除を終わらせたい虹夏だったが、休日だったので昼間は確実に姉がいるわけである。いっそ姉がSTARRYで仕事してるときに掃除しようかなと思ったが、そういえば自分も結束バンドで集まるじゃんっ!となり。
結局まあいい機会だしこれを機に幽霊のこと説明するか、と割り切った次第。
そして当日。
目をこすりながらリビングにきた星歌が見たのは、宙に浮いてる掃除機である。
「えっ?」
あれっ、私まだ夢見てんのかな?ここ数日忙しかったからなー、だからって宙に浮いてる掃除機はないわー、となった星歌はベランダに繋がってる大窓を拭いてる虹夏を見るが、虹夏は普段と変わらず「あ、お姉ちゃんおはよー」なんて気の抜けた様子。
いよいよ夢の続きかな?となった星歌だが、「あ、あぁ~。さすがに説明しなきゃだよね~」と苦笑しながら虹夏が吹いていた雑巾を置いてこっちに来た。
「いや~ほらさ、覚えてる?こないだ私朝から発狂してた日」
「あ、ああ。珍しく寝ぼけてた日な。うん、覚えてるけど…」
あ~そんなことあったな、と思い出した星歌。いやでもそれと何の関係がと思考を巡らせてると
「今掃除機かけてくれてるのが、あの日に私にとりついた幽霊さんッてわけ」
「てわけってお前な…」
そう言いながら相変わらずひとりでに掃除している掃除機を見て、だんだん眠気が覚めてきた星歌はえっもしかしてマジなのッと凝視した。宙には浮いているが確かにふわふわと浮いているというよりは、背の高い誰かががっしりと掃除機を持ってるような絵面。幽霊というよりは透明人間では?なんて考えるほどには思考に余裕があった星歌は、幽霊についていろいろ質問することにした。
「あーその幽霊ってのは、どんな見た目なんだ?」
「こう筋肉ががっしりしててね、全身金色で所々青色なんだけど、顔の上半分が将棋の駒はめ込んだみたいになってるの」
「お前マジで何言ってんの」
幽霊って金色なのか。ていうか将棋の駒ってなんだよそいつ人型なのか?まあガタイがいいのはういてる掃除機みて大体わかるけど。
「あー、そいつ大丈夫なやつなのか?こう、呪ってくるみたいな」
「あぁ~ないない!ていうか全くしゃべんないんだよね~ザワちゃん。こっちの考えてることは分かるっぽいんだけどね~」
おいなんだザワちゃんって、今まで聞いてた感じじゃ絶対つけないだろその名前。ていうか何にも言ってないのに考えてること読んでくるザワちゃん怖すぎだろ。
「その幽霊ってのは、やっぱり私とかには見えないのか?」
「う~ん、それが数日後ろについてるんだけど、だれもみえてる感じしてないんだよね~」
なるほど、そこは幽霊らしく普通の人には見えない感じか。まあ誰かに見えてたら騒ぎになってることだしな。
しかしなるほど。聞いていた感じお祓いに急いでいく必要はなさそうだな。もしがっつり呪うタイプの幽霊ならと思ったが、まあ掃除機かけてる時点でそれはないか。虹夏の嬉しそうに質問に答える様子をみて星歌は安心した。
最近の虹夏がいろいろ頑張っているのは星歌も知っていた。このままさらっとSTARRYでライブする気でいるようなのでその時はオーディションの話もしなければいけないが、それでも彼女の嬉しそうなかおを見て特段私がすることはなさそうだな、と星歌は姉らしく妹の頭を撫でた。
「ちょッお姉ちゃん急になに~」
雑に髪をなでる姉に虹夏は 恥ずかしがりながらも嬉しそうにしていた。なんだかんだ言ってこの姉妹、とても仲がいいのであった。
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「あ?出す気ないけど?」
「…え?」
ある日、作詞も作曲もできて、次のライブに向けて滞りなく準備を進めている虹夏たちに、星歌はそういった。
完全に不意を突かれた事になった虹夏は、ただただ驚くことしかできなかった。当然のようにライブに出れると思っていたのだ。しかも、
「あれは思い出作りのために特別にな」「悪いけど、五月のライブみたいなクオリティなら出せないから」
「一生仲間内で仲良しクラブでもやっとけ」
なんて突き放すように言われては、虹夏も悔しかったり悲しかったりでその場から少しでも離れたくなった。
「未だにぬいぐるみ抱かないと寝れないくせにッ!!」
なんて捨て台詞をはいてSTARRYを飛び出してしまった虹夏は、近くのキャンピングカーが止まっている広間で拗ねに拗ねていた。
「ぶーッ」
ハナの高校生がだしてはいけない音を出していると、『世界』がゆっくりと肩に触れた。
「…ありがと。……ごめんね、心配かけて」
表情は変わらないが自分を心配して触れてくれたのが伝わった虹夏は、広間においてあった土管に座りかける。
今回だけじゃない。『世界』が自分のことを常にきにかけてくれてるのを常日頃から虹夏は感じ取っていた。転びそうになった時も体を支えてくれたし夜中におなかが痛くてブランケットにくるまった時も背中を摩ってくれた。命令したわけでもそうして欲しいとも言ったわけではない。なのに彼は自分を思って行動してくれていた。薄々だが虹夏は気づいていた。『世界』には意思があるのだと。その上で自分のそばにいてくれるのだと。
声も発せない幽霊から染みるような優しさを感じた虹夏は周りの人に聞こえないような小声で喋りかけた。
「お姉ちゃんあんな言い方しなくてもいいのに…仲良しクラブだなんて、私たちいつも真剣にやってたよ…」
そう言った虹夏はセリフとは裏腹に少し目に涙を溜めていた。
悔しかった。ただ悔しかった。真剣にやっていたのもそうだが、ようやく夢の第一歩が踏み出せたのだ。大好きな姉が私のために作ってくれたとさえ思ってくれているSTARRYでようやくバンド活動ができることに、虹夏は今までにない生の実感を感じていた。
そんな時に、よりにもよって大好きな姉にそんなことを言われては、虹夏もタマッたもんじゃなかった。
姉に対して嫌な気持ちで胸があふれてくる。喧嘩したときはいつもこうだ。普段は思ってもない嫌な事を言ってしまいそうになる。
「お姉ちゃん…私たちのバンド好きじゃないのかも」
そこまで言って、肩に触れていた『世界』の手の力が少し強まった。
といっても痛いと感じるほどではなかったが、驚いた虹夏は横にいる『世界』のほうまで顔をあげ
『世界』が首を横に振っているのを見た。
「…え、違うの…?」
今まで自分の意思を読み取ることはあったものの、『世界』自身の意思を伝えてくることは初日以来だった。それも自分に関することではなく、虹夏の姉に対する考えを否定してきた。
『世界』は見てきたのだ。出会って数日だがこの姉妹の仲の良さを。宿主以外の人間の考えは『世界』も読めないが、それでも妹に対して悪意ある気持ちで否定してくることはないと確信していた。
そのことをどうにか伝えたくてようやくそれが伝わったわけだが、突然のことに虹夏は驚いて固まっている。どうしたものかと『世界』が固まっていると
「わかりやすく拗ねてる」
「うっさい」
いきなり飛び出した虹夏を追いかけてきたのだろう山田リョウと喜多郁代が話しかけてきた。
ちょっと離れたところで青い顔した後藤ひとりが千鳥足のままこっちへ向かってくるのも『世界』が確認した。
色々話を着ているうちに一週間後のオーディションでバンドの審査があることを聞いた虹夏は安心したように、あるいはやる気がみなぎったかのようになり、その日から一段と練習に力を込めた。
バンドとしての成長とは何かを考えていたメンバーもいたが、虹夏は最初からはっきりイメージを掴んでいた。
お姉ちゃんを納得させること
姉は最初から自分たち結束バンドを見ていたのだ。そのうえで今のままではライブはさせないと言ってきた。つまりこれは、これからバンドをやっていく時点で必要な試練なのだと。一週間で身につけれる技術なんてたかが知れてるし、そんなことあの姉が分かっていないはずがない。ようは技術ではなく熱量なのだ。それも今まで以上の個人と全体の熱量。
そう思って努力した虹夏たちに
オーディションの日がやってきた。
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何度も何度も練習を重ねて迎えたオーディション。結果は合格だった。どんなバンドか大体わかった、といった星歌には相変わらずわかりにくいなーお姉ちゃんと思ったが。
みんなとひとしきり喜んだ後にチケットノルマを説明し、(ボッチちゃんが若干すごいことになっていたけど…)姉より先に家に帰った虹夏は風呂の入った後パジャマ姿でソファに深くもたれこんでいた。
今日はとても疲れた。
万が一合格をもらえないことも考えたのだ。
だからこそ合格をもらえたことがとてもうれしくて、同時に今までの疲れがドバッーときた。
「いやー、今日はとても疲れたなぁ…。…ありがとね色々心配してくれて…」
重そうな瞼を頑張って持ち上げながら、隣に座っている幽霊に礼を言う。
オーディションがあると聞いた時も、この一週間練習したときも、色々と自分に気を使ってくれいていたことを虹夏は感じ取っていた。
支えられていたことをわかっていたから虹夏も全力を出せた。良き隣人を持ったと虹夏はつくづく思った。
「私、一度頑張るって決めたらとことんやるから、息抜きとか下手なんだよねぇ…。だから」
相当疲れていたようだ。瞼が落ち始めてきた。
「どれだけ…一緒に入れるか、わかんないけどぉ…これから…も…よろしく…ねぇ…」
そういうなりすぅーときれいな吐息が聞こえ始めた。
ソファで寝てしまったため、風邪をひくこともあるかもと考えた『世界』は彼女を自室へ運ぼうとするが、玄関のほうでガチャっと音がしたため、そちらを見た。
「ただいまーッて、珍しいなこんなとこで寝てんの」
ちょうど帰ってきたらしい星歌がソファで寝ている虹夏を見て意外そうな顔をしていた。
「今日オーディションだったし色々疲れてたのかもな」と笑いながら星歌は成果の寝顔を近くでまじまじと見ていた。しばらく虹夏の髪や顔を触ったりしていた星歌だったが、思い出したかのように
「色々面倒みてもらったっぽいね。あんがと」
当然星歌は自分のことを視認できるわけがないが、それでも虹夏の近くに『世界』がいるのがなんとなく感覚でわかった。見えないはずの人間に喋りかけられたので当の『世界』本人は驚いた表情になったが、それは誰にもわからなかった。
「私もたまーに言葉が足りなかったりすることあるからさ、それでこの子のこと傷つけたりすることもあって…。そういう時にこの子のそばにいてあげる人がいると、この子も大分楽になれると思うの」
両親がいないこの姉妹は、本来は親に思いをぶつけたり相談したりする機会がほかの子供よりも少なかった。仲のいい友達はいるが、そういうのとは別の頼れる存在として『世界』が認められているのをはたから見ていた星歌は感じ取っていた。
結局はこの姉にして妹ありなのだなと、『世界』はその血を奇妙な縁を感じ取った。
「よかったらこれからも、この子のことよろしくね。ッて私何言ってんだか…」
普段なら面と向かって言わないことを言ったせいか、はたまた見えていないものに対して喋りかけたのに恥ずかしさを感じたのか。顔を赤くした星歌は手で顔を仰ぎながら風呂場に行こうとして
「ん?…うわっ!!浮いてる…」
自分の妹が寝たままの体制で宙に浮いてるのを見た。おそらく体制的にあれはお姫様抱っこという奴だろう。あれ、そういえば私誰かにされたことあったっけな、なんて考えながら摩訶不思議な光景を見ていると
「!!」
薄っすらと。本当に薄っすらとだが、かつて妹が説明してたような、文字道理の黄色い筋肉もりもりのソレが見えたような気がして。
「マジで説明道理じゃん…」
と、そのまま妹が宙に浮きながら自室に向かっているのを見て、疲れた声でそう呟いた。
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「ここが日本か…。休暇を取るには随分といい気候じゃあないか…。」
ある男が、キャリーケースを片手にそう呟いた。
男は随分と久しぶりの休暇を日本で楽しむ気でいた。色々仕事は溜まっていたが幹部たちの優秀さを信頼して、しばらくの間娘の護衛まで頼んできたので男は久しぶりに心から羽を伸ばせることに心の底から喜んでいた。
(本来ならこんなところに来ずベネツィアに閉じこもっていればいいんだろうが、私は『休暇』を取りに来たんだ…わざわざ、この日本になぁ…。)
男が堂々と日の下を歩くのは本当に久しぶりだった。仕事の関係上いつ命が狙われてもおかしくはない。そのため日頃は最も信頼している部下に
(ホテルにチェックインした後はどうするか…。そのままホテルで過ごすのもまあ悪くはないが。何かいい案は…ヌウッ!!これは!!)
徒歩でホテルに向かっている最中に近くで何かイベントはないかとスマホで探していた男は、夕方から夜にかけて近くで祭りがあることを知った。
(祭り…祭りか…。普段なら行くことはまずないが、こういうときでもないと行かないしな。フッ、たまにはいいだろう……。)
娘がいれば喜んでいたろうなと思いながら、男は道を歩き出した。
この先に奇妙な縁があること知らないまま。
すまん出す気ないとか言って、一人だけジョジョキャラ出すことにしたわ。これ以上にキャラは出さない!!たぶん。
次はどっかのボスが、誰かさんの路上ライブを見るかも…。