リュウのラーニング大冒険   作:トッシー

7 / 7
ラーニング7

ベンガーナ郊外の湖。

辺りは散々な惨状になっていた。

湖の水は蒸発し、地面にはスプーンで繰り抜かれたようなクレーターが出来き、山には穴が開いていた。ベンガーナの街の住人はいきなり現れた強大な竜とそれを相手に戦う魔王軍に恐怖していた。超竜軍団の竜の群れに襲われた直後なのだから、その恐怖は更に深まっていた。

竜騎衆を倒したリュウは、これで完全に魔王軍を敵に回してしまった事になった。

そして戦いの様子を見た人間からも…。

 

「こ、これは…っ!?ラ、ラーハルトッ!!?」

 

そこに現れたのは一人の壮年の男だった。

黒眼に逆立った黒髪。攻撃的な空気を纏った戦士。

背中に大剣を背負っており、立ち振る舞いに隙がない。

 

「う、ううぅ……バ、……ンさま…」

 

男はラーハルトに駆け寄ると、その身を抱き起こす。

 

「何があった?他の二人は…っ?」

 

「も、もうしわけ…ありません……俺以外は……もう」

 

男はこれ以上しゃべらせないようにラーハルトを制すると回復呪文(ベホマ )を唱えた。

淡い光がラーハルトの傷を癒してゆく。

 

「貴様の仕業か…我が竜騎衆をたった一人で倒すとは只者ではないようだが…」

 

「倒しておいて言うのも何だけど、先に仕掛けてきたのはそっちだからな?」

 

リュウは睨みつけてくる男に手を振りながら答えた。

まるでこの状況は不本意だと言わんばかりに。

 

「私は魔王軍超竜軍団の団長……、竜騎将バラン」

 

「そっか、カール王国を滅ぼしたのはお前か」

 

「そうだ」

 

バランを前にしたリュウは、何ともいえない不思議な感覚を感じた。

ここに至ってリュウは目の前の男が人間だとは考えない。

見た目は人そのものだが、リュウの竜眼には凄まじいまでの圧力(プレッシャー )を放つ竜人が映っていた。

 

「最近は名乗ってばっかだな……俺はリュウ、竜族だ」

 

「竜族、だと?貴様は人間ではないと?」

 

「そっちもだろ?混じってるみたいだけど竜の気配を感じるぞ」

 

バランはリュウの問いかけに無言で剣を抜き放った。

ドラゴンの意匠が施された長剣。

それはリュウの持つ剣『ドラゴンブレイド』に良く似ていた。

リュウはバランの戦意に溜息をつくとドラゴンブレイドを構えた。

 

「はぁ…、やっぱりこうなるのか」

 

「貴様の正体が何であろうと人間の味方をした挙げ句、部下を倒した者を生かしてはおけん…」

 

別に人間の味方をした訳ではないのだが、そう言ったところでもう遅いのだろう。

明確な殺意を向けてくるバランを相手に説得は無理だとリュウは思考を切り替えた。

バランの額が光り輝き、紋章が浮かび上がった。

それはカール王国で見た騎士の遺体に刻まれていたものと同じもの。

それはまるで竜の貌の様な形をしていた。

 

「成程、それで竜騎将か…」

 

「行くぞ…」

 

バランは身体から闘気を噴出し大地を蹴った。

凄まじい速さで肉薄してくる竜騎将をリュウも闘気を解放して迎え撃つ。

両者の剣が激しく交差し火花を散らした。

 

「……ぎぎっ」「……おおおおっ!」

 

ギィンッ!キンッ!!ギギンッ!!!

 

幾度と刃を交えてリュウは後方に跳躍、同時に呪文を唱えた。

極大爆裂呪文(イオナズン )ッ!!!

 

リュウの呪文によって圧縮された魔力球が大爆発を起こした。

大気を揺らすほどの震動がバランを飲み込み、その身を激しく揺らす。

しかし、

 

「はあああああっ」

 

バランは何事も無かったかのように爆風の中から飛び出しリュウに剣を振り下ろす。

その斬撃を紙一重で防いだリュウは舌打ちしてバランを睨みつけた。

バランの全身を包み込む光の気流の様な闘気は一体?

 

「ちっ、この闘気、唯の闘気じゃないな…っ!?」

 

「そうだっ!この光を竜闘気(ドラゴニックオーラ )と呼ぶ」

 

「ドラゴニックオーラ…っ?」

 

「貴様の云ったとおり私は人間ではない」

 

剣を鞘に戻したバランは語りだす。

遥か昔、人と魔族、そして竜の三神が生み出した全く新しい生命体にして、竜の力と魔族の魔力、そして人間の心を併せ持った究極の戦士。

いずれかの種族が野心を抱き世界を我が物にせんとした時、これを打ち滅ぼし天罰を下す万物の調停者。

 

「それが私…、(ドラゴン )の騎士なのだ」

 

竜の騎士はその額に(ドラゴン )の紋章が輝く時、竜闘気(ドラゴニックオーラ )と呼ばれる光の気流に覆われる。

それは肉体を鋼のように強化し、あらゆる攻撃呪文を防ぐ最強の矛にして最硬の盾なのだ。

そして竜闘気(ドラゴニックオーラ )を全力で解放した(ドラゴン )の騎士は、

 

「この地上のいかなる者でも太刀打ち出来んっ!!」

 

「ぐぁっ!?」

 

バランの闘志に呼応するように輝く竜闘気(ドラゴニックオーラ )は暴風の様な連撃を可能にした。

この世界にきて初めての苦戦。

リュウはバランの殴打に、脚激に打ちのめされていく。

その眼には部下を殺された事と人間に味方するリュウへの憤りが宿っていた。

殴る!殴る!殴る!蹴る!!蹴る!

剣を収めたのはこの為、リュウへの怒りを直接ぶつける為。

そして自身の戦闘力への絶対的な自信から。

次々と繰り出される攻撃をただその身で受け続けるリュウ。

しかし其の眼光は一切衰えておらず、唯じっとバランを見続けていた。

 

……いけない、バラン様

 

それは小さな呟きだった。

ラーハルトがまだ回復しきっていない身体をどうにか起こそうと足掻いていた。

ベホマで傷は癒えたものの、体力までは回復しきっていなかったのだ。

 

「これで沈め!」

 

バランの強烈な拳打がリュウに迫る。

しかし、その拳がリュウの顔面に叩きこまれる事は無かった。

 

「な、なに……っ」

 

瞬間、リュウはバランの拳を受け止めていたのだ。

驚愕するバラン。しかしそれは攻撃が防がれた事に対するものではなかった。

そしてリュウの全身か光の気流が噴き上がった。

バランはリュウの額に注目する。そこには紋章は輝いていない。

当然だ。(ドラゴン )の騎士は一代かぎり。唯一つの例外を除き有り得ない。

しかしこれはまるで、

 

「馬鹿な…っ、ド、竜闘気(ドラゴニックオーラ )…だと?」

 

そう、リュウは戦いの中で文字通りバランから竜闘気(ドラゴニックオーラ )学習(ラーニング )したのであった。

 

「それに、竜闘気(ドラゴニックオーラ )で強化した私の攻撃が…っ!?」

 

まるで効いていなかったのだ。

リュウの身体には痣一つ出来ていなかった。

ネタばらしは何の事はない。

スキル『オーラバリア』 スキル『大防御』

リュウはこの二つのスキルを凄まじい行動速度(EXターン )で併用しバランの猛攻をノーダメージで防いだのだ。

 

 

戦いの様子を見守っていたラーハルトが唇を噛みしめる。

有り得ない事だと思っていた。いくら自身の必殺技(ハーケンディストール)を真似た事実が有ろうと、(ドラゴン )の騎士だけに許された固有技とも云える竜闘気(ドラゴニックオーラ )を真似るなど…。

先程、自身がバラン様に忠告出来ていればこんな事には…。ラーハルトはギュッと拳を握り締める。

 

「俺も竜族、その闘気の真似事くらい朝飯前っ!」

「ぐあっ!?」

 

お返しとばかりに今度はリュウが拳を振るった。

完全に攻守逆転。

 

「らああああああああああっ!」

「ぐあああああああああああああっ!!!?」

 

リュウの超速度から繰り出されるスキル『飛び蹴り』がバランの顎を捉えた。

バランは大きく脳を揺らしながら吹っ飛んでいった。

 

「これでどうだ!?」

 

大の字に地面に伏したバランにリュウが吼えた。

この戦いで得た新たな力にリュウのテンションは高まる。

この世界は新スキルの宝庫だ。

未知への好奇心に火がついたリュウを止められる者は誰も無い。

以前の世界でも本来の目的を後回しにして寄り道ばかりしていた男だ。

だからこそ、リュウはバランへの止めは刺さなかったのだ。

この選択がリュウにどんな未来を齎す事になるのか、その結果に気付かないままに…。

 

 

 

 

 

 

続く?

 

本日のラーニング

 

 

竜闘気(ドラゴニックオーラ ) AP30

 

 

攻撃力 防御力 素早さ 2倍 魔法無効化

 




なんかリュウの性格が…。
まぁリュウ=プレイヤーですから…。
私は寄り道ばっかりしてましたから。
妖精ばっかり愛でてましたw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。