甲殻大怪獣ザリラ   作:佐藤特佐

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ざっくりキャラ紹介

甲殻怪獣ザリラ…主人公を守ろうとするザリガニっぽい怪獣。
刃物怪獣サーベルヘッド…頭が二股のサーベルになってる怪獣。敵陣営の自信作。

私(桂木 悠)…ザリラを呼び寄せた元凶。悪いヤツに捕まって拘束中。
神山…悪いヤツ。
坂井くん…旅で出会ったお友達。



第10話 ハサミvsサーベル

 

 

 

 桂木 悠は神山にモニターを見せられていた。映っているのは、相対するザリラとサーベルヘッドのライブ映像。2体の姿はさながら、決闘を始める直前の武士のようであった。

 悠の手に力がこもった。拘束されていても、ザリラへの思いは変わらない。

 

 ザリラが何者で何が目的なのかよくわからない。でも、私はゼウスなんかより自分の信じるものを信じたい。

 

 ザリラ……勝って!

 

 

◇◇◇◇◇

 

 サーベルヘッドが跳んだ。猫のような身軽な一飛びでザリラを飛び越え、背後についた。

 ザリラは振り返るが、それより早くサーベルヘッドが間合いを詰める。速い!

 

 

ザッ‼︎‼︎

 

 

 サーベルヘッド自慢のサーベルがザリラの首に傷をつける。一瞬遅れ、甲殻の傷から滴る血。

 

 ハサミを振り翳し反撃を狙うザリラ。サーベルヘッドのサーベルとザリラのハサミが激突した。

 

 

キーーーン‼︎

 

 

 二つの凶器が激突し散る火花。押しかかるサーベルヘッドだが、体重に勝るザリラがそれを押し返す。力任せに腕を一振りして距離を置くと、対するサーベルヘッドは空中で回転して着地した。なんという身のこなしか。

 

 

 ザリラの身体がスパークを帯び始める。膠着を覆すべく閃熱光弾を撃つつもりだ!

 

 ザリラが大きく息を吸い込むと、口の中にエネルギーが充填されていく。そのまま水平方向に頭を突き出し…口から光の弾を放つ‼︎

 

 

ボシュッ‼︎‼︎

 

 

 サーベルヘッドの正面から迫る、膨大な熱量とエネルギーを内包した光弾。光の速さで接近するそれをかわせるはずもなく、サーベルヘッドはあっけなく…。

 

 

ッッドォォーーーーーン‼︎

 

 

 命中!巨大な火球が出現し、敵怪獣の姿が炎に消えた。噴き上がった炎は周囲を包み込み、大火災がビル街を襲った。膨大な熱量でガラスが歪み、溶け落ちる。

 黒煙が立ち昇る中でザリラは勝利を確信した。これを喰らって生き延びるやつなど…。

 

 しかし。

 

 燃え盛る炎の中から何かが這い出てきた。その姿にザリラは驚愕する。

 サーベルヘッド。軽いやけど以外にダメージを負っていない。渾身の一撃が、どうして…⁉︎

 

 閃熱光弾が到達する瞬間、サーベルヘッドは自慢のサーベルで光弾を「斬り」、攻撃を回避していた!光をも斬り裂く刃とは……なんと鋭いサーベルか。

 

 

 歯軋りするザリラ。サーベルを振り翳しながら近づいてくる敵を前にジリジリ後退するしかない。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 モニター越しで見守る私は気が気ではなかった。閃熱光弾が効かないとは、サーベルヘッドは想像以上の強敵だ。見ていることしかできないのがもどかしい。

 

 私の方を見て、神山は言う。

「生体兵器にもそれぞれ役割がある。デヴォラは人間を追い立てる重戦車、スカイスレイヤーは空中から奇襲する爆撃機、そしてサーベルヘッドは局地制圧用の駆逐艦…。コイツは活動半径が狭いのが弱点だが、近距離戦ではザリラを凌駕している。」

 

 なるほど、怪獣たちの見た目や能力がそれぞれ違っているのも納得だ。

 サーベルヘッドは活動半径が狭い、つまりそれは「燃費」が悪いってこと。持久戦に持ち込めばザリラにも勝機はあるはず…!

 少し希望が見えた気がした。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

ズズズズ……

 

 サーベルヘッドの足が地面を掻く。興奮した雄牛の如く。ザリラはかかってこいとばかりにハサミを振り翳し挑発した。

 

バッ‼︎

 

 地面を蹴って、サーベルヘッドが跳んだ。鮮やかに空中を滑るサーベルヘッドは、縦方向に回転。そのままザリラを一刀両断にするつもりだ。

 光をも切り裂く刃がザリラに迫る。

 

 

カキーーーーーーン‼︎

 

 

 右手のハサミでサーベルを受け止めるザリラ。ハサミで挟んで刃を止めた。まさに真剣白刃取り‼︎

 一瞬膠着した両者だが、サーベルヘッドが逆方向に回転し、離脱した。格闘戦は不利と判断したのか。再び距離を置き睨み合う2大怪獣。

 

 

 ザリラは敵を睨みつける。そして思案した。

 ……このままでは決着がつかない。多少荒っぽいが、やってみるしかない。ちょうどここはビルが密集するエリアだ、好機は今しかない。

 

 

 ザリラは決意したように吠えると、敵に向かって突進した。車を街路樹を踏み潰し飛びかかるが、サーベルヘッドは素早くそれを回避。

 しかしそれがザリラ狙いだった。サーベルヘッドのサーベルは長すぎて、小回りは効かないはずだ。敵の間合いに入ってしまえば脅威は半減する。ザリラはそう踏んだ。

 

 サーベルヘッドは振り返ってザリラに相対しようとするが、長い刃がビルに当たって回転が遅れてしまった。思惑通りに!

 

 隙を見逃さず、ザリラは敵の尾を挟んだ。ザリガニのそれを大きくしたようなハサミは、相手に大ダメージを与えるのに十分なはずだ。

 読者の皆さんも、ザリガニやカニのハサミが驚くほど強力だとご存じだろう。

 尻尾を挟まれ悶絶するサーベルヘッド。凶器が容赦なくその肉体を斬り込もうとする。

 

 しかし、サーベルヘッドの身体は攻撃になんとか耐えた。

 不本意だが、別の攻撃に変更だ。

 

 ザリラは相手の尾を挟んだまま振り回す。質量1万7千トンを振り回す驚異的な怪力。目を回し、たまらず声を上げるサーベルヘッドだが、その表情は変わらない。

 ザリラはそのまま敵をビルに叩きつけた。不運なビルは粉々に吹き飛ぶ!跡形も残らない。勢いをつけられたサーベルヘッドは投げ飛ばされるが……空中で回転して綺麗に着地!

 

 サーベルヘッドの体幹は、他の怪獣に比べてもとても強力だった。設計者が激しいアクロバット戦を考慮していたのである。

 

 着地後、すかさず体勢を立て直して、再び飛びかかるサーベルヘッド。あまりに急な攻撃!

 サーベルヘッドの容赦ない突撃。鋭利な刃は狙いを逸れず、ザリラに突き立てられる。

 

 

グサッ‼︎‼︎

 

 

 鈍い音がした。ザリラが自身の身体を見ると、みぞおちに敵のサーベルが深々と刺さっていた。見上げるサーベルヘッドと目が合った。

 

 

ギィィィィィィィィーーーー‼︎

 

 

 遅れて襲ってきた痛みに苦しむザリラ。サーベルヘッドは刃をより深く刺してくる。

 遂にザリラが膝をついた。傷口と口から血が溢れる。それでも刃を抜かないで、サーベルヘッドは冷酷な視線を向けるだけだった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

「ザリラっ‼︎‼︎」

 モニターに食い入る私。これは絶対痛いやつだ。格闘技ならレフェリーが止めに入るだろうし、路地の喧嘩なら警察が割って入る。でもこれは大怪獣同士の戦い……レフェリーも警察もいない、無法地帯の決闘なのだ。

 

 しかし、深傷を負ってもザリラは戦いを止めようとはしなかった。

 私は目を閉じて祈った。拘束されて手は握れないけど、どうか届いてくれこの思い。

 

◇◇◇◇◇

 

 

 ザリラを刺したまま走るサーベルヘッド。そのまま高層ビルの方へ突撃する。

 

 

ッダーーーーーン‼︎

 

 

 ザリラがビルに叩きつけられた。身体により深く刃が刺さり、血が溢れた。ザリラは敵の背中を殴ろうと手を上げたが…力尽きてその手がダラリと垂れ下がる。

 ザリラが負け……否!その目だけは輝きを失っていない。

 

 サーベルヘッドは頭を振り、ザリラの傷口を広げる。表情ひとつ変えず、その冷酷な目が爛々と輝いた。

 

 と、その時!ザリラがサーベルを抜いた。傷口が広がったことで、抜きやすくなったのだ。

 傷口から血が溢れるが、それもやがて再生能力によって落ち着いていく。若干だがダメージは削減された。

 

 

 再び突進してくるサーベルヘッド。鋭いサーベルが振り翳され……!

 

 と同時に、ザリラの背中がスパークを始める。強力なエネルギーが身体を巡り、大きく開かれた口に収束した。閃熱光弾‼︎

 

 

ボッ‼︎‼︎

 

 

 光の一閃は、やはりサーベルに切り裂かれる。直後、飛びかかってきたサーベルヘッドを片手で押し返すザリラ。攻撃をなんとか受け流し、体勢を立て直した。

 

 

 そして。

 切り裂かれた閃熱光弾の片割れが向かう先は……国防軍本部!光弾は本部の目前に着弾し、巨大な爆発が巻き起こった。

 これもザリラの思惑通り。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 炸裂の振動は地下深くの私が拘束されてる場所まで伝わってきた。机の上のグラスが揺れ、電灯が点滅した。

 さらに……。手足に違和感を覚え、それに気づいた私は…。

 

「ザリラめ、無駄な悪あがきを。」

 神山は私を見て笑った。そして続ける。

「さぁ、完璧を妨害するザリラを……ぐあっ⁉︎」

 

 私の拳が神山の発言を遮った。多分初めて人を殴ったが、拳は彼の顔面にクリティカルヒットしてしまった。私、ボクシングの才能あるかも。

 

 

 閃熱光弾は強烈な電磁波を伴う。したがって、付近の電子機器に動作不良を起こすことができるのだ。……多分。私にはそんなムズカシイ話はわからん。

 ともかく、そのおかげで拘束具が外れた……ザリラが助けてくれたのは確かだ。

 

 

 身体にまとわりつく変な機械のコードを引っこ抜いてぶん投げ、身の自由を確保。もちろん腕輪にくっついていたコードも。

 そして殴り倒した神山を見下ろす。

 

 すると、近くの棚に置かれていた『瓶』に目が行った。見覚えがある。これは……坂井くんのテルミット⁉︎コイツ、坂井くんにも嫌がらせしてたんじゃないだろうな‼︎

 私は再び拳を握りしめる。

「これは坂井くんの……っ」

 その時、ちょうど起きあがろうとする神山。

「分だっ‼︎‼︎」

 また顔面にパンチが直撃し、彼のメガネが粉砕された。あーーやっちまった。

 

 

 神山が完全に失神したのを確認。

 さて、ちょっと部屋の中を見させていただきますか。とりあえず、一番大事なモノがありそうな『極秘!』とわかりやすく書いてある棚を弄る。

 取り出した書類の束をパラパラめくってみる。どうやらこの紙には怪獣たちの起源や生物学的身体特徴について書いてあるらしい。そーゆーのは興味ないので、そこら辺に投げ捨てる。

 

 仕事してて数少ない「為になった」と思うことが、書類を早く読む能力だ。パラァっと目を通すだけで、今必要な情報かそうでないかすぐに判断できるようになった。

 それがこんなとこで活きてくるとは。

 

 次の書類に目を通すと………これは⁉︎ゼウスの支配についての内容だ!

 

 読み進める自分の顔がどんどん青くなっていく自覚があった。これはかーなりヤバい内容だ。

 とりあえずもらって行くとしよう。あとでこれを証拠に奴らの計画を阻止するんだ。

 

 そこら辺にあった肩掛けバックを拝借し、資料を詰め込む。……ついでにさっき見つけたテルミットも入れてこう。なんか役に立つかもしれないし。

 

 

 さぁ、ここからどうやって地上まで逃げようか。

 

 

 幸い、急な停電と電子機器の障害で親衛隊たちは右往左往するばかり。私にかまっている暇なんてないし、そもそも見つからずに廊下に出られた。

 

 連れてこられた道は覚えていないから(眠らされていた)、直感で進む。走っては止まり、走っては引き返し……。動きを止めようとする足を無理矢理動かして、私は走った。

 そしてやっと見つけた。

 目の前には階段。案内図によると、暗くジメジメしたその階段は地下30階から地上までを繋いでいるらしい。エレベーターを使えない今、これを登るしかない。

 私は躊躇せず足を踏み出した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「神山様…ご無事ですか?」

「これが無事に見えるか…?」

 鼻血を垂らしみっともない格好になった神山は、親衛隊に肩を貸してもらい立ち上がった。あの女……小柄で貧弱そうだからと見くびったのが間違いだった。

 よくもこんな目に…!今まで誰にも負けず優秀で、常に人に尊敬されてきたのに。こんな感情を抱くのは初めてかもしれない。実に不快だ。

 

「桂木は逃走中ですが、いかがなさいますか?」

「……まぁ放って置け。ここは軍の本部だ、じきに捕まる。」

 彼はチラッとモニターの映像を見る。ザリラとサーベルヘッドの戦闘はまだ続いていた。忌々しそうに目を細める。

 

「甲殻類型怪獣の攻撃で、システム全体に不具合が発生しています。完全復旧には相当時間が…!」

 親衛隊の報告を耳にし、神山は唸る。

 

 

 

 

 

 ザリラは深傷を負いながらも未戦闘を継続していた。

 

 

 刃を振り回しながら突進するサーベルヘッド。敵の攻撃を、ザリラは反転して分厚い背中の甲殻で防御した。サーベルは食い込まず、刃の軌道が上に逸れた。

 そしてそこから、反撃の一撃!甲殻類特有の筋肉質な尾で打撃する。サーベルヘッドの身体は空中に持ち上げられた。

 

 

スタッ

 

 

 しかし、サーベルヘッドは器用に着地する。お互いに手を出せないギリギリの距離を保ちながら様子を疑う2体の怪獣。戦いに静寂が訪れた。

 

 

 




次回に続く。


サーベルヘッドは大悪獣ギロンをめちゃくちゃ意識してます。個人的にガメラ怪獣の中で1番好きなので…。
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