視点が変わるところに◇◇◇◇◇を挟むようにしてみました。
海原海岸の沖数十キロ
ここに2隻の巡洋艦、5隻の駆逐艦から成る艦隊が集結していた。その目的はもちろん、飛翔怪獣スカイスレイヤーの迎撃である。
旗艦を務める巡洋艦のレーダーに「敵」が映った。
「9時の方向、レーダーに感あり!本艦隊に向け音速で飛来する物体1。」
「対空戦闘用意!」
「対空戦闘用意!」
隊員が復唱。薄暗い中にモニターの明かりだけが強調される。滴る汗。
「艦対空ミサイル、目標にロックしました!
「発射!」
垂直発射管からミサイルが連続射出された。爆炎を残して上空に消えるミサイル。
艦隊の他の艦も次々とミサイルを発射する。
レーダーには、ミサイルのカーソルがスカイスレイヤーのシグナルに近づいていく様子が映されていた。
そして両者の距離はどんどん狭まり…。
「弾着、今‼︎」
管制官の高揚した声。ミサイルのカーソルとスカイスレイヤーの表示が重なる。
しかし。レーダー上のスカイスレイヤーは減速せず飛行を続けていた。
「誘導弾全弾命中するも効果ありません!」
指揮官はすぐさま命令を下す。
「艦砲射撃に切り替える。レールキャノン、射撃用意!
砲塔が迅速に旋回し、上空に向けられる。
「レールキャノン自動追尾良し!」
「主砲、撃ち方始め‼︎」
ボォォーン‼︎
レールキャノンが火を吹いた。超音速で撃ち出された弾丸は、目標の直前で空中分解。散弾として敵に覆い被さるのだ。
しかし、やはりスカイスレイヤーに対しては効果がない。スカイスレイヤーは艦から目視できるほど近づいていた。
「近接防空!」
近接防空システムCIWSが起動。すぐさま敵に標準すると、そのバルカン砲が回転する。
ヴィーーーーーーーーーー
砲身が回転。砲弾は確実にスカイスレイヤーを捉えているが、ミサイルでも傷つかない怪獣を迎撃するには威力不足だ。
キューーーーーーーーーン
艦隊の上空をスカイスレイヤーが通過していった。遅れて届く衝撃波で艦が揺れる。隊員たちは周囲の物に掴まってなんとか耐える。
作戦失敗…。乗組員の誰も何も言えなかった。
「迎撃作戦失敗、飛翔怪獣は海原市方面へ向かっています!」
面々は黙り込み、管制官の通信以外で話し声は聞こえなかった。
◇◇◇◇◇
その頃 私、桂木 悠と坂井は海原海岸に居た。
目的地、海原海岸に到着した。バイクを止め、崖っぷちを歩く。高さ数十メートルの断崖絶壁が海に突き出た地形だ。
やっぱり、夢で見たあの風景に似ている。さて、どうやってザリラを呼ぼうか。
夢で見たみたいに、膝をついてお祈りすれば良いのかな。それとも神社の参拝みたいにするの?
そんなことを考えていると。
キィィィィィン
轟音が轟く。私も坂井くんも空を見上げる。
太陽を横切る巨大な影。初めて生で見たスカイスレイヤーは想像以上の巨大さだった。半透明の翅が太陽光を反射して眩しい。
スカイスレイヤーは私たちのいる方に真っ直ぐ向かって来る。決して私たちを狙って殺しにきているわけではないだろうが、でも、ここが危険であることに変わりはない。
私は自然と拳を強く握りしめた。
「ザリラ…。」
呟いた、その時。
沖合の海が盛り上がった。白波が弾け、中から巨大な…赤黒い物体が現れる。
視界の隅で坂井くんがあたふたしてるのが見えたけど、そんなことはどうでもいい。来てくれたんだ、ザリラが。
祈ってないのに出て来たななんて思ったけど、ツッコミを入れてる場合ではない。
「ちょっと!アレなんすか⁉︎」
坂井くんが唖然としているが、私はザリラの方を見つめたままだった。
「ザリラは味方よ……。多分、ね。」
いつもより鋭いザリラの視線に、私は一歩後退りした。やっぱり目の前で見ると少し怖いなぁ。
しかし、ザリラは前回と同じように、天を仰ぎ咆哮する。
大丈夫そうだ。アイツはやっぱり変わらない。
突如出現したザリラに驚いたスカイスレイヤー。しかし、すぐ体勢を整えると……。
ジッ!ジジジジッジジジ‼︎‼︎
スカイスレイヤーの前脚から電撃が発せられた。電撃は水上に上半身を出したザリラに命中!鈍い閃光と共にザリラの体表から火花が散った。
私の右手に着けた腕輪が光を発する。ザリラには戦う意志がある。私にはそれがわかった。
お願い。スカイスレイヤーから街を守って…!
ギィィィィッィイイイイイイーーーーー‼︎‼︎
カッと目を開くザリラ!全力で腕を振るう。しかし、スカイスレイヤーは素早い動きでそれを回避!
下半身が水中だという以前に、機動力ではスカイスレイヤーが圧倒的に上だった。歯軋りするザリラ。
再び腕を振り回して攻撃するザリラだが、敵に攻撃が全く当たらない。当たらなければ、どんなに強い攻撃でも意味がない!
対するスカイスレイヤーは余裕顔。空を縦横無尽に飛び回り、相手の攻撃をことごとくかわしていく。
ジジジジッジジジ‼︎‼︎
またスカイスレイヤーの電撃が直撃!ザリラには多少のダメージしかないようだが、まったく厄介な攻撃だ。ザリラは上空の敵を睨みつける。しかし、実際どうすることもできない。
スカイスレイヤーが再び電撃を放つ。今度は連射だ。放ち続けながら、どんどん電圧を上げてゆく。次第にザリラの体表で散る火花も激しくなっていく…。
ギィィィ………
ザリラが苦しそうに呻く。その甲殻から煙が上がっていた。マズい、熱せられているんだ。
スカイスレイヤーは電撃攻撃を続けながら、悠々とザリラに近づいていく。電撃に苦しむザリラはうずくまり、まともに動くことができないようだ。
ガッ‼︎‼︎
スカイスレイヤーの鋭利な前脚がザリラの背中の甲殻に突き立てられる!甲殻に白い傷がついたようだが、ザリラはまだ動けない。
今度はもっと大きく振りかぶるスカイスレイヤー。ザリラは串刺しになってしまうのか⁉︎
前脚が振り下ろされた瞬間、ザリラは右手でそれを防いだ。腕は特に甲殻が厚いのだ。
キーーン!と、刀どうしがぶつかり合ったっような音がして、両者は一瞬膠着する。
バッ!!!!!!
ザリラが敵の前脚を挟み、そのまま投げ飛ばした。見事な一本背負い!
ドッバァーーーーーーン‼︎
スカイスレイヤーは成す術なく海に叩きつけられる。
すかさず飛びかかるザリラ。しかし、スカイスレイヤーは一瞬早く翅を振るわせ、飛び立った。
見上げるザリラ。それを見下ろすスカイスレイヤー。
2大怪獣は睨み合って膠着した。
◇◇◇◇◇
ギギギギ……
鈍い走行音を立てて走って来る大型車両がある。一見トラックのような外見だが、荷台の部分には巨大なパラボナアンテナのような物が取り付けられていた。車体には「国防軍特別部隊」の塗装。
車両の前後は重武装のパワードスーツ部隊により護衛されており、誰が見てもただならぬ雰囲気を放っていた。
そのパラボナ車両に乗っている白衣でメガネを掛けた男がいた。彼の名は神山 昌平。城東大学で電磁波の研究をしている若き天才だ。
なぜその彼がこのパラボナ車に乗っているのか。それは、軍と彼の研究の成果を実証するために他ならない。怪獣を「制御する」研究の…。
「いよいよですね博士。」
神山の隣の男…パラボナの制御担当…が話しかけた。
彼は相手を見ずに「ええ。」とだけ答える。
パラボナ車は海原市の海岸沿いに到着した。停車するとすぐに、轟音と地面が揺れる感覚に襲われる。
「客員降車ーー!」
神山たちは車両を降り、海の方を見る。浅瀬で2頭の怪獣が取っ組み合っていた。一体は赤黒い甲殻を備えた怪獣、もう一体は昆虫型の飛翔怪獣だ。
彼は2体を睨みつけると、近くの兵士に指示を出した。
「よし、制御電波照射用意!」
「了解!」
パラボナの部分が持ち上がり、ゆっくりと旋回する。海の方を向くと今度は角度が微調整され、取っ組み合う2大怪獣に標準を合わせた。
「照射開始!」
ーーーーーーーーーー
何も聞こえないし何も見えないが、今、電波が照射されている。パラボナの基部で警告を意味する赤いランプが点灯していることでしかそれを確認できないが。
怪獣たちには相変わらず格闘を続けている。失敗か…?
神山は手元のタブレット端末を操作し、さらに電波の出力を上げた。出力最大限。
その時。戦闘を続ける怪獣に変化が見られた。
飛翔怪獣スカイスレイヤーの動きが止まったのだ。スカイスレイヤーはザリラの攻撃が届かない程度に上昇すると、その場でホバリング。ザリラは咆哮して挑発するが、それにも応じない。
「やはり飛翔怪獣にしか効果がない、か。」
神山は神妙そうな顔つきだ。それを見つつ兵士が言う。
「しかし、命令は甲殻怪獣の撃滅です。問題ないかと。」
「まぁいいだろう。やりたまえ。」
神山は踵を返した。
◇◇◇◇◇
私は驚きの視線を向けていた。
「動きが止まった…なんで?」
ジャンプしてスカイスレイヤーに打撃を与えようとするが、全然手が届かないザリラ。私も坂井くんも、その様子を唖然と見つめていた。
その時。
キィィィィィン
風切り音をたてて現れたのは、国防軍の戦闘機隊だ。翼下には空対艦ミサイルをぶら下げている。見上げる私たちの上を通過した瞬間、戦闘機がミサイルを発射した。
キュゥーーーーーン……………ボォォーン‼︎‼︎
ミサイルはザリラに命中!不意打ちを喰らったものの、ザリラは少し体勢を崩しただけで済んだ。
戦闘機隊を睨みつけるザリラ。
ザリラの安否は問題ではない(あの甲殻にミサイル効かないだろうし)。問題はなぜ国防軍はザリラを攻撃するのかだ。ザリラはスカイスレイヤーを倒そうとしてくれていたのに。
それとも軍にとってはスカイスレイヤーもザリラも変わりなく攻撃対象なの…?
そう思った束の間、さらに意外な……そして信じたくない……事が起きた。
戦闘機を目で追うザリラの背後に、強力な打撃が炸裂した。振り返るザリラ。そこにいたのは…スカイスレイヤーだ。
ザリラはスカイスレイヤーに向き直るが、その最中にミサイルが着弾する。
国防軍はスカイスレイヤーを味方に付けた…⁉︎なんで?どうやって?
私は色々思案したが、ともかく今考えるべきはザリラのことかもしれない。このままでは確実にザリラは負けてしまう。
とはいえ私にはどうしようもない。
「ザリラ…」
私は一言つぶやいた。
「桂木さんは…その……。」
坂井くんが口を開いた。
「あの甲殻怪獣を助けたいんですか?」
私は一瞬迷ったけど、こう答えた。
「ザリラはただの怪獣じゃない。私にもまだよくわからないけど……でも、ザリラのことと自分自身のことを、もっとちゃんと知りたいの。だから……」
だから、私はザリラを助けたい。理屈ではわからないけど、心がそう思っていたんだ。
坂井くんは黙って頷いてくれた。
行こう。自分の心に従って…!
第6話に続く!
やっぱり特撮にはパラボナ型兵器が出てきて欲しいという個人的なこだわり。お分かりだと思いますが「怪獣大戦争」のオマージュです。
……とか書いてて気づいたけど、Aサイクル光線車はパラボナじゃなかったですね。はい。