甲殻大怪獣ザリラ   作:佐藤特佐

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 私、桂木 悠の前で、怪獣同士の戦闘が勃発している。
 甲殻怪獣ザリラは私たちのために戦ってくれていた。しかし、国防軍が飛翔怪獣スカイスレイヤーを用いてザリラ撃滅作戦を始めてしまう。
 ザリラを助ける(?)ため、私たちは戦場に突入する!
 ……でもどうやってザリラを助ければいいんだろ…?



第6話 ザリラvsスカイスレイヤー(激突篇)

 

 

 

ガッ‼︎

 

 

 スカイスレイヤーの鋭利な前脚がザリラに突き立てられる。もう既にザリラの甲殻にはたくさんの傷ができていた。

 

 ザリラは体当たりでスカイスレイヤーを弾き飛ばした。強烈な打撃を受け、スカイスレイヤーはビルに激突して墜落する。

 

 

ギィィィィイイ‼︎

 

 

 咆哮するザリラ。そのまま突進し、スカイスレイヤーを地面に押さえつける。敵の足に噛みつき……ボキッと音がした。スカイスレイヤーの脚一本が切断された!

 

 苦しそうに吠えるスカイスレイヤー。

 

 ザリラは切断した脚を投げ飛ばす。

 

 

 その時、ザリラが爆発に飲み込まれた。

 幹線道路に並び、砲塔を怪獣の方へ向ける戦車部隊。その戦車砲が一斉に火を噴く。装填された対戦車徹甲弾は、容赦なくザリラに直撃した。

 

 

 戦車部隊の方に歩みを進めるザリラ。その進路上のものは、住宅であっても自動車であっても関係なく踏み潰す。

 二万五千トンの重量がかかり地面は陥没し、粉砕されたアスファルトの破片が降り注いだ。

 

 

 進撃するザリラの背後からスカイスレイヤーが襲いかかった。脚一本を失っているものの、継戦力には問題ない。

 残った5本の脚でザリラを羽交締めにするスカイスレイヤー。鋭利な脚がザリラの身体を傷つける。

 スカイスレイヤーは、羽交締めを解こうとするザリラを投げ飛ばす。二万五千トンの質量が宙を舞った。その先には戦車部隊が…。

 

 

ッドォォーーーーーン‼︎‼︎‼︎

 

 

 戦車を押し潰し、ザリラの巨体が地面に叩きつけられる。

 目の前で仲間が潰されたのを呆然と眺めることしかできない隊員たち。

 隊員はスカイスレイヤーを見上げる。彼の目には、スカイスレイヤーが「味方」だとは到底思えなかった。

「損耗率80%以上!戦闘続行不能!」

 無線が悲痛な彼らの叫びを代弁していた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 街並みが赤く染まり、周囲に火の粉が舞う中を、私たちはバイクで走った。

 国防軍の前線部隊は居なかった。もう後退したのだろうか。道端に、潰れた戦車やパワードスーツの残骸が転がっている。

 

「桂木さん、僕にはさ…」

 後ろに乗る坂井くんが話しかけてきた。黙って耳を傾ける。

「戦闘機パイロットの友達が居たんですよ。杏奈さんっていう…。」

 

 彼は静かに話し始めた。

 

 

 地面が振動する。戦闘域はもう近い。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 スカイスレイヤーが初出現する直前の夜のこと。

 

 夜のコンビニ。店内には2人の人影があった。

 戦闘機乗りの服装をした女性…西川 杏奈は、コインコーヒーの紙コップを片手にレジカウンターにもたれかかる。

「ねぇ、明日劇場版『ザリガニの惑星』公開されるじゃん?一緒に観に行かないか?」

 レジ越しの店員…坂井 明は目を輝かせた。

「ええっ!いいんですか⁉︎」

「もちろん。趣味が合う人と見た方が楽しいもんね。」

 そう言って微笑みかける彼女の笑顔が、彼の目に焼きついた。

 

「じゃ私この後スクランブル待機だから。また明日!」

 戦闘機パイロットは忙しいんだな。それなのに時間作って来てくれてるなんて…。

 坂井は手を振りながら、ありがたみを噛み締めていた。

 毎晩コーヒーを飲みにコンビニに来る西川。客と店員という立場で彼女と出会って数ヶ月、坂井の毎日は以前より鮮やかなものになっていた。

 そしてもはや、客と店員の関係以上のものになっていた。

 

◆◆◆◆◆

 

「でも、その明日が来ることはありませんでした。その直後スカイスレイヤーが初出現して杏奈さんも出撃、そして……帰って来ませんでした。」

 

 

 

 たしか、ニュースで「戦闘機部隊は全滅」と報じられていたから……そういうことなんだろう。

 

「それは……」

 

 私は言葉に詰まった。しかし、坂井くんは続ける。

 

「軍はスカイスレイヤーを利用しようとしてるっぽいけど、僕はアイツを許したくない。だから、桂木さんが呼んだ(?)怪獣が戦ってくれて嬉しかった。ちょっとびっくりしたけど…。」

 

 私は何も言えなかったけど、彼はわかってくれたはずだ。背中に掴まる手の握る力が少し強くなったのを感じた。

 

 空気中を舞う火の粉の量が多くなってきた。もうまもなく接敵だ。遠くはない距離から、ザリラとスカイスレイヤーの声が聞こえる。

 

 

 バイクはエンジンを轟かせながら爆走する。

 

 

 

ッッドォォーーーーーン‼︎

 

 

 直線道路の先で、2頭の怪獣が取っ組み合っているのが見えた。迷わずどんどん近づいていく。

 怪獣の姿も、地面の振動も大きくなってきた。

 

 

 

 

 その時。私は強い頭痛と耳鳴りに襲われた。

 

 

ーーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎

 

 

 頭痛の隙間から覗く微かな映像。脳に直接訴えかけてくる…⁉︎

 私の脳に直接流れ込んでくる情報を感じる。私はバイクのハンドルを握りつつも、片目を閉じて集中する。

 

 

「………」

 

 

 ザリラが私を求めている…?私と私の「腕輪」が必要…?

 

 

 

 ぐじゃぐじゃしてよく分からない情報ではあったが、確かに私はそう感じた。

 テレパシーなんて信じてなかったけど、今はもはや信じてみるしかない。

 

 

 

 

「桂木さん!…上っ‼︎‼︎」

 

 坂井くんの声で我に帰った。見ると、怪獣同士の戦闘で飛ばされてきた瓦礫がこちらに飛んでくるではないか‼︎

 私は思いっきりハンドルを切る。瓦礫は回避できたが……バランスを崩してしまった!宙に投げ出される感覚。

 直後、コンクリートに身体中が打ち付けられ激痛を感じる。

 

 

「ゔぅ……痛ぁ………」

 

 地面に横たわりながらも目を開く。なんとか軽傷で済んだようだ。すごく痛いけど。

 

 ……後ろに乗ってた坂井くんが見当たらない。

 痛みを堪え、周囲を見渡す。数メートル先に人がいた。良かった、坂井くんも無事か…。

 

 

 

 と思ったのも束の間。私たちが日陰に包まれた。見上げると。

 直上にスカイスレイヤーが迫っていた。デカい。そして近くで見ると、昆虫風の体表が気持ち悪い。

 

 そう言えばザリラは⁉︎

 ザリラは向こうでぐったりしていた。電撃を浴び続けてついにダウンしてしまったのか。

 スカイスレイヤーは次の敵を探し出し、排除しようとしてるんだろう。

 

 スカイスレイヤーは複眼で私たちを見下ろす。昆虫型だから感情表現に乏しいけど…それでも伝わってくる殺意。「気に食わない奴は皆殺し」みたいな意志を感じる。

 

 その時、坂井くんがすっと立ち上がり手を振りだした。何やってるんだ、目立つようなことしてスカイスレイヤーに目をつけられたら終わりだぞ。

 案の定スカイスレイヤーは彼を捕捉したようだ。坂井くんは悠長にポケットから瓶を取り出す。こんな時に…何してるんだホントに!

 

 

 スカイスレイヤーが彼を一飲みにしようとした、その瞬間!

 

ガッ‼︎‼︎

 

 スカイスレイヤーの背後からザリラが飛びかかった。私たちの危機を察して助けようとしてくれてるの…?

 ザリラは暴れるスカイスレイヤーを羽交締めにする。しかし、長く持ちそうにない。

 怪獣同士が取っ組み合ったままビルに激突、ビルは粉砕された。降り注ぐ瓦礫が電柱を直撃し倒壊、電線が切断されショートする。青白い火花が散った。

 

 早いとこスカイスレイヤーの視界から逃れて、もう一度ザリラに接近する機会を伺うのが得策だ。

 

 

 私は坂井くんの元に駆け寄って、手を引っ張る。

「何してんの⁉︎ほら、逃げるよっ!」

 

 引っ張ったその手を、しかし彼は振り払った。

 

 

 

「桂木さん…もう行ってください。」

 え?急にどうしたの?

 

 坂井くんは少し考えたあと、黒い粉末の入った瓶を片手に話し出す。

「僕はテルミットで奴を殺します。」

 至近距離で怪獣同士がぶつかり合う轟音の中で、でも確かに彼はそう言った。

 

 テルミットとは酸化鉄やアルミニウムで作れる、2500度以上の高温で燃える火薬だ。彼が安全な着火装置を持ってるわけがない。自分にも火が付くことは目に見えている。いや、初めから怪獣に「食われて」、体内で発火させるつもりなのか。

 いずれにせよ生存の見込みは無い。

 

 

「それって自殺攻撃…」

 思わず私はそう呟く。なんでそんなことを…。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 羽交締めにされつつも、スカイスレイヤーは鋭利な前脚を伸ばす。そしてそれを最大限後ろに向ける。そう、ザリラの方に……。

 ザリラは敵を押さえつけるのに手一杯で対処できるはずがない。

 

ザッッ‼︎‼︎‼︎

 

 スカイスレイヤーの前脚がザリラの胸を貫いた。甲殻をものともしない鋭利な凶器で、身体を抉られる。

 

 

ギィィィィィィィィ‼︎‼︎‼︎

 

 

 ザリラの苦しそうな咆哮。胸を貫かれ、背中まで貫通された。

 抉られた肉片と体液が地面に落下した。

 

 しかし、それでもザリラは敵を離さない。いや、離すはずがない。

 

 ザリラには守るべきものがあったから。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 その足元で向かい合う2人。

 

 坂井くんは踵を返し、組み合う2大怪獣を見上げる。

「数日前から考えてたんすよ…。テルミットも作って、遺書も書いて、それで……」

 私は黙って聞いていることしかできない。

「最後に桂木さんみたいな人と話せて良かった。これは自分自身の問題だから、桂木さんはもう行って…」

 

「行くわけないだろっ‼︎」

 私は思わず大きい声を上げた。

 初めて怪獣をこの目で見た時のことを思い出したんだ。……デヴォラの口からはみ出した人の足を。なんの前触れもなく、なんの抵抗もできず死んでいった人々の姿を。

 

 私にはわかった。坂井くんは友達……いや、彼にとって友達以上の存在だった杏奈さんの敵討ちをするつもりだったんだ。一緒に軍から逃げたのも、進んで前線に行こうとしてたのも…。

 今日だけじゃない。杏奈さんを失った日から、死ぬために生きていたってこと…?そんなの悲しすぎる。

 

 

 ザリラがスカイスレイヤーを押さえるのももう限界だった。今にも羽交締めを解こうとするスカイスレイヤー。 

 抉られた傷口から血が滴っていた。

 ザリラは苦しそうに唸る。身体のあちこちを敵の鉤爪で切り裂かれ、ボロボロになってもなお耐えようとしていた。

 

 

 それを見上げる坂井くん。瓶の蓋を開け、もう片手にライターを構える。

 しかし、彼の手は震えていた。いや、手だけじゃない。身体中震えている。

 

 そりゃ怖いよね。

 

 私はフッと息を吐くと、震える坂井くんの方に歩みを進めた。彼は動かない。後ろから肩に優しく手を置く。

 

 死なないで欲しい。

 

 言葉にならなかったし、言うつもりもなかった。でも、私の『願い』だけはちゃんと伝わったはずだ。

 

 

 遂に坂井くんはライターを取り落とした。いろんな感情がごっちゃになってうずくまる彼の背を、そっと撫でてやった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

ギィィィィィィィィ‼︎‼︎

 

 

 彼の嗚咽を掻き消すほどの咆哮。羽交締めを解いたスカイスレイヤーが、ザリラを圧倒していた。

 スカイスレイヤーは多数の脚でザリラを掴み、強引に投げ飛ばす。地面に叩きつけられるザリラ、その地面が大きく陥没した。

 

ズッドオオオオオオオオン‼︎‼︎

 

 猛烈な振動!

 

 

ガガガガガガガガガガガガ……

 

 すでに傾いていたビルが、遂に耐えきれずに倒壊。その破片はうずくまる私たちの方へ…。

 

「ぎゃぁっ!」「うわぁ!」

 

 目の前が砂煙に包まれ、視界を失う。

 

 なす術なく瓦礫に飲み込まれてしまった。幸い生き埋めにはならなかったが、下半身に重いコンクリート片がのしかかり、2人とも身動きできなくなってしまった。私も坂井くんも身体中擦り傷だらけにはなったけど。

 スカイスレイヤーが私たちを見失ってくれたのは不幸中の幸いか。

 

 いや。事態はむしろ深刻か。このままではザリラは勝てないだろうし、私たちもバトルの最中いつ踏み潰されるかたまったもんじゃない。おまけにこんなとこに救助隊は来ないだろう。

 

 

 

 

 

 地面に仰向けに押し倒されたザリラ。スカイスレイヤーはその上に上り、先程の傷口を再び突き刺す。

 

 

ジジジジジジッ‼︎

 

 

 傷口に前脚を突き刺したまま電撃を放った。ザリラは体内から直接感電。苦しみ暴れるも、スカイスレイヤーは離さない。

 ザリラの苦痛の咆哮が周囲にこだました。

 




ザリラ大ピンチ!第7話に続く。

 個人的に「怪獣バトルと人間の物語が並行する」のが好きです。
「もっと怪獣バトルが見たい」という方は…終盤(第11、12話あたり)にご期待くださいw

 早いことでもう折り返し地点です。でもまぁ、なんならここからが本番なので、引き続きよろしくです!
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