主人公・桂木 悠の夢の中の存在であるはずだった甲殻怪獣ザリラが現実に出現!襲来する敵性怪獣とザリラの戦いが繰り広げられる。
遂に発動する甲殻怪獣の必殺技。そして明かされる世界の真実。
クライマックスに向けて物語が加速する!
赤黒い甲殻が、白いオーラに包まれる。燃え上がる白い炎の間から覗くザリラの鋭い目。
対するスカイスレイヤーはその光に照らされる。どんな攻撃が来るのかわからないため防御態勢を崩さない。しかし、スカイスレイヤーは薄々察していた。これが決着の一撃になると。
この攻撃を防御できれば勝利、できなければ…。
ザリラの体表のスパークは徐々に強くなる。やがてエネルギーは口に集約されて…。
一際強い発光が起きたその時。
ボッ‼︎‼︎
カッと開かれた口から、閃光が放たれた。
閃熱光弾…‼︎エネルギーを集約して強力なエネルギーの弾を生成し、それを発射するザリラの必殺技。
閃光の弾はプラズマの尾を引いて飛ぶ。一直線に向かう先にはスカイスレイヤー…!
スカイスレイヤーは残された片手でこれを防御しようとした。しかし、そんなことは不可能だった。
ッッボォォーーーーーン‼︎‼︎
閃熱光弾が命中。直撃を受けたスカイスレイヤーの身体は燃え上がり、一瞬の間をおいて木っ端微塵に爆散した。余剰なエネルギーがプラズマとなってスパークを発した。
燃えた破片が地面に到達し、火災が広がる。真っ赤な炎を前に、ザリラは勝利の咆哮をあげた。
【このシーンのマンガverはこちらから!→ https://www.pixiv.net/novel/series/11849287】
◇◇◇◇◇
私は屋上から戦いを見届けた。勝ったんだ。私のザリラが。
そう思った途端、身体中の痛みが戻ってきた。そのまま仰向けに寝っ転がる。
空が赤いのは夕焼けのせいか、それとも火災の炎のせいか。
これからどうしようかなんて考えず、赤い空を横切るヘリコプターをただただ見つめていた。
いつまでそうしていただろうか。突然、屋上のドアが開かれた。
ドアを開けたのは国防軍の兵士だった。しかし、その服装は普通の歩兵のものではない。肩にパワードスーツの刺繍があった。
「……あんたの行動、全部見させてもらったぞ。重要参考人として君を連行するよう命令が出ている。」
隊員はそう言い放つ。
こうして私はあっさりと捕まった。
パワードスーツ部隊の屈強な隊員たちに囲まれ、腕輪を取り上げられ、身元を尋ねられた。仕方ないから素直に従った。ここで抵抗しても無駄だろうし。
どうやらパワードスーツの赤外線カメラで、私の行動は全て捉えられていたらしい。
ハイテクには敵わなかったか。
パワードスーツ部隊に護衛された装甲車に乗せられた。後部席で、隣には部隊の隊長・岩崎が座る。
怪獣の影響で地面はボコボコだ。装甲車は激しく揺れた。
すると、岩崎がそっと耳打ちしてきた。
「あんたと一緒にいた男…坂井ってやつな、骨折してたけど無事だ。病院に運ばれてったぞ。」
思ってもいなかった言葉に驚く。そっか、坂井くん無事だったか…。
安心したような顔を見せた私を見て、彼は静かにため息をついた。
「悪いな。連れの男を見逃すので精一杯だった。」
そう言って私に手錠をはめた。
あれ?隊長さんは思ったより話わかる人か?
ともかく、坂井くんを見逃してくれるだけで十分だ。ここからは私の問題だから。
…で、どこに連れてかれるの?
「あの〜、私どこに連れてかれるんですか?」
恐る恐る聞いてみた。すると岩崎は頭を抱えた。
「申し訳ねぇ…。俺もこんなことしたくねーんだ。」
道が平坦になり雑音がなくなったのもあって、彼はそれっきり黙ってしまった。
何か、すごく嫌な予感がする。
そしてこういう嫌な予感はだいたい当たる。
やがてヘリコプターに乗り換えさせられた。しばし飛行すると、眼下には大都市の夜景が輝いていた。東京上空だろうか?
でも、その景色を楽しむ余裕はない。だってこれからどうなるかわかんないから…。
ヘリコプターは降下し始めた。
「着いたようだ。」
岩崎に声をかけられ、窓から外を見る。どこだろうと思い、コックピットの方に目を移すと、レーダーが目に飛び込んできた。
そこに表示されていた位置は『日ノ本島』。
西暦2080年代から「東京湾埋め立て事業」により建設が始まった人工島。
完成後、過密化が進んだ東京都内から政府中枢を移転され実質的に新しい首都となった。島内には新・国会議事堂や首相官邸、各省の本部、そして上級国民たちの豪邸が並ぶらしい。
一般人の立ち入りは制限され、普通は入ることなどできない。まさに日本の中心部なのだから。
島に着陸すると、銃を持った兵士…いや、島の防衛を担う政府の「親衛隊」と言うべきか…に身柄を引き渡された。
「連行命令とは言え彼女は怪我人だ。丁重に扱ってくれ。」
岩崎隊長は優しいなぁ。
「問題ない。しかるべき処置をとるだけです。」
冷たくそう言って私の背中を乱暴に押す親衛隊の隊長。なんだこいつ。
岩崎隊長を置き去りにして、親衛隊は私を連行した。
親衛隊に引き連れられ、私は「日本国防軍本部」に入った。ニュースでしか見たことのなかった建物に入る。各所に警備兵が立つものものしい構内。そこを抜け、エレベーターに乗せられる。
エレベーターの中は薄暗かった。
ヴーーーーーーーーーーー
地下20階 地下21階 地下22階……
エレベーターはどんどん地下へ降りてゆくようだ。高速エレベーター特有のふわっとした感覚が気持ち悪かった。
やがて地下30階に達したとき、エレベーターのドアが開いた。その先にもう一つガラスの扉があり、厳重管理区画のようであった。
親衛隊隊長がパスコードを入力、ドアが開いた。通路の両脇に研究室が並ぶエリア。通路をしばらく真っ直ぐ進むと、天井が岩肌剥き出しのトンネル…洞窟のようになった。
岩には何かの文字?が彫られているが、なんて書いてあるのか見当もつかない。そもそも知らない記号だ。思えば、どこかの古代文明の遺跡のような雰囲気を感じる。
しかし、岩肌に直接ドアが付いていたり、ガラスの向こうで作業してる人が居たりもする。不釣り合いで違和感しかない空間だ。
「ここはまだ建築途中でね。汚い場所で申し訳ないね『お客様』。」
親衛隊隊長のとってつけたような言い草に腹が立った。しかし、その感情は次の瞬間には吹き飛んでいた。
突き当たりの岩肌に巨大なガラス窓があった。その先に覗くのは巨大な空間。鍾乳洞の広い部分のような…。
いいや、空間に驚いたわけではない。その真ん中に横たわる巨大な「何か」に目を奪われたんだ。
強力なライトで照らされる巨体。
尾があり、手足があり、尖った刃物のような頭があり…。
「怪獣…。」
その姿はうつ伏せになった怪獣そのものだった。怪獣には管やコードがたくさん接続され、周囲で人々が何か計測したり管理したりしている。
ピクリとも動かず横たわる怪獣を、食い入るように見つめる私。その背後から誰かに話しかけられた。
「ようこそ桂木 悠さん。サーベルヘッドに目が行くとは、さすがお目が高い。」
白衣を着た青年だった。両脇にはSPを2人従えている。
「……誰?」
サーベルヘッドとやらも気になるが、まず目の前の彼は誰だ?とりあえず話しかけてみた。
「私に容易く話しかけるとは、さすが甲殻怪獣と繋がっている人間だな。いや、繋がって『いた』か。」
そう言って低く笑う彼…神山 昌平の姿が、点滅するライトの陰影でとても恐ろしく見えた。
彼が片手をポケットに突っ込む。出てきたのは、私の腕輪だった。
そう、私とザリラの繋がりそのもの…。
「それ私のっ!返せ!」
喚く私は親衛隊に取り押さえられる。
「はっはっは…」
神山の高らかな笑い声が洞窟に響き渡った。
「君にしかできないことがある。この世界のために、やってくれるよな?」
彼は笑顔の…しかし裏がありそうな恐ろしさを孕んだ…表情のまま言った。
私にしかできないこと…?
思考を開始したその刹那。
首元に冷たい感覚を感じた。見ると、いつのまにか目の前に神山がいた。そしてその手に握られた銃を、私に突きつけて…。
え?
「なぁに、安心しな。麻酔弾だ。」
彼のその言葉を最後に、私の意識は途絶えた。
◇◇◇◇◇
「ここは…どこ?」
私は暗闇の中を彷徨っていた。おそらく夢か幻覚の一種だとは分かるが、どうやらザリラが出てくるいつもの夢とは違うようだ。
ふと、向こうに光の筋が見えた。迷わずそちらへ向かう。
光の元に辿り着くと、周囲の景色が突然変わり、私は風景の中に立ち尽くしていた。どこかの研究室…?しかし、壁は石造りで古代ローマのような雰囲気を感じる。理屈はないけど、そういう時代なんだろうと理解できた。
そこに入ってきた科学者と思われる男。私に気づかない分からして、どうやら過去の出来事を見せられているらしい。
『不完全なままでは幸せは訪れない。だから人間を完全な存在にしてくれる「神」が必要なんだ…。』
男はそんなことを呟きながら、青く光る結晶のようなものを撫で回した。それが何であるかはわからない。
彼はそれを大きめの岩に埋め込む。すると、その岩の表面の筋が結晶と同じ色に光る。光が岩を包むように流れた。
光に照らされた彼の顔は笑顔に満ちていた。
目の前が変わった。今度は宮殿のような立派な建物の中だ。先ほどの男が出てきたが、少し歳を取っていた。
『遂に、人類は不完全から脱却できる。それにより我々は便利な生活を、保証された成功を、そして最高の幸福を手に入れられる!今日、この世界の歴史に新たな幕が開ける。』
群衆を前にそう演説する男。
『これより、神より授けられた文明制御システム「ゼウス」を起動する!』
群衆が大きな歓声を上げ、それを受けながら男は笑顔で手を振る。私は観衆たちの後ろから、去り行く男の背を見送るしかできなかった。
「ここは……。」
次の風景……あたり一面焼け野原となった街。古代ローマのような建物の瓦礫が散乱し、焦げた建物が傾いている。
戦争があったのか、はたまた大災害があったのか。それを知る由はない。
『こんなっ……!』
目の前に、1人の男の子が跪いていた。男の子は涙を流して瓦礫を叩く。
泣き叫ぶ彼の先に、巨大な影があった。その姿に、私は驚愕する。
「……あれはデヴォラ⁉︎」
巨大な怪獣が佇んでいた。サンショウウオのようなその姿はまさしくデヴォラだが、若干体色が違かった。
しかし、そんな些細なことよりも「怪獣が存在していた」ことがショックだった。
ーーーそういえば、そもそも怪獣って何者?ーーー
私が思考を始めた途端風景が変わる。巨大な会議場のような場所にワープしていた。綺麗な石造りの構内に、貴族のような格好の人物が数人、円テーブルを囲んで座っている。
『隣国との戦争、どうやら我が国の勝利ですな。』
『いやぁ、こちらの怪獣…デヴォラは強い!隣国の兵などイチコロでしたなぁ。』
『開発者に富と名誉を!』
『ゼウス様の描く「完璧な世界」の実現にまた一歩近づきましたねぇ!』
こんな短い会話でも理解できたことがある。
文明を制御する『ゼウス』の存在。怪獣で戦争をしていた。世界を自分たちの神『ゼウス』の思想…完璧主義で覆い尽くすために。
同じ人間の所業とは思えない行為に吐き気を覚える。そんなことを続けた先にあるのは破滅しかないと分かりきっている。私たちの文明と変わらないほど発達してるはずなのに、彼らはなぜ…。
そこでハッとした。
私たちの文明と何が違うというのだろう。2099年現在、首都への一極集中によって東京の人口は9000万人に達した。かつては順調だった制度は破綻し、身分・生活・富・情報など多くの格差が発生している。進みすぎた文明は既に内部から崩壊し始めているのかもしれない。
それは、この文明も、私たちの文明も同じなのだ。
その瞬間。世界が「割れた」。
やがて周囲が真っ暗になり、私はその中をゆっくりと落下していく。いったい何があったのか。真っ暗な中で、周囲にこだまする破壊音と悲鳴。そして燃え盛る業火の音。
押し寄せる苦しみに耐えかね、頭を抑えた。
「なんなの…。なんでこれを私に見せるの…⁉︎」
◇◇◇◇◇
ハッと目を覚ました私。そうだ、神山とかいう男に麻酔を打たれて、それで……!
慌てて起きあがろうとしたが、それは叶わなかった。
私の体はベット…いや、岩の台というべきか…に拘束されていた。
「ちょっ…何⁉︎」
頭が重い。頭を覆うように何か被せられている…?
驚く私を尻目に、神山が何かの作業をしていた。見たこともない機械を弄っている。自身の頭を覆う帽子のような機械が、神山の弄る機械とコードで繋がっていることがわかった。
「見たんだろう?」
神山が背を向けたまま話しかけてきた。
「見たって、何を…?」
「真実だよ。神の遺した記憶を。」
あの夢のこと…?ゼウスと、怪獣と、あの男の……。
「国や軍の中でも一部の人間しか知らない秘密…。君はそれを知るのに相応しい。」
動揺を隠せない私に、彼は振り返った。そういえば、ここに来るまでに見せられたあの怪獣…サーベルヘッドも。夢を裏付けている。
「君が見た通り、怪獣は古代文明が遺した生体兵器に過ぎない。しかし1体だけ人間と精神的な繋がり……『リンク』をもつ特殊な怪獣が存在する。」
まさか。
「そう。君と甲殻類型怪獣は『リンク』で繋がっている。しかし君が繋がりを持つべきは文明を破綻させる甲殻類型怪獣ではない。」
私の右手首に腕輪が戻っていた。でも、腕輪にもコードが接続され、機械の管理下にあるようだ。
ザリラが文明を破綻させる…?
「ザリラと言ったか、あれは忌まわしきもの。生体兵器の分際で『リンク』を持った存在…。神の意に反して行動を続ける存在…。本来『リンク』を持つものは神だけなのだよ。そして君は神と繋がるべきだ。」
コードの束を目で追っていた私は驚愕した。コードは機械を通して背後の超巨大な結晶のようなものに繋がれている。そしてその青い結晶の中には巨大な異形の影があった。
「怪獣…⁉︎」
驚愕する私に対して笑みを浮かべる神山。
「あれがゼウス…。この世界を幸福へと導く完全無欠の神だ!」
第9話に続く。