見える子ちゃんと見えない夫くん   作:yu-ki.S

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ご注文は霊能力者ですか?


もしかしたら、かなり変な子に絡まれてしまったのかもしれない

 むかーしむかし、あるところに、1組の老夫婦と一人息子がおったそうだ。

 そんなある日、彼らの下へ()()()()()が渡った。

 

 その呪物を譲った軍人の友人曰く、「それはインドの行者によって魔力が込められており、どんな願いも3つ叶う」というモノらしい。

 だがその友人は続いて「定められた運命を捻じ曲げようとする者には、大きな災いとなって伴って来る」と、まるで経験談の様に警告を与えた。

 

 呪物を受け取った家族は、まず一つ目に息子の「家の借金を返す為の金が欲しい」という願いを聞き入れ、願いを捧げた。そして翌日、その願いは無事に叶えられた。

 

 ──勤務先での事故によって喪われた、息子の命と引き換えに。

 

 息子の願いであるお金を弔意金として受け取った夫妻であったが、妻は息子の死を受け入れられず、ある日の晩に「死んだ息子を蘇らせてくれ」と呪物に懇願した。

 

 二つ目の願いはすぐに叶えられ、暫くしてから家のドアが叩かれたのを聞いた妻が、狂ったように大喜びしながら息子を迎え入れようとした。

 

 だが夫だけは、呪物の願いがどの様な結果として返って来ているかを察した。

 扉の向こうには、機械に挟まれて至る所がぐちゃぐちゃになった凄惨な姿でけたたましいノック音を出す、生ける死体となった息子が現着しているだろうと。

 

 恐れ慄いた夫は、呪物に三つ目最後の願いをかけた。

 するとさっきまで鳴っていたドアを叩く音が消え、玄関の向こうには誰もいない、街頭で照らされた静かな通りが広がっていた。

 

 ……こうして、家の借金を返す事から始まった願いの物語は、夫婦にとってあまりに重すぎる大きな代償を払って、平穏な日常を取り戻す結果となったのだった。

 

 

 

「──ハイここで問題です!この物語における教訓、それはなんでしょうか?」

 

「願いを叶えたいなら、ドラゴンボールを7つ集めるか、愉快な魔人が入った魔法のランプを取りに行きなさい!という事を伝えたいんだと思います!」

 

「うん、全然違ェ!!」

 

 登下校中、徹は今日の国語の授業でやった海外文学の教訓が何なのかを出題し、見事に見当違いの答えを返した洋太に、思わずツッコミを入れた。

 

「え?でもドラゴンボールや魔法のランプも、その呪物と同じ願望機だよね?

 あとは聖杯とかギャラクティック・ノヴァとかトライフォースとかも該当するけど、違いといえばその呪物は人の願いを歪んだ形で叶えるけど、神龍とかCV山ちゃんの魔人は無理なものは無理だって言ってくれるじゃんね?

 つまりこの話の教訓って、『願いを叶えて貰うなら、ちゃんとした形で叶えてくれる所でお願いしろ』って事じゃないの?」

 

「いや、うん、言いたい事は分かるんだけどさ……作者が言いたいのは、そういう事じゃないんよ。これって要するに、『何の苦労もなく願いが叶うわけがないヤンケ、シバクヤンケ』って事だから」

 

「なんでトダーみてーな言い方で説明したん?」

 

 徹は洋太のズレた解釈にそう呟くと、ふと何かを思い出したかのように振り向き、それに気付いてどうしたのかと尋ねる洋太に小声で話を切り出した。

 

「……なぁ洋太、気付いてたか?さっきから誰かにつけられてる事に」

 

「え?……あぁ、そういえばこの間から、ベニテングダケみたいな匂いが後ろの方から少し漂ってる気がするけど……それがどうしたの?」

 

「軽くツッコミたい事がマルマルモリモリ沢山だが、とりあえず追跡者の存在に気付いてたお陰で説明が省けた。てな訳だからちょっと耳貸せ……ゴニョゴニョ……わかったか?」

 

「おk了解道中膝栗毛」

 

 互いに頷きあって路地裏へと入り込んだ二人。そんな彼らを追いかけて一つの人影が続いて路地裏へと入り込む。

 だがその人影の目の前には何故か一人しかおらず、もうひとりは何処へ行ったのかと辺りを見回そうとしたが……

 

「──おい、後ろのお前」

 

 突然、声を掛けられた事に驚いた人影は身体をビクッと震わせ、目の前で背を見せる男……影杉徹から目を離せずにいた。

 

「貴様……見ていたなッ!!」

 

「……っ!」

 

 振り向きながら此方を指差す徹に対し、我に返った人影は己の追跡がバレた事に焦り、逃げようとするが……

 

「ワンダァァァ通せんぼォォォォォォ!!」

 

「ぎゃぁああああああーーーッ!?」

 

 ──目の前にはいつの間にかもう一人の男……ビルとビルの間を登っていた洋太が、開脚して建物の壁に足を付けたまま逆さまになり立ち塞がっていた。

 突如と現れた珍妙な光景に人影は腰を抜かし、そのまま地面に尻餅を付いてしまう。

 下へと降りた洋太と駆け寄って来た徹がその人影を見てみると、そこにへたり込んでいたのは、ベニテングダケの様な赤に白い水玉模様がついた髪飾りで金髪をツインテールにした、小柄体型の女子であった。

 

「……あ?なんだこの子、小学生か?」

 

「ッ……失礼ね!高校生よ!!」

 

「まぁまぁ、落ち着いて。僕は見円洋太、こっちは影杉徹。君の名前は?」

 

「…………二暮堂、ユリア」

 

 徹に小学生呼ばわりされムッとしている彼女を宥めながら名前を聞き出した洋太は「そっかー」と言いつつ、彼女に手を貸して立ち上がらせる。

 

「じゃあユリアちゃん、なんで僕らのこと追っかけしてたかについてだけど………あっ。もしかして、僕か徹に惚れちゃったとか?」

 

「無い。どっちも無い。それは断言できるわ」

 

「…………そこまで強く言わんでも良くない?」

 

「……で、結局なんで俺らのことつけて来たんだ?」

 

 ユリアと名乗った少女は周りをキョロキョロと見渡し、他に人がいない事を確認すると、意を決したかのように口を開いた。

 

「──なら単刀直入に聞くわ。見円洋太、影杉徹……貴方達、能力者ね!!」

 

「「……………ごめん何て?」」

 

 ビシィッ!と指を差されてそう尋ねられた二人であったが、あまりに予想外な彼女のセリフに思わず唖然としながら聞き返した。

 

 

 卍 卍 卍

 

 

 ──OK、じゃあもう一度だけ説明してあげるわ!

 ワタシの名前は『二暮堂(にぐれどう)ユリア』、“この世ならざる者”が見える特別な力を持った者よ。

 物心ついた時から持っていたこの力を活かすべく、ワタシが知る限りで最高の霊能力者である『ゴッドマザー』に弟子入りを志願したわ。

 そして遂にゴッドマザーから凄いパワーが詰まった数珠を受け取り、無事に弟子入りを果たしたワタシは彼女から色んなことを学ぶ事となったの!

 

 ……そりゃあ、人々から羨望の眼差しを向けられたいという下心はあるわ。

 でもそれと同じくらい、除霊とかが出来るようになって、ゴッドマザーの様な霊能者になるという『夢』を叶えたいワタシの想いは、誰にも負けないんだから!

 

 けれどゴッドマザーが経営している占いの館へ向かうと、そこには彼女の姿は無く、その代わり閉められたシャッターには『占いの館は廃業します』とだけ書かれた張り紙があった。

 

 お向かいのお店に居るおじいさん曰く、「力の限界を思い知った」と言い残して田舎へ帰ったとの事だけど、今まで見て来たインチキ霊能力者とは違う、まさに本物とも言える存在がそんな事を言うなんて信じられない……!

 

『あーっ、数珠屋さん潰れてるー』

 

『ホントだ……』

 

 最後に来た客だという若い男女の四人組を見つけたおじいさんが指差した方へ顔を向けると、そのうち二人は隣のクラスの女子だった。

 いつ見ても生命オーラが凄まじい女子の「潰れてもしょうがないよね、あんな脆い数珠だもん」という言葉に(素人にマザーの数珠の事なんて分かるわけないっ!)と少し怒りが湧きかけたが、それ以上におじいさんが言っていた言葉が気になっていたワタシは、ゴッドマザーの身に何があったのかと疑問を抱いた。

 

『しかしハナさんや……あの数珠見るからに古そうだったし、紐の部分とかが劣化してたんだろうぜ?それでもフツー、あんな弾け飛ぶわけねぇだろとは思うけど……お前はどう思う?』

 

『…………あ、ごめん。アナコンダ穴熊のこと考えてた』

 

 そしてもう二人の方は……なんかヤバそうなのに憑かれた黒髪の男と、なんかスゴい光り輝いている赤みがかった茶髪の男だった。

 最初に彼らを見た時は、「あんなヤバそうな存在、今まで見た事がない…!」という戦慄と、「……え?なに、あの……えぇ?」という困惑が浮かび上がったけど、まさか彼らがゴッドマザーを……⁉︎

 

 そう思っているとハナと呼ばれる女子が走り出し、ひとりの“この世ならざる者”──要するに霊の方へと近付いていった。そして彼女が霊と接触しようとした、その瞬間……

 

『──洋太っ、そこにバナナ落ちてる!』

 

『えっ!マジで⁉︎ 何処何処っ!!』

 

『ア゛ッ』

 

 みこと呼ばれていた女子がそう叫びながら、明らかに霊が居る方へと指差し、洋太と呼ばれている茶髪の男をそっちへ行く様にと誘導した。

 更には驚く事に、その霊が駆け寄って来た彼の放つ光に触れた途端、まるで水が一気に蒸発したかのように爆散して消え去ったのだ。

 

 殆ど害のない霊とはいえ、少し触れただけであっという間に払い除けてしまう程凄まじい力を秘めた光を放つ彼と、そんな彼をハナと呼ばれる女子が霊に当たる前に誘導した彼女に対して、強い疑問と深い興味を抱き始めたワタシは、彼ら彼女らの観察を始めた。

 

 その中で『四谷みこ』と呼ばれる子が、ワタシと同じ“こっち側の人間”……『見える子』である事と、ワタシでなければ到底気付けない程に“奴ら”へのスルー力を磨き上げている事を察した。

 そこでワタシは体育の授業中、みこを体育倉庫へと連れて能力者ではないかと問い詰めた──ところまでは良かったが、マザーから貰った数珠は弾け飛ぶわ、彼女に絞め落とされるわ、挙げ句の果てに見逃された上で脅されてしまうといった屈辱的な経験をする羽目に……ッ!

 

 だけどワタシは決して屈しないわ……!そう決意しながら、洋太と呼ばれた彼の観察を続ける事にした。

 学校が違うから毎回見つけるのに凄く苦戦したけど、それでも彼の放つ光が“この世ならざる者”を浄化させる力である事を突き止めた……でもそれ以外は、何処にでもいる男子高校生である事しか分からなかったわ。

 それでも彼とヤバい奴に憑かれてるもうひとりを尾行していると、路地裏へと入って行ったから跡を追ったのだけど……そこで尾行していた事を察していた彼らに捕まってしまった!

 

 

 

「……えーっと。要するに、僕はガッシュや初期淳くんみたいに術を使う度に意識を失うから自分の力を自覚出来ていないし上手くコントロール出来ない異能力者で、徹は呪霊をひとつ分しかストック出来ないサマーオイル……ってコト?」

 

「洋太。たぶん正確には、乙骨先輩並みに底無しの反転術式相当の“正のエネルギー”を備えた真希さんがお前で、幽波紋のビジョンが見れないスタンド使いが俺……という事だと思う。そうだよな二暮堂さん?」

 

「………え、えぇ。たぶん」

 

 そして今はとある公園へと場所を移し、何故かこの二人組とバナナを食べながらワタシが知っている事について話をする事になっていた。見円洋太の理解力が悪すぎて、説明に結構な時間がかかったけど……

 

「あ、そうそう。僕のことは名前で呼んで欲しいな〜」

 

「は、はぁ……」

 

 それにしても見円洋太。改めて近くで見るとかなり眩しいし、かなりデカイわね……180近くはあるでしょコレ……っと、そんな事よりも。過程はどうであれ、折角彼らに近づく事が出来たのだから、ワタシが知っている事を色々と教える代わりに此方も貴方達を見極めさせて貰うわ!

 

「それで、えっと……じゃあ洋太くん……貴方は、あそこにいるの()()()()?」

 

 そう言って、今座っているベンチ横のゴミ箱の中にある瓶の蓋を拾っている“小さなおじさん”に指を向けた。

 先程も言った通り、これまでの観察で彼がごく普通の男子高校生……つまり“この世ならざる者”が見えない人物だという事しか分からなかった。

 だけどあれ程の能力を持っていて、自身の力を自覚していないとは思えないし、見えていない筈が無いわ……!きっとみこと同じ様に、気付いているけど気付いてないフリをしているに違いない。

 彼女が秘密にしている事を見抜いたワタシでさえ欺くその演技力には舌を巻くけれど、絶対に貴方の事も見極めて……!

 

「……?」

 

 見極め……

 

「……??」

 

 みき、わめ……

 

「……???」

 

 ……あ、これ本当に何も知らないしマジで見えていない人の顔だわ。ハナと同じ自覚していないタイプの能力者だったわ。

 バナナを食べながら目を細める顔を見て、そう確信した。

 

「………ハエが一匹見えたけど、アレの事?」

 

「……あー、うん。もうそれで良いわ」

 

 キョトンとしながら全く違うものを指差す洋太に、ワタシはこれ以上詮索するのは無駄だと感じ、この話は切り上げようとした。

 

「ほーん……それで?俺には守護霊が憑いてるって言ってたけど、それってどんな守護霊なんだ?」

 

「……えっ」

 

『■薙ぐ■」……』

 

 しかしその直後、影杉徹にそう尋ねられたワタシは、質問に答えることを躊躇ってしまった。

 その理由というのが、ワタシも彼に憑いている守護霊が何なのかが分からないからだ。

 黒と白のモヤで輪郭もハッキリと見えないけど。なんか、羽のようなモノがあって、脚があって、そこそこの大きさである所までは分かるが……ホントに何かしらアレ。

 羽の形的に、蝶とかそういう生き物がモチーフっぽいけれど……

 

「まぁ、俺としてはぶっちゃけなんでもいいんだけどさ……」

 

 熟慮のために沈黙していたワタシに耐えかねたのか、バナナを食べ終えた徹はそう呟きながら、皮を捨てるためにゴミ箱の方へと手を伸ばした。

 

『……■ョ■薙ャ!』

 

 すると彼の肩に憑いていたヤバそうな守護霊の口のあたりからナニカが伸び、ゴミ箱にいた小さいおじさんへと喰らい付く。

 その光景にワタシは震え、咀嚼音と共に響く小さいおじさんの悲鳴を耳に入れながら、それをじっと眺めていた。

 

「……で、結局なんなんだ?」

 

「……………………エリマキがついた、カエル?」

 

「エリマキガエル⁉︎ ドラえもんの小人族回に出て来る奴!?」

 

『■薙ぐ■」!?』

 

 舌みたいなのが伸びてたし、おおよその形状からして多分カエルの守護霊なんじゃないかしら?最初想定していた蝶とか蛾は、あんな風に口から何かが伸びたりしないし。あの羽みたいなのも、もしかしたらエリマキトカゲのエリみたいな奴かもしれない……

 そう推測したワタシの回答に驚いた徹が驚きの声を上げる中、ヤバそうな守護霊の理解出来ない謎の言語がワタシの耳に届いたけど。も、もしかして怒ってる……?なんで⁉︎

 

「それにしても、能力者か〜……もしかして、この間から見始めた夢と関係あるんかな?」

 

「あ?それって確か、なんかキッショい霊に絡まれる奴だっけ?」

 

「………霊に、絡まれる……?」

 

 ヤバそうな守護霊の喚き声に背筋が凍りそうになっていると、洋太がふと思い出した様に口を開き、それを聞いた徹は前にも言ってたらしい話を交えながら彼にそう尋ねる。

 かくいうワタシも彼の放った言葉に反応して、思わずオウム返しに呟いてしまう。

 

「そうそう、今日もクソでかいナメクジモドキの霊がハナちゃんに付き纏ってた夢を見てさ〜。いやホント、キモいのなんのって。

 取り敢えず舌を伸ばしてきたから、それを掴んで地面に叩き付けてやったけど……これもユリアちゃんが言ってた、僕の持ってる能力って奴なのかな?」

 

 そう話しながら、洋太は自分の手を見つめて握ったり開いたりしている。

 しかしワタシは彼の発言に思わず耳を疑ってしまった。

 

 ……え?今この人なんて言ったの? デカいナメクジモドキの霊が伸ばした舌を、掴んで叩き付けた?

 話を聞くだけでもヤバそうな霊と戦って、一方的に嬲る。

 普通なら誰もが見る夢として片付ける所だが、それを見ている者は、誰にも無い凄まじい能力を秘めた存在……それって本当に、ただの夢として片付けていいものなのかしら……?

 彼程の者がそんな夢を見たって事は、何かしらの意味があるのかもしれない……!

 頭をフル回転させながら考え込んでいると、ワタシの中でとある考えが浮かび上がった。

 

(ま、まさか……予知夢!?)

 

 そうよ……!これ程凄まじい能力を持っているのだから、予知夢ぐらいあっても不思議じゃないわ!

 そして夢が未来の出来事だと仮定すると、彼は将来的に凄まじい霊能力者へと覚醒するという事に……

 

「……けどよぉ、俺らには肝心の能力も霊も見えてねぇんだから、ぶっちゃけ嘘だろうが本当だろうが関係なく無いか?それにお前の夢だって、たまたま『そういう夢』を見るようになっただけかもしれないだろ」

 

「うーむ……それもそう、かなぁ……?」

 

 しかしそこで徹が、今まで語って来た事をバッサリと切り捨てる様にそのような事を言ってきたのだ。

 それを聞いたワタシの心に内は、不思議と焦燥感に駆られていた。

 原因はきっと目の前にいる、ゴッドマザーに匹敵する……或いは超えるかもしれないチカラを秘めた“才能の原石”が、このままにしておけば彼の才能が日の目を見る事なく、やがて埋もれてしまうという危惧を抱いたからだろう。

 

「っ⁉︎ ま、待ちなさい!!」

 

 ──この時のワタシは、ライバルが増えるだとか、アレ程の能力者がいたら自分の立場が無くなるだとか、そんな事は一切考えていなかった。

 ただ純粋に、「彼の持つ能力を、このまま腐らせる訳にはいかない!」という使命感に駆られていた。

 気付けばワタシはベンチから立ち上がり、彼らの前へ立って叫んでいた。

 

「良い⁉よく聴きなさい!︎ 確かに貴方達には“この世ならざる者”を見るチカラは無いみたいだけど、“この世ならざる者”を祓うことが出来る……誰かの役に立てる、特別なチカラを持っているのよ!」

 

 “この世ならざる者”をいとも簡単に祓える光を放つ能力を持った洋太と、霊を捕食してしまう程に強い守護霊を従える徹。

 インチキ霊能力者が蔓延るこの世の中、ゴッドマザーや彼らの様な『本物の存在』が如何に貴重なのかを力説し、二人の持つチカラが如何様な物なのかを余す事なく伝えた。

 

「……実を言うと、このチカラで人間関係には苦労したし、煙たがれる事もあったわ……

 だけど、ワタシが持つこのチカラは他の人には無い特別なモノ。このチカラを持って生まれたからには、きっと何か『意味』がある筈……!」

 

 もし彼らが“それなり”の能力者であったのならば、加えて“この世ならざる者”が見えていないのならば。此処は彼らの意思を尊重し、そして“奴ら”が見えない事の危険性を考慮して、諦めて帰っていたかもしれない。

 だけど彼らの力……特に見円洋太の力は“凄まじい”の一言であり。此処で機会を逃して平凡な日常を送らせていたら、きっと世界にとって大きな損失に成りかねない……それ程までに、洋太という男は素晴らしい『才能』を持っているのだ。

 

「それなのに……貴方は、洋太くんはこんな所で、その特別な才能を腐らせる気!?

 このチカラで、世のため人のために役立てようと思わないの!!?」

 

 ワタシは心の底から湧き上がる思いを、二人の心へ直接ぶつけるかの様に、思わず呼吸を忘れる程に叫んだ。

 その叫びに気圧されたのか、彼らは一瞬戸惑いを見せたがすぐに口を開いた。

 

「いや、俺らは別に役立てようとは思ってないです………

 洋太、お前もそう───うわメッチャ泣いとる!?」

 

「ユリアちゃん……今の言葉、しかと胸に響いたぜ……ッ!」

 

 心底どうでも良さそうな返答、心の底から感激しながら落涙。

 両者が見せる反応は、まるで真逆のモノとなっていた。

 ……正直に言うと、徹の冷めた反応は内心想定していたが、思ってた以上に感涙していた洋太には逆に驚いてしまった。

 

「そうだ……ゴールドロジャーやペドロも言ってたじゃないか……『人には必ず「出番」ってものがあるんだ』と……!

 ゴルカムでも、アイヌ語で『天から役目なしに降ろされた物はひとつもない』って言ってるじゃないかッ!!

 ユリアちゃんのいう“特別な才能”が、僕に与えられた『出番』であり『役目』なんだ!!」

 

 何かを決心した様子の洋太は「だから……!」と言葉を切ると、ワタシの手を取りながらこう続けた。

 

「これからはユリアちゃんの事、師匠って呼ばせていただきます!よろしくおねがいしますユリア師匠!!」

 

 その時、握られた手と頬に熱がこもり始めたのを感じたワタシは、自分の顔が赤く染まった事を自覚した。

 だけどこの紅潮が恥ずかしさとか照れとか、恋愛関連のそういった類の物では無い事を感じ取っていた。

 

「……し、師匠……!」

 

 コレはそう──ワタシに弟子が出来た事に対する、高揚であった。

 

「………し、仕方ないわね!特別に貴方を、ワタシの一番弟子にしてあげるわ!共に立派な霊能力者になりましょう!!」

 

 ワタシは顔を赤くしながらそう叫び、彼の手を握り返した。

 洋太は「ハイっ!よろしくお願いします!!」と元気よく返事をし、一連の流れを見ていた徹は呆れた様子でクソデカい溜め息を吐き出していた。

 

「………んで?二暮堂師匠はこれから、洋太と何をするつもりですか?

 確かゴッドマザー……だっけ?その人に弟子入りして、教えを請いて貰ってるらしいけど、その人から何を学んで来たんですか?」

 

「っ!……いえ。まだ、何も……」

 

 ……そうだったわ。ワタシは何を浮かれていたのかしら……

 洋太に師匠と呼ばれたのが嬉しくて、つい勢いで弟子入りを認めてしまったけど……ワタシ、ゴッドマザーからまだ何も学べてないじゃない……!

 ……いえ、弱気になってはいけないわ二暮堂ユリア!折角師匠になったのだから、此処でひとつ良い所を見せてあげないと!

 腕を組みながらどうしようかと考え込んでいると、一緒に考えていた洋太が一つ案を思いついたのか、パッと顔を上げた。

 

「とりあえず、詠唱でも言ってみたらどう?そうすれば霊的なエネルギーが溜まって、それっぽい奴とか出て来るんじゃないかなぁ?」

 

「……詠唱。確かに一理あるわね……」

 

 ──詠唱。技を放つのに必要な儀式であったり、集中力を上げて技の威力を向上させる効果があったりと、唱える理由は多岐に渡る。

 言われてみれば、ワタシの様なまだ未熟な能力者がイキナリ無詠唱で霊を払い除けれる訳が無いじゃない。

 ワタシは洋太の提案に賛同し、早速その“詠唱”を行おうと口を開いて──

 

「………どんな詠唱を唱えればいいかしら…」

 

「……とりあえずぬ〜べ〜先生の詠唱でも言ってみろよ。ホラ、ここに原作漫画からアニメ、実写の奴まとめておいたから」

 

「あ、ありがとう……」

 

 徹からスマホを渡され、そこに記された漫画の詠唱などが記されたモノを見ながら、街灯の下にいる男性の霊を払い除けようと数珠(弾けたけど拾って直した奴)を腕に付けた。

 取り敢えず師匠として、キチンとお手本を見せてあげないと……!

 そんな想いを胸に頭の中で詠唱を復習しながら、ワタシは霊へ手を向けた。

 

「えっと……じゃあ、いくわよ……!

南無 大慈大悲救苦救難 広大霊感 白衣観世音……

 宇宙天地 與我力量 降伏群魔 迎来曙光……

 光明遍照 現威神力 魔界鬼界 降伏怨念 不思議力 悪霊退散……!

 この世ならざる者よ、輪廻の理に従い、黄泉へ還れ──破ァっ!」

 

 ……びっくりするくらい、何も起こらなかった。

 

「「………?」」

 

『……■薙ぐ■」■!』

 

 二人は首を傾げながら、ワタシが手を向けた街灯の方へと歩みながら目を凝らしていると、徹に憑いている守護霊の伸ばした奴が霊の頭に喰らい付いた。

 街灯の霊はどんどんと干からびていき、そのまま砂となって消えていった。

 

「………で?この世ならざる者はどうなったの?」

 

「……………ふふふ。流石ね、影杉徹……さぁ、別の場所に移りましょ」

 

「らじゃー!」

 

「え、何?結局どうなったの?もしかして俺、何かしちゃいましたか?」

 

 

 

 別の霊がいる所へ場所を変えた後も、ワタシは徹から提示された詠唱を唱えて力を放とうと試みた。

 

「──『束ねるは星の息吹、輝けるは命の奔流。受けるが良い!』

 『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』ーー!」

 

 ──しーん!

 

 しかし、何も起こらなかった。

 

 

 攻撃系が難しいなら防御系ならどうだ?との事なので、次は結界を張ろうと試みた。

 

「『闇より出でて闇より黒く、その汚れを禊ぎ祓え』──『帳』ッ!」

 

 ──しーん!!

 

 だがしかし、何も起こらなかった。

 

 

 威力の凄まじい技を放てば少しは何か出るだろうとの事で、今度は中々に長い詠唱を唱えた。

 

「『黒より黒く闇より暗き漆黒に我が真紅の混淆を望みたもう。

 覚醒のとき来たれり。

 無謬の境界に落ちし理。

 無行の歪みとなりて現出せよ!

 踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。

 並ぶ者なき崩壊なり。

 万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!

 これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法』──

 『エクスプロージョン』ッッ!!」

 

 ──しーん!!!

 

 だけどやっぱり、何も起こらなかった。

 

 

「………あーうん、なんていうか、その……ドンマイっ!」

 

「〜〜〜〜〜〜ッッッ!!さてはアンタ、ワタシで遊んでたでしょ!?」

 

 若干半笑いで慰められたワタシはとうとう恥ずかしさが限界に達し、声にならない叫び声を上げながら彼を睨み付ける。

 

「そんな事ないっスよ二暮堂師匠〜〜!ただ、めちゃくちゃノリノリで詠唱してたな〜って、そう思っただけっスよ〜?」

 

「んなああぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

「だ、大丈夫だよユリア師匠!?今回はたまたま上手くいかなかっただけだから!!ホラ徹もユリア師匠を煽らない!」

 

「くふふ……あーはいはい、メンゴメンゴ」

 

 図星を指摘されて羞恥心を煽られたワタシは顔が真っ赤になったのを感じながら、その場で叫び声を上げると身体を縮こまらせながら座り込んでしまった。洋太のフォローと優しさが余計に刺さるぅ……!

 で、でもぉ!マザーのもとでちゃんと修行出来ていれば、いずれはちゃんと霊を払える様になる……予定だったから!だからこの程度の屈辱、なんて事ないんだからぁ!!

 

「……デスビーム!」

 

 心の中で言い訳をしていると、洋太がさっきまでワタシが払い除けようとしていた霊がいる所へと人差し指を向け、そう叫んだ。

 すると指先から一筋のビームが放たれ、その霊へ命中したかと思うと……まるで存在そのものを抹消するかの様な、形容し難い轟音と閃光を放ちながら爆裂。

 閃光が収まると、そこには霊だけが跡形も無く消え去った光景が広がっていた。

 

「おい、急にデスビーム放ってどうしたんだよ洋太」

 

「や、僕もなんかやってみたら出来ないかな〜って思って」

 

 何も気付いていないであろう二人がそう談笑しているのを尻目に、ワタシは驚きで目を丸くしながら口をあんぐりと開けていた。

 ……なに、今の、は?指先からビームが出て、それがスゴイ爆発を起こして、霊をオーバーキルした……それも()()()()で……? た、確かに凄まじい能力と才能を持っているとは思ってたけど……まさか、ここまでなんて……

 ──弟子の洋太は詠唱なしであれ程の威力を出せるのに、師匠のワタシは詠唱を使った上で……

 

「それでユリア師匠、今何か出てた?」

 

「……………っ」

 

「「……つ?」」

 

「……つ、次会う時は色々と教えてあげるから、それまで待ってなさーいッ!!」

 

 そう言い残してワタシは、彼らの前から全力疾走で去って行った。

 もちろんコレは逃げでは無い。彼の師匠としていろんな事を教えるために、色々と調べなきゃいけなくなったの!決して、自分の不甲斐無さに逃げた訳では無いのッ!!

 そう、ワタシは決してへこたれない!何故ならワタシは、洋太の師匠なのよ!誰がなんと言おうと、二暮堂ユリアはゴッドマザーの一番弟子で、彼の師匠なんだからぁ!!

 

 

 

「……僕、なんかしちゃいましたか?」

 

「うん、なんかしちゃったんだろうな」

 

 そして残された男二名は、走り去るユリアを見送りながらそう呟きあった。

 

 

 卍 卍 卍

 

 

「──ていう事があったんだけど、みこちゃんはユリア師匠のこと何か知ってる?」

 

「いや、私もそこまで知ってるわけじゃないから……(なんでまだ師匠呼び……?)」

 

『勝者はアナコンダ穴熊ァァァァァァ!!強いぞアナコンダ穴熊!流石は男の中の男ォォ!!』

 

「うおぉぉぉぉぉっ!アナコンダ穴熊鬼強ェェェ!!このまま向かってくる奴ら全員ぶっ飛ばしていこうぜ!!」

 

 その晩の四谷家にて、そんな話をしながらプロレス動画を見る二人の姿があったとか何とか。




●二暮堂ユリア
四級から三級くらいまでの呪霊しか見れない代わりに、生命オーラがちゃんと見えるだけの凡夫。みことは別ベクトルで、色々と可哀想な子でもある。
自称・ゴッドマザーの弟子だが、そんな彼女を引退まで持っていったとされるみこの事をスゴ腕能力者と勘違いしている。あと、ハナと同じ自覚なき能力者である馬鹿猿に師匠呼びされて悪く無い気分になってる。
他の二次創作SSでは、オリ主にSEEKYOUされたりわからされたりしてる。

●見円洋太
四級呪霊すら見えない凡夫。ユリアの話を受けて、彼女のことを師匠と慕う様になった。
孫悟空を始めとしたドラゴンボールキャラみたいに、舞空術で空を飛んだり、かめはめ波や魔貫光殺砲や気円斬を放ってみたいと、小学生の頃から夢見ている。
キン肉マンに影響されてプロレス動画を見ていたが、その中でアナコンダ穴熊のファンになった。

●影杉徹
特に霊感の無い凡夫。ユリアの話を聞いて、(厨二病時代)の古傷が疼きだした。
彼に憑いているオカイコ様は前回の話で洋太の光によって漂白されたが、徹に絡もうとするヤバい奴を喰らいまくったらまたいつもの姿に戻った。尚この世ならざる者が見えない徹は、その事に全く気付いていない。
キン肉マンだと、ロビンマスクとウォーズマンの超人師弟コンビ推し。

●四谷みこ
特級呪霊までハッキリ見えるだけの凡夫。ユリアに絡まれた可哀想な子でもある。
洋太に何度かアナコンダ穴熊の動画を見せて貰い、それ経由でヤバい奴に目を付けられそうになったユリアの首を〆落とした。

●アナコンダ穴熊
“男の中の男”のプロレスラー。得意技は相手の後ろに回って首を絞める『大蛇落とし』。
もしもキン肉マンの世界にいた場合、それなりに高い超人強度を得られると思われる。
後の握手&サイン会で、黒い長髪女子と茶髪パーマ男子のカップルらしき二人組が来た模様。

●くだらないあとがき
……いや、ね?確かに赤評価バーにしたいとは言ったし、お気に入り登録も増えて欲しいとは言ったよ?
でもね?念願の赤評価バーになった途端、急にお気に入り登録とか評価者とか閲覧数が増えたり、日間ランキング最大44位になるとか流石にビビるよ。明日死ぬんか?って逆に不安になったよ。
……まぁ、自分の中の承認欲求モンスターが「もっと評価くれー!」と言って来るので、これからも頑張る所存です。

それでは皆さま、少しでもこのSSが面白いと思ったら。
高評価・お気に入り登録・感想よロリーですヨ……チャオ☆
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