見える子ちゃんと見えない夫くん   作:yu-ki.S

14 / 50
前回の話はいつもより文字数が多かったので、今回はちょっと気持ち少なめです。


もしかしたら、不覚をとってしまったのかもしれない

 只今現在。上階にある特設会場で北海道物産展を行なっているデパートにて、とある三人組が現着していた。

 

「はーるばる来たぜっ、函館ぇ〜い!」

 

「デパートだよ」

 

「ここ北海道でもねぇし、東北ですらねぇからな?」

 

 その者たちは上から見円洋太、四谷みこ、四谷恭介の三人で。いつもの如くバカやっている洋太は、姉弟二人による手厳しいご指摘を受けていた。

 

「いやはや、デパートに来るのは何年ぶりだろうな〜!テーマパークに来たみたいでテンション上がるなァ〜!あ、見て見てみこちゃん!ジンギスカン味のポテトチップスだってさ!しかも“濃厚北海道ミルクアイスの詰め合わせ”っていうのもあるんだってさ!!」

 

 入口付近に貼られた物産展のポスターを指差しながら大はしゃぎする洋太。最後に来たのは小学校入学前にランドセルを買いに行った時以来であり、久しぶりのデパート故に今のテンションは最高潮にまで達していた。

 反対にみこは、キラキラとした目で辺りを見渡す幼馴染を、早くも疲れたような目で見据えながら口を開く。

 

「洋太。此処にはお母さんの誕生日プレゼントを買う為に来たって事、忘れてないよね?」

 

「わーってるって。浮かれポンチになって……透子さんのプレゼントを忘れるなんて、ポカをやらかす程…………僕は抜けてないからねっ!」

 

「「………」」

 

 そうは言うが、ポスターに描かれた『ウサギ肉のチタタプ風つくね串』の写真をあからさまに涎を垂らしながらチラチラ見てる姿から、二人に全く信頼されていない眼を向けられる馬鹿猿。

 

「……はぁ、まぁいいや。洋太は何買うか決めてるの?こっちはまず服を見に行くつもりだけど」

 

「うーん。今んとこ、花とアクセサリーで迷ってる感じかな〜?まぁ歩いていればすぐに決まると思うけど………おほー!ココの階におもちゃ屋あるんだ!こんなにデカイ店なんだから、ライダーグッズもいっぱいあるんだろうなぁ!!」

 

((心配だ……))

 

 とりあえずみこはフロアガイドをアホ面晒しながらマジマジと見る馬鹿の首根っこを掴み、恭介と一緒にデパート内へ歩を進めた。

 

 

 

「うーん……恭介、これどう思う?」

 

「それも良いと思うけど……もっとライオンの顔の刺繍とかあった方が可愛いと思うんだ」

 

「うんわかった、ごめんね。

 ……そういえば洋太は?」

 

 それからレディースファッションのテナントへと移動したみこは、母親に似合いそうな洋服を見て回りながら、レモン色のエアリーブラウスを手に取っていた。

 隣では恭介も店内を見回しながら歩いているが、ふと気づいた頃には先程までいたはずの洋太の姿が見当たらない。何処をほつき歩いているのかと周囲に視線を向けていると……

 

「見て見て見て!あっちの店でメチャメチャイケてるシャツ買って来た!」

 

 そこへ小走りで戻って来た洋太の手には、箔押しプリントのコーカサスオオカブトが施された黒シャツが握られていた。

 

「……ッ!? オイ洋太!何処で買ったんだよそのシャツ!超カッケー!!」

 

「でしょでしょ!しかも裏には……えーと、あるしの?って動物もプリントされてるんだ〜〜!100%──いや1000%イケてるよねコレ!!」

 

「その二つ、どういう組み合わせ?」

 

 それをみこはなんとも言えない目で見るが、恭介は目を輝かせてそのシャツを褒め称え。それを聞いた洋太は鼻高々にTシャツの後ろにプリントされた、ツノが二本あるサイみたいな奴を見せながら更に調子付いていく。

 

「……そのシャツも良いけど、こっちはどう思う洋太?」

 

「んえ?……あー。僕的には、透子さんは青系辺りが似合うカナーって思ったけど……ホラ、例えばコレとかどう?」

 

 そう言って洋太が手を伸ばしたのは、トルソーにかけられた紫色のファー付きロングコートだった。

 

「最近肌寒くなって来たし、こういうあったかそうなコートを贈るのも良いと思うぜ?デザインも“べりーえれがんと”って感じで良いと思うし。

 それじゃあ僕はこのシャツ着てくるね!それじゃあ!」

 

「……………………お母さん、コレ似合うかな?」

 

(無言で戻した……ついでに見なかった事にした……)

 

「よかったら、ご試着もできますよ?」

 

 自慢げに鼻の下をこすりながら笑う馬鹿猿はコートをみこへ手渡すと、シャツを持って近くの着衣室へ入っていき。対する彼女は、幼馴染が持って来たコートを一瞥すると静かにトルソーへ掛け直し、代わりに水色の花柄ワンピースを手に取った。

 するとお団子ヘアの女性店員が笑顔で駆け寄って来て、みこにワンピースの試着を勧められる。

 みこはプレゼント用だと言って断ろうとしたが、恭介から「姉ちゃんと母さん体型ほとんど一緒だし、着てみればいいじゃん」と後押しされて、仕方なく試着室の方へと目を向けた。

 

「ハーイ、お待た〜!どうよ、カッコいいでしょ?」

 

「ハイハイ、カッコいいカッコいい」

 

 同時に試着室のカーテンが思い切り開かれ、中から先程持って来たTシャツを着た洋太がドヤ顔で、手を広げてポーズを取りながら出て来た。

 みこはシャツについてたサイズ表示のシールを剥がしながら、適当にあしらいつつもカーテンを閉め、早速試着を始めようとして──

 

(……おわぁ)

 

 横の壁に焼き付いた人型の染みと目が合い、思わず顔が強張った。

 

(多分コレ、洋太のせいだよね……あ、消え始めた)

 

 恐らく中に居たであろう“ヤバい奴”が、先に入っていた洋太の放つ光によって焼かれたのだろうと、徐々に消えつつある苦痛に塗れた顔の染みを悍ましそうに眺める。

 

「三人でお買い物なんて、とても仲がいいんですね〜。ご兄弟ですか?」

 

「ハイ!自慢の弟です!」

 

「いえ、タダのお隣さんです」

 

「……んん?そうなりますと、先程のお姉さんは……?」

 

「幼馴染です」

「姉です」

 

 カーテンの奥で幼馴染と弟が店員さんと会話をしてるのを聞き耳入れながら、みこは気を取り直してパーカーを脱衣し、ワンピースを着込んで鏡越しに自分の姿を何度か角度を変えながら確認していく。

 

(……どうかな?)

 

 最後にその場で半回転して背中を一見すると、試着室のカーテンを開いて恭介たちへお披露目をする。

 

「わぁっ、すっごくお似合いですよ!」

 

「あ、姉ちゃんも似合うな」

 

「そ、そう………洋太、口開いてるよ?……洋太?」

 

 店員さんと恭介から感想を貰ったものの、恭介の肩を抱いてた洋太は口をポカンと開け、両の眼を見開いて硬直していた。

 その様子に眉を顰めて彼の前へ駆け寄って名前を呼ぶも、一向に反応を見せない幼馴染に痺れを切らしたみこは鼻を思い切り引っ張り、それによって意識を取り戻した洋太は「いでででで⁉︎」と悲鳴を上げる。

 

「痛ってぇ……何も鼻引っ張る事無いやんねん……」

 

「だって声かけても反応しないし」

 

 そう言って不満を溢す洋太だったが、みこにそう指摘された途端、鼻をさすってた手で口元を隠して気恥ずかしそうに目線を逸らした。

 

「あー……ごめん、ちょっと見惚れてた」

 

「……………………へぇ、そう。

………………………………ふーん……」

 

 手で隠し切れてない部分が赤くなっている事から、幼馴染がガチ照れしている事を察した。

 この時みこは、自分の顔も赤く染まっていた事には気付いていなかったが、幼馴染の顔を直視するのが何故か恥ずかしくなり、彼と同じ様に目を逸らしていた。

 

「……姉ちゃん、いつまで黙ってんだよ」

 

「あっ、ごめん……すみません、このまま着てくんでお会計お願いします」

 

「………あ、ありがとうございますっ!」

 

「え、何で?プレゼントは?」

 

「……そ、そうだよみこちゃん。透子さんに似合うと思って買ったんでしょ?なんでなん?」

 

「………」ドスっ!

 

「グベェっ!?何故いきなりのチョップ!?」

 

(キャアーーーーっ!彼くんが見惚れてたから気に入ったの⁉︎ オマケに照れ隠ししちゃって……あーもうっ、ほんとにカワイイ!!てかコレ実質プロポーズでしょ!?くっ、焦れったい……はやく付き合っちゃえ!!)

 

 恭介のツッコミと洋太の疑問に対して、みこは幼馴染の横腹に無言でチョップをかます。

 その行動に洋太は驚きと痛みで声を上げ、その光景を口に手を当てながら見てた店員さんはもどかしさの余り気ぶっていた。

 

 

 卍 卍 卍

 

 

「ふぃ〜、無事にプレゼント買えた良かったね〜。ヒンナヒンナ」

 

「うん、そうだね……」

 

「ところでヒンナってなに?」

 

 その後、お母さんのプレゼントとしてビレッジバンガードでピンクと水色のペアマグカップを買い。花屋で『カンパニュラ』という青い釣鐘みたいな花の鉢植えを買った洋太は、物産展で買ったウサギ肉のチタタプ風つくね串に噛り付いていた。

 

 

『あー……ごめん、ちょっと見惚れてた』

 

 

 …………いや、あの時は洋太のおかげで焼かれてたとはいえ、ずっとそこに居たらまた別の“ヤバい奴”が出て来た可能性があった。だから着替えるのを辞めた。それだけだ。

 だから決して、洋太のいつもと違う、珍しい反応を見たから、このまま着て行こうと思ったワケでは決して無い……断じて、ウン。

 さっきの事を思い出し、言い訳みたいに自分へ言い聞かせながら駅に向かっていると、恭介にヒンナの意味を教えていた洋太から「ほんじゃ、あとは帰る感じでいいよね?」と問われたので、それで大丈夫だと肯定する。

 

「それより洋太、これから電車乗るけど大丈夫?」

 

「大丈夫って、僕が乗り物酔いしないかの心配?それなら大丈夫だよー、乗り物酔いした事ないし」

 

「いやそうじゃなくて、アンタこういう時に電車乗ると大体寝るでしょ」

 

 私の指摘に、何時もの調子を取り戻していた洋太はバツが悪そうに目を逸らして頬をかく。

 そう……何を隠そうこの馬鹿は、昔から遠出した先ではしゃぎまくって帰りの電車やバスに乗った時は、疲労の為か決まって爆睡するのだ。

 その時は目的地を寝過ごさないように注意したり、到着前にひっ叩いて無理やり起こすといった対策を行ったから問題なかったが……それでも降りる駅を通り過ぎかけた事が何度かあって、その度に私は肝を冷やしたものだ。

 

「もーみこちゃん、それいつの話?高校生になったんだから、流石にそんな事はもう起こらないでしょ」

 

 自信満々な笑顔でそう言う洋太に一抹の不安を覚えながら、駅ホームへ続く階段を登って電車に乗った──その十数分後。

 

「う〜ん……僕は今日から鉄華団に入団します……ZZZ」

 

(どんな夢見てるの……?)

 

 案の定、隣で私にもたれかかって爆睡する幼馴染に、呆れながら溜め息を吐いていた。ちなみにもう片方には、恭介もヨダレを垂らしながら肩に頭を乗っけて居眠りしていた。

 そんな事を考えつつ窓を覗けば、車窓から見える景色は次々と移り変わり。

 周りを見渡せば、そこそこ混んだ車内で乗客たちは静かに電車に揺られていた。

 そして耳を澄ませば、ガタンゴトンというレールの上を走る電車特有の音(ジョイント音というらしい)と、ギギギギという金属の様なものを引き摺る音、が……え?

 

『ぶつ ぶつ……』

『ぶつ ぶつ……』

 

(うわぁ……またなんか来た……)

 

 何が来てるのかと思い、音の方へ視線を向ける。

 其処には……左手にはズタ袋、右手には音の正体である有刺鉄線が巻かれた大振り斧を引き摺る、虫の脚みたいなのが所々から飛び出した黒いコートを纏った巨体の“ヤバい奴”がおり。コートのフード下には、包帯で巻かれた三つの不気味な形相が見えた。

 

(……まぁでも、洋太も居るし……いつもみたいに見えないフリしとけば──《ザクッ!》──えっ⁉︎)

 

 眠りこける幼馴染の手を握りながら“ヤバい奴”が居なくなるのを待とうとした矢先、突然電車に何かが斬り掛かったような音が聞こえ。慌てて音のした方へ視線を向ければ、其処には大振り斧を乗客に向けて振り翳す化け物の姿があった。

 斧を振り下された乗客には傷一つ付かずに気づく様子も無かったが、化け物は次に隣にいた別の乗客にも、その又隣の乗客へ斧を振り回し。まるでルーティーン作業をこなすかの様に、黙々と斧を乗客へ振り続けていた。

 

(いや、ちょっと待って……もしかしてコレ、順番回ってくる!?)

 

 頭の中で嫌な予想を立てた私は此処から移動しようと、まずは恭介を揺すり起こそうとするも……“此処から去る”という逃げ道を塞ぐかの様に、向かいの席で立ち上がったサラリーマンの男性に反応した化け物が、さっきまでのルーティーンをやめて斧を勢い良く斬りかかった。

 再び先の位置へ戻った化け物に、最早逃げ道が無いと悟り。徐々に回ってくる順番に対して、私は恐怖心を積み重ねていく事しか出来なかった。

 

(……だ、大丈夫……!洋太も居るし……うん、私なら乗り切れる……!)

 

 洋太の隣にいた、なんかヤバいのに取り憑かれてたらしい女性が振り下ろされた斧によって“ヤバい奴”を抜き取られたのを横目に見ながら、そう自分に言い聞かせつつ。化け物が次に定めたターゲットとなった洋太を注視して……私は、自分の考えが甘かった事を思い知らされる。

 

『……』

 

 ──スッ。

 

(スルーされたぁぁぁぁ!?)

 

 振り下ろされそうになった斧は一番上で静止し、洋太をマジマジと見た化け物は斧を静かに下ろしてから、何事も無かったかのように次のターゲット……つまり私へと振り翳そうとする。

 

(まって、まって……!こんなの、反応しないなんて……

 よ、洋太……助け「──エヴァンゲリオン初号機、いっきまーす!!」

 

《ズガッ!》

 

 コレから降りかかる凶器に身構え、分厚い刃が頭からすり抜けようと──する前に、突如鼻提灯を出しながら立ち上がった洋太に()()()()()()()()化け物が、私に振り翳す筈だった斧で反射的に斬りかかった。

 

『……アッ』

 

 その見た目からは想像出来ないくらいに素っ頓狂な声と共に、慌てて洋太から斧を引き抜くが……其処には刃があった部分がゴッソリ無くなり、断面を赤熱化させ、柄だけとなって斧としての機能を完全に失った、鉄線が巻かれただけの棒切れが握られているだけだった。

 

(………〜〜〜〜ッッッ!もうっ、タイミング!!)

 

 なんとかギリギリの所で回避できた事に安堵しながら、いきなり大声を出した洋太に心の中で悪態をつく。

 しかしそんな私の思いなど知る由もなく、洋太は何事もなかったかの様にストンと腰を下ろし、馬鹿みたいな寝顔を浮かべる。

 

「神聖ブリタニア帝国は、僕が一人残らずぶっ潰します……ZZZ!」

 

(……こっちの気も知らないで。まったくもう、ホントに──)

 

『ア゛ア゛ァッ!?』

 

 だけど助けてくれた事は事実なわけで、それについて感謝の念を送ろうとした時、化け物が突如上げた悲鳴に言葉が詰まり。その元凶の方へ思わず目を向けた私は、その光景を目にして背筋に冷たいモノが走るのを感じた。

 

『──テメェ……誰に向かって……』

 

(…………えっ、は?)

 

 其処には金色に輝く毛並みが特徴的な“猿の腕みたいな存在”にアイアンクローされた化け物が床から足を離れて浮かび上がり、その化け物の顔を掴む猿の腕は……今も眠っている洋太の胸部、具体的には心臓の部分から伸びていた。

 

『ア゛………ア゛ァ………』

 

『誰に、向かって……振り下ろしてんだぁ……?』

 

 顔からじゅうじゅうと肉が焼かれる音を立てる化け物が、必死に猿の腕を掴もうとして今度は手を焼かれながら、徐々に力を失っていくのが見て取れる。

 数秒程経って鼻に焦げ臭い匂いが突いた頃、猿の腕が化け物から手を離すと、化け物は苦しそうに顔を抑えて悶絶し、そのまま床へ突っ伏した。

 

『ガッ、ア゛グゥ……!』

 

『……二度は、ねェぞ』

 

 猿の腕は人差し指を伸ばして化け物にそれだけ言い残し、洋太の中へと戻っていった。

 残された化け物は、顔を抑えながらズタ袋と棒切れを持って立ち上がり、その場から逃げる様に消えて行った。

 

(……………なになになになになに⁉︎ え、何アレ!? えっ、どういう事!?)

 

 私はというと、突然目の前で起きた現象に理解が追いつかず、軽くパニック状態に陥っていた。何せ先程まで脅かそうとしてきた“ヤバい奴”が、幼馴染の中から出て来た、この間の狐の神サマとか白い狼並みにヤバそうな『猿の腕』が追い討ちをかけて来たのだから。

 

(も、もしかして……洋太が光っている原因で、何か守護霊的な……?)

 

「ね、姉ちゃん……」

 

 なんとかしてこの混乱した頭を落ち着かせようと、自問自答を繰り返して思考の整理に努めていると……もう隣に座っていた恭介が目を覚ましたのか、何故か気まずそうな声で呼んでくる。

 私は恭介の方へ振り返ろうと思考の海から意識を浮上させ……周囲の乗客が此方の方をジトッとした目で睨んでいる事に気付き、先程洋太が大声を出しながら立ち上がった事を思い出した。

 

「………すみません………」

 

「鉄血の新世紀エヴァンダムギアス、ぜったい見てくれよな……ZZZ」

 

(なんか色々混ざってる……)

 

 ……取り敢えず降りる駅に近付いたら、もう一度脇腹にチョップして叩き起こそう。

 みこは隣で阿保な寝言を唱える馬鹿に対して、静かに決意を固めた。

 

 

 卍 卍 卍

 

 

『──ほんで帰りに脇腹チョップされて起こされた事以外は、兼ねて順調に誕生日の準備を進めてる訳だけど……そっちは僕がいなくて寂しくなかった?』

 

「安心しろ。自慢じゃねぇが、こちとら一人遊びの名人やぞ?ソースは小学生時代の俺」

 

『……………そっか、よかったよ!』

 

「オイこら絶妙に気を使おうとすんな。そこは『ホントに自慢になる奴なん?』とか『マジで自慢にならないね』ってツッコム所だから」

 

 夜10時過ぎ。とあるマンションの一室で、親友と携帯越しの会話する一人の青年…影杉徹が、ドラマ番組を見ながらリビングのソファで寛いでいた。

 

『あ、そろそろお風呂入らなきゃだから、そろそろ切るね〜。おやすみなさーい』

 

「おう、おやすみ」

 

 徹は通話が切れて暗くなった画面を見届けながらスマホをテーブルに置き、そのままソファに深く座り直す。

 するとそのタイミングを狙ったかのように、玄関の開く音が耳に入る。

 

「ただいま〜…」

 

「おかえりーお母さん。ご飯は?」

 

「だいじょーぶ……あっちで食べてきたから」

 

 リビングへ入ってくる足音に徹はソファにもたれかかりながら背後を振り返ると、其処には疲れた様に肩を回すスーツ姿の女性の姿があった。

 その女性……徹の母親はネクタイを緩めると、そのままキッチンへと向かい冷蔵庫から2ℓペットボトルに入ったお茶を取り出し、コップへ注ぐ事なく直接口を付けて飲み始める。

 

「あ゛ぁ〜〜……カテキンが身体中に染み渡るぅ〜〜……」

 

「今日も大変そうだな、仕事」

 

「まぁね……クソ上層部がまた何時もの無茶振りを押し付けやがって……いつか駆逐してやる……!」

 

「いつも思うけど、そんなにキツイなら転職すれば?」

 

「転職って……簡単に言ってくれるじゃない……今時こんな不愛想なおばさんを雇ってくれる会社、なかなか見つからないわよ……」

 

 徹がそう尋ねると、母親は飲み口から口を離しながら、溜め息を吐いてソファに腰掛ける。

 こうして見てみれば普通な親子であるが……事実としてこの母親は、何処ぞの超大手商社にて中間管理職に就くキャリアウーマンであり、日々部下や取引先の相手へのストレスが原因で、その疲労度が半端無かった。

 更には上司や上層部からの無茶振りに振り回され、時には部下のミスをフォローする事も日常茶飯事であり、彼女が中々家へ帰って来られない原因となっていた。

 ただそれはそれとして、母親自身が今の仕事を気に入っている為、辞める気は全く無いらしい。

 

「世知辛ぇな、社会……」

 

「そうよ徹。この世界に完全なホワイト企業なんてものは存在しないの。だから就職するとしたらブラックじゃない、可能な限りホワイトに近いグレー企業に入りなさい」

 

「未来ある子供に夢もクソもないこと言うやん」

 

 徹は呆れた顔でそう返すと、「世の中なんてそんなもんよ」とぼやく母親の遠い目を見ながら、コップに注がれたお茶を飲み始め……

 

「ところで徹、今日のデートは楽しかった?」

 

「ヴェぶぉッ!?」

 

 突如放たれた爆弾発言に思わず含んでいたお茶を噴き出し、思い切り噎せて咳き込んだ。

 

「……え?マジで行ってきたの??」

 

「ゲホッ、ゲホ……カマかけやがったな……」

 

 コップをテーブルに置き、口の周りとテーブルをティッシュで拭きながら母親へ視線を向ける。

 

「それでデートのお相手は……もしかして、ハナちゃんって子?やるわね〜」

 

「おい待て、なんでハナさんの事知ってんだよ。俺話した覚えないんだけど」

 

「徹がお風呂に入っている間に、スマホから掛かってきた洋太君と話をしてた時に聞いたわ」

 

「いや何勝手に俺のスマホ使ってんだよ!?そしてアイツも何勝手にベラベラ喋ってんだ!!」

 

「でもせっかく電話が来たんだから、出なきゃ失礼でしょ?」

 

 母親は悪びれた様子も無くそう告げ、それに徹は頭を抱えながらツッコむ。

 そんな息子を尻目に、母親はキャップを締めたペットボトルを冷蔵庫に戻して、此方をニマニマしながら振り返る。

 

「取り敢えず、いまお母さんが言えるのは……避妊だけはちゃんとしてね?」

 

「友達!ただの友達だから!」

 

「へぇ、そっか〜……じゃあお母さんはお風呂に入ってくるね〜」

 

「ねぇホントにわかってる?俺、別にハナさんと付き合ってないからね??」

 

 そう叫びつつ、パタパタと風呂場へと向かう母親の背に弁明する。しかしそんな息子に、母親は手をヒラヒラさせながらリビングを出て行った。

 

 

 ──今日はありがとね徹くん!デート楽しかったよ!

 

 

(………いやまぁ確かに、デートした事は事実だけどさぁ……)

 

 徹は一人になった事で静かになったリビングで、ソファに寝転がって顔を赤らめながら、今日あった出来事を振り返った。




●見円洋太
突如として、洋太が4人に分裂してしまった!
圧倒的ゴリラ・ゴリラ・ゴリラな、力の洋太。
この中だと一番弱い、知恵の洋太。
いざって時以外はそんなに良い訳じゃないぞ!な、運の洋太。
色んな意味でメンタルが強ぇ奴なのか…⁉︎な、心の洋太。
そしてHappy Birthday!祝福の鬼と化した、祝いの洋太。
劇場版『見える子ちゃんと見えない夫くん 4人の洋太と黒狐』、ぜってぇ見てくれよな!
軍艦「5人いるーーーー!?」

●四谷みこ
富、名声、力。この世の全てを手に入れてない只の女子高生・四谷みこ。彼女の出掛ける予定を立てた際に放った一言は、馬鹿猿をデパートへと駆り立てた。
「今度の休み、お母さんの誕生日プレゼント買いに行くんだけど。洋太も一緒に行く?」
馬鹿猿はグランドラインを目指し、プレゼントを追い続ける。
世はまさに大ゴーカイ時代!
マーベラス☆★「ド派手に行くぜっ!」

●四谷恭介
ビレッジバンガードでノコギリエイのシャツが気に入っていた弟。〈チュウ!!!可愛くてアーロンパーク!!!シャハハ!!!
後に母の誕生日を祝う際、バースデーサングラスと赤黄緑のパーティハット、スーツのおっさんと横に『素晴らしい!』という文字がプリントされたシャツの上に『最高最善最大最強お誕生日』と書かれた襷を掛けた馬鹿猿がヘタクソなオカリナ演奏を披露しながらプレゼントを持って来るという、中々ツッコミどころのある登場に呆れたとのこと。
馬鹿猿と見える子ちゃん「「別に付き合ってないけど、何か?」」ニギニギ
おじさん「うへ〜。それはひょっとしてギャグで言ってるの〜?」

●服屋の女性店員さん
原作ではみこ恭介姉弟に「カレシ感が可愛い」「お姉ちゃんもカワイイ」などと興奮気味だったが、今作では更にみこと洋太の関係に気ぶっていた女性。
原作とアニメを見比べるとデザインがまあまあ違うが、見返したら他キャラのデザインも微妙に違う事に気付かされた。まぁアニメなんだからそらそうか。
気ぶりお姉さん「抱けえっ‼︎ 抱けっ‼︎ 抱けーっ‼︎ 抱けーっ‼︎」

●電車の化け物
アシュラマンの様に顔が3つある、ブラックサバスの如く自動無差別攻撃を行うヤバい奴。
クロスユーフォーエックスがドレッドから変身者をアブダクションさせたみたいに、通常武器である斧をブン回して対象者の中に潜む呪霊を引っこ抜いて袋に詰め込む。それが彼の仕事です。
ここからは私の推理にはなってしまうのですが、おそらく彼はヒトならざる者を冥界へと連れ帰す『死神』の様な役割を持った存在なのではないでしょうか?
呪霊階級で例えるとその役割から最高で特級クラスはあると考えられるが、とある二次SSでは某ヤバい子オリ主からwhat's up⁈したデンジャーな和邇様に割れる!食われる!砕け散る!され、無事に最初の犠牲者となった。

●金色の猿の腕
洋太の中でゴキゲンに寝てたら、いきなり何かに斬りかかれる様な感覚と一瞬引っ張られる様な感覚に陥り、実に不愉快だったので実行犯を締めた、なんか凄くヤバそうな奴。
洋太がバナナを欲するその原因……ではなく、昔お婆ちゃんと一緒に食べた時の味が好きだったのが原因である。あと洋太が馬鹿なのもほぼ先天的なものでなので、この猿とは一ミリも全く関係ない。
????「オッス、オラ■■■■。ワクワクすっぞ!」

●鉄血の新世紀エヴァンダムギアス
もし此処に徹がいたら「ごちゃごちゃしすぎや!北岡先生いたら即“エンドオブワールド”ブッパされてんぞ!」と突っ込まれてたでだろう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。