前回の三つの出来事!
一つ!馬鹿猿と見える子ちゃんとその弟が買い物に行った!
二つ!四谷みこ、見円洋太から猿の手が生えて来たのを目撃!
三つ!その頃、影杉徹は何故か百合川ハナとデートしていた!
とある休日にて、街へ繰り出していた影杉徹。
彼は現在、己に課した任務を遂行するため街へと赴き、そして己の任務により苦悩を強いられている。その任務とは──
「ノエル団長のおっぱいマウスパットを買うか、ルイ姉の等身大抱き枕を買うか……選択肢は二つに一つ……か」
とある店の前で二択の選択肢の中から、どちらを購入するかを決める事だった。
彼が今いる、ゲームやアニメのグッズが売られている店のショーケースには、“ホロライブ”所属タレントである『白銀ノエル』のマウスパットと、『鷹嶺ルイ』の抱き枕が飾られていた。
本当ならば両方とも買いたい所らしいが、生憎徹は学生の身分故に購入金額には限度があり、どちらか一方しか買えぬ状況であった。
この任務を遂行するにあたって、当初の予定ではノエル団長のマウスパットのみを購入する予定だったが、どうしても隣に鎮座してあったルイ姉の抱き枕も欲しい衝動に駆られたらしく、今に至るのだった。
「どうする……俺はどうすれば……!!」
もし片方のみを購入したとしても、次の資金を得る頃にはもう片方のグッズは別の誰かが購入して、入手不可能になるかも知れない。故に、二択の選択肢の中からどちらを選ぶかを決めかねていた。
ちなみにオカイコ様……つまり我の方は、徹がヒロアカのデク並みにブツブツ呟くのを欠伸しながら見守っていた。
「ヘイ彼女!一緒にお茶でも飲まない〜?」
「俺たち、オススメの喫茶店を知ってるんだぜ?今ならチーズケーキの割引券もあるから、お茶をしばくなら今がチャンスだぜ?」
いつになったら決まるのかなーと、欠伸をしながら徹の頭の上に佇んでいる中。少し離れた所で、ピアスを沢山着けたパツ金ロングのヒョロッとした男とマゼンタカラーモヒカンのタッパと筋肉が発達してる2m近くある大男によるナンパが行われていた。
こんな白昼にナンパされてるであろう女も大変だろうなぁ。なんて他人事のように思い、ナンパされている女の顔を見てみようと目を凝らして確認してみる。
「す、すみません……あたし、ちょっと急いでるんで……」
『
其処にはいたのは、ハナと呼ばれる小娘だった。
男二人に迫られて困っている様子を見せる小娘の顔は、必死に怖い顔を見せつける男共への恐怖を押し殺しているようにも見えた……ていうか割と声が震えている事から、それでも笑みを崩さぬ彼女の精神力には目を見張るものを感じる。
「………ハナさん?」
此処で漸く、思考の沼に堕ちていた徹が知り合いの声に気付き、小娘の方へと顔を向ける
「そう言わずにさぁ、5分……いや30分で良いから一緒に行こう?な?」
「いやお前それ、6倍に増えてね?」
「あ、あの。ホントに急いでますので……」
「まぁまぁ、そんなに遠慮しないで……」
パツ金ロング男が巨漢のモヒカンにそう指摘されてる隙に一刻も早く此処から離れようと、小娘は二人の男の間を抜けて立ち去ろうとする。
だがパツ金ロング男は彼女の行く手を阻みながらしつこく食い下がり、彼女の手首を掴もうと趣味の悪い指輪を何個もはめた手を伸ばし……
「──すみません。彼女に何か用ですか?」
「っ。と、徹くん……?」
すぐ様小娘の下へ駆け寄った徹が彼女の肩を抱いて引き寄せ、パツ金ロング男の掴もうとした手を空回りさせる。
「あぁ?なんだテメェ、俺の邪魔をするってのかァ?」
「オイオイ、やめとけって……多分こいつ、このお嬢ちゃんの彼氏だぜ?下手に手ェ出したら馬さ蹴られるぞ?」
「かっ……⁉︎」
小娘から離されたパツ金ロング男が徹を忌々しく睨みつけながら舌打ちを鳴らし、モヒカン大男が絡もうとする仲間を落ち着かせようと宥める。
一方の小娘は徹の彼氏と勘違いされた事に顔を赤くし動揺するが、徹はそんな小娘の反応に気付かぬくらいに強く彼女を引き寄せ、パツ金ロング男を睨み返す。
「……ほーん、良い目してるじゃねぇか。いいぜ、やってやるよ」
「お、おい……」
するとパツ金ロング男は睨み返してくる徹の目が気に入らなかったのか、モヒカン大男の制止を振り切って、拳の骨を鳴らして威嚇しながらジリジリと歩みを進めて来る。
徹は喧嘩腰のパツ金ロング男の姿に脂汗を垂らして動じつつも、小娘を自分の背に隠すように移動させる。絶体絶命のピンチ!
しかしそんな彼を守る存在が此処に居た……そう、我である!!
『ビギィ!』
「──ア゛ッ」
「「「……えっ?」」」
我は口腔から伸ばしたもう一つの口でパツ金ロングの男の頭部に噛み付き、脳内へ向けて我が貯めこんできた負のエネルギーを吐き流していく。
パツ金ロング男は突如脳内へ流し込まれた、吐瀉物を処理した雑巾並みの特級汚物なエネルギーに耐えきれず、白目を剥きながら膝から崩れ落ちてそのまま失神し、その場で仰向けに倒れる。
よーし、これで一件落着……あれ?仲間であるモヒカンの大男は兎も角、なんか二人も固まってね?折角不届き者を成敗したというのに……
「あ、あの……大丈夫ですかその人?」
「……え、なに?貧血?まさかデスノートに名前書かれた、とかじゃ無いよね?」
「……脈はあるし、息もしてるから、問題ねェと思う」
暫しの静寂の後、我に返った大男がその場でしゃがみ込んで失神している仲間の男に恐る恐る近付き、首に指を当てて安否を確かめ始める。そして大丈夫なようだと判ると二人はホッと胸を撫で下ろし、安堵の息を漏らす。
「すまねぇなお嬢ちゃん、コイツ彼女がなかなか出来なくて気が立ってたんだ。ホレ、チーズケーキの割引券やるから、そこの彼と仲良く食べて来な」
そう言って革財布から二枚の割引券を取り出したモヒカン男は、徹の後ろに隠れていた小娘に手渡して、気絶してる仲間を背負いながらそそくさと退散していった。お前そんな体型と格好で、地味に紳士的な対応してくるの何なん?
「………〜〜ハァッ!焦ったぁ〜〜!
……えっと、ご、ゴメンねハナさん。急にこんな事して……やっぱり嫌だった?」
「…………んん。平気」
取り敢えず大事にならずに済んで良かったと安堵の息を漏らす徹は、小娘へと振り返って謝罪の言葉を述べ、小娘は首を横に振りながら大丈夫と返答し……
──ギュッ
突然手を握られた事に驚いた徹が目を丸くして小娘を見ると、口角を上げた彼女は頬を赤く染めて上目遣いで徹を見つめ返していた。
「じゃあ行こっ!」
「………ん?」
「えーっと。今はまだお昼位だから……お昼食べた後に何処かでちょっと遊んでから行けば、おやつ食べるのに丁度良い時間になるかなー?」
「……………んんっ?」
困惑する徹を他所に、小娘は今後の予定について考えながら手を引っ張って何処かへと歩き始める。
明らかに混乱しているであろう思考回路を正常にした徹が、慌てて「ちょっとまって」と引き止める。ついでに我も、徹の頭上で羽ばたきながら彼女の行動を嗜める。ぶっちゃけ見えてないから無意味だけど。
「……うん、えっと。何でナチュラルに俺と一緒に行動しようとしてるの?」
「え?だって、せっかく割引券二枚貰ったんだから、使わなきゃ勿体ないでしょ!」
「いや、だとしてもね?今度みこさんと一緒に行くでも……あ、この割引券。期限今日までじゃんか」
小娘が掲げた“喫茶店『百姫夜行』 チーズケーキ全種 300円オフ”と書かれた割引券には、今日までの日付が有効期限として記載されていた。
意外と勿体無い精神を持ち合わせている徹は、モヒカン頭の男性のご好意で貰った割引券を無駄にすべきで無いと思ってるのか、二枚の割引券を睨みつけて葛藤する。
「いや、でも。洋太やみこさんとならまだわかるけど、俺なんかと一緒に居てもそんなに……」
「あたしは徹くんと一緒に、色んなところ回りたいと思ってるけど……
もしかして、何か用事あった?」
イヤ、用事もなにも。徹にはホロライブのグッズ購入という使命が……
「いや。正直暇だったから、ちょうど良かった」
まじかコイツ即答で嘘吐いたよ!?
卍 卍 卍
「ヘイお待ちっ!チョモランマチャーシュー麺と紅生姜マシマシ醤油ラーメンだわいなッ!」
「そしてこちらが、焼き餃子六個セットだわいな」
「「では、どうぞごゆっくり〜」」
“骨に響く程に美味い!”を謳い文句にしたラーメン屋『響骨ラーメン』の店長によって、それぞれもやしと茹でキャベツ等が大盛りにされたシャーシュー麺と真っ赤な紅生姜が山脈を作り上げたラーメンが、昼食を摂りに来たハナと徹が座るテーブルに鎮座された。
そして二つのラーメンの間には、岩尾と呼ばれてる店員が持って来た、六個の焼き餃子が乗ったお皿が置かれていた。
「きたきた〜っ!この間みんなと来た時はバターコーン味噌ラーメンでお腹いっぱいになったから、今回はチョモランマに挑戦だよっ」
「そん時はその時で確か、大盛りのバターコーンマシマシメンカタメにしてたな。
それはそうとハナさん、そんなに食べたらチーズケーキ食えなくならないか? いや、多分ハナさんのカービィ並みに何でも吸い込まんとするレベルの胃袋なら大丈夫だと思うけど」
「うんっ!これだけ食べれば、チーズケーキを食べる時間まで保つよ!」
「“保つ”って言葉が出てきた時点で、わずかに感じていた心配が無用の長物である事が確定したよ」
これだけの量のラーメンを食ったら流石にチーズケーキがお腹に入らなくなるのではと思っていた徹だったが、そんな懸念を啜った麺と共に噛み砕いたハナの胃袋に脱帽する。
「でもそれで言ったら、徹くんのラーメンすごい紅生姜が乗ってるよね?そんなに紅生姜好きなの?」
「じゃあ逆に聞いちゃうけどハナさん。例えばハンバーガーショップに行った時、君は普通のハンバーガーとチーズバーガーどっちを買う?」
「……チーズバーガー、かなぁ」
「その通り!ハンバーガーショップにおいて、普通のハンバーガーとチーズバーガーを比べるとチーズバーガーの方がちょっと値段が高いにも関わらず、大体の人はチーズバーガーの方を購入する。何故かというと、みんなチーズバーガーの方が美味しいことを理解しているからだ。
つまり何が言いたいか、っていうと……僕にとって紅生姜は、ハンバーガーのチーズと同じだって事だよ。普通に食べるのと、紅生姜を盛って食べるのとは、それだけで美味しさに大きな差が産まれるんだ。ちなみにお母さんにもこの話をしたら『何言ってるの?』って言われた」
「………そっか!」
途中ハナから質問を受けた徹は、麺を紅生姜と一緒に食べながら自分の紅生姜に関する持論を語る。その熱量たるや、まるでアイドルの魅力を語ってる重度なドルオタのような勢いだ。
かくいうハナは徹の紅生姜ジャンキーっぷりに困惑しながら、餃子に醤油を浸して一口で頬張り咀嚼する。
「あっ、ラムダラビットのビーズクッションだ!」
「お、ホントだ。なんかドーナッツがハマって、ライオンみたいになってるけど」
ラーメンを食べ終えた二人がゲーセンへ訪れると、あるクレーンゲームの景品にラムダラビットの大きめなビーズフェイスクッションが鎮座されていた。
ハナはクッション欲しさにクレーンゲームに百円玉硬貨を投入すると、アームを動かして狙いを定めて──ガシッ!と、見事にラムラビクッションを掴み取る事に成功する。
「よっし!あとは……あっ、落ちちゃった……」
だが少し持ち上げるとクレーンのアームはクッションから離れてしまい、落とし穴に近付くことなくビーズクッションがポスッと落ちてしまう。
ハナはもう一度百円硬貨を投入するが……今度は持ち上げることすら叶わず、アームからクッションが溢れてしまった。
「うぅ……もう一回っ!」
「待って待って、俺にやらせて。これまで培ってきたゲーセンでの知識としては、クレーンゲームのアームは大体弱く設定されてるから、これくらい大きい景品は変に持ち上げようとするより、少しづつ動かしていく方が逆に成功しやすいんだ」
これ以上のプレーは恐らく無駄にお金を消費するだけになる可能性がある。そう判断した徹は財布からまた硬貨を取り出そうとするハナにストップをかけると、両替機で千円札を百円玉に両替してからクレーンゲームに投入した。
アームがゆっくりと動き、クッションを端っこ寄りに掴むとそのまま持ち上げられ、クッションは穴の方角へと転がり運ばれる。ハナの口からは感嘆の息が漏れ、徹は「よしっ」と呟いながら再び百円を投入口へ入れる。
そして同じ様にクッションを持ち上げる事、9回目。
「こいこいこいこいこい……シャアッオラァ!!」
「……わ、わぁーーーっ!!スゴいスゴいっ!取っちゃったよ徹くん!すごーーい!!」
徹がガッツポーズしながら歓喜の雄叫びを上げてると、ハナは彼に抱き付きながら喜びを身体いっぱいで表現していた。ついでに彼女のワガママボディが徹の腕へダイレクトに伝わって来た。
「──ハナさんっ」
「? どうしたの徹くん……」
一瞬硬直した徹がハナの肩を掴んで優しく引き離すと、首をコテンと傾ける彼女の無垢な瞳をジッと見つめて……
「俺だから大丈夫だけど。お願いだからそういう勘違いさせる事は、他の男にはやんないでね?」
「……へっ?」
「…………と、ともかく!ハイこれクッション!」
「……うんっ、ありがとう徹くん」
誤魔化すように取り出し口からビーズクッションを引っ張り出して手渡すと、ハナはラムラビクッションを抱きしめて表情を緩ませながらお礼を言い。徹はそんなハナの様子を見て頬を赤らめて顔を逸らす。
ゲーセンで一通り遊び通した二人は、割引券が使える喫茶店をスマホで探して、無事に到着したのだった。
「徹くんは何にする?あたしはまずWベリーチーズケーキにしたけど」
「俺は……うーん、思ったより種類あるな……うし、ベイクドチーズケーキにすっか」
店に入って注文して待ってる間、一部の女子客達から微笑ましい目で見られ、一部男性客達からは妬みの視線で睨まれた事を除けば、二人は至って普通に談笑しながらケーキの到着を心待ちにしていた。
「それでみこが虫と見間違えて……あっ、きたきた!」
「おぉ、けっこうデカイの出たな。もう少し小さいと思ったのに」
到着したチーズケーキは、徹の予想よりも大きなサイズで、そのボリューム感に思わず目を丸くしていた。
ハナが赤と青のコントラストが特徴的なチーズケーキをスマートフォンの写真に収める間に、徹はフォークでベイクドチーズケーキを切って口に運ぶと……
「うまっ⁉︎ え、なにこのケーキ。スゴイ美味いんだけど」
一口食べた瞬間に、口の中でフワフワとした食感と滑らかな舌触りの共演が奏でられ、控え目ながらも主張は強めな甘さに、徹は表情筋が緩ませながら驚いて目を見開く。
ケーキを食べた瞬間の徹の顔が面白かったのか、ハナは思わずクスクスと笑いながら同じ様にケーキを口に含んだ。
「んんん〜〜っ!おいしぃ〜!なんて言うのかなぁ?ストロベリーとブルーベリーが仲良く手を繋いで歩いているみたいな、『逃げ恥』で共演したガッキーと星野源みたいな、みこと洋太くんみたいな関係っていうか、そんな味がする!」
「おお。例えの意味がよくわからんトコはあるけど、凄く美味しいって事は十二分に伝わってくるよ」
目を輝かせて幸せそうな顔でチーズケーキを味わう彼女に、徹も微笑みながら相槌と舌鼓を打ちながらケーキを食べ進めていくと、目の前に赤と青のケーキがフォークに刺されながら差し出された。
「はい徹くん、あ〜ん」
「………あーん」
一瞬の硬直の後に、目の前のケーキをパクリと頬張る。すると対面からハナが頬杖をついて、天使の様な笑みを浮かべた。
「どう?美味しい?」
「………おう」
一見素っ気なく聞こえる返事にハナは満足そうに頷くと、再びケーキを頬張る。
(……え?さっきから何この子。俺のこと好きなの?)
その間、徹はハナから差し出されたケーキを舌だけで味わいつつ、一緒に遊びに誘われた時やゲーセンで抱きつかれた時の事を思い出しながら、混乱と困惑と期待の感情を織り交ぜた表情で、ただ無言でお冷を口に流し込んだ。
(どうしよう。俺は、俺の事を好きな人が好きだ………助けて洋太、俺この子のこと好きになっちまう……ッ!)
これらのスキンシップ等は恐らく友達とやるのと同じ、例として洋太とみこが手を繋ぎあったりするのと同じで、そこに深い意味は無いというのは分かっている。もしかしたら自分が好きなのかも〜というのも、己の大きな勘違いだという事も分かっている。
それでもやはり女子の好意に抗うことが出来ず、食い気味で恋に堕ちようとしている徹は、ここに居ない親友に助けを求めていた。
(……いや、マジで洋太に相談してみっかな……)
ガチで相談しようかと思い始めた時、ハナの視線が自身の手元に向いてた事に気付いて、ベイクドチーズケーキを食べたいと思ってるのだろうとあたりをつけた。
「……ハナさん、よかったら一口食べる?」
「えっ!いいの?じゃあお言葉に甘えて──」
「はい。口開けて」
「……ふえっ?」
フォークを構えて手を伸ばそうとしたハナの動きを、チーズケーキを乗っけたフォークを彼女の口元へ持って行った徹が止めた。
ハナは驚いて目をパチパチさせ、徹の方も自分でやった事だが「あれ、もしかしてやらかした?」と恥ずかしさで顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
二人が停止して数秒後……ようやく我に返ったハナがチーズケーキを頬張る。
「……お返しできた?」
「うん、こっちも凄く美味しいっ!」
その時見せた彼女の顔には、幸せそうな満面の笑みが浮かんでいた。
「ふぅ〜。あそこのチームケーキ美味しかったね!」
「うん。まさかあの後五種類も注文して、全部平けるとは思わなかったよ」
食べ終わった二人は会計を済ませて店を出て、それから色々なお店を見て回ったり、公園で休憩したりした、その帰り道。改札をくぐってから駅を降りた徹とハナは、途中まで一緒に歩いていく事にした。
「それにしても、公園で犬の格好をしたおじさんが女の人に首輪を付けられて歩いているのを見かけるとは、思わなかったよ」
「うん……あれ見た瞬間、思わずもしもしポリスメン?しそうになったよ」
他愛の無い会話をしながら歩くこと数分。「ねぇ徹くん」と声をかけられた徹が、ハナの方へ振り向く。
「どうだった?」
「……あぁ、楽しかった」
問われた言葉に一瞬呆気にとられるも、やがてその表情を緩めて静かに答え。それを聞いたハナも笑顔で頷く。
「……あっ、ハナさん。俺こっちだから、そろそろ……」
「そっか。じゃあまた今度ね!」
分かれ道に差し掛かった所で、二人は互いに手を振って別れようとし── 大きな声で名前を呼ばれた徹が、彼女のいる所へと顔を戻すと……
「今日はありがとね徹くん!デート楽しかったよ!」
そこには、今日一番な満開の笑顔を咲かせる、まるで天使の様な女の子が、大きく手を振っていた。
卍 卍 卍
「ふぅ〜!サッパリしたぁ〜〜」
お風呂から上がったハナは部屋に戻り、ベッドへ倒れ込んで大きく伸びをする。
ふと横へと目を向けると、そこには友達が取ってくれたドーナッツを装着したラムダラビットのフェイスクッションが、他のラムダラビットのぬいぐるみなどと一緒に枕の横へ置かれていた。
彼女はそのクッションを手に取って抱きかかえてみると、中のビーズがジャラッと音を立てて、形を変えた。
『──すみません。彼女に何か用ですか?』
そこでふと、ハナの頭に一つの光景が思い浮かぶ。
それは久し振りに一人で街へ遊びに行った今日の昼頃、顔の怖い人達の魔の手から自分を守ってくれた彼の姿と……まるで恋人の様に肩を抱いて引き寄せてきた、あの結構力強い感触だった。
その事を思い出したハナは、クッションをギュッと抱き締めて、顔を真っ赤にしながら悶える。
(徹くん、カッコよかったな……)
今日一緒に遊んでくれた彼は、優しくて、面白くて、凄く友達思いで、たまに何言っているのか分からないし、意外と悪ノリするし、ちょっとエッチな所もあるけど。それでも一緒にいると楽しい、数少ない異性の友達で。そんな彼に、自分はカッコいいと思う様になっていて……
『俺だから大丈夫だけど。お願いだからそういう勘違いさせる事は、他の男にはやんないでね?』
だからだろうか? 彼が自分の事をどう思っているのか、気になって仕方ないのは──
「……徹くんになら、勘違いされてもいいのにな〜………なんてね。えへへ……」
そう呟いた彼女はクッションを強く抱き締め、静かに赤らめながらはにかんだ。
●影杉徹
先日のラムラビ×ライダーコラボにて、一号コスのぬいぐるみストラップに加えて昭和ライダーと平成一期と平成二期&令和のクリアファイル等その他諸々購入したオタク。
後日改めてあの店に行ったら、案の定マウスパットと抱き枕は売り切れていたが、新しくちょこ先生の特製アクリルスタンドが売ってたので、そちらを買う事にした。
タコ科学者「コンピュータが弾きだしましたデータによりますと、コイツはキモオタですじゃ。うわへへっ」
●百合川ハナ
最近、通常ラムラビと一緒にラビラビコスverを学生鞄につけ始めた陽キャ娘。
他の二次創作は基本みこをヒロインにするので、ハナをヒロインとした話がほとんどない事に不満を持った私は科学者に、オリ主の親友をハナに充てがうことの出来る装置を作らせた……
ニンジャ「誰じゃ⁉︎ ナニモンジャモン⁉︎ 忍者!ドーモ、ユリカワハナ=サン。ゴーマ・ローザリアです」
●オカイコ様
序盤の語り部となった怪異兼守護霊。
呪霊を捕食する以外にも、それによって今まで体内に貯めてきた負のエネルギーを人の脳内へ流し込む事で大きな負担とストレスを与え、結果的に相手を失神へと至らしめる事もできる。しかしこの技はある一定量の負のエネルギーを消費する為、多用すると身体が真っ白になる。身体が白くなる事自体にデメリットは無いものの、万が一に時に生身の人間から徹を守る術をなくしてしまう。
モスラ「キュウー!クワァーッ!」
●ハナにナンパしてた二人組の男
耳と唇にピアスを沢山着け、指には趣味の悪い指輪を装着した、パツ金ロングのヒョロッとした男。彼女居ない歴=現在の年齢。
マゼンタカラーのモヒカンが特徴で、タッパと筋肉が発達してる、2m近くあるグラサンをかけた大男。こんな見た目だが、意外と紳士的な一面があるらしい。