残念!今回は馬鹿猿と見える子ちゃんのラブコメ風味日常回だぞ!
このSSを本当にラブコメとカテゴライズして良いかなんて、僕にはわっかんないよ!
でもッ、オリ主が原作主人公とイチャラブしても良いって思える様に、
みこちゃんと馬鹿猿を無自覚イチャイチャさせなくちゃいけないんだ!!
その時空列ぐちゃぐちゃにしてやるッッ!!!
【UN
ある休日。私こと四谷みこは、幼馴染である見円洋太と一緒にアナコンダ穴熊の握手&サイン会へ赴いていた。
アナコンダ穴熊とは“男の中の男”のプロレスラーで、洋太に勧められて彼の試合を映した動画配信を観た…のと、彼のお陰で“ヤバい奴”に絡まれた時に誤魔化す事が出来たのがきっかけで、今や私も穴熊さんのファンになっていた。
(どこ寄ってこうかな……あ、この喫茶店のプリン美味しそう)
『ねえねえキミぃ ちょっとツキあってくれなーい?』
そして先程、穴熊さんから握手やサインを貰ったり、洋太を加えたスリーショットでチェキを撮ったりした(後でウチのバカが穴熊さんに技をかけて貰おうとしてたので、首根っこ掴んでお礼を言いながら退出した)。スゴい楽しかった。
でもまだ時間があったから、折角だし何処か寄り道しようって事になった……んだけど、道中で洋太がお手洗いに行ってしまったので、今は公園のベンチに座って戻って来るのを待っている最中だ。
『ちょっとだけ!サキっちょだけだからさァ!』
(……なんか、さっきからずっと絡んでくる……)
だが途中で、薄汚れた包帯をヘアバンドみたいに頭へ巻いた“ヤバい奴”が、今座ってるベンチの側までやって来て、ずっと声をかけて来ている。
その上、シカトしても何処にも行く気配がないし、耳元で不快な言葉を囁かれ続けて不愉快極まりないし、スゴイ怖い。いい加減、我慢するにも限界が近付いていた。
(ていうか洋太遅い!ホントに何してるの!?早く戻って来てよぉ……!)
待ちきれなくなった私はベンチから立ち上がって、「そろそろ探しに行こーっと…」と言った感じで。中々戻って来ない洋太を探すべく、アイツが向かったであろう方向へ歩き出そうとしていた。ついでに“ヤバい奴”も私の後を付いて来た。イヤなんで?
まぁ確かに滅茶苦茶しつこい奴だから、もしかしたら?とは思ったけど……実際に憑いて来られると嫌悪感以上に恐怖が勝って、正直気が気では無かった。
洋太が戻って来るまでの我慢と自分に言い聞かせ、“ヤバい奴”の粘着に耐えながら歩き続けていた、その道中。女性が数名ほど一箇所へ集まっている事に気付いて、俳優かアイドルがいるのかと思いつつ、人集りを見てみると……
「ねぇおにーさん♡私達、ここ来るの初めてなの♡」
「だからさぁ、この辺案内してくれないかなぁ〜♡」
一人はウェーブがかかった水色メッシュ入りの桃色ヘアを二つに結んで、もう一人が大きな黒リボンが付いたカチューシャを灰色がかった金髪ボブに装着した、恐らく私と同い年であろう二組の女子が。それぞれピンクと黒、白と黒を基準としたお揃いのフリフリがたくさん付いたワンピース(所謂地雷コーデ)を身に纏い。語尾にはハートマークが付いてそうな猫撫で声を放ち、ついでに凄く大きな胸を寄せながら、誰かに道案内をしてもらおうとしており。
「ねぇ坊や?もし良かったらだけど、お姉さんとイイコトしない?」
茶色いロングヘアを靡かせ、ブラウンのコートを羽織りながら僅かに谷間が見えるカッターシャツと黒のスリムズボンを着た。艶美な顔立ちで多分30代前半くらいの女性がサングラスを二本の指で少し下ろし、眼を半分だけ見せながら其の者を口説き。
「神のお導きの儘に、汝は遂に運命と出会ったのデス。もしこの機会を逃せば、決して訪れる事のない運命に……
身体のラインがくっきりと出ているカトリック修道服を装った金髪の外国人シスターが、目の前の人物に対して麗しい微笑みを浮かべ。神へ祈るように手を合わせて、少しぎこちない日本語と流暢な英語を話し。
「ちょっとキミたち、邪魔しないでくれるかなぁ!? それより少年よ!芸能界に興味はないかな!? 私の勘にティーン!と来た君ならきっと!トップに立つ事が出来るはずだ!!」
恐らく芸能界の関係者だと思われる、丸眼鏡にキッチリとしたスレンダーなスーツを着用している女の人が興奮した様子で、必死そうな手振り素振りで名刺を差し出すなどしてスカウトを行なっていて。
「えぇ〜?どうしよっかなぁ〜〜!うへへぇ……」
計五名程集まった女性たちの中心には、ジャケットとカーゴパンツ姿で赤茶髪のフワッとした癖っ毛が特徴的な男性……私の幼馴染が、忙しなく顔を動かし、口元をだらしなく緩めて、気持ち悪いくらいに嬉しそうな笑顔で立っていた。
『ねえねえ?おれのはなしを……ヒッ⁉︎』
……へぇ。私がひとりで、こんなに怖い思いしてるのに?
トイレに行ったまま、幼馴染を差し置いて?
女性に囲まれて、そんな顔でデレデレしてるんだぁ……?
ふーん……へぇ〜……?
なんか今悲鳴のような声が聞こえた気がするけど、この際
「ホラホラみんな、落ち着いてっ!ここは一旦冷静になって、まずはひとりひとり………あ゛っ」
キリッとした表情で周りの女性に対してなにか言いかけた洋太の視線が、カツカツと音を立てて歩く此方に向いた瞬間、アイツの赤くなっていた顔が真っ青に染まる。
「えっと、その、みこさん……?コレにはワケが……」
「ハイ行くよ洋太。さっさと歩いて」
私の姿に気づいて呆気に取られる女性達の間を潜って、失念していた事にやっと気付いて狼狽えているこの馬鹿の耳を掴み取ると、そのまま早歩きでその場を離れていく。
「いでででで!?ごめんなさいごめんなさい!ホントは早く戻りたかったんだけど、ちょっと断りきれなくて……!」
「ごめんってなに?別に怒ってないけど??とにかくもっと早く歩いて???」
「もう既に声が怒ってるんですけど痛い痛い痛い!耳掴んだまま早歩きやめて下さいお願いします何でもするからァ!!」
後ろで何か喋っているみたいだけど、今の私には関係ないので一旦全部無視して。洋太の耳を引っ張りながら、スマホを起動して何処へ行こうかと検索をかけ直すのだった。
……そういえば、何かを忘れているような気がするけど……まぁ、どうでも良いかそんな事。
「……チッ、なんだよつまんねーの」
「しゃーねー。他の男充てがうか」
(あら、彼女持ちだったのね。暫くは楽しめそうだったのに、残念)
(……fu●k。折角、高い壺でも何でも購入するであろう、迷える仔羊を見つけたというのに……)
(ウーム、行ってしまった。あの顔なら、良い金蔓になると思ったのに……)
『ねえねえおねーさん?おれのはなし きいてくれなーい?』
その頃、残って立ち尽くしていた女性達だが。特にこれといった動揺もダメージも無いまま、気を取り直して別の所へと立ち去ろうとしており。
先までみこに憑いていた“ヤバい奴”は、たった今目に付いたサングラスの女性の背後に憑いて、改めてナンパをし始めたのだった。
「……えっと。みこちゃん?」
「………なに?」
「その……あの喫茶店、プリンアラモード売ってるみたいだけど……寄ってく?」
「………洋太のおごりだからね」
「はい、仰せのままに!」
一方の洋太は、立ち寄った喫茶店でみこにプリンアラモードを奢るまで、目すら合わせて貰えなかったそうな。
卍 卍 卍
【
──人生は分岐点の連続である。
人は日常生活において様々な分岐点に遭遇し、選択を迫られる。
…といった具合に、バカリズム作の素敵な選択肢を選ぶ某ドラマでもそんな事が語られている様に、人生には様々な選択肢が存在する。
例えば、彼女とのデートで『動物園』と『水族館』のどっちに行くか。
例えば、仲の良い友人と昼飯食べてる最中、どんな話題で盛り上がるのか。
例えば、日曜日の朝はワンピースとニチアサ、どっちをリアルタイムで見るべきなのか。
挙げればキリがない程に選択肢は存在し、それはすべての人間へ平等に与えられている。
当然、この僕……見円洋太にも分岐点は存在するし、今現在進行形で訪れている。その分岐点とは何かと言うと……
「…………うーむ……」
「ねぇ洋太、まだポップコーン決まらないの?」
スタンダードな塩とキャラメルに加え、期間限定販売のハニーピスタチオなど、計三種類のポップコーンを販売している映画館の売店前にて。
僕がどれにしようかと悩んでる中、右隣に立つみこちゃんは、呆れた様な表情でジト目を此方に向けていた。
事の発端は三日前。親友である徹と一緒に見る予定だった映画のチケットを、家の用事で行けなくなったと語りながら渡して来た事から始まった。
かくして二枚分のチケットを受け取ったものの、チケットは当日券なので使い切る場合は二回連続で見る必要があって少し面倒だし、そもそも一人で行くのも寂しいしどうしようかなと思っていた所、相談に乗ってもらっていたみこちゃんが一緒に行かないかと誘ってくれたのだ。
そんなこんなで当日を迎えた現在、僕と彼女は二人で映画館へと赴いたのだが……
「甘いコーラと一緒に摘まむとしたら、しょっぱい塩と交互に食べるのがベストなんだけど……ポップコーンにかかったキャラメルのカリッとした食感も、堪らなく好きなんだよなぁ……でも期間限定のハニーピスタチオは、期間限定のうちに食べておかないと勿体無いし……ぐ、グムー……!メチャクチャ迷って来たぞコレは…!」
先程からポップコーンをどれにするかで頭が一杯だった僕は、もうじき映画が始まるであろう時間も忘れ、ただ只管に悩み続けていた。
すると横から少し呆れた様な溜め息が聞こえると、みこちゃんが僕の袖を軽く引っ張って来たので、思わず彼女の方を向く。
「そんなに食べたいなら、全種類買えば良いんじゃないの?」
「……え?…………ハァッ☆」
盲点!目から鱗とは、まさにこの事!!と言わんばかりに表情を崩しながら、暫く唖然としていた僕はすぐ様我に返り、ポップコーン全種類をMサイズで注文した。
「うーしっ、ほんじゃあポップコーンも買ったし……そろそろシアターへ行っと」
「Sサイズのつもりで言ったんだけど……そういえば、今日観る映画ってどんな内容だっけ?」
「えっと、ちょいと待っててね〜……あった、コレコレ」
ポップコーンと飲み物の会計を済ませ、買った奴を籠に入れてシアターまで運んでいると、みこちゃんがふと思い出した様に尋ねてきた。
その問いかけに応えるべく、ウエストポーチを漁って徹から貰ったチケットを一枚彼女に手渡した。
「某D社の『ユキと氷の女王』って映画でね、簡単に言えばヤンデレ拗らせた姉妹が幼馴染の男子を取り合う、ドロドロの姉妹喧嘩を描いたファンタジー作品らしいよ?」
「某D社は何を思ってそんな映画を……?」
話を聞いて怪訝そうな顔をしながら、続いてポップコーンとジュースを受けとったみこちゃんと四番のシアターへ向かっていく。
暫くして上映開始時刻を迎えた僕とみこちゃんは、指定された座席に座ると同時に、シアター内の照明がゆっくりと落とされて。暗闇に包まれた内部で一際輝くスクリーンに映った映画盗人が〆られているのを見たりしつつ、映画の始まりを静かに待つのだった。
「おっ、始まるよみこちゃん」
「……え、あっうん。そうだね」
スクリーンに映し出されている、雪山が広がる風景から、中世だか近世だかそんな感じの城下町へと切り替わったのをポップコーンを摘んで眺めていると、隣でみこちゃんが落ち着かない様子で身体を動かしている姿が視界に映った。
その様子はまるで、前の席にいるクソでかいアフロが邪魔で映画見れねぇ…状態になっている姿に思えたが、みこちゃんの前の席にはそういった人物は座っていない。
(何だろう……トイレ、では無いよな?さっき行ってたし……もしかして、虫が飛んでるのか?)
ならどうして映画に集中出来ていないのだろうか。といった疑問が頭に浮かんだ所で、そんな結論に至った僕はLサイズのコーラを飲みながら、みこちゃんの方へと身体を寄せて前を飛んでいるかもしれない虫を探し始めた。
「………ねぇ、みこちゃん。今どの辺、飛んでる感じ?」
「………へ、は? な、何が……?」
しかし何処を探しても虫らしき姿は見当たらず、どんだけ早い虫が飛んでるのか思った僕は、思い切ってみこちゃんに小声で話掛けてみた。
彼女は少し驚いた様子を見せた後、言っている意味を理解出来てなさそうな顔で僕の方へ向き直った。
「何がって、みこちゃんなんか見辛そうな顔してたから、なんか虫でも飛んでるのかと──うヴェゴァ⁉︎」
『アッづい!』
「ッ!?」
あ゛っ、ヤバい。変な体勢で飲んでた所為で、気管にコーラが入った!ついでに噎せた勢いで、鼻にもコーラが逆流したんだけど!炭酸のバチバチで鼻の奥がめっちゃ痛いんだけどぉ!?
「うわキッたね⁉︎ テメェ、何しやがる!」
『アッづ!あっつ⁉︎ メが、メガァァァァァ!!』
「ゲホッ、え゛ほっ……ず、ずみまぜん……」
『お願いだから……アナタはいなくならないで……お願い……』
『なんで姉さんばかり……私だって、彼のこと……許せない、ゼッタイにユルセナイ……』
(………何これ、地獄?)
ヤベェ、噎せた時に出た飛沫が前に人にかかっちゃったよ……もしかしてコレ、慰謝料とか払わなアカン感じ……?
鼻から垂れたコーラをティッシュで拭いながら、あとで財布にいくら入っているか確認しなきゃと憂慮の念を浮かべた。
なんだかんだで無事に上映が終わり。前の席にいた人からは僕の優れた交渉術と謝罪術によってなんとか許して貰ったが、周囲の人からは白い目を向けられたりした。とにかく心が辛かった。
「あ゛ー……大変な目にあった。
ていうかごめんね……せっかく来て貰ったのに、なんかやな気分にさせちゃって……」
「……大丈夫。むしろ映画ちゃんと観れたし、助かったから」
「助……え、何が?」
ほんで映画館から出て寄り道しようと歩いてる最中、みこちゃんにゴメンと謝ったのだが、何故かわからないけど彼女から謎のお礼を受け取った。
僕、何かしたっけ?いやマジで。むしろ迷惑しかかけてない気がすんだけど。
卍 卍 卍
【UN
(………買ってしまった。スイカ柄のやつ……)
まだ暑い日が続く、今日この頃。
四谷家の自室にある鏡の前に立って、みこはそんな事を思いながら水着姿となった自分の姿を眺めていた。
思い返す事少し前まで遡り、親友と水着売り場へ訪れた時。
ハナに頼まれて水着選びに協力したり、水着ファッションショーの中で百足みたいな“ヤバい奴”が出て来て碌に水着を見なかったりしたけれど。色々あって今着ている、切ったスイカ柄にカブトムシの留め具がついた三角ビキニとスイカの縦縞柄が入ったパレオを購入した訳だが……
(ダメだ……ハナが着ていたのを思い出して、なんか惨めになる……)
水着売り場でハナが同じ奴を着ていた姿を思い出し、自身と彼女の間にある格差社会をまざまざと見せつけられたみこは、己の胸に手を当てて思わず溜め息を吐いた。
(……そういえば、コレ洋太に見せたらどんな反応するのかな?)
ふと、コレを見た時の幼馴染の反応が気になり。今の姿をくるっと回転しながら鏡で見つつ、その場合に見せるであろう彼の姿を思い浮かべた。
『え、その水着?スゲー似合ってると思うけど、それがどうしたの?』
(──って、なんで洋太の事考えてるんだ私……)
なんて事無さげに答える幼馴染を思い浮かべて、急に顔が熱くなったのを感じつつ直ぐに首を横に振ると。何時もの私服に着替えるべくトップスを脱いで上半身を曝け出し、一旦ベッドの上に置いといた所で、続いて下の方も脱いでしまおうと手をかけ……
「みこちゃーん!この間言ってた、キン肉マンの完璧超人始祖編持ってき──」
「……えっ」
聞き覚えのある大声と共に扉が勢い良く開かれ。漫画本を入れた紙袋を掲げて現れた幼馴染が、無防備な背中を晒してパレオに手を掛けていた私の姿を見た瞬間、まるで時が止まったかのように硬直し。
私の方も突如出現した洋太に動揺が止まらず、後ろを振り向いたまま目を見開いて固まっていた。
「「………………」」
暫しの沈黙が流れた後。流石の洋太も脂汗を流して、静かに扉を閉めて姿を消した。
私の方はというと、取り敢えず脱いだパレオもベッドに置いて、横にある下着を着けて、一緒にTシャツとハーフパンツ姿へと着替え終える。
ついでに、ベッドの端へ置いてあったメメちゃんクッションを手に取る。
「ッスゥー………ハァ……洋太、もう入って良いよ」
「……あ、ハイ。失礼いたしま──」
「ノックを!してって!!いつもっ!!!言ってるでしょうがッ!!!!」
「ぐふぉッ!?ごめんなさいッ!!」
部屋へ再度入ろうとするや否や。顔面にクッションを全力投球でスパーキングされた洋太はこの後、滅茶苦茶土下座しながら謝った。
卍 卍 卍
【UN
「じゃあ早く入ろうか!身体冷やさないうちに!」
「いやいやイヤイヤ。何で一緒に入ろうとしてるの?バカなの?」
夏が終わり、肌寒い風が吹くようになった頃。
放課後に突然降った雨で濡れてしまい、それによって冷えた身体を温める為にお風呂を貸して貰った見円洋太は、幼馴染であるみこにそう誘っていた。
突如放たれたデリカシーの無い発言に、辛辣ながらも正論でしかない返しをするみこからジト目を向けられながら。何故一緒に入ろうと考えたのか、その理由を語り始めた。
「せやかて工藤じゃなくてみこさんや、雨で身体を濡らしたままどっちかが上がるまで待機してたら、風邪ひいちゃったり靴下がグッショリして気持ち悪い思いするでしょ? だから一緒に入った方が時短にもなるし、お互い得だと思うんだよね」
「私が被る損得、どっちかというと損の割合の方が多い気がするんだけど?」
「え? でも昔は一緒にお風呂入った仲じゃんね? だから今更気にしなくても良いでしょ」
「今の自分の年齢考えた事ある?」
洋太の言葉にツッコミつつ、みこは記憶の片隅にあった幼き頃の自分と彼の姿を思い出す。
確かに小学時代は洋太の遊びに付き合った結果、色々あって体がぐしょ濡れになったり泥などで汚れたまま帰宅した事があり。それで一緒にお風呂に入っていたと、懐かしさと一緒に浮かび出た頭痛で軽く頭を抑える。
一方の彼は彼で、まさか今更照れる様な事でもないと本気で思っているのか、曇り無き眼でジャージを上を脱ぎ始めていた。
「……まぁ、でも確かに。例え幼馴染でも、今の年で女の子のおっぱいやら何やら見るのは、流石にデリカシーに欠けてるよな……」
「うん。どうせ気付くんなら、最初から気付いて欲しかった所だけどね」
だが途中で思い直したのか、彼は脱いだジャージを着直しながらそう呟き、その反応にみこは呆れながら溜め息を吐く。
「よし、じゃあ僕は玄関で待ってるから。上がったら教えてね」
「いや待って。なんで濡れたまま玄関に行こうとしてるの⁉︎」
「え?だってリビングで待ってたらソファとか濡れちゃうし、濡れた足で歩き回るのも悪いじゃん」
「そうじゃなくて、元々洋太を入れる為に連れてきたんだから……って、玄関に行こうとしないで!」
そう語って玄関へ向かおうとした洋太を慌てて止めたみこは、彼の行動に頭を抱えた。
そもそも家がお隣さんである幼馴染を此処へわざわざ連れて来たのも、雨で濡れた彼を少しでも早くお風呂に入れてあげる為であり、母に連絡してお風呂焚いておいてと頼んだのもそういった理由があった。
あとバス停で“ヤバい奴”に絡まれたのを助けてくれた、その細やかなお礼を兼ねている。
「兎に角、洋太はお風呂に入って!私はタオルで拭けばそれでいいから……」
「ダメだよみこちゃん、それだけじゃあ体冷えたままでしょ?僕の事は気にしなくて良いから、早く入っておいで」
「だーかーらー!」
だがその肝心の彼はというと、在ろう事か一緒に入ろうと言い始めていて。それを拒否したら「先に入って!」と言って聞かずに玄関へ行こうとするし、入るよう催促しても「みこちゃんより先に入る訳にはいかない」と頑なに拒否。
結局二人はお風呂場前で口論となり、数分に渡って押し問答をした結果……
「……念の為に言っとくけど、その目隠し絶対に取らないでね?」
「わーってるって、安心しなサイヤ」
「それと。もし変な所に触ったら、お風呂に頭叩きつけるからね?」
「……はい、気を付けます」
湿った制服とジャージを乾燥機にかけた後、身体にタオルを巻いた二人は一緒にお風呂に入る事にした。
目隠しをするよう指示された洋太は、それを受けて素直にタオルを目に巻いて視界を塞ぐ。みこはそんな幼馴染の手を引いて浴室へと入り、シャワーからお湯を出して身体を流し始める。
「んほぉ〜、シャワーのお湯が五条六眼に染み渡るぜ〜!」
「……もしかして、『五臓六腑に沁み渡る』って言いたいの?」
「そうそう、それそれ」
シャワーを浴びている洋太が目隠しをした状態で意味不明な事を言い出し。そう尋ねると共に彼は小さく頷いたのを、シャワーヘッドを持って後ろから彼にお湯をかけていたみこは呆れた様に溜め息を吐く。
余談だがこの時彼女は、ペットの犬をお風呂に入れてあげている気分になっていたらしい。
「うん、もう大丈夫。ありがとうみこちゃん。じゃあ今度は僕が掛けてあげるね!」
「え、良いよ別に。私は後で……って、聞いてる?」
「いーよ遠慮しなくて!ついでに頭も洗ってあげるから……あ、シャンプーこれかな?」
「洋太、それボディソープ」
「……じゃあコレ?」
「それはお風呂用洗剤……ハァ、はいシャンプーこれね」
「ん、ありがとう」
そう言ってシャワーヘッドをみこの手から受け取った彼はシャンプー容器を手に、彼女の冷えた身体にお湯をかけ始め。最初は拒否していた彼女も、洋太が譲る気がない様子なので諦め、彼の好きにさせる事にした。
「お客様〜、痒いところはございませんか〜」
「……ん、大丈夫(あれ、なんか思ってたより優しい?もっと乱暴に洗われると思ってたんだけど……まぁ良いか)」
そうやって暫く彼の好きにさせていると、妙に優しい手付きで髪を洗い始める洋太。
昔も似たような事はあったが、その時はかなり乱暴に頭皮をゴシゴシとされた記憶があり。当時の事を思うとその手つきに少し違和感を感じるも、どこか安心する温かさを感じて心地好いみこは、大人しくされるがままになっていた。
「……ほい、完了。どうみこちゃん?」
「……うん、ありがとう洋太。じゃあ次は私が洗うね」
「うぃ。お願い」
それから洋太がシャワーでみこの髪についてた泡を流し終えると、今度はみこが彼の髪にシャンプーで洗い始める。
ぼんやりと熱を帯びた様な感触がある髪を洗っている最中、彼の身体から放たれる光と背中の紋様から放たれるより強い光に目を細めながら、洗い終えた彼女はシャワーヘッドを手に取って泡を流していった。
「ふぃ〜……」
「ふぅ……はぁ……」
それから少しして、先に湯船に浸かり始めた洋太から少し遅れてみこもお風呂に入り。互いに背中を合わせる形で浸かっていた。
「なんかさ、懐かしいよね?昔もこんな感じでお風呂に入って、一緒に一息ついてさ」
「……ふふっ、そうだね」
背中を向け合ったまま、昔を懐かしむ様に呟いた洋太の言葉に、みこが微笑みながら相槌を打つ。
色々文句も言ったが、小さい頃は彼と頭の洗いっこをしたり、一緒にお風呂に入ったりして、『悪くない』気分になっていた所もあった。
だから、調子に乗るだろうから決して言わないけど──まぁ偶にはこういうのも、悪くないかもね。
なんて思いながら、みこは幼馴染と一緒に、何事も無く入浴を楽しんだのだった。
「じゃあ明日も、こんな感じで入る?」
「ごめん、それは普通にイヤ」
「………あ、そうっスか」
卍 卍 卍
【UN
──あんドーナツ。それは中に甘い餡子が入った、穴が空いていないドーナツである。ついでに和菓子でもある。
例えば今食べているあんドーナツは、市販で売ってる12個入りで袋に入ってた奴なのだが。小豆を砂糖で甘く煮詰めた餡子が包まれており、砂糖のかかった生地の方もモチっと柔らかくて優しい甘さのする、非常に美味しい揚げ菓子だ。バナナ程じゃないけどね。
『さあ、まだまだ参ります。心霊写真100連発……続いてはこの写真、楽しいキャンプの思い出の一枚……おわかりいただけただろうか?』『え゛え゛え゛え゛え゛』
といった感じで、あんドーナツを食べながら恭介とみこちゃんの二人で心霊番組を見ていたのが僕である。
「はっ、どう見ても合成じゃん!視聴者ナメてるからTV離れが加速するんだよ。な!姉ちゃん!!」
「そう言う割にゃあ、声が震えてる気がするけど……」
「うっせぇぞ洋太!お前には聞いてねぇから!!」
「理不尽とはこの事を言うんやね。ところで恭介、あんドーナツ食べる?」
「いらねぇ」
(あの写真、多分本物も混ざってる……あと画面の奴がずっと気になる……)
怖がってない事を誤魔化す様に怒って来た恭介にもあんドーナツを勧めるが、普通に拒否された。今食べてるしょっぱいポテチと一緒に食べれば、きっと美味しいのに。
まぁ、それはそうと。今見てる番組では心霊写真を100枚程公開し続けるという、如何にも怖いですって感じの話をしているのだが……正直言って、全く怖くない。
例えば今出ている、二人の男女が森の中でキャンプをしている写真。
テントの中に頭から血を流した青白い顔が覗いているのだが、仮にあれがモノホンだとしても「ひとりぼっちで寂しいのかな?」とか「どうせなら一緒に焚き火を囲めば良いのに……」といった感想しか浮かばなかった僕は多分、そういう者達にとっては面白くない奴判定されるのだろうなぁと思う。
「……あ、CMになりそう」
「またCMかよ!もったいつけて……だからTV離れが……!」
『香る髪……輝き成分でサラサラ継続』『ユルサナイ』『かえして』『なんでオマエが』『しね』『オマエさえいなければ』『のろってやる』『しね』
『私……今、輝いてる?』『ぜったいにゆるさない』
「よし!今のうちにトイレだ!怖いの始まったら教えてくれ!!」
「りょ」
(CMが一番怖い……この女優さん何したの……?)
恭介がトイレへ行ったのを見送りつつ、シャンプーだかのCMに出ている女優さんを、なんか画面もキラキラしてるな〜と思いながら眺めていた。
それにしても、ああいう演出ってさっき恭介も言ってた合成って奴なのかしら?だとしたら、ちょっとズルくない?
だってアレじゃあ、実際はどのくらい輝いているのか分かりづらいから、あまり参考にならない気がするもん。
まぁ素人の僕には理解出来ないだけで、CMを作る人にとっては重要な事なのかもしれないけどさ。
そうやって考え事をしてるとふと、同じくあんドーナツを食べていたみこちゃんの横顔が目に映った。
彼女は何とも言えぬ様子で、偶にあんドーナツを食べながらTVの方を見ているのだが。さっき見たCMで出てた女優さんの比べて、不思議と彼女の方が光って見える……気がする。
「……ん?どうしたの洋──うにゅ」
……うん、久し振りにみこちゃんのほっぺに触ってみたけど、小学生の頃と比べてもっちり感が薄まった代わりに……なんて言えば良いのかな?フニフニ感が出ている?って言えば良いのかしら。土台がしっかりとしている、みたいな?
それで触ってみて改めて思ったけど、みこちゃんってやっぱ肌綺麗よね。元が美人なだけあって、単純に肌触りも良いというか……やはりスキンケアとか欠かさずにやっているのが要因か?
「……何してるの洋太」
「いや、やっぱ綺麗だな〜と思って……」
あんドーナツを掴んでない方の手でサワサワしてると、みこちゃんがそんな事を聞いてきたので、僕は普通に当たり前の事を返した。
すると彼女は頰を赤らめながら、ジト目を僕に向けてきた。
「アレ?僕なんか変なこと言っ──んえっ」
彼女の様子に疑問を覚え、その理由を聞こうとしたのだが……突如みこちゃんが僕の頰を片手でムニムニしてきた。
思わず変な声が出てしまうが彼女はそれを気にも留めず、ムニムニと僕の頰を触り続ける。
「……洋太も、普通に良い肌してると、思う」
「ん、ありがと」
まぁ僕の親も普通に顔が良い……特にお母さんの方は大和撫子ともいうべき美形な顔立ちなので、多分その影響だろう。
「……二人とも、何してんだよ」
なんか照れ臭そうに僕の肌を褒めるみこちゃんからされるがままになり、僕の方もある種の心地良く感じる手触りを堪能していると、戻って来た恭介から呆れた様な声をかけられた。
「………洋太の頬触ってた」
「みこちゃんのほっぺ触ってた」
「…………あ、そう」
なんて言っている間に番組が再開したので、名残惜しく思いながらみこちゃんのほっぺから手を離し。僕とみこちゃんの間に入ってきた恭介を再度加えて、廃病院で撮影された心霊写真を見始めるのであった。
……うん、やっぱあんドーナツ美味いな。バナナには敵わないけどね。
●四谷みこ
ある日突然、不視覚の否定者となった可哀想な子。要するにこの世ならざる者の視覚者。
のちにハナと『ちかばのトロル2』を観に映画館へ行った際、一番後ろの方であの無数の目が飛び出した異形のヤバい奴が立っているのを目撃。「この間の件で反省したのかな……」なんて思いながら、無事に映画を楽しんだ。ついでにロムさんに目ぇつけられた。
●見円洋太
ヤバい奴らとの干渉、その否定者となった馬鹿猿。尚完璧ではない模様。
性欲は普通にある方だし、偶に下ネタも言うけれど。幼馴染に対してはそういった目で見る事は少なく、手を繋いだり抱き着いたりする事に性欲は全く絡んでいない。
だが場合によっては赤面して照れたりするし。お風呂の件でみこに指摘された際には「……確かに、女の子と一緒にお風呂に入ろうとするのはデリカシーに欠けてたかなぁ…?」と思い直した。尚。
●ユキと氷の女王
『木魚マックス』を製作した某米国の撮影スタジオによる、アニメーション映画。
とある雪国にて、特別な力を持った姉とガッツが凄まじい妹が幼馴染の男子を巡ってドロドロの姉妹喧嘩を繰り広げるお話。最終的には男の子が姉妹に自分の子を孕ませて仲良しこよしのHappy End。ヤンデレって最高だよね!(白目)。
姉「今までゴメンねユキ♡これからはずっと一緒だからね♡」ボテッ♡
妹「そうだね姉さん♡この子達の為にも、頑張ってこの国を守っていこうね♡」ボテッ♡
幼馴染「フタリガマタナカヨクナッテヨカッタヨヤッター」カラカラ…
●単体話の解説
UNTOUCHABLE:ユリア初登場回とドブカス眼鏡が
UNLOOK:原作に於けるみことハナが映画に行った回の前にあった話であり、洋太が事故る前にあった話でもある。映画/ヤバい奴が
UNCONFIRMED:原作4巻の巻末漫画を元にしてる、水着売り場での格好からして夏辺りの話。馬鹿猿ラッキースケベの回。良い子のみんなは、人の部屋に入る際には必ずノックしようね!
UNHAPPEN:第2話目の話で出てきた、馬鹿猿と見える子ちゃんが混浴した時の物語。Q.一緒にお風呂入っておいて、マジで何もなかったの? A.……
だがこの後、寝ながらノンデリ発言した馬鹿猿は朝まで簀巻きにされたままだった模様。
UNDONUT:ドーナツの否定者。とてもおいしい。ロボコ曰く、本来穴が空いている物をドーナツと定義するなら、中に餡が詰まったアンドーナツはドーナツの否定者なのではないか?との事。ついでに原作の番外編漫画の話もマリアージュされている。