見える子ちゃんと見えない夫くん   作:yu-ki.S

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ツェペリさん「『勇気』とは『怖さ』を知ることッ!
『恐怖』を我が物とすることじゃあッ!
いくら強くてもコイツらは勇気を知らん、ノミと同類よーーッ!」


もしかしたら、かなりヤバイ所に来てしまったのかもしれない

 インターホンが鳴り響いて、ちょっと間を空いてから扉が開かれる。

 そこに立っていたのは、チェック柄の水色Yシャツを着てる短髪で細身な男性と云う。我にとっては印象の薄いのほほんとした人物ではあるが、徹にとっては親友の父親である人物…見円太郎がいた。

 

「おや、徹くんじゃないですか。洋太は、まだ帰って来ていませんよ?」

 

「あっ、いや。今日は洋太から借りてたドラゴンボールを返しに来たんです。魔人ブウ編のヤツ」

 

「あー……成る程ね。わかりました、コレは部屋に置いときますね。あ、上がっていきますか?」

 

「いえ、今日は漫画を返しに来ただけなので、このまま寄り道しながら帰ります」

 

「そう、ですか……わかりました。ではお気を付けて」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 なんて会話を繰り広げ、計7巻程の漫画を入れた紙袋を手渡した徹は、見円太郎と軽く会釈し合ってから来た道を戻ろうとする。

 

「やっほーっ!徹くん!」

 

「うぉ!? は、ハナさん?なんで急に⁉︎」

 

 だが踵を返そうとした寸前、背後から声をかけられながら急に背中に強い衝撃を感じたのか、徹はたたらを踏んでしまう。

 何とか踏ん張って持ちこたえた彼が背後を振り向き、我も同じく声の聞こえた方を見てみるとそこには、達筆で『庭師王』と書かれている縦長の紙袋に箱っぽいのを入れたヤツを抱えている茶髪の小娘が、徹の肩に手を置くようにして抱き着いていたのだった。

 

「実はケーキ作ったから、みこに食べて貰おーと思って……あ、こんにちは!もしかして、洋太くんのお父さんですか?」

 

「はいこんにちは。ハナさん…でしたっけ?貴女も、息子と仲良くしてくれたみたいですね〜」

 

「はいっ。洋太くんとは、よく一緒に食べ歩きとかしてるんです!この前も、彼とたい焼きの食べ比べした事があって〜」

 

「あぁ、アレか……あそこのたい焼き屋、50種類もあった筈なのに……殆ど二人で短時間全種類制覇を果たした時は、お店の人もドン引きしながら二度見してたぞ」

 

 ウム……確か馬鹿猿が車に轢かれた日の少し前あたりに、馬鹿猿もこの小娘も別に空腹でもなかった筈なのに、凄い勢いでたい焼きを食べ進めた時があったな。

 おまけに黒髪小娘の方は、たい焼き屋に潜んでいた“手脚の生えた人面鮭”とでもいうべき姿をしたデカめの霊から少しでも早く逃げようとして、わんこそば方式でどんどんと二人に食わせまくってたし……ていうかなんで鮭なんだよ、そこは鯛であれよたい焼きだけに。しかも馬鹿猿の光にも怯まず絡みまくってたし、何処にそんなしぶとさを秘めてんのよ。(まぁ結局は馬鹿猿の光と小娘の生命オーラで浄化されたけど、我も巻き添えで漂白されたわ)

 

「あ、そうだっ。徹くんもみこんチに寄ってかない?人数は多い方が良いだろうし」

 

「ウエッ⁉︎ あ、イヤ、お宅らが迷惑じゃなきゃ、俺に別に断る理由はないワケだけど……

 それと今更言及するみたいで悪いんだけど。ハナさんが作ったケーキ、その箱に入っている感じなん?だとしたら随分縦長だけどなんで?」

 

「えへへ……実はつまみ食いしたらバランスが悪くなっちゃって、形整えてるうちにロウソクケーキが出来上がってたんだ〜」

 

「ウン。とりま俺からは『あーおっちょこちょい…』という一言だけに留めておくよ」

 

「ハハハ。二人とも仲良くていいね〜」

 

 そんな会話を繰り広げつつも、徹と小娘は「じゃあ失礼します」と見円太郎(とドアの向こうから手を振る、馬鹿猿の祖母である御婦人)にお辞儀をして。黒髪の小娘が住んでいるという隣家へと向かって行った。

 

「やっほー!ケーキ持って来たよ!」

 

「よっ、恭介。お邪魔しますぜ」

 

「……ハナが持ってる奴も気になるけど、なんで徹にいちゃんと一緒にいんだよ。デートか?」

 

「イヤ、洋太ん家の前でバッタリ会っただけ」

 

 誘われるがまま中へ入ると、ローマ字で『IKA』と書かれた文字の上にイカの絵がプリントされたTシャツを着る、黒髪小娘の弟だという小童が玄関へとやって来た。

 そいつは来客である徹と小娘に対して訝しげな目を向けながら、彼女との関係性を問うていた。勿論、徹はアッサリと否定したけどな……あ、ケーキを渡そうとした小娘にシャツ褒められて照れてる。

 

「ところで恭ちゃん、みこいる?まだ用事?」

 

「えっ?一緒に買い物してたんじゃ……」

 

「? してないよ。今日は一人でケーキ作ってたし」

 

 ふと腹ペコ小娘が黒髪小娘の所在を問うも、どうやら黒髪小娘はいまこの家に居ないらしい。逆に小童の方は、腹ペコ小娘と一緒にいるものと思ってた様だ。

 小童曰く、「ハナと買い物に行く」と言っていたらしく。身に覚えが無い小娘の方も「ごめん今日用事ある」の一言以降、何時もは秒でくる返事は来ておらず、通話も出来ないと語っている。馬鹿猿ですら最低限既読は付けているというのにこの始末☆

 

「なにしてんだろみこ……徹くんはどう思う?」

 

「あー。俺が考え得る可能性としては……なんかエッチなビデオや同人誌を買いに行ったらとか、ホスト通いかパパ活をしにあっごめんなさい今言った奴は万に一つもない可能性でした。なので呆れ果てた目とゴミ屑を見るような目で見つめないでくださいお願いします」

 

 二人から白い目で睨まれた徹が目を逸らしながら、戯言を撤回して許しを乞い始めた。

 そこから数秒後、「ごほん」と咳払いをした徹が改めて話し始める。

 

「えーと……真面目に考えて、みこさんの行方が現在進行形で不明なワケで。この場における一番の問題は、一体彼女が何処へ行ったのか。という事なんだけれども……

 ハナさんは、なんか心当たりない? 親友がとった気になる行動だとか、何でも良いんだけど」

 

「気になること……あっ!そういえば昨日、帰りに寄ったドンキで油揚げ買ってたよ!」

 

「成る程。油揚げ、油揚げねぇ…………何で油揚げ?」

 

「さぁ?」

 

 “三人寄れば文殊の知恵”と言い表すべき光景を目の当たりにしながら、我は『油揚げ』という単語から狐の姿を想像し……かつて徹達が訪れた山の神社で目にした、狐を彷彿させる“滅茶苦茶ヤバい存在”を思い出して。黒髪の小娘が向かった場所が何処なのかを、何となく察してしまう。

 まぁ、本当に黒髪小娘が彼処へ向かったかは知らんし。そもそもあやつがどうなろうと、ぶっちゃけどうでも良いんだけどな? だけどもし仮に、小娘が“例の場所”へ『御礼参り』に行ったのだとしたら……

 

「……(そういや、前に行った神社に『きつね』って単語があったけど。まさか……)」

 

 お?恐らく徹もあの神社について思い出したのだろうか。スマホの地図アプリを起動して、そこに建てられた鳥居の上部に張り付いてた額束の『三狐谷神社』という文字を記憶から引っ張り出し。検索範囲をバスで行ける山周辺に絞って、その位置情報を表示させる……否、表示させようとした。

 

「───あ"?」

 

 だが画面には、『「三狐谷神社」に該当する場所が見つかりません』とだけ書かれていて、地図上に神社が映し出される事はなかった。

 摩訶不思議な事実を受けた徹は見るからに混乱した様子で、何度も似たような操作を試そうとしたり、別の検索エンジンで調べようとする。だが結果は同じで、まるで「最初から存在してない」コトを突き付けるかの様に表示されていた。

 まぁ、当然といえば当然の結果だろうな。何せ我の考えが正しければ、あの場所は──

 

「どうしたの徹くん?何かわかった?」

 

「……うんにゃあ、何も。それより、どないする?このまま帰ってくるのを待つか、みこさんを探しに行くか」

 

「そりゃあ探すに決まってるよ!恭ちゃんはどうする?」

 

「オレも行く! 勝手にいなくなったバカの分まで姉ちゃん守んなきゃだし!」

 

 そんなコトを呑気に考えていると、スマホを仕舞い込んだ徹が小娘と小童にこれからどうするか聞き。彼らが二つ返事で同行の意を示すのを確認したのち、一息吐き出して首をさすり始めた。

 

「……んじゃま、取り敢えず町の方に行ってみますか。ハナさんは随時LINEを確認して、恭介は姉ちゃんが行きそうな所に心当たりあったら教えてくれ。俺も………うん、とにかく頑張って探します」

 

「うんっ!よーし、いっくよ〜!」

 

 そんなワケで『四谷みこ捜索部隊』の設立が成されたので、三人は早速小娘を探そうと町へ繰り出たのだった。

 徹が感じたであろう不吉な予感が、最悪な形で現実にならぬ事を祈って。

 

 

 卍 卍 卍

 

 

 自身と洋太を助けてくれた神サマへ御礼参りに来た私は、ナビを頼りにバスを降り、あの神社がある山へと訪れた。

 でも何故か前来た時と違って、なんか荒れている気がする……そんな不安を感じながらも、前来た時と同じ様に石段を登って、山の中へと足を踏み入れ──

 

(なんでっ……⁉︎ さっきまで繋がってたのにっ!)

 

 “ヤバイ奴ら”に囲まれながら、見事に遭難してしまっていた。

 目的地である神社とは全く違う森のど真ん中でナビが終了したと思ったら、今度は圏外になってうんともすんとも言わなくなったスマホを握りしめて、私は途方に暮れる。

 どうしよう……助けを呼ぼうにも、スマホが使えないんじゃどうしようもないし。来た道を戻ろうにも、殆んどナビを頼ってたから道なんてちゃんと覚えてない……アレ?もしかして詰んでる?

 

『おい…』

 

(ひぃいいいい!? と、とにかく……ここから離れなきゃ…!)

 

 一方の彼等はこちらへ向けて何度も呼びかけながら、一人孤立無援の中で立ち尽くす私へジワジワと詰め寄って、ゴリゴリとSAN値蝕みに来ている。

 私はシカトを続行しながらナビの機能が戻ったフリをし、“ヤバイ奴ら”の前から去るべく、恐怖で震える身体を必死に押さえ付け。一歩を踏み出し……木の根っこに足を取られて盛大に転倒した。

 

「きゃ…!いったぁ……ッ⁉︎」

 

 派手にすっ転んだ私は、地面から顔を離そうと手をついて立ち上がろうとするも、すぐ目前の地面に埋まった顔と視線が合った。

 

(……これは、卑怯)

 

 思わず溢れ出た涙を誤魔化そうと「目に土が…」と目を抑えるが、そんな事も構わず“ヤバイ奴”は地面の中からゆっくりと這い出て、顔を近付けてくる。

 

『……ミタ? ミタァ?』

 

「…っ……ハッ……ッ!」

 

 恐怖のあまり、呼吸すらままならなくなって。

 誤魔化さなきゃいけないのに、言葉が出てこない。

 目前で歯をガチガチと鳴らす“ヤバい奴”を前にして、脚が動かない。

 怖い、怖いよ……! 命の危機を前に、頭はパニックを起こしていて。ひたすら居なくなってくれる事を祈るばかりで。

 だが“ヤバイ奴”は、そんな祈りなどまるで汲まずに、悍ましい形相で私へ詰め寄って来て……そんな時、脳裏には“彼”の姿が浮かんでいた。

 

 

『ヤッホーみこちゃん!今日もいい天気だね〜!』

『あっ、バナナあるけど食べる? え?いらない?』

『はいコレ、この間言ってたユルセンのでっかいぬいぐるみ!コレを僕だと思って抱き締めても良いよ〜? ……あ、うん、ごめんて』

『えへへ……みこちゃんの手、やわくて温かいね』

『よぉ〜し!今日という今日は、このまま僕のドン●ーが……ウワァァァァァ!ス●ッシュボール取られたぁ!サ●スのゼロレーザー喰らったぁぁぁ!?落ちたぁぁぁぁぁぁ!!』

『もし、みこちゃんが迷子になったら……その時は、僕が助けてあげるね』

『みこちゃんは僕が、絶対に守るから』

 

 

 彼の言葉が浮かんでは消えて、浮かんではまた消えて。

 このまま“ヤバイ奴ら”に祟り殺されるのでは。とさえ思った私にとって……突然頭の中に浮かんだその言葉達が、バクバク鳴り響く心臓を抑える鎮静剤で、限界を越えて失いそうになる意識を繋ぐ命綱で、最後の希望だった。

 

『おい ミエタ?おい オイ おい ミタ?』

 

 おそらくきっと、期待してしまっているのだろう。

 でなければ、ヤバい奴に詰められてる今でも、希望を持ち続けられるワケがない。

 

 だって、信じてしまってるから。

 また彼が、居なくなってしまった幼馴染が、助けに来てくれると。

 彼が好きな特撮ヒーローの様に、ピンチを救ってくれると。

 そんな都合のいい事、ある訳が無いのに。

 

「──たす、けて……」

 

『ミエテル みぃたぁ…!』

 

 それでも、縋りたかった。

 みっともなくても良い、無様でも良い。

 ただ、助かりたくて……

 ひたすらに、生きたくて……

 彼ともう一度、会いたくて……

 だから、最後の勇気を振り絞って、助けを求めた。

 

「洋太……助けて──!」

 

「───おんぎゃあーーっ!?」

 

『ズンビッパ』

『『『ヒィッ!?』』』

 

 怖さのあまり涙を絞り出す様に瞑ってた目を開いて叫んだ、そんな私の視界に靴の裏が映った。

 同時に“ヤバい奴”が奇声を発しながら潰れて、周りにいた他の“ヤバイ奴ら”は怯えるような悲鳴を上げて一斉に離れていった。

 一体全体、なにが起きたの?そんなコトを思いながら、バキバキッと枝が折れる音と共に落ちて来た物体へ目を向けると、そこには人型のナニカが転がっていた。

 その人型のナニカ……いや、うつ伏せに倒れてた人物はモゾモゾと動き、唸り声をあげて起き上がった。

 

「……あ〜、酷い目にあっだィッ⁉︎ 木の枝落ちて来た!?」

 

 その人物は、大きめな黒のリュックサックを背負っていたり、漫画で見る陰陽師とかが身に付けてそうな赤と白の着物装束を着て、首には大きめの紅い数珠をぶら下げているのを確認出来る。

 だけど私は、その人を……遅れて落ちて来た木の枝によってついた葉っぱを取り除きながら頭を摩る、そいつに見覚えがあった。

 燃える炎の様に揺らめかせる、ふわっとした癖のある赤茶髪を。

 左手首にそれぞれ装着した、“赤い数珠”と“オレンジのパワーストーン”が特徴的な二つのブレスレットを。

 少し弱々しい気がするけど、それでも辺りを照らさんとばかりに光り輝く身体を。

 阿保っぽい声で折れた枝を持ち上げるそいつを、私は確かに知っている。

 

(なん、で……どうし、て………?)

 

 夢だと、思った。

 妄想の産物だと、思っていた。

 御都合主義満載な、三流御伽噺の様に思えた。

 でも……それでも!僅かな期待を込めて、そいつを呼ぶ。

 何度も何度も呼び続けた、その名を。

 忘れる事など出来ない、その名前を。

 

「よう、た……?」

 

「……へぁ?」

 

 バカっぽい顔であっけに取られながら、こちらを振り返った顔は……

 それは紛れもなく、彼だった。

 私の、幼馴染だった。

 

「え、はぇ……? なんで、みこちゃんが───」

 

「洋太っ!」

 

 私は無我夢中になって、洋太へ思い切り抱き付いた。

 きっと彼の服には土がついてしまうだろうけれど、今はちょっと許して欲しい。

 本物の彼が居るんだと、そう実感したくて……その温もりを確かめたかったから。

 

「洋太……ようた……ようたぁ……!」

 

 なんで、急にいなくなったの⁉︎

 今まで、何処にいってたの⁉︎

 何故、連絡くれなかったの⁉︎

 どうして、ここに居るの⁉︎

 コイツに言ってやりたかった疑問や不満が、いくつも頭に浮かんだ。

 

 だけれども……今言いたい事は、そんな事ではない。

 彼の胸元に顔を埋めて、彼の着る服で涙を拭って、彼の温かみを全身で感じ取り。

 ずっと言いたかった言葉を、また会えたら必ず伝えると決めてた想いの全てを、叫ぶ。

 

「会い、たかった……っ!」

 

 もしかしたら、もう会えないかもしれないと思ってた幼馴染が来てくれた。

 ただそれだけで、先まで感じていた恐怖も、孤独も、寒さも、どんどん和らいでいくのを感じた。

 

「……うん。僕も、会いたかった」

 

 安堵と感動で満たされていると、鼓膜を伝って優しい声が聞こえる。

 ふと彼の顔を見上げようとしたけど、後頭部に大きな手が置かれたのを感じて、そのまま動かそうとした顔は胸元に戻された。

 

(あぁ、やっぱり洋太だ……)

 

 でも頭を優しく抱き締められた私は、彼の首元に額を当てる形で身を預け。

 そっと撫でてくれる手付きに、とくんとくん鳴る鼓動の心地良さに、陽だまりの向日葵みたいな匂いや温かみに、思わず目を細めてしまう。

 このままずっと……またこうしていたい。そんな些細な願いは───

 

 

 ──シャラン……

 

 

 澄み渡る様に大きく鳴り響いた、鈴の音によって打ち砕かれた。

 

 

 卍 卍 卍

 

 

 僕は見円洋太!(工藤新一並感)

 ()()()()()により、前にみこちゃん達と行った『三狐谷神社』がある山へと訪れていたが、道中で偶々見つけたデカいカマキリを目撃した。

 カマキリを捕まえようとするのに夢中になっていた僕は、決められたルートからばっちし外れていた事に気付かなかった。

 僕はカマキリを無事に捕獲し、ふと気付いたら……普通に迷子になってた。何を言って(略。

 

(うーん、まずったなぁ……ま、いっか。とにかく、木の上に登って探してみるか)

 

 取り敢えずカマキリは逃すとして、迷子になってしまったコトはこの際置いとこう。

 先ずは一帯の木々に目を付け、スルスルっと登った木のてっぺんから辺りの森を見渡し始める。流石に今の格好だと、少し動きずらいけどネ。

 ……うん。やっぱ聞いてた通り、この山変な感じするなぁ。さっきから臭いキッツイし、全体的に暗いし、天気もちょっと悪いし……いや、天気は流石に関係ないな多分……まぁ、とにかく神社へ行かない限り話は進まんな。

 そう結論付けて、取り敢えず神社へ向かうべく木を少し下りて、木から木を跳び移って移動を始める。流石にてっぺんからだと高すぎて危ないし、かといって地上に下りて歩こうにも障害物が多い。ならば猿のように、或いはターザンの様に移動すれば良かろうなのだぁ!

 そんな風に森を移動していると、微かに桜の香りが鼻の奥を通り過ぎた。

 

(……この辺、桜の木もあったんだ。今秋だから見分け付けづらいけど)

 

 何処に生えてんのかなぁ。なんて事を思いながら進む中で、ふと大切な幼馴染の姿が脳裏に通り過ぎる。

 

(みこちゃん、どうしてるかなぁ……)

 

 今、彼女は何をしているんだろうか?ちゃんと友達や家族と笑顔になれてるかな?もしかしたら一人で泣いていないだろうか?変なヤツに襲われてないだろうか?

 考えれば考える程に心配になってくる。

 心配する資格なんて、僕にある筈も無いのに。

 

(──あぁ、もう!また考えが暗くなってる!早く、神社に行かないと……)

 

 考えを振り払う様に頭を振って、また木から木へと跳び移ろうとした。その瞬間、誰かの助けを求める声が聞こえた。

 

(……うん?なんか今、声しなかった?)

 

 耳を澄まるべく手を耳に当て、集中して顔を傾けた……と同時に、変な衝撃と何かが折れた音が、澄ました耳の中へと入り込んだ。

 え、なんだ今の音。と考える暇も無く接近する地面が目に入って、次に顔面と胴体に走る衝撃で、肺に残ってた空気が「ぐべぇっ!」という奇声と一緒に吐き出された。

 

「……あ〜、酷い目にあっだィッ⁉︎ 木の枝落ちて来た!?」

 

 チカチカと星が飛び回る視界が晴れていくのを確認して、落下時に付いた土や枯葉を払おうとしたら、追加で降ってきた木の枝を頭に直撃した。しかも先が尖ってる部分。

 僕が一体、何をしたっていうんだ……?そんな疑問を枝を拾いつつ、辺りを見渡そうとした。

 

「よう、た……?」

 

「……へぁ?」

 

 するとそんな、泣きそうな声と共に。聞き覚えのある声が僕を呼んだ。

 何事かと思って振り返ると、そこには幼馴染である四谷みこがいた。

 みこちゃんの目は、今にも涙がこぼれ落ちそうな程に潤んでいて。その瞳は僕を捉えて、離さなかった。

 

「え、はぇ……? なんで、みこちゃんが───」

 

「洋太っ!」

 

 なんで彼女がこんな所に……?そんな疑問を聞こうとして、その前にみこちゃんが抱き付いてきた。

 突然の事に、驚きを隠せなかったけれど……彼女は胸の中で小さく嗚咽を漏らして、何度も何度も名前を呼び始めた。

 彼女は、震えていた。まるで迷子になって、探しに来た親へ必死にしがみつく子供の様に……いや、それ以上に震えていた。

 

「洋太……ようた……ようたぁ……!」

 

 ……なんで彼女が、ここに居るのかはわからない。

 だけど、彼女がさっきまで怖がっていた事だけはわかった。

 みこちゃんが、僕には見えない存在が見える事を思い出した。

 

(……ホントに、なんで彼女なんだよ……なんで、僕じゃ無いんだよ……!)

 

 何処にでもいる女の子が、こんな残酷で、孤独を煽り、心を蝕む能力を持っている。

 だけど、そんなみこちゃんを救う術を、僕は持ち合わせていない。

 そういう存在を見ることの出来ない僕には、彼女の抱える苦悩を理解する事は出来ない。

 

「会い、たかった……っ!」

 

 身体が震えている。身体だけじゃない、声だってそう。今にも消え入りそうな程にか細くて。それでも必死に僕へと伝えようとしてくれている。

 

「……うん。僕も、会いたかった」

 

 でも僕には……ずっと泣いて怯えていた彼女を抱き締め返し、少しでも安心してくれる様にと、精一杯の優しさを込めて頭を撫でる事しか出来なかった。

 

 ──シャラン……

 

 だが再会に歓喜するのも束の間、背後から微かながら鈴の音色が鳴り響き。誰か来たのかと振り返った。

 でもそこには誰もおらず、前に神社で嗅いだ獣臭が漂うだけで、特に変わった様子は無かった。

 

「っ……ごめん洋太、ちょっと……」

 

「え、あっ。うん」

 

 だけどみこちゃんの様子が何処か変わり。静かに離れようとしたので手を離して、彼女の方を見た。

 彼女はカバンから『特盛あぶらあげ』と書かれた袋と紙皿を取り出し、次々と袋から取り出したあぶらあげを重ねていく。

 

(……んえ?何してんの? なんで、あぶらあげを……えっ、もしかして()()()()()の?)

 

 最初は突然の行動に困惑したけど、彼女の持つ能力を加味して考えた結果、鈴の音と一緒に“見えないナニカ”が現れたのだとお察しした。

 僕にしては冴えた考えが浮かんだなぁ。と自画自賛したは良いけど、彼女がお供え物?を準備していってことは、多分神さま的なのが居るってワケで……

 それはつまり、目の前にいる“見えざる存在”は、これから行こうとしていた神社の神さまなのではないか?

 

(と、取り敢えず僕も……)

 

 そうと分かったら、みこちゃんと同じく背負ってたリュックを下ろし。前もってお供えようにと準備していた三色団子入りのフードパックをいくつか取り出して……あやべっ、紙皿持ってなかった。

 

「ごめんみこちゃん、紙皿余ってない?僕も使いたいからさ」

 

「えっ? ……う、うん。わかった……はいコレ」

 

「ん、ありがと」

 

 紙皿を受け取り、あぶらあげ15枚盛り合わせの横にお団子山盛り十本を作ってお供え……よし、ついでにバナナも置いとこ。

 

「……ね、ねぇ洋太。もしかして……」

 

「ん?どないしたのみこちゃん」

 

「………いや。なんでも、ない……」

 

 明らかに何か言いたげな幼馴染が気になるけど……今は聞かないでおこうかな、こっちの方が大事っぽいし。

 そんなこんなでお供えの準備が完了したので、二人で手を鳴らして合掌。目を瞑り、お祈りを続ける。

 

(……よーし、とりあえずこれでタスクはかんりょヴエェェェェ!? 油揚げと団子とバナナが悲惨な事にィィィ! アイエェェェェナンデ!?)

 

 目を開いてお供え物を見ると、あぶらあげも団子も黒いグズグズのデロンデロンになって虫が湧く程に腐り。全面黄色かったバナナは真っ茶色通り越して真っ黒になって、酸味のある臭いが鼻に突き刺さる。

 お気に召さなかったと言わんばかりの怪奇現象に、僕の思考回路がメダパニったが……

 

「………っ⁉︎」

 

 みこちゃんは僕以上に困惑した顔でその惨状を凝視し、絶望感のある表情で硬直していた。

 どうしたのかと思い、改めて残骸となったそれらを見渡す。そこで僕の嗅覚は、さっきまで漂ってた獣臭から禍々しい臭い……ジョジョの墳上裕也の言葉を借りると、『アドレナリン』ってヤツの臭いがプンプンし始める事に気付いた。

 ……もしやコレって、『見えざる存在』の匂いだったりするのだろうか?

 だとしたら彼女は、何か恐ろしい光景でも見てしまったのかもしれない。神さまの恐ろしい怒りの形相とか、牙を向けて襲いかかろうとしてる姿とか……

 

「──イヤ〜。そんにしても、今日は随分肌寒いねぇ〜〜!みこちゃんも、そう思うでしょ?」

 

「……えっ、あ……うん……!」

 

 だけどみこちゃんが怖がっている事は確かなので、そんな怖がる彼女を安心させるべく、そっと手を繋ぎ寄せる。

 一瞬ビクッと身体を震わせたが、やがて手の中で震えながら握り返し、怯えた顔が少し和らいだ様に見えた。

 

(よ、よし……お母さんの話では、僕の能力は大体無下限呪術みたいな感じらしい。だからこうして密着していれば、みこちゃんも少しは安心できる筈……!)

 

 お母さんから僕のチカラについて教えて貰った時。まさか無敵バリアーみたいに光を纏って、そういう敵から身を守る系の能力だとは思っていなくて、そっちメインなの⁉︎ってビックリしたなぁ……でもそのお陰で、みこちゃんを守る事も出来る。

 あとはこのまま、安全な場所へ連れて行けば──そう思った僕の頬に、何か掠ったみたいな熱を感じて。その数秒後には、額に小さな何かをぶつけられた様な衝撃が伝わって来た。

 

(…………あの、お母さん? 僕のチカラって、こういうのに強いって言ったよね!話が違うんですけどォ⁉︎)

 

 一瞬失った意識が帰って来た事で爆走した激痛で悲鳴をあげそうになったが、僕は長男なので我慢出来た。次男だったら痛みで、のたうち回ってたであろう。

 そんな現実逃避をしつつ額に手を当てると、僅かながらも血が滲み出ていたのか、指には赤い液体が付いていた。この調子だと、頬を伝ってる液体も同じ奴かもしれない。

 

(や、ヤバい……もしかしてコレ、迂闊に動けない感じ……?)

 

 現状からそんな直感を感じ取り、下手な動きを取ればみこちゃんに危害が加えられる。戦慄の中でそう悟った途端に、僕の中で恐怖が膨れ上がる。

 初めてお化けに対して……『怪異』という存在に対して“怖い”と思った。

 

(どうしよう……!このままじゃ、みこちゃんが……!?)

 

 みこちゃんを守る為には、この見えない存在に対処しなきゃならない。

 だけど僕には、見えない相手の攻撃が何処から来るのかを見る術がない。

 僕が傷つく分には、一向に構わない。だけどもし、怪異の毒牙がみこちゃんに降り掛かったら……考えただけで、すごく、凄く、怖いと思ってしまう。

 だけど──

 

「よ、洋太……っ⁈ ち、血が……!」

 

 それ以上に、みこちゃんは怖がっていた。

 宝石のような目は涙で黒く潤んで、小さく揺れる口からは乱れた吐息が漏れて。僕から流れ出る血を見て、更に怯えを濃くしてしまった。

 そんな彼女を見て……さっきまで感じてた“恐怖”が、みこちゃんの顔を見た途端に“怒り”へと変換された。改めて僕は、自分が今何をすべきなのかを再確認出来た。

 

「──アーーッハッハッハッハッハッハ!!」

 

 だからこそ、僕は笑った。それも高々と、喉が破れるほどの声で。

 森中の隅々まで響き渡る、空気がビリビリと揺れた思う程に、咆哮の様な大爆笑を放った。

 

「いやぁ、今の風凄かったねぇ!結構大きめの石も、飛んで来てたっぽいしさァ!!」

 

 最初に彼女の耳は塞いでおいたけど、それでも鼓膜に到達する程の大声で突然叫ばれた為か。ビックリしたみこちゃんの顔からは、怯えと恐怖以上の困惑と驚きに満ちていた。

 いきなり近くで爆笑したのは申し訳ないけど、一瞬だけでも良いから恐怖心を無くすためには、コレしか思いつかなかった。イヤ、ホントに申し訳ない。

 

「……大丈夫だよ、みこちゃん」

 

 それでも僕は、口角を上げ続けた。

 彼女に不安と恐怖が伝染しない様に。

 恐れに塗れた泣き顔では無く、幸せそうな笑顔が見たいから。

 

「例え何があっても、いつ何時だって、どんなに強い相手だろうと──」

 

 『笑う門には福来る』という、お婆ちゃんが大好きだった言葉を胸に……

 三流喜劇が繰り広げる、完全無欠なハッピーエンドを目指す為に……

 すごく大好きで、凄く大切な幼馴染(ひと)の笑顔を守る為に……

 

「──絶対に、君を護るから」

 

 みこちゃんを安心させる為に、手を強く握り返して、ニカッと笑い掛けた。

 それによって、彼女の顔から完全に、怯えの感情が消え去った。(流石に怖いって感情は残ってたケド、今はちょっと我慢しててね?)

 

 

「───よく言った息子よ」

 

 

 さて、これからどないしよ?と思ってた僕の頭に突然、剛と柔を兼ね備えた様な手が置かれ、撫でる様な感触が伝わって来た。

 

「貴方が放った言葉、かなりカッコ良かったわ」

 

「あ……」

 

 今聞こえた小さな呟きが、僕とみこちゃん…どっちが溢したのかは、言い放った本人にすら分からなかった。

 

「後はもう、大丈夫……お母さんに任せて頂戴」

 

 だけど、白衣装束の袖から見える右手の赤い数珠を光らせるその人……お母さんの登場によって、場の空気が完全支配されたのは、確かな事実だった。

 

「あ、茜……さん……⁉︎」

 

「──おや、あんたも迷子かい?」

 

 みこちゃんがお母さんの名を洩らしながら見つめていると、今度は彼女の背後から声が聞こえる。

 

「あっ、占い屋のお婆ちゃん」

「えっ……あ、数珠の……」

 

 声の聞こえた方へ顔を向けると、そこにはかつて数珠を売っていた占い屋のお婆ちゃんが、みこちゃんの肩に手を置いて立っていた。

 

「こんなトコで会うなんて奇遇だねぇ。ナントカGOかい?」

 

「ナントカGO!……あ〜……うん。アレね。なんか、こう……バッとやってビューン!ってやる奴。面白いヨネ」

 

「お母さん、分からないなら分かんないって言って良いからね?」

 

 一緒に山へ入ったお母さんは兎も角、占い屋のお婆ちゃんもいるのかは分かんないけど……あ、もしかしてお母さんの知り合い? そういえばこのお婆ちゃん。前に『紅乃』が名字の人と知り合いだって言ってたし、やっぱこの人もお母さん達の同業者なんかな?

 

「じゃあミツエさん、その二人をよろしくね」

 

「………あぁ。そっちこそ、無茶するんじゃないよ」

 

「大丈夫、心配しないで……あ。でも、その前に──」

 

 なんて考察を繰り広げてると、お婆ちゃんとそんなやり取りをしていたお母さんがニコニコと笑顔を浮かべながら此方へ向き直り。そのまま僕の頭を両拳で挟む様に置き……

 

「──ワタシから離れないでねって、言ったでしょうがぁ!こんっの、バカ息子ォォォォォ!!」

 

「おんぎゃぁぁぁああああああ!? や、やめっ、頭グリグリやめでいぎゃぁぁあぁ!!」

 

 ドリルで地面を掘るが如く、こめかみに尖らせた指を捻じ込み圧迫させて来た。

 やめて下さい!僕の優秀な頭脳がぁぁぁ!僕の頭脳そのものがぁぁぁーーー!?待ってくれGO!GO待て!!

 

 イッテイーヨ!(……逝っていい、ってさ)(幻聴です)

 

 こ、コイツ……!直接脳内に……!?う、う、うわぁぁぁぁぁぁ……!

 

「……ふぅ。今日のトコロは、コレで終わりにしてあげる」

 

「わァ………あ……」

 

「うわっ、大丈夫洋太……?」

 

 悶絶しても尚手を止めなかったお母さんがやっとこさ手を止めてくれた頃には、野原みさえバリのグリグリ攻撃を喰らって息絶え絶えの瀕死状態になった自分自身が地面に転がっていた。コレ絶対、脳細胞とか死滅してるよ……

 

「よーし。息子の説教も終わった事だし……行きますか」

 

「? 行くって、どこ──っ⁉︎」

 

 何処へ行くの?そう聞こうとした刹那。凄まじい突風が吹き荒れ、咄嗟にみこちゃんを背中に隠したは良いが、思わず目を瞑ってしまう。

 何事かと当惑してると、風は徐々に弱まって行き、やがて無風状態へと変わり……まるで神隠しにあったかの様に、お母さんの姿がなくなっていた。

 ついでに言えば、僕らの周りにいたなんか変な臭いの殆どが、鼻の奥を突き刺す様な獣臭が、いつのまにか消えている事に気付く。

 

「え……アレ……⁉︎ こ、こんな一気に……?!」

 

「………さて、と……2時の方向に進むよ。ふたりとも、ついてきな」

 

 なんかみこちゃんが酷く驚きながら辺りをキョロキョロしていたけど、お婆ちゃんが此方へ向いて手招きをして、忍び声でついてくるように指示をして来た。

 ……僕個人としては、お母さんを探すべきだと思うんだけど、流石にみこちゃんが心配なので、二人と此処を離れる事にした。

 

「全く、茜のお陰でだいぶ減ったが……此処らは蚊が多くてかなわんねぇ。まだ結構いるよ」

 

「蚊……? いや、でも今秋……むグッ」

 

 お婆ちゃんが虫除け?スプレーを周辺に撒きながら先を進んでるけど、この辺別に蚊飛んでなかった気がするんだケド……そう聞こうとしたら、何故かみこちゃんに口を塞がれた。何故に?

 そんな一幕はあったけれど、お婆ちゃんの案内で山の反対側へと無事到着した僕らは、石段の一番下で束の間の休憩を取っていた。

 ……なんだろう。山に登って、こんなに疲れたのはじめてかも。

 

「……ね、ねぇ洋太。顔の傷、大丈夫……?」

 

「え? あぁ、コレ。こんなのほっとけば治るから大丈夫だよ。

 あイヤ、そんなどーでも良いコトより……みこちゃん、大丈夫だった⁉︎ どこか怪我、してない!?」

 

「っ。わ、私は大丈夫……」

 

「……そっか。よかった……」

 

 あれ、なんか今……一瞬悲しげな顔した? まぁでも、大丈夫なら良いや。怪我はしてないみたいだし、良かった良かった。

 ……本当に、よかった。

 

「……やれやれ。ワシも随分、年取ったモンだよ」

 

「あっ……あの。さっきは、ありがとうございます」

 

「……僕からも、ありがとうございます」

 

「あぁ、気にしないでくれ。それで、あんたら名前は?」

 

 腰掛けていたお婆ちゃんが僕らに微笑み掛けて、一緒に名前を聞かれたので、それぞれ軽い自己紹介をさせて貰った。

 そして僕らの名前を聞いたお婆ちゃんは、みこちゃんの方へと目を合わせて口を開き始めた。

 

「みこ、あんたスゴイね。若いのに肝が据わってる……大したもんだよ」

 

「……!」

 

 その言葉を聞いたみこちゃんの顔は、今までの苦労が報われた様な、そんな晴れやかな表情をしていて。本当に嬉しそうだなって、伝わってきた。

 ……うん。みこちゃんは、スゴイんだよ。きっとひとりで、ずっと頑張って来たんだ、きっと。

 何も知らないで、呑気してた僕よりも。何の役にも立てなかった、僕なんかよりもずっと──

 

「──それと洋太……あんたも、良くみこを守り切ったね」

 

「……?」

 

 ………え、はっ、えっ? もしかして今、褒められた? 何で僕、褒められたん??

 僕、何もしてないのに……え、マジで何で?生きてるだけで偉い……ってコト?

 そんなよく分からない言葉を投げかけられ、混乱する僕だったけれど。ひとまず情報整理の為に、近くにあるグァストへと赴く事になったのだった。

 

 

 

 

 ──え?結局なんで僕とお母さんが、あの山に居たのかって?

 それについて教えてあげたいのは文字通り山々すぎて山脈なんだけれど。それについて話すとちょーっと長くなるから、次回まで待たれよ。

 

 

 卍 卍 卍

 

 

「………あの、ハナさん?此処、ハナさんが来たかっただけでは?」

 

「しかも姉ちゃんいねーし!ミセドのハシゴとかハナしかいないよ!」

 

「えっ、ウソ」

 

「しゃーなし。別んトコ行くぞ〜」

 

 その頃、我等はミセドの前に来ていたのだ。

 だが正直言って無駄足だったのだ。まるで見つかる気がしないのだ。けへっ。




●四谷みこ
またもや馬鹿猿に脳を焼かれた可哀想な子。彼女が何をしたっていうんだ……
原作でも思ったんだけど、今回のみこちはマジで危なっかしかったのでちょっと反省して欲しい気持ちと、山の神様達に唆された結果でもあるからなんとも言えねぇ気持ちがせめぎ合っていたし。そんな彼女が、ミツエさんが助けに来るまでバチクソ追い詰められて行く様は、ホントに見てられなかったのだ。
「俺は騙されないから大丈夫」、「この間は大丈夫だったし、今回も問題ないだろう」。そういった小さな油断や楽観視が、人を破滅へと導くのDeath。

●見円洋太
御都合主義レベルでイキナリ湧いて来た馬鹿猿。キッショ、何で呼ばれて飛び出てジャン☆ジャカジャーン☆して来るんだよ。
通常なら神の使いレベルの攻撃でも『風に煽られた』程度で済むんだけど、今の馬鹿猿は精神デバフによって神の光パワーが弱まっている為、『全力投球で飛んで来た小石』くらいのダメージを負う事になっています。
「ルフィ……助けて……」「当たり前だ!!」ド ン !

●狐の巫女
赤血操術の奥義『穿血』みたいな技を放って、自分達の邪魔をする馬鹿猿を威圧した。脹相のフリーレン。
「おい…神の使いである我々を差し置いて何をしている…」「本当にいい加減にしろよお前…」「茶番は終わりだ猿め…」

●ミセスドーナッツ
ぶっちゃければ、ミスタードーナツのパロディ店。
モンデリング、オオサソリチョコチップ、ベニテングダケマフィン、ナンマンダブツリング以外にも、デビルフレンチやブラッディファッション、トリカブトクルーラーというのがあるらしい。ついでにオリジナルで『シカツノチェロス』という商品が出て来てるぬん。
原作では、みこちがヤバイ奴に迫られた際に上記の名前を呟いて、恐怖を紛らわせようとしてた。
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