ヘルメット越しにでも伝わる景色を、バスと共にその目に入れる。
バイクウェアを着ても尚伝わる風が、その身へ次々と押し寄せては過ぎ去ってゆく。
何処かへと向かう監視対象者を追い、徐々に人気が無くなっていく道を走って行く。
(彼女は一体、何処へ向かっているでありますか……?)
とある土曜日。ワタシク、根本鈴華は茜さんの命により、“あの神社”の怪異と契約をしたとされる監視対象者である少女…四谷みこを追うべく。愛車であるオレンジの400cc中型バイクを、荷台にキャリーバッグを載せながら駆っていた。
今乗っているバイクは、陸軍所属時代から愛用しているモノであり。とてもスムーズな走り出しと、安定した車体バランスが特徴的である。
(そういえば茜さん達、今日から“例の山”の対処に当たると仰っていたでありましたな……)
茜さんや当主様達の手に余る案件である、例の禁足地。
息子さんがその件に巻き込まれた事で、茜さんが珍しく慌てていたのは記憶に新しい。
あの人の話によれば、今日早速“例の山”の対応に取り掛かると語っていた……が、どうやら息子さんである見円洋太くんも一緒に動いているらしい。
(茜さん……息子さんを守る為に、紅乃一族のお膝元へと連れて来たというのに……
当主様の命令で、結果危険な事に巻き込んでしまった事を嘆いていたでありますな……声も露骨に苛々としていたでありましたし)
曰く、このまま保守的な対応を取っていたら“山の神様”の一味に何をされるか分かったものじゃない。ならばいっそ、多少のリスクを負ってでもアプローチをかけて行くべきだ……と、当主様が語っていたらしい。
別件に取り掛かっていたワタクシでは、詳しい内容について把握しきれてはいませんが……洋太くんについては、茜さんが付きっ切りになって、禁足地へ足を踏み入れる事となっている模様。
(洋太くん……大丈夫でしょうか……)
確かに洋太くんの“あの力”は、“山の神様”ですら容易に手出し出来ない程に強力であり。そこへ更に茜さんが加わったとなれば、正に『鬼に金棒』といった所でしょう。
しかし……茜さんの息子とはいえ、仮にも一般人を危険に晒してしまっている事実に、少なからず罪悪感を抱いてしまう。ワタクシですらこんな思いを抱いているのだから、茜さん達もそれ以上に複雑な思いをしている筈であります。
かく言うワタクシも、監視対象者である四谷みこを見張る為に色々とグレーな事をしているでありますが……
例えばある時は、彼女が通う女子校の清掃員として。
またある時は、何処にでもいる只の通行人として。
またある時は、見円家の玄関に放り出してあった彼女の鞄に盗聴器を仕込んでおくなど。
他にも様々な方法で、彼女の周囲に異常が起こってないかを確認しており。今もこうしてバイクに跨り、ストーカー紛いな尾行を続けている訳ですが……やはり、普段の仕事とは別の方向性で気が重いであります……
(──っとと、みこさんがバスを降りたでありますな)
考え事をしていたら、いつの間にかみこさんがバスを降りていた。
慌ててブレーキをかけて車体を止め、ヘルメットを外して一息つく。そしてバイクを降りたワタクシは、距離を取りながら彼女が降り立った場所を見渡してみる。
(……薄々気づいていたでありますが、やはり此処でありましたか)
彼女の目的地はきっと、先程独自の中で出てきた“例の山”であり、もうじき茜さん達がやって来るであろう禁足地。
実際に監視対象たる四谷みこは、禁足地たる山の入り口に立っており。このまま放っておくと、きっと大変な事になってしまうだろう。
(流石にコレは、放っておくべきではありませんな)
今までは監視の為に不接触を貫いて来たが、今回ばかりは事情が違う。
ワタクシは彼女が山中へ入る前に制止するべく、歩みを進めて──
突如、脇腹に走った強い衝撃で、山の茂みへと吹き飛ばされてた。
「ガッ───⁉︎ ……ッ──かはっ……?!」
何が起きたのか全然理解できないまま、視線をさっきまで己が立っていた所へ向ける。
そこに居たのは……靄がかって輪郭のハッキリしていない着物の少女が、此方へ掌を向けていた。
(──ま、まさか……“山の神様”の、眷属……!)
「……気の、せいか……(早くお供えして帰ろう……)」
ワタクシを攻撃した者の正体を看破している合間に、四谷みこは茂みの音と呻き声に気付いたのか、此方の方へと顔を向けてキョロキョロしているのが僅かに見えた。
だがしかし、荒れ果てた茂みで隠れていた所為でワタクシの姿を発見出来なかった彼女は、独り言を呟きながら禁足地へと足を踏み入れてしまった。
(い、いけません………それ以上……足を、踏み入れては……!)
ボヤけ始めた視界で警告を告げようとするが、呼吸もままならない今の自分では、どんどん奥へ行ってしまう彼女を止める事は叶わなかった。
(コレは……不味いで……あります……すみ、ま、せん……)
激痛で意識が薄れていき、視界が完全に暗転する寸前に思った事は、茜さんと洋太くんへの謝罪だった。
卍 卍 卍
ワゴン車に揺られながら、お母さんから僕のチカラについて色々と説明を聞いていた。
曰く、僕の能力は攻撃よりも防御に重点を置いているらしく。
曰く、なんかお母さん達みたいな『見える』人の目には、僕がめちゃくちゃ光り輝いているように見えているらしく。
曰く、怪異?がその光に触れると、大抵は水蒸気爆発するが如く爆散するか、大火傷を負う等の大ダメージが残るらしく。
曰く、結果的にその光がバリアみたいな役割を果たしていているらしい。
「要するに僕のチカラは、五条先生の無下限術式的な奴だ……ってコトでOK?」
「……え、えぇ。まぁだいたいそんな感じね。ホントは他にも説明する事あるんだけど、今はそれだけ覚えとけば良いわ」
なんか歯切れ悪く頷いているけど……何も見えないしあんまり自覚出来ていない僕からしたら、正直そういう捉え方しか出来なかった。そこはゴメンね?
でもまぁ、とりあえずチカラの概要は大体分かったので、次の話題へシフトする事にした。コレから行う御礼参り、“山の神様”と対峙した際の対応法についてである。
「まずあっちで山の神様がいる所に着いたら、『この度は、願いを叶えて頂きありがとうございます。此方はつまらないものですが、どうぞお納め下さい』って言いながら、用意した御供物を捧げる……で良いんだよね?」
「そうそう。それともし、何か異常があったとしてもガン無視を決めて、何にもしないで頂戴ね?あとはワタシが絶対に守ってあげるから」
あらやだ…うちのマミー、イケメンすぎ…?お母さんと同い年だったら惚れてたね。間違いないわ、断言できる。
そんなふざけた事を思っていると、車の走行が停止する。どうやら目的地に着いたらしく、窓の外を眺め──アレ、あの山ってこんな光景だったけ? 記憶の中だと、もう少し整備されてた気がするし、匂いだってもう少し神聖なフレーバーが漂ってたんだけど。
「……それは多分アレね。普段は汚部屋だけど、彼氏が来ると聞いた女の子が、慌てて家の掃除をした。的な奴よきっと」
「なるへそ」
「……それと同一視するのは、如何なものかと思いますが……」
ここまで運転してくれた梨子さんのツッコミが冴え渡る。
閑話休題。停車したワゴンから降りたお母さんに続いた僕は、今自分が着ている格好……所謂『狩衣』と呼ばれる装束を纏って、頭には黒い烏帽子を被り。更には大きい玉が連なった、赤い木製の数珠の首掛けを装備していた。母曰く、この衣装は所謂『鎧』の役割を果たしているらしい。だとしたらスゴい重装備やね。
勿論腕には、お母さんとみこちゃんから貰った数珠のブレスレット2つを付けている。
「それじゃあ洋太、ワタシから離れないでね」
そういうお母さんも、懐から取り出した赤い数珠ブレスレットを装着して準備満タン……じゃなかった、準備万端って感じだ。
「それでは茜さん、洋太氏、お気をつけて。何かありましたら、直ぐに応援を呼びますので」
梨子さんの見送りを受け、僕とお母さんは禁足地の山へと足を踏み入れたのだった。
……さーてと、いっちょ行きますか。
「……さて、一度車に戻り──ん?……へっ⁉︎ ちょ、先輩!?どうしたんですか!大丈夫ですか!!」
──ヤバいとは聞いてたけど、まさかコレほどまでとはね……
茜が初めて“例の禁足地”へと訪れ、少し歩いてから一番初めに浮かんだ感想だった。
「……ねぇお母さん?今更だけどこのバッグ、割とデカいけど何入ってるの?確か、お供え物はお母さんが持っているんだよね?なんか御守りみたいなのが色々ぶら下がってるケド」
「え、それの中身? 確か……予備の御供物の他に、清めの塩が入った200mlガラス瓶5個、知り合いから貰ってた聖水入り500mlペットボトル3本、私のチカラを込めたパワーストーン20個くらい、身代わり人形10体、厄除けのお札1束、そして魔除けの木彫り雄鹿が入ってる筈よ? ホントはもっと色々仕込んでおきたかったのだけど、昨日の今日で用意できる奴がその程度しかなかったのだけれど……」
「うん、『その程度』で言い表して良い量じゃないよねそれ。僕の為だってのは分かるけど、幾ら何でも厳重すぎない?」
風化しつつあった階段が途切れた先には案の定、“山の神様”が棲まう神社は存在しておらず。整備されていない獣道を歩く事になった彼女は、重装備になった息子とそんな会話をしていた。
「…………ごめんね、洋太」
「え、急にどしたのお母さん」
ふと突然、母親から急に謝られた洋太は、思わず困惑した表情を浮かべる。
何故突然謝るのだろう?ホントにこのタイミングで。もしやお母さんに何かやらかしたのだろうか……?そう考えていた息子へ、茜は申し訳なさそうな声色のまま、話を続けた。
「ホントなら今頃、安全な所で美味しいご飯を食べたり、テレビ見て寛いだりして楽しく過ごしている筈だったのに……こんな危険な事に、巻き込んじゃって……」
何故彼女が謝罪しているのか。その理由は息子の身を案じての事であった。
本来なら、この禁足地に洋太が足を踏み入れる事はなく、紅乃一族だけが取り組むべき仕事なのだから。しかし茜の父親は洋太の言葉を聞いて、この仕事に関わる事を容認した。
それは同時に、息子を危険な目に遭わせるという事に他ならなかった。
「……も〜、気にしすぎだよ!コレは僕が選んだ事なんだから、気に病むことなんて、なんにもないじゃんね?
それにさ、お母さん達が色々やって貰っている間に、僕だけがのんびりとしてたら、『お母さん達はすごく頑張ってるのに、僕は何してるんだろう……』って、逆に罪悪感が湧いちゃうから……僕的には、昨日お母さん達の話し合いに参加させて貰って、色々と巻き込んで貰って、結構嬉しかったんだよ?」
だが本人は特に気にしてない所か、寧ろ関わらせて貰って満更でもない様子であり。茜にとっては、そんな姿が酷く眩しく映っていた。
そんな事を考えつつ、せめて息子だけは何があっても守ろう……と決意し、改めてぽけっとした顔で此方を伺う洋太を見やった。
(……まぁ、ワタシの目にはマジで眩しく映っているのだけれどね。この間見た時より、ちょっと弱い気がするケド)
あたりを無警戒にキョロキョロ見渡す息子の身体からは、相も変わらず凄まじいパワーを秘めた光が放たれており。彼の輝きを警戒してか、木々の影から此方を伺っている禁足地の住人達である怪異供が絡んで来る事もなく、只管に不気味な静けさが辺りを支配していた。無論、洋太からはそれらを確認する術はないのだが。
(……今の所、目立った気配は感じないわね。梨子ちゃんの式神がさっきから応答無しなのは気になるけど、多分大丈夫……よね?)
息子が被ってる烏帽子の上に立っている、部下である須藤梨子が駆使するシマリス型式神『縞栗鼠』(ハイそこ、名前そのまんまヤンケとか言わない)を見遣りながら、茜は改めて周囲を警戒しつつ歩を進める。
「……そろそろ、かしらね。洋太、ココからが本番よ。気張りなさい」
暫くして、ある程度開けた場所へと訪れた茜は周囲を見渡す。
“山の神様”の結界が張られている事を確信して、手首に着けた赤い数珠をジャラ…と鳴らし、洋太へ注意を促して足を止める。
だが背後から木霊する筈の返答は、いつまで経っても返ってくる事は無かった。
「………洋太?」
気になって背後を振り返るとそこには、つい先程まで隣にいた筈の息子の姿が無くなっており。
素早く視線を巡らせるその周囲には、先程まで影でコソコソしていた筈の怪異供が、茜を取り囲むようにして佇んでいた。
「おほー!すげーデケーカマキリ捕まえちゃった……見てよお母さん!こんなに大きなカマキリ見つけ──あ、やべっ」
どうしよう……早く合流しないと──いや待てよ?もしかして、
……よーし。とりま木に登って、辺りを見渡してみますか。
そーいや、被ってた烏帽子何処いった?
卍 卍 卍
禍々しい穢れが蔓延る森の中、“それ”は木の上で佇んでいた。
『あたたかい……あたたかーい……!』
“それ”は鬼の様な形相と、虎柄の胴体から八本の節足を生やした蜘蛛型の怪異……『土蜘蛛』であった。
『──!────!!』
禁足地の山で長く住み着いている、一種の弱肉強食社会の生き残りたる土蜘蛛の手元には、口から吐き出した黒い糸によってぐるぐる巻きにされている“ナニカ”があった。
糸玉の中から聞こえるぐぐもった声が、とても心地の良い音色に聞こえたのか、ニャチャリと口角を吊り上げて愉楽の表情で次の獲物を品定めしていた土蜘蛛は……
『あたたか──ぐぎゃッ』
何処からともなく飛来して来た赤い一閃によって、細切れになって地に堕ちていった。
土蜘蛛だったものと一緒に落ちてきた糸玉は、赤い数珠を装着した腕……見円茜の手に収まり。再び赤い一閃が糸玉を通り過ぎると、木っ端微塵に切り刻まれた。
風に煽られた糸屑が宙を舞う中で、糸玉に捕らえられていた“ナニカ”…シマリスの式神が茜の手元で蹲っていた。
『───すみません茜さん!洋太さんと、逸れてしまいました……ッ!』
「……梨子ちゃん。“こっち”と“そっち”で、何があったの?」
しかし視界が晴れたのを確認した式神は、すぐ様体勢を整えて声を上げる。対して茜は責める様子もなく、木のそばに落ちてた烏帽子を拾って淡々と状況を問うた。
『まず“こっち”の件ですが。洋太さんが何かを発見し、おそらくそれを追い掛けようとして、茜さんの元から離れていました。
直ぐに茜さんに呼びかけようとしたのですが……蜘蛛型の怪異による攻撃に対応出来ず、そのまま洋太さんと離れ離れになってしまいました』
式神『縞栗鼠』……梨子の報告を聞く茜の表情は、眉一つ動かさないポーカーフェイスだった。内心は頭を抱えたくなっていたが。
一応フォローとして付け加えておくと、彼女の式神を襲った土蜘蛛は上級相当の怪異であり、本来なら梨子が式神ひとつで対処するレベルではなかった事を教えておこう。
「……それで、“そっち”は?」
『──禁足地の入り口付近の茂みに、先輩が気絶して倒れていました。腹部には酷い痣が……』
「ッ!?」
梨子の報告に、思わず絶句する茜。
彼女の言う先輩が、部下のひとりである根本鈴華を指してるのであれば。
今は息子の幼馴染である四谷みこの監視を行なっていた筈の鈴華が、禁足地付近に居たとすれば、導き出される答えはひとつしかなかった。
(……不味い、こんな……最悪すぎる……ッ!)
最も守るべき存在であった見円洋太が行方不明になり、護衛対象であった四谷みこが禁足地の山へと訪れている事を悟った茜は、梨子の式神を懐に押し入れてすぐ様猛スピードで駆けた。
(お願い……!どうか無事でいて……洋太……みこちゃん……お願いお願いお願い……ッ!)
そう祈りながら山の中を疾走する茜だったが、ふと奥の方から人の気配を感知。
まさかと思った彼女はその場を踏み締めて急停止。慣性の法則に従って吹き荒れた暴風で枯れ葉を舞い上げながら地面を思い切り蹴り上げ、直線上にある木の枝や怪異達をはね飛ばしながら跳躍した。
「よ、洋太───っ!」
「ッ!? あ、茜かい……?」
「………………なんだ、ミツエさんか」
「なんだとはなんだいあんた」
人がいると思われる所へと到着した茜は、その勢いのまま息子の姿を捉えようとして……息子では無く代わりに紫のフード付きコートを羽織った老婆、タケダミツエの驚く姿を見つけてしまった。
目的の人物じゃなくて露骨に落胆する茜にツッコミを入れるミツエだったが、彼女の只ならぬ雰囲気を感じ取って、真面目な表情に切り替える。
「……それで、何があったんだい」
「っ! そ、そうだ……ミツエさん、ここに洋太とみこちゃん来ていない!?」
「……! 来てるのかい、あの二人が」
ミツエは暗に、あの二人とはまだ会っていない事を伝えた。
その報告を聞いて茜は更に焦りを募らせてゆき、呼吸が徐々に乱れ始める。
「どうしよう……ワタシが付いていながら、こんな事になるなんて………こんな事になるなら、やっぱり連れて来なければ……なんで、どうして、どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……このままじゃまた、また家族が──」
「──茜」
自分の迂闊な驕りから生まれた後悔と自責の念によって、パニックに陥りそうになったが……ミツエから名を呼ばれた事により、ハッとなって顔を上げる。
すると両頬に温かみのある手が添えられ、優しくも力強い眼差しが茜を捉えていた。
「心配する気持ちはわかるよ。だけどね、アンタはワシよりもずっと強いんだから、もう少し落ち着きな。それに二人は無事だよ、きっと」
「……どうして、わかるの」
「年寄りの、勘さ」
自信に満ちた言葉を聞き入れた彼女は、身体から溢れ出た生命オーラを抑え込みながら、呼吸も整える。
「…………ありがとうミツエさん。少し落ち着いたわ」
「そうかい。なら直ぐにあの子らを……」
──シャラン……
落ち着いた様子の茜を見て安心したミツエだったが、ふと聞こえてきた鈴の音色に意識を向けられる。
「茜、今の……」
「えぇ……聴こえたわ、バッチリとね」
二人(と巫女服の中に居た式神)が周囲を見渡すと、重くなった空気が辺りを包み込んでおり。その空気に当てられてた胸の内に、嫌な予感が過ぎった。
「……悪いけど、先に行くわ」
「あぁ、急ぎな」
殺気立った形相となった茜は一言だけ言い残すと、赤いオーラを纏って再び森の中を駆ける。
あっという間に彼女の姿が見えなくなり、残されたミツエは「相変わらずの馬鹿力だねぇ…」と冷や汗をかきながら、今も尚鳴り響く鈴音を追って走って行った。
●見円茜
紅乃一族の次期当主で、見円洋太のお母さんでもある。イメージCVは上坂すみれ。
呪術廻戦で云う五条悟ポジの様な立ち位置だが、強さに関して言えば乙骨悠太とフィジギフゴリラを足して二で割った感じに近い。
実は、三姉妹の長女で、他の妹二人は遠くにいっているらしい。ちなみに一番下の妹とは、たまに連絡を取ったりする。
●根本鈴華
四谷みこが山の神様或いは何かしらの怪異にちょっかいかけられてないか、影からコソコソと監視を行っていた、元陸軍の女性。
あの後、梨子さんにワゴン車へ運ばれて、応急処置を施されたのちに杜玉村の病院へと連れてかれた。
●須藤梨子
式神である『縞栗鼠』を召喚して茜と洋太と同行させた、ボイスレコーダー女。ワゴン車内の洋太と茜の会話もずっと録音していた。
ちなみに他の職員から「お前の式神、もう少し捻った名前にすりゃ良かっただろ……」とツッコマれた事は、一度や二度の事ではない。
●令和コソコソ噂話!
実は、かつて紅乃一族の中にも山の神様へ願いを叶えて貰った者が居たらしく、当時の其奴は狛狐の石像を神社敷地内へ設置して、ご機嫌を取ろうとしたらしい。勿論駄目だったけど。