見える子ちゃんと見えない夫くん   作:yu-ki.S

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・前々回のあらすじ
みこ「ムフフ……洋太が戻ってきてくれて嬉しいのん」
洋太「(みこちゃん達の前から)消えるっ」
みこ「えっ? はあっ?何言ってんだそれ、おかしいだろ洋太ップ(ガチギレ)」

・前回のあらすじ
茜ママ「山の神様……すげえ。屈服させる事も出来ずに腕を喰われて、逃げ帰る事しか出来なかったんや……」
山の神様「イヤミか貴様ッッ!!」


もしかしたら、今日は月が綺麗なのかもしれない

 ──ここ最近、私こと四谷みこは“ヤバい奴ら”関係で、色々と不運や災難続きとなっており。今日も精神をすり減らしながら、そのヒト?達をひたすらシカトする日々が続いている。

 だけどそんな日常の中で、いくつか良いこともあった。

 

 まずひとつ目が、自身の『見える』事に関する悩みを打ち解けられる、始めての理解者と出会えたこと。

 名前はタケダミツエさん。前に占い屋で数珠を売っていた、私と同じ“ヤバい奴ら”が見えるお婆さんで。見えるモノこそ違えど、その悩みを共感できる相手がいるというのは、とても心強く感じて。一度畳んだはずのお店を再開すると聞いた時は、なんとなく心が軽くなったような気がした。

 

 ふたつ目が、遠くに行った筈の幼馴染…見円洋太が帰って来たことに加えて、彼にも『見える』事を知って貰えたこと。

 なんでも母方の実家へ行った際、洋太のお母さんに私が『見える』事を教えて貰ったらしく。そのお陰…というのもアレだけど、成り行きで不安や悩みなどを気軽に吐き出せ、素直に寄り添える相手が出来たのは結構嬉しい。(前に危惧した、あの馬鹿が“ヤバい奴”を刺激してしまう等の心配が実現する危険性も出来たけど、そこは追い追い対策を講じる事にしよう)

 ……というか薄々察してたけど、やっぱり茜さんも『見える』側の人だったんだ。昔から巫女っぽい服を着てるなぁって思ってたけど、洋太曰く『そういう仕事』をしてるみたいで、驚くと同時に長年の疑問が解消された…と思う。

 リンゴを片手でポンポン潰して三人分のジュースを作るのは序の口で、素手で狩って来たという熊肉をお裾分けに持って来たり、ぶつかってきた暴走トラックを逆に粉砕したり。眉唾レベルのマジカル怪力が使える時点で、ただの巫女じゃない事は解ってたんだけれども。

 

 それで最後は、あの日から鈴の音は聞こえなくなり、想像以上にヤバそうだった神社の件がなんとかなりそうなことだが……そっちはまだ完全に解決した訳じゃないから、一旦置いておこう。

 

「見てよ二人とも!ラムラビとVチューバーのコラボ商品、近日販売だって!」

 

「えーと……『ホロライブ所属タレント「兎田ぺこら」とラムダラビットがコラボ! 近日販売開始予定です』……へー、またコラボしたんだ……」

 

 なんて振り返りをしている、放課後の寄り道。

 前にラムラビの新作ストラップを売ってた店舗でそんなポスターが貼られているのを発見したハナが、ユリアちゃんの肩を掴んで目をキラキラさせていた。

 

『ちゅうしデース ゼンブ ちゅうし』

 

「……この間も仮面ライダーとコラボしてたし、スゴく勢いあるなぁ〜……」

 

 私には、タコの口をした三つ目のヤバい奴が顔を出しているせいで、どんなポスターなのか確認する事が出来ないのだけれど。

 だけど私だけ見ないってなると怪しまれるかもなので、仕方なくポスターの方を眺めてると、ヤバそうな奴と目が合い。爪を生やした手の様なものを振り回し出したの見て、思わず右手首を掴んでしまった。

 

「ハッ、そうだ。今日はミセドの数量限定ドーナツがあるんだった!急がなきゃ売り切れちゃうっ!」

 

 ハナが思い出したようにそんな事を言い出すと、ユリアちゃんと私の手を掴んで、そのままポスターから大きく離れていく。

 突然腕を引っ張られた私達は共に面喰らったが、お陰でヤバい奴から逃げる事は出来たので、とりあえずハナに感謝しておく事にした。一応、念の為、心の中で。

 だがそれはそれとして、左手を親友に引っ張られながらもう一方の、何もない筈の手首を注視していた。

 

(……洋太から貰った数珠、もう無いのに……)

 

 そこに着いてあった赤い数珠を、洋太から受け取ったなんかスゴい守護霊?がついてたブレスレットを……アイツが居なくなる前に、茜さんが回収していたという大事なモノを思い出し。

 その数珠はもうない筈なのに、ヤバい奴に絡まれそうになる度に何度も手をつけてしまっている事に、短い間に染み付いた癖が抜けていない事に苦笑いを浮かべる。

 

(だけど、これでもう洋太に負担が掛かることはない筈だから……後は前みたいに我慢すればそれで済む、ハズ……でも、やっぱり怖いなぁ……)

 

 護られてたという安心感ですっかり忘れていた(忘れてない)感覚に、ちょっとげんなりしてしまうが……今は出来るだけ気にしないようにする。

 道中、ミセドへと向かってた私達の進行を妨げる赤の信号機が出現したので、歩み急いでいた足を止めて横断歩道前で青に変わるのを待つ事に。

 

「ねぇみこ。ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかな?」

 

「え? うん、いいけど……」

 

 と、その間にハナから改まった様な事を聞いてきたので、何だろうと思いつつ向き合うが、彼女は意を決したような顔で質問をぶつけて来た。

 

「みこはさ……洋太くんの事、今どんな風におもってるの?」

 

「……どんなって、どういうこと?」

 

 ちょっと質問の意図が理解出来ず、首を傾げて聞き返す。ユリアちゃんも「え、なになに?」とよく分かってない様子。

 

「うーん……洋太くんと一緒にいる時のみこ、すっごく嬉しそうだし。よく手を繋いだり、くっ付いたりしてるじゃん?」

 

「うん、そうだけど……」

 

「それで、えっと……こういうのもアレ何だけどさ。二人って、凄く距離近いじゃん?

 たとえ幼馴染同士でも、普通の男女はあんなに距離近くないと思うし……」

 

(……い、言ったぁ!あえて触れてこなかったその話題、遂に言っちゃった!!)

 

「そ、そうかな……」

 

(そうだよ!? いくら洋太からチカラを貰う為とはいえ、あんなにベッタリなのは流石に“そっち”想像しちゃうよ!)

 

 何故かユリアちゃんにスゴい顔で見つめられながら、ちょっと顔を赤くしたハナにそんな事を言われ。そんなに可笑しいことかな?と首を傾げる。

 確かに、付き合ってもない男女がキスしたり、タオルも目隠しも着けないでお風呂に入ったり、同じベッドに入って寝たりしたら、ちょっと引くけど……別にそんな事をやってる訳じゃあるまいし、なにより相手は洋太だよ?

 

「そりゃあ……ちょいちょい匂いを嗅いでくるのはアレだし、人前ではやめて欲しいけど……今さらアイツの距離感であーだこーだ言ってたら、とっくの前に縁を切ってるし。それに……」

 

 そう言いかけて思い出すのは、アイツの笑ってる顔や、手のぬくもり、馬鹿みたいな話、向日葵の匂い、暁を彷彿させる橙色の瞳……

 

「……アイツ、ホント馬鹿だし……目を離したら、何処いくかわからないし……そんなんだから、なんとなくほっとけないし……」

 

 昔からおっちょこちょいで、能天気で、ドジで、ノンデリで、察しが悪くて……

 でも、何だかんだ優しくて、変な所で気を遣ってくれたり、たまーに察しが良かったり。

 

「………もう大丈夫だと思ったら、スゴい甘えて来て……暑苦しいくらい、抱きついてくるし……何言っても、しばらくしたら忘れるし……」

 

 私が『見える』様になってからは。

 肝心な時には、必ず助けに来てくれて。

 怖い思いをしていたら、一緒に居てくれて。

 私の事を想ってくれて。一生懸命になってくれて。

 

「それ、に……」

 

 

『──絶対に、君を護るから』

『僕はちゃんと、君の隣(ここ)にいるから』

 

 

「……そ、れ……に………」

 

 

『──もっとたくさん、私と一緒に居て。

 それでいっぱい、貴方に迷惑掛けさせて』

『──コレからもずっと、貴方の幼馴染でいさせて』

 

 

「………………あ、れ……?」

 

 あれ、なんで。

 なんでアイツの言葉が、何度も頭を駆け巡るの?

 なんで私……こんなに、顔が熱くなってるの……?

 

 あれ? アレ…? えっと……へっ……?

 も、もしかして、私……あの時、スゴいこと言ってた……?

 

「おやおやぁ? もしかしてみこ、やっと洋太くん意識し始めたの〜?」

 

「……えっ? みこちゃん、本当に洋太くんの事が……ホントのホントに? それも“今”?」

 

「………いやいやいやいや、イヤイヤイヤイヤッ!」

 

 ハナの悪戯っぽい問い掛けに、さっきより顔を赤くしてアワアワするユリアちゃんに、思わず叫んで否定する。

 そんな訳ない、そんな事ある筈ない! だってアイツは、只の幼馴染だし。何処に出しても恥ずかしいアホで、ホントに馬鹿だし。中学の時は殆ど会ってなくても、高校に入ってから顔も合わせてなくても、そこまで気にしていなかったし。

 

 ──なのに何故か、アイツがそばに居てくれる事が、とても嬉しく感じてる。そんな自分がいる事に気付いてしまい。

 今まで気にしていなかった事や、意識してなかった事にまで気付いてしまって……

 もう、何がなんだか、分からなくなってしまっていて……

 

「……ごめん、待って。ちょっと落ち着くから、少し待ってて、二人とも」

 

「……うん、わかった〜!」

「え。あ……うん」

 

 よし、落ち着け私。確かに私は、アイツが好きだけど。それはあくまで幼馴染としてで、弟みたいなものだからで……それ以上でもそれ以下でもないから……!

 だから、思い出せ!今まで見た洋太の姿を……っ!

 

 

 

『……みこちゃん、ぱんつみえてるよ?』

 

『だんじょのゆーじょーありゃしない〜♪ おとこっとお・ん・なはっせーたいしょ〜♪』

 

『神様仏様みこ様ぁぁぁぁ!どうか私めにぃ‼︎ 夏休みの宿題をぉぉぉぉぉッッ!!』

 

『あぁ〜〜〜………『合コン』、行ってみてぇぇ〜〜〜!』

 

『白鳥さん!僕も好きなので付き合って───うあぁああああーー!なんでーーーー!?』

 

 

 

 ──よし、落ち着いた。

 

「………うん、とにかく。私は洋太をそんな風に見てないし、多分洋太も“そういう目”で見てないと思うの……だから、この話は終わりにしよう。信号も青になってるし」

 

「お、おぅ……うん……」

「はいはい、そうだね〜っ!ふふっ」

 

 強い口調で言うと、ユリアちゃんは戸惑いの顔で頷いて、ハナはニマニマしながら歩道を渡り始めたので、私もそれに続いてミセドへ向けて再び早歩きする。

 

「そういえばハナ、ミセドの限定ドーナツってどんなだっけ?」

 

「えっとね〜、苺のショートケーキ風ドーナツだって!それで名前は……あっ、徹くんだ!」

 

 ハナがスマホ片手にそう答えている最中、何故か電柱の側に立っている徹君を発見する。

 まるで誰かに見つかる事を避けるべく、コソコソと隠れてるみたいだけれど、一体どうしたのだろうか? そんな疑問を解決する為にも、彼へ近寄り声をかける事にした。

 

「とおーるくん!」

 

「うわらばッ⁈ は、ハナさん達か……驚かせないでよ……!」

 

「それより徹くん、そこで何してるの? 尾行?」

 

「………いや、違いますけど? ちょっと、その……蝉の気持ちになってた、というか……ナズェミテルンディスごっこをしてたというか……」

 

(((誤魔化し下手だなぁ……)))

 

 ユリアちゃんの質問に、何故か異様にしどろもどろな返答をする徹君。怪しすぎて、逆に怪しくない領域に来てるレベルである。あと『ナズェミテルンディス』って何?

 それで何をしているかだけど……見たところ、ドンキの方に視線を送っていたっぽいんだよね。店に入るわけでもなく、そのまま帰るわけでも無い、そんな様子であった。

 

「いやー、流石ドンキ。マジでなんでもあるなココ」

 

 ホントに何をしていているの?と思ってた所で店のドアが開いて、そこから赤茶髪のゆるふわ癖っ毛と黒ジャージが特徴の男性……洋太がショルダーバッグを下げて出てきた。

 

「見てよみこっ、洋太くんいるよ! 行ってみたら?」

 

「……なんで耳打ちで言うの?」

 

「いや、その……今日は、ちーっとお控えになさった方が……」

 

「え、それってどういう意味……?」

 

 ハナがそう囁いてくるのを訝しみながら、徹君がボソボソと呟いてる言葉の意味を聞こうかと思──

 

「それじゃあ洋太くん、このあと何処に行く?」

 

「んん〜……あ、そいやミセドで数量限定ドーナツがあった筈だから、そこ行く?」

 

「ミセドかぁ……私、そういう所あまり行った事なくて……」

 

「だいじょーぶ、僕が案内するよ!んじゃ行こっか」

 

「……うん、ありがとうね洋太くん」

 

 ──った所で、後に続く形で黒髪を三つ編みにした眼鏡の女子が出て来て、洋太と仲良さそうに会話をしながら、ミセドの方へ歩いて行った。

 

「………えっと、徹くん?アレって、もしかして……」

 

「いや、アイツに限って“それ”は無い……と、思うけど……まだちょっと分からんから、一応尾行していたんだが……」

 

「……あれ? あの人、何処かで……ねぇみこちゃん、どう思───」

 

 

…………へぇ

 

 

 ふぅーん。アイツ、同い年くらいの女子と一緒に、何してんのかな……?

 あ〜……もしかして『デート』かな? なんか、すごく楽しそうだね……

 私にあんなこと言っておいて、別の女の子と放課後デートしてるんだ……

 そっか、そっかぁ……つまりアンタは、そんな奴だったんだ……?

 

「……みんな、追うよ」

 

「「「アッハイ」」」

 

 奇しくも目的地は同じらしいので、私達は先を行く二人の後を追うことにした。

 さて、と……どうしようかなぁ……

 

 

 卍 卍 卍

 

 

 ──あ、これヤバい奴だ。

 全員が同時に、一語一句違わずに思った科白であった。

 

 

「……わ、わぁ〜……コレが、『爆盛りナンバーワン☆ケーキングクリーム』かぁ〜……っ!」

 

「……お、思ってたより、デカいね……」

 

「こっ、ここまで来たら……最早ケーキだよな〜……ハハハ……」

 

 ミセド店内にて、イチゴとクリームを盛った直径15cm近くのドーナツを手にしたハナが、その大きさに驚きの声を上げ。ユリアと徹はそれぞれ、ベニテングダケマフィンとデビルフレンチを乗せたトレーを持ち、乾いた笑い声を出して席に着いていた。

 

「そのドーナツ、なんか大きいね……?」

 

「そだね〜!僕的にはコレくらいの方が丁度いいから、いろいろ助かるよ〜」

 

 

「……………」

 

 

 数量限定ドーナツとトリカブトクルーラーを購入した洋太達を、ブラッディファッションを買ったみこが能面のような顔でジッと離れた奥の席を見つめている光景に、キリキリと胃を痛めながら。

 

「……みこ〜? よかったらこれ、ひとくち食べてみる〜?」

 

「大丈夫。先に食べてて良いよ」

 

「…………うん」

 

 親友から発せられる謎のドス黒いオーラと重い空気に気圧されながら、ハナは自身が買ったドーナツのひとくちを勧める。微笑み顔で断られてしまい、もう何も言えなくなった。限定ドーナツ以外にも買っておいた、他のドーナツに手をつけ始めた。あまり味を感じなかった。

 

(……ちょっと徹くん⁉︎ 何とか出来ないの!? ワタシより付き合い長いんでしょ!)

 

(できるわけねェだろ! 俺より付き合いの長いハナさんがこの始末☆な状況でどうしろと!? ていうかこの場合、同性で同じ学校の二暮堂さんの方が適任だろ!)

 

(無理無理無理!!あの状態のみこちゃんをなんとかできるわけないでしょ⁉︎ ていうかワタシ達、喋ってないのになんで意思疏通出来てるの!テレパシー!?)

 

(そんな事、俺が知るかッ!!)

 

 みことハナの向かい側に座ってたユリアと徹は、飲み物を啜りながらアイコンタクトだけで意思疎通を行なっており。この重苦しい時間を何とか終わらせんと、彼女との対話を互いに押し付け合っていた。(元より具体的な解決策など無かったので、どうしようもなかったが)

 ちなみにオカイコ様は、みこから隠れる様に後頭部の方へと移動し、冷や汗をかきまくっていた。

 

(そもそも、あの子誰なの⁉︎ なんで他校の女子が、洋太くんと仲よさそうなの⁉︎ そっちは何か知らないの!?)

 

(いやわっかんないです! 放課後ぶらぶら歩いてたら、偶然アイツが女子と歩いてたのを見かけただけで、詳しいことは何も知らんとです!)

 

 洋太の向かいでドーナツを頬張る女の子を観察眼に捉えたユリアは、その女子が自分達の通っている学校とは違う制服を着ている事から、他校の生徒だというのは確認できた。

 ここで問題なのは、彼らの仲が良い事についてだ。確かに洋太の性格を考えれば、女子と仲が良い事自体は別に不思議では無い。だが違う学校同士の者達が、こうして和気藹々としてるのを見るに、何かしらのキッカケと交流があった事は、想像に難しくない。

 ならばそのキッカケは何なのか分かれば、自ずと彼らが席を共にしてる理由も分かる筈。そう思って洋太の親友である徹に問い詰めるが、本人は何にも知らない様子であったが……

 

(でも俺、どっかで会った気がすんだよなぁ。何処であったのか、イマイチ思い出せないけど……)

 

(役に立たないわねアンタッ!?)

 

(しゃーねーだろ! 中学時代は碌に女子の顔も見れなくて、会話も基本洋太の奴を通して交わしてたし、必要最低限のコミュニケーションすら精一杯で、相手の声やら何やら覚えてる余裕なんざないんだからさァ!!)

 

(………えっと、なんかゴメン)

 

(いや、普通に謝らないでください。なんか惨めになっちゃうから)

 

 二人が目線のみで諍いをしている合間、洋太と三つ編み眼鏡女子のいる席で何やら動きが見える。

 

「えーっと……ココはこうして、ここではこうしてーの……コレはこの辺で合ってる?」

 

「うんうん、その調子……」

 

 洋太がカバンから何かを取り出したかと思うと、様々な色の糸にオレンジの石…いや、パワーストーンを通し始め、女の子へ確認を取っている光景が映る。

 何かを作り始めているのは明白で、徹達は糸を編む洋太の後ろ姿を眺め、聞き耳を立てる。

 

「……ねぇ徹くん、ユリアちゃん。洋太くん、なにしてるのかなぁ……?」

 

「な、なんだろう……なんか、アクセサリーっぽいの作ってる、みたいだけど……」

 

「もしかして、ミサンガでも作ってんのか?」

 

「ミサンガって、あのミサンガ? でも、なんでミサンガを……?」

 

「あー……アイツの事だから、多分誰かのプレゼント──」

 

 ──ゴリッ!

 

 コソコソと小声で話し合っていた三人は、不意に硬いモノを砕く様な音に気付いて、恐る恐る音のした方へ視線を向ける。

 そこには無表情ながらも恐ろしいオーラを醸し出しているみこが、コップに入った氷を噛み砕きながら、全く笑っていない目で洋太の方を睨みつけていた。その圧に、思わず徹達は顔を引き攣らせてしまう。

 

(……と、徹くん、ユリアちゃん、どうしよう……みこ、滅茶苦茶機嫌が悪いよ……っ!)

 

(いやもうコレ、『機嫌が悪い』で表現していいの……⁉︎)

 

(だっ、だだだだだだ大丈夫……まだ、軌道修正可能範囲内だ……っ!)

 

(ホント? ホントに大丈夫なの!?)

 

(ったりめーよ! アイツが作ってるプレゼントにしたって──)

 

「あ、ごめん。ここ、どうすんだっけ?」

 

「そこはね……これをこうして、こうして、こうすれば……」

 

 三人が冷や汗を流しながらアイコンタクトで話をしていると、洋太が作成途中のミサンガを女の子へ差し出して。それを指南しようとした女の子は、彼の手に自身の手を添えて編み方を教えてあげていた。

 

「あー、なーほどね〜……んふふっ」

 

 ──ガキッ!ゴキッ!ガコンッ!

 

 手解きを受けた洋太は“にへらっ”と微笑んで、三色の糸を一本の紐へと編み込んでいく。

 そんな姿をみこは無表情で、漆黒よりも虚無(まっくろ)な瞳で見つめ。

 新しく口に入れた氷を噛み砕き始めると同時に、手に持っていたコップからミシリ……と音が鳴っているのが聞こえて来る。

 

(オイ洋太ァ!? そのタイミングで笑ったら、“そっち”の意味だと捉えられるだろうがァッ!! ていうか何で笑った?! 完成が近付いて来たからか⁉︎ そうだよなぁ!てかそうだと言ってくれよ!!)

 

(どどどっどどどうしよう二人とも⁉︎ みこが今にもダークサイドに堕ちそうだよ! これ暗黒面に走ったりしないよね、大丈夫だよねっ!?)

 

(…………徹くん。もしもの時は、貴方がみこちゃんを止めて……!)

 

(何でさ⁉︎ てかこういうのって、親友のハナさんの役割じゃねぇかなぁ!いやハナさんに万が一あっちゃいけないから、そこは別に良いんだけどね? だとしても何故俺に!?)

 

(だって徹くんが「誰かのプレゼント」なんて言ってから、みこちゃんの空気が明らかに重くなってるじゃん!だったら徹くんが責任を持って、なんとかするべきじゃないの!?)

 

(んなわけねェだろォォッ! 確かにこちらにも、責任はあるわけですけど? だからって、こういうのはお宅らも対処して下さいよ!)

 

(……大丈夫だよ徹くん。もしもの時は、あたしも手伝うよ……この命に掛けても……ッ!)

 

(覚悟ガンギマリすぎィ!! あと今更だけど、なんでハナさんもテレパシー(仮)に入って来てんの!?)

 

 目線間で行われる、混沌の極みと化した話し合いを余所に。ミサンガ作りの会話を交わし続ける洋太と女の子によるやり取りを傍受していたみこは、砕いた氷を飲み込み、ずっと閉ざしていた口をゆっくりと開く。

 

「……徹君」

 

「………?……ッッッ!?」

 

 一瞬、何を言ったのか吞み込めなかった徹は、一度はみこの方をチラ見して。名を呼ばれたと理解するや否や、直ぐに二度見をかまして「何故に今俺を!?」とエネル顔を晒しながら顔を合わせる。

 口元こそ笑っているが、それ以外は無表情のまま、しかし明らかに怒りを滲ませた目でこちらを見ており。徹の背筋に冷たいモノが走り、額からは冷や汗が滝のように流れ始める。正しく、蛇に睨まれた蛙の気分であった。

 ハナとユリアは両者の間で行われようとしているやり取りから目を逸らし、ひたすら友の無事と鎮まりを祈って十字を切っていた。

 

「洋太のヤツ、随分あの子と仲好さそうだね……ふふふ」

 

 ──影杉徹は、初めて『ワーム』を見た時から久しく、心の底から震え上がった……

 虫を見た時の生理的恐怖とは違う、決定的な潜在的恐怖を感じ取っていた。

 

「────そうさ……みんな、仲良しなんだぜ……(洋太……ここは地獄なのさ)」

 

 恐ろしさと絶望に笑みを浮かべ、涙すらも流した。これは初めての事だった……

 

「うーぬ………よしっ、完成じゃい!」

 

 そんなやり取りが繰り広げられてるのもつゆ知らず。赤白黄の糸で編み込み橙色のパワーストーンをあしらった、とても綺麗な仕上がりのそれを天に翳し、満足そうに頷く洋太。

 

「……うん、いい感じに出来たね!」

 

「ふへへ……舞ちゃんのおかげだよ〜」

 

「そんな、私は作り方を教えただけで、最後まで作ったのは洋太くんでしょ?」

 

「でも手伝ってくれなかったら、こんなに綺麗な出来にぁ仕上がらなかったよ!だからありがとね!」

 

 お礼を述べながらニッコリと女の子へ笑い掛け。女の子もまた、そんな洋太に微笑み返した。

 どんどん険しいオーラを放ち続けるみこを尻目に、どうにか場を取り繕う方法を考えていた徹が、ふと洋太が溢した科白の中から気になる名前を拾い上げる。

 

「……あれ? 今言った『舞』って名前、どっかで……」

 

「えっ、何か思い出したの徹くん?」

 

「えーとちょい待ち。もうここまで出かかって……あ、そうだ。委員長だ」

 

「い、委員長? それってどういう……」

 

「ふふっ、どういたしまして。そういえば……男性が女性にプレゼントするミサンガには、『友情の証』以外にも……恋愛感情を込めた意味で贈られたりするみたいだよ?」

 

「ほへー、そうなん──」

 

 言葉は最後まで続かず、途中で途切れてしまった。

 二人は会話が途切れる原因となった、机の上に勢い良く叩き付けられたトレーを呆然と見つめ。次にトレーを持った黒い長髪の女子……みこの方へ顔を向けた。

 

「……………奇遇だね洋太、こんな所で会うなんて」

 

「あ、みこちゃん。急にどしたの? なんか焦ってる様な……」

 

「隣、座るね」

 

「? お、おう……っ?」

 

 にこやかな顔付きながらも只ならぬ様子を醸す理由について訪ねるが、みこは質問には応えず幼馴染を奥へと押し込み始める。

 洋太はそんな行動に疑問を感じながらも、特に抵抗する事なく隣に座らせて、心なしか不機嫌そうな彼女に対して不思議そうな顔を浮かべた。

 いつの間にか席を立って洋太の所へと移動していたみこに、徹達はそれぞれ「アレっ⁉︎ いつの間に⁉︎」「お、音も無く移動……! まさか、そんな技術まで隠し持って……⁉︎」「みこさんって、忍か暗殺家業の人だっけ?」と驚愕を露わにして。舞と呼ばれた女子は、いきなり現れて洋太の隣に座った女子に対して、戸惑いを浮かべていた。

 

「…えーっと、洋太くん? その人は……」

 

「こんにちは、洋太の幼馴染の四谷みこです。ウチの馬鹿が、お世話になったみたいですね?」

 

「…………へぇ〜! あなたが洋太くんの言ってた……」

 

 自己紹介を聞いた舞は、一瞬驚いた様な表情を浮かべた後。洋太の話していた“ある事”を思い浮かべ、直ぐに何かを察して笑顔になる。

 

「あ、申し遅れました。私、蝶野舞です。洋太くんとは中学の同級生で、委員長をしてました」

 

「へぇ、そうなんだ……ところで洋太?舞さんとは何を──」

 

「あ、そだそだ……ハイこれ! みこちゃんの!」

 

 舞の自己紹介を聞き終えたみこは、隣に座る幼馴染に対してどんな関係なのかと尋ねかけた、その時。何かを思い付いたかの様にポンッと手を叩いたかと思うと、洋太はみこの右手を握り、先程作ったばかりのミサンガを手首へ着け始める。

 

「…………へっ?」

 

 突然の出来事に黒く染まってた目を丸くさせるみこだが、そんな幼馴染を他所に話を始める洋太。

 

「いや〜、こんな良いタイミングでみこちゃんが来てくれるなんてさぁ〜!

 ホラ?この間も話したと思うケド、前みこちゃんにあげた数珠……えっと、うん、返してもらう事になったじゃん? そのお詫びにと考えて、数珠の代わりになるものをあげようって思ったんだ〜!

 ほんでみこちゃんにあげる奴探して色んな店漁ってたら、偶然舞ちゃんに会ってさぁ〜! 中学時代の馴染みで何あげたらいいか相談したら、ミサンガが良いんじゃないかって言ってて、それで一緒に作るの手伝ってくれたんだ!」

 

 手作りのミサンガをプレゼントするに至った理由と経緯を、嬉々として語る。

 

「ミサンガってさ、願いを込めて編み上げた奴を手首とかに結ぶと、糸が切れた時には願い事が叶うんだって! コレは舞さんが言ってた事だけど……

 あっ、パワーストーンの方にもたっぷりお願い事パワー注ぎ込んでおいたから、もし何十日も切れなくても大丈夫だよ!

 それに……今回ので作り方は大体覚えたから、ミサンガが切れた後も、また何回でも何十回でも作ってあげるから、安心してね!」

 

「ふふっ……洋太くん、ドンキで材料買ってる時も、ミサンガ作ってる時もずっと、みこさんの事ばかり話してたもんね」

 

 洋太の話を補足する様に、舞が彼と久し振りに会ってからの事を思い浮かべながら、ほころばせた顔でみこを見据える。

 

「………ぇ………ぁ、うぇあ……?」

 

 そして話を聞いてたみこの顔は、みるみるうちに赤く染まっていき。口からは呂律の回らない言葉が滲み出ていたが、やがて顔を俯かせると、ボソリと呟く。

 

「………あ、ありがとぅ……それと、ごめん……」

 

「……? うん、喜んでくれて良かった!」

 

 そんな二人の様子を見ていた舞は、ニマニマと幸せそうに頬杖を付いており。

 少し離れた所の席でハナ達と座ってた徹に至っては、「まぁそんなオチだろうと思ったよ」と納得した様子でウンウンと頷き、割と安心した顔で二人を眺めていた。

 

「そもそもアイツ、あの子に一度告ってバッサリフラれたワケだから。多分もう、そういう目で見てないだろうしな」

 

「………えっ。洋太くん、あの子に告白した事あるの?」

 

「おう。ついでに言えばあの馬鹿、中学卒業するまで60回くらいフラれまくってたぜ。アイツにとってはもう、半分笑い話みたいなものらしいけどな? ハハハ……」

 

(……今の話、みこには黙っておこうっと)

 

 ハナが初めて知った友達の新事実に苦笑いする一方、残りのドーナツを食べて席を立った舞が「じゃあ私は、ここでお暇するね」と二人に告げて、スクールバッグを肩に掛けながら出口へと足先を向ける。

 

「あれ、舞ちゃん帰んの?もうちょいゆっくりしてけばいいのに」

 

「ううん、十分ゆっくりさせて貰ったよ。おかげさまで、良いのが見れたしね」

 

「??……そっか、わかった!」

 

 心成しかミセド店内へ入る前よりもイキイキとした様子の舞に、言葉の真意を理解出来ていない洋太は目を点にしながらも、取り敢えず女友達がゆっくり出来たと分かったので笑顔でそう返す。

 

「それと……みこさん、でしたっけ?」

 

「……あっ、はい…………さっきは、ごめんなさい……

 

 そのまま二人を置いて立ち去っていく……かと思いきや、右手首に巻かれているミサンガをぼうっと凝視していたみこの方へ振り向き、声を掛ける舞。

 我に返ったみこが咄嗟に姿勢を正して、赤らめた顔で返事と謝罪する様子を面白そうに見ながら歩み寄ると、ギュッと彼女の左手を包み込む様に握って耳打ちをする。

 

「私……今もこれからもずっと、洋太くんの事は『友達』としか思ってないから。安心してくださいね?」

 

「────ッッッ!?!?」

 

「……じゃあ二人とも、お元気で」

 

「うい、じゃあね〜!」

 

 爽やかな笑みと共に去って行く彼女を呆然と見送るみこの顔付きは、今までに無い程真っ赤に茹で上がっていた。

 

「……あれっ?みこちゃん、なんでそんなに顔赤くして──ぬおっ!?」

 

 手を振り見送った洋太はそんな彼女を目撃した事で、どうしたのかと首を傾げながら顔を覗き込もうとする。

 だが顔を逸らしたみこに顔面を鷲掴みされ、視界を塞がれるという形で阻止されてしまう。

 

「………なん、でも……ないから。ほんとに……」

 

「え?でもあんな顔を赤くして、何にも無いは違くない? てか手もなんか熱いし、熱とかあるんじゃ……あっ、もしかして舞ちゃんと仲良くしてたの見て嫉妬していだだだだだだだだだだだ!? アイアンクローやめて!地味に痛いからソレ?!」

 

「だから、何にもないってば! ホントに……なんでも、ないからっ!」

 

「わかった、わかったから!とりま握力緩めてちょーよ!若干キリキリし始めてるから!」

 

「「「………超、あめぇ……」」」

 

 ドーナツやマフィンを頬張っていた徹とハナとユリアの三人は、口いっぱいに広がる甘味に舌鼓を打ちながら。よく見る痴話喧嘩を繰り広げ始めた二名を、特に何かをするでも無く、止めようとする素振りも見せぬまま、取り敢えず見守り続けるのであった。

 

 

 

「……洋太くん、私に告白した時よりも真剣な顔してたな〜……ふふっ。

 四谷みこさん……本当に、幸せ者だね」

 

 

 卍 卍 卍

 

 

 今宵は11月、秋の夜。巻層雲から覗くやや澄んだ夜空には星がポツポツと点在しており、欠けた月は表面の模様がよく見えるほど綺麗に浮かんでいた。

 

「………〜〜〜〜〜〜っっっっぅぁ!!!!」

 

 それとは別に、私は自室のベッドでうつ伏せになって、枕に顔を埋めながら足をバタバタと動かし悶絶していた。

 

(ゔぁぁ〜〜〜〜………もう、さいあく……)

 

 枕を顔に押し付け、声にならない叫びを上げ続ける。

 そうでもしないと、恥ずかしさと情けなさに押し潰されてしまいそうだったから。

 

(なんで……なんであんな事、しちゃったんだろ……

 あの後、合流したハナ達からは生暖かい目で見られたし……その前には、みんなに迷惑かけちゃったし……洋太の顔、ずっと逸らしちゃってたし……)

 

 二重の意味で酷く暑くなった顔を上げ、枕に右手を置きながら眺める。

 そこには洋太に着けてもらった、彼お手製のアクセサリーがあった。

 私の為にと作ってくれた、パワーストーン付きのミサンガがあった。

 アイツの瞳みたいな色をした五つの石が、心を温めてくれていた。

 

(……もう、ほんとに……どうして)

 

 きっと今の私の顔は、熟れた林檎よりも真っ赤に染まっているのだろう。

 そんな顔を冷ます為、手でパタパタと扇ぎながら身体を起こす。

 

(今までは、此処まで酷くなかった……筈、だけど……)

 

 洋太が私以外の子といた時、何故かイライラした……最近は、たまにあった。

 他の女子と仲良く話をしてるのを見たら、胸がモヤモヤした……アイツがハナと話してる時は、気にならなかったのに。

 私じゃない女の子が洋太と一緒に手を繋いでる光景を思い浮かんだ瞬間、目の前が真っ黒に染まった……これは、初めての経験だった。

 

(ねぇ……洋太、どうしてかな……? 私、おかしくなったの、かな……?)

 

 疑問は、不安へと姿を変える。

 ある日“ヤバい奴”が見える様になった時と同じ混乱が、私の頭で暴れ回っていた。

 けど、不思議と「怖い」とは思わなかった。寧ろ、温かい気持ちになれた。

 それが逆に、不安を煽っていた。

 まるで夢の中にいる様な気分で思考を巡らせている時、ふと洋太の言葉が木霊した。

 

 

 ──あっ、もしかして舞ちゃんと仲良くしてたの見て嫉妬していだだだだだだだだだだだ!? アイアンクローやめて!地味に痛いからソレ?!

 

 

(──あーー……………そっか……

 ………私、嫉妬してたんだ……)

 

 パズルのピースがハマって、総てに納得がいった。

 漸く、心の整理がついた私は、枕元に置いてある一体のぬいぐるみへ目を向ける。

 洋太の語ってた、とある特撮作品に出て来る『ユルセン』と云う、オレンジの身体と白いマント、頭部に付いた大きな目玉が特徴的な幽霊っぽいキャラクター……そのぬいぐるみを手に取り、ぎゅっと抱きしめる。

 アイツが「僕だと思って抱き締めて良いよ」なんて馬鹿な事を言いながら渡して来た、私への誕生日プレゼントを、強く、強く抱き寄せる。

 

(……だから、こんなに嬉しかったんだ……)

 

 ぬいぐるみから僅かに漂う向日葵の香りが、脳髄に刺激を与える。

 彼のことを考えると、焼ける様な痛みが私の心臓を締め付けてくる。

 此処には居ない彼の笑顔が、ずっと脳裏に焼き付いて離れてくれない。

 彼に着けてもらったミサンガを握り締める度、まるでドラッグをキメた薬物依存者の様に、味わってはいけない多幸感が骨の髄まで駆け巡っていく。

 

 

 ──おやおやぁ? もしかしてみこ、やっと洋太くん意識し始めたの〜?

 

 

(あぁ、もう……っ)

 

 この“想い”が、先天的なモノなのか、後天的なモノなのかは、今となってはもう分からない。

 だけど、太陽の輝きを浴び続けた私の心には、いつしか癌細胞が産まれていた。

 治そうとしても決して取り除く事の出来ない“それ”は肥大化し、気付いた時にはもう手遅れな程に中核を蝕んでいた。

 あの時は否定してしまったけど。今となってはハナの言葉を、認めざるを得なかった。

 とどのつまり、何が言いたいかというと──

 

(私って、こんなにチョロかったんだ……)

 

 既にどうしようもないくらい、彼の事が、見円洋太が『大好き』になっていたんだ。




●四谷みこ
今回は割と嫉妬深い姿をお見せしてしまった可哀想な子。別に、アンタが好きってワケじゃないんだ唐音っ!
前々から洋太への好意はあったが、それは飽くまで幼馴染としての好きだ。と彼女は思っていたので、今まで積み重なった彼への想いが満を持して爆発した際には、すぐに信じられずにいた。だが彼の笑顔と何気ない言葉に、ようやく自身の好意を自覚した。
登校時はスクールバッグで、お出かけ時は黒のリュックサックを背負っている。

●見円洋太
今回もみこちゃん好き好きオーラ出しまくってた馬鹿猿。まさに奇猿ねッ!
第1話でみこちが言ってた「ごめん。私、洋太の事そういう目で見たこと無いから」を引きずってる所為で、幼馴染が自分を意識し始めてるなんて夢にも思っていない洋太は、窓の外を眺めて「今日は随分と、月が綺麗だな〜」と呑気していたのであった。
登校時はエナメル質のスポーツショルダーバッグを肩に掛けて、お出かけの時は大きめのウエストポーチを装着している。

●百合川ハナ
今回の話の被害者Aとなってしまった腹ペコ娘。くるくるくるくる……
みこの超不機嫌な様子から「このままドーナツ食べても美味しくなさそうだなぁ……」と思いつつ、「ホントにどうしよう……」と別のドーナツを食べていた。その後なんやかんやで誤解が解けたので、安心して限定ドーナツを美味しくいただいたらしい。
登校時は学校指定の鞄、お出かけの際はラムラビのアクセが付いたショルダーバッグでπ/をしてる。

●二暮堂ユリア
今回の話の被害者Bとなってしまったロリっ娘。なんてメルヘンな……
みこちに首を絞められて脅された(勘違い)際や、善ママ事変でのブチギレ顔で若干トラウマを植え付けられてたので、洋太が他校の女子と居た時はマジで生きた心地がしなかった模様。
登校時は学校(略)、お出かけ時はテントウムシ柄のリュックでGOだ!キャミキャミ〜〜ッ!

●影杉徹
今回の話の被害者Cとなったオタク男子。キッツ……♠︎
そもそもの話、コイツがサッサと洋太といた女子=中学時代の委員長だって分かっていれば結構すぐに事態は収束したので、割と戦犯だったりする(辛辣)。「役に立たねぇな徹ゥ‼︎ 」「クーン…」
登校時は仮面ライダーの缶バッチを付けた黒のリュックを背負い、プライベートには大きめのトートバッグ(仮面ライダーカブトがプリントされてる奴)を持ってお出かけをするらしい。

●蝶野舞
中学時代のよしみで馬鹿猿にミサンガの作り方を教えてたオリキャラ委員長。う゛ーッ!
第1話では馬鹿猿が告ってた子が示唆され、洋太の過去回想編で徹と一緒にいた時に話しかけていた際に名前が判明。みこちゃんズがお見舞いの花を買いに立ち寄った、『フラワーロード演舞』で登場したアルバイト店員でもある。花道オンステージ!
共学への登校時はスクールバッグ。お出かけ時はお花の刺繍が成されたボディーウォレット。
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