見える子ちゃんと見えない夫くん   作:yu-ki.S

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◆ 四谷みこの胸を盛るな高校 校歌 ◆


みこちゃんの胸を盛るな みこちゃんの胸を盛るな
親友のハナと比べると 霞んで見えるけれど
元からちゃんとある方だぞ(ある方だぞ) 美乳タイプだよ(美乳タイプだよ)
でもアニメの方は心なしか 盛っている気がする
だからといってスイカ水着回のは 少しナーフされてる気がするよ

(間奏)

あぁ〜 だけどハナちゃんの胸を盛るのはいいかもしれない
だって元から大きいワケだし ちょっとだけ盛ってもバレはしない
百合川ハナの乳を盛れ(乳を盛れ) 百合川ハナの乳を盛れ(乳を盛れ)
みこちゃんは今のままで充分だよ(充分だよ)
ユリアとみちるは盛るなよ(盛るなよ)

あぁ われらがパイオツ高校

(……数ヶ月ぶりの更新で何書いてんだ俺は)


もしかしたら、不浄な応酬そこかしこなのかもしれない

「命の煌めきって、こんな味かぁ……!」

 

「……それ、普通のホットドッグだよね?」

 

 1年F組教室。ジュースやスポーツ飲料などを水と一緒に入れた角型タライ、『お茶』と書かれた張り紙を付けた電動ポットと紙コップを、それぞれ黒板前にある机の上下に設置した、若干殺風景な空間を醸し出している休憩所。

 そこではお化け屋敷で貰った割引券を使って購入した露店のホットドック計三つ、その内ひとつを感涙しながら頬張っている百合川ハナの姿があった。

 

「でもよかったの? ユリアちゃんの分も貰っちゃって」

 

「う、うん。そんなにお腹空いてなかったし…」

 

「そっか!ありがとうねユリアちゃんっ!」

 

 即刻二つ目のホットドックにかぶりついた彼女を横目に、お茶の入った紙コップを傾けていたユリアは冷や汗を一筋垂らしつつ、何気ない日常会話を交わしていた。

 

「………お待たせ、しました」

 

 そこへお手洗いに行ったきり中々戻ってこなかった徹が、いつもの三白眼を賢者の如く澄んだ眼に変貌させて、何故だかやけにスッキリした表情を浮かべながら対面の席に座る。

 

「あ、徹くん。お手洗い結構長かったけど、大丈夫?」

 

「うん、大丈夫……ちょっと俺の中のプリミティブドラゴンを鎮めるのに、少し時間かかっただけだから」

 

「プリ……?」

 

 男友達が発した謎の言葉にハナがキョトンと首を傾げながら、三分の一ほど残ったホットドッグを全て口の中へと放り込んだ。

 一方で喉を潤していたユリアは眉を顰め、神妙な面持ちで此方を見遣る徹に戸惑いながら「……なに? どうしたの徹くん……」そう尋ねた。

 

「──二暮堂さん……君はこれからも、今のままの君でいてくれ……」

 

「え、なに急に。キモッ……」

 

「終いには泣くぞゴラ」

 

「ホットドック美味し〜っ」

 

 突然言い渡された何処か含みのある言葉に、一種の気持ち悪さを感じ取ったユリアのドン引いた感情の込められた呟きに軽くダメージを負う徹。にこやかに浮かべていた笑みには、薄っすらと涙が出ていた。ハナは三つ目のホットドッグを、幸せそうな笑みを浮かべ、夢中になって食べていた。

 

(……あれ。あそこにいるのって、昭生会長?)

 

 そんな具合にくだらない談話を交わす中、ふと廊下側へ向けていたユリアの視線に入った学ランを着た黒髪の存在が……この学校の生徒会長だと自称していた男性・権藤昭生の姿が入り込む。

 周囲を見渡しながら床を滑るような歩みで移動する様子はまるで、何かを探しているようにも見えなくはなかった。

 

(何かを……いや、誰かを探している、とか? そうだとしたら何を……あっ、こっちに気付いた)

 

 不意に昭生と目線が合った瞬間、彼は一瞬ホッとした様子を見せながら歩みを止め、スナップを効かせた指鉄砲をユリアに向けて放った。

 その様子から「まさか、ワタシになにか用が…⁉︎」と予感した彼女は、自分の力が必要としているのだと思い、意気揚々としながら彼へ声をかけようとして──

 

「だーかーらー! お前があそこで勝ってれば、アナコンダ穴熊のグッズ貰えたンだろうがよ!?」

「あ゛ぁ゛?! テメェだってイイ線いってだんだから、悪りぃのはそっちだろうが!!」

「んだとてめぇ……もういっぺん言ってみろやゴラァ!」

「上等じゃボケェ!」

 

 その前に、激しい口論を繰り広げる二人組の男達が、開けっ放しの扉の前を通り過ぎた。

 一人は角刈り、もう片方はヒゲと、それぞれ特徴的な見た目を互いに罵り合いながら額を押し当てながら。彼女の視界からフェードアウトした後も、廊下に響き渡る声が徐々に小さくなるまで続いていた。

 

「……ビックリした、やけに騒々しかったなアレ」

 

「何だったんだろ。喧嘩? あ、それでさっきの続きなんだけど……」

 

「……ッ。ご、ごめん二人とも。ワタシちょっと、お手洗いに……!」

 

「え、あうん。いってらー」

 

「わかった〜。じゃあここでちょっと待ってるね〜」

 

 突如聞こえてきた乱暴な音色に二人揃って驚愕している中。二人組みが通り過ぎた途端に押し黙っていたユリアは、昭生がその場を立ち去って行くのを視認した直後に椅子から立ち上がり、二人に弁明を述べて廊下に出た。

 小走りに廊下を駆け抜け、数人いる通行人の間を縫うように突き進みながら、昭生が向かったであろう方向へと歩む。

 

「……それで昭生会長。ワタシに、何か用ですか?」

 

 やがて人気の無い階段下の空いたスペースに辿り着き、周囲に人が居ないのを確認しつつ、少しばかり緊張した面持ちでそう尋ねた。

 意を決して掛けられた呼び声に、ふてぶてしい顔付きで佇みながら「やっぱり来てくれたか」と笑みを浮かべて振り返り、近寄って来た昭生と目を合わせながら。

 

 

 卍 卍 卍

 

 

「……さて、ここで少しおさらいをしておこうか」

 

 扉窓のすりガラスが廊下側の景色をボヤけさせ、人が居る事を悟られぬ様にと消したままな蛍光灯が、教室内を薄暗いままへと維持し続ける環境の中。

 窓越しに外から射し込む太陽の光だけが、手元にあるトランプの柄を照らす唯一の光源となっている。

 

「この勝負、ルール自体は普通のババ抜きと同じだが……上がった順番に応じて、貰える景品も変化する。ここまでは覚えてるよな?」

 

 そんな状況下に於いて、目の前にいる二人の男女は肯定の意を示す様にゆっくりと頷く。対するおれは黒板側の机に置いてある、いくつもの景品へと目を向けた。

 

「今現在、お嬢さんが一抜けして、お一人様景品(シングルプライズ)は確定で貰える様になった。次に君が、おれより先に上がることさえ出来れば、お二人様景品(ペアプライズ)は君らのものだ」

 

 左から順に、籠の中で山を作っている●ニッカーズや●まい棒と、ビニール袋の中でギッシリと入ったポケットティッシュが置いてある、参加賞のコーナー。

 お菓子の詰め合わせや箱テッシュ(鼻セレブ)に加えて、小さなぬいぐるみのキーホルダーが複数個ほど置かれた、お一人様景品のコーナー。

 中古らしきゲームソフトや大きめのぬいぐるみ、先程挙げていたカップル景品だというペアネックレスが入った箱が鎮座してある、お二人様景品のコーナー。カップル景品のコーナーでもある。

 それらを目で追いながら、軽く説明を行う。

 

「つまり此処では如何にして、おれを出し抜く事が出来るか……それが肝となっている」

 

 念押しをするように、ロックなデザインが施されたシャツの上に羽織った長袖レザーコートを捲くり上げり。デニムパンツを履いた足を組んで肘掛を使い、腕組みをしながら椅子にどっしりと構え、隣接するように並べられた対面の位置に座る彼らの姿を交互に見る。

 

「…………だから、その……なんだ……精々頑張りたまえ」

 

「はい……ありがとう、ございます……」

 

 頭の中で用意しておいた台詞の枯渇で、今にも立ちそうな浮足で言い淀んだ言葉を捻り出すと共に、再び沈黙の空気が漂い始める。

 “遊戯王”の皆さんの様にコミュニケーションを投げ掛け合いながらババ抜きを進める予定で始めた、このおれ猛戦郷潔(もうせん ごうけつ)であったが……勝負に集中している為か、或いは緊張しているからなのか、始まって数分辺りで気まずい感じが出るようになっていたのだった。

 

(くそォ!おれに円滑なコミュニケーションを廻す、そんなスキルがあったのならば……こんな事なら、部員たち以外ともコミュ取る様にすべきだった……ッ!)

 

 この状況を打破すべく頭を凝らして考えた話題を振ってみたが、直ぐに会話が途切れてまた静かな空間に戻っていた。まさか他者と会話するのに、ここまで言葉が出ない事になるとは……想定外だったZE☆

 ちなみに他の部員たちは、あれから彼ら以外の来訪者が来なくて暇を持て余しているのか、寂しくスマホをいじったり、一人七並べや一人オセロを行なったりしているのが見えた。

 

(……それにしても、強いな。汗こそ垂らしているが、表情は全く読めない)

 

 ふとそう思いながら、目前で二択に迫られる後輩の表情を観察する。

 

(最初のうちは滅茶苦茶分かりやすかったのに、時間が経つに連れてポーカーフェイスに磨きが掛かって行ってる──というかメッチャ怖い顔になってね⁉︎

 何故か目光って見えんのもそうだけど、バッキバキの表情筋や逆立った髪が合わさって範馬勇次郎みたいになってるじゃん!女装コスした勇次郎とか誰得だよ!?)

 

 画風が板垣恵介作となっているそいつの身体からは、“闘気”とでも云うべきオーラが醸し出されており。全身から吹き出す熱気は周りの空気を歪ませ、瞳の奥底から溢れ出る圧倒的なプレッシャーにより、猛獣に威嚇されている様な気さえしてくる始末。そんな相手の迫力を前にして、僅かながら息を呑んでしまう。

 更にはこれまでの対戦中、何本もバナナを食べているのを確認している。恐らく脳を働かせるのに必要な糖分を補給しているに違いない。

 

(……()()()はひょっとしたら……想像以上に、厄介な相手なのかもしれない……)

 

 苦笑すると同時に改めて思う。今回の挑戦者、見円洋太に対する警戒レベルを一段引き上げる必要があると。

 だからこそ、ここでペースに乗せられてはならない。

 そう判断するや否や、おれは二枚の手札をシャッフルしながら内の片方──スペードのエースが描かれているトランプを、前もって袖の中に隠しておいたもう一枚、別のジョーカーと入れ替え始める。ポーカーのイカサマやマジックのタネに使われる『袖隠し』という手法だ。

 

(前もって袖に隠しておいた、文字通りのジョーカー。

 どっちを選んでも、相手は確実にババを引く算段……! 持久戦に持ち込めば、いずれお目当ての一枚が来る事間違いなし……!)

 

 机の上にはトランプ用のプラスチック容器へ収納した、本来の片割れであるジョーカーが一枚。敢えて目に見える所へ置いておく事により、心理的盲点を利用した策略に嵌める事が出来るのだ。

 

(“普通”に勝つだけならば、わざわざ使うまでも無い……がっ! “確実”に勝つとなれば、使うほかあるまい。『禁断の奇術』とも呼べるべき、このとっておき秘密兵器を……!)

 

 本来であればこれは……勝負事に置いて決して使用すべき代物では無い、謂わば禁じ手である。

 

(だがそんなの関係ないッ!今、遊戯研究部長として目指すべきは『戦って勝つ』!それだけよ……それだけが満足感よ……!過程や……方法なぞ……!イカサマがバレなければ、どうでも良いのだァーーーッ!)

 

「……なんだろ。急にゲロ以下の臭いがプンプンしてきたな……?」

 

 然しながら、今回ばかりはそうも言ってられない。あの後輩の雰囲気からは、どうにも只ならぬモノが感じ取れ。尚且つそれが間違いなく自分にとって、不都合な展開になり兼ねないとも踏んだからだ。

 ──不都合な展開ってなんだ?そういえば、おれってこんなに負けず嫌いだったけか?

 

(悪いな後輩……呪うなら、そんな可愛い女子とデートをしていた、己の運命を呪うんだな……! そしてついでに失望されろ……ッ! 未だに彼女の出来ない、おれへの当て付けか貴様……ッッ!!)

 

 ならば全力で叩き潰しに行く他ない、そう判断したのだ。決して、私怨は入っていないからな? 本当だからな?

 

「……あのっ!ちょっといいで──」

 

 そんな時、突如として後輩の隣に座っていた黒髪ロングの女子が此方に顔を向け、眉間を僅かにひそめながら話しかけてきた。

 

「ん? なんだいお嬢さん」

 

「…………………いえ、何でもないです。続けてください」

 

 なにか言い淀む仕草を見せたと思えば、鋭く尖った双眸を逸らし、結局何も言わず俯きながら首を振った姿に違和感を覚える。

 

(──それにしても。よくよく見ると、本当に顔整ってんな……

 もしかして、おれに気があるのか!? だとしたら急に声を掛けて来た事にも納得がいく……ッ! ふっ……これが俗にいう『フラグ建築士』ってヤツかい? わっはははは! これでやっと、おれの人生もバラ色って訳だな!

 さぁ、神よ、仏よ、ファラオよ!おれに『勝利』と『リア充への道』を授け給え〜!)

 

 気づけば緩んでしまった口元を咄嗟に手で覆いながら。若干疑問符を浮かべつつ、おれは改めて目の前に座る彼女を見据えた。

 

 

 

 

(…………今、カードすり替えたよね? 袖に一枚チラッと見えてるし……)

 

 残り二枚となった手札を持った遊戯研究部の部長さんが自信満々な顔で、袖から取り出した別の手札をちゃっかりすり替えてながらシャッフルを続ける現場を目撃した

 

「……あのっ!ちょっといいで──」

 

 心中に抱いた呆れと不服に身を任せて“それ”を指摘するべく、すぐ様トランプに注視している部長さんへ声をかけようとし……

 

『ジャマを するな』

 

 唐突に背後から囁かれた、悪寒の走る低声に気圧される。

 

「ん? なんだいお嬢さん」

 

「…………………いえ、何でもないです。続けてください」

 

 溢れそうになる涙を必死に堰き止めながら、怪訝そうな視線を送ってくる部長さんから目を逸らし。視界の端に映った緑色の炎を悍ましく揺らめかせる“それ”を認識しながら、深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

 心臓を握りつぶされる勢いで恐怖心が膨れ上がっていくも、こちらを見下ろしていた“それ”は粘度の高いヘドロを滴らせ、まるで審判員の様に洋太と部長さんの間に立って沈黙を保っている。その佇まいは、淡々と洋太らの戦いを見届けようと控えているようであった。

 

(……さっき他の人が此処で、ゲームに負けた時……なんか身体から抜き取ってたんだけど。もし洋太も負けたら……)

 

 思い起こされるのは、実際に炎の塊みたいなのを抜かれた、さっきまで他の遊戯部員と対戦していた男性二人の目が虚となった瞬間だった。

 直ぐに目に光が戻ったとはいえ、“アレ”が確実にヤバい影響がある事は何となく察しがついた為、下手に負けるわけにはいかない。そう思いながら、ババ抜きの弱い幼馴染を何とかして一抜けさせなければ。そう思考していた。

 だがそんな想定に反し、一番先に自身の手札がなくなってしまい。部長さんと対戦する洋太の姿を傍らで見守る事になってしまったワケだけれど。

 

(洋太にアドバイスとか出来ればよかったんだけど、さっきのを見る限り下手に喋る事は出来ない……となると。アイツが自身の力だけで何とかしてくれる事を祈る、しかないのかなぁ……)

 

 先程見せたヤバい奴の動きを加味して一瞬だけ考えた末に浮かんだのは、彼を信じて祈ること。それしか自分に出来る事は無いと、諦め半分の意識を持ってして願うしかなかった。

 

(だ、大丈夫……だよね? 今まで以上に、『不安』の文字しか浮かばないけど……)

 

 不安と焦燥が入り混じった感情を胸中に渦巻かせつつ、もう一度隣に座る幼馴染の方へと目を向ける。

 一枚の手札を手にする彼の目は酷く真剣なもので、普段のふにゃっとした表情とは正反対であった。

 

(…………なんか、顔がスゴい事になってない? 画風が変わってるていうか、背景が燃えてる気がするのは……流石にそれは気のせいだと思うけど。え、何あれ……もしかして何か我慢してる?なんかめっちゃチカチカしてるし……)

 

 膝の上で丸くなってる黒猫のゴロゴロ声をバックBGMに聞きながら、まるで修羅の如き形相でババ抜きに勤しむ幼馴染の異様な雰囲気に、某巨人のカラータイマーみたいにスゴい勢いで点滅を繰り返している姿に、ただひたすらドン引きしていた。

 

 

 

 

 只今現在、僕とみこちゃん(+αで黒猫ちゃん)は三階の教室にて、猛戦郷潔先輩とババ抜き対決をする事になっていた。

 ふと横を見ると、一番早く絵柄が一致した二枚をトランプの山へ投げ捨てたみこちゃんが座っているワケだが……当の本人は何やら不安げに此方を見上げており。何も知らなかった時だったら「なんかやけに不安そうな顔してるけど、そこまで勝って欲しいんかなぁ?」と呑気していたであろう。

 だが今なら、何となくわかる。今浮かべているその表情が、恐ろしいナニカに対して畏れを抱いている時の顔であろう事を、割と切羽詰っているが故に醸し出されているモノであると。

 

(なんかさっきからずっと臭いな〜とは思ってたけど。顔の強張り具合からして、ヤバいのがいるっぽいのよね……)

 

 それを証明するかの様に、先程から漂い始めた臭いが──コールタールの様に黒くドロっとしている、鼻の奥に突き刺さる激しい刺激臭が、教室の中を漂い始めていて。少し時間が経った今でも先輩の身体から僅かに漂うそれは、鼻の穴を通る度に背筋の芯を掴まれる錯覚に陥り、吐き気を催しそうになる苦痛を与えてくる。

 先程まで此処で部員のひとりとボードゲームをしていた男性二人。激闘を繰り広げていたであろう彼らが敗北を期した瞬間、急激に濃くなった異臭。初めは気の所為かと思ったが、みこちゃんの表情から何となく察するに、ここに潜んでいた“ナニカ”によるものである可能性がある。

 

(まぁ、それはそれとして──)

 

 僕自身も背筋から脂汗が滲み出てくる感触に苛まれ、思わず身震いをし……

 

(──凄く、トイレに行きたい。猛烈に、う●こがしたい……ッ!)

 

 お腹とかを露出させた衣服を着続け、ここまで模擬店で購入した食べ物を食べまくった影響もあり。早くこの場所から離れなければいけないと、これ以上此処に居続けるのは危険であると、本能が必死に訴えかけて来ていた。

 だがしかし、ここで勝負を中断してしまうのは、なんだか勝負を途中で投げ出したみたいでなんか嫌だ。己の中にあるちっぽけなプライドが、そう言って耐え難いモノだと訴えかけていた。逃げるなよ卑怯者、お前が始めた物語だろ。

 それに……仮に勝負中にトイレへ行きたいと言って許可が出たとしても、この状況でみこちゃんを置いて離れていくなど、例えどんな理由があっても出来るわけがない。

 今この場で必要な事は只一つ、この状況を脱するために如何に素早く勝負を終わらせることが出来るか否か。

 

(何となくノリで始めたけど、これ以上みこちゃんのメンタルと僕の肛門に負担をかけるのは割と不味あヤバい特急列車が発車しそう。鎮まれべ僕の中の排出物五郎三郎……!!)

 

 今もこうしてふざけ倒さないといけない程、我慢出来る許容範囲外寸前まで来ていた己の下半身を脳内で叱責しながら、何とか現実に意識を持っていかせないように奮起。

 

「……そろそろ選んでくれると、嬉しんだかなぁ?」

 

 そうやって気を紛らわせている間にも、残り一枚だけとなったハートのエース越しに居る先輩は手札にあった二枚をシャッフル。余裕綽々な態度で肘をつきながらそれらを突き出す。

 ジョーカーを持っている筈なのに、嗚呼もニヤリと笑みを浮かべて余裕そうにしてるとは、なんて冷静で的確な胆力なんだ……!

 

(あああああやばいやばい、これかなりのレベルでヤバいかも……! う●こが降臨なされてしまいそうだ。こんな時こそ落ち着いて落ち着いて、冷静に対処しなくては……!!)

 

 一方こちらは便意で思考回路が機能せず(元から機能不全だろとか言わないで)それどころじゃなく、心臓がバクバクと鼓動を速めているのを必死に誤魔化しながら平静を保とうとしていた。

 正直いつ決壊してもおかしくないくらい限界で、目の前に並んでいる二枚のカードを凝視することしか出来ずにいた。

 

(どっちだ……一体どっちがジョーカーだ!? 臭いから察するに、もしババだったら高確率で地獄コース一直線……ッ! みこちゃんが先にあがりを取ったのは超絶リッキー☆ラッキー☆だけど、僕が負けた場合でも彼女に危害が加わる可能性大。この臭いの正体がわからない以上、余計な詮索も言動もひっじょーにリスキー……ッ‼ ならば、どうすればいい?此処はとりあえず勘に任せて決めるべきか? いいやでも多分こういう時焦らず慎重になるのが大事なんだろうけど今の僕にはその選択肢を選ぶ最早考える余裕もない。右か左か、あるいはその両方なのか。とにかく今は一刻も早く勝利して脱出すべきなのだう●この国へと帰還するために今待てう●この国って何だよキノの旅じゃあるめぇっし……

 ──ぬぇい!もういっそヤケクソだ! これでダメでも後悔しないぞぉ! そもそも我慢しすぎて限界突破しそうだし、こうなったら当たって砕けろだ! 畳みかけろ! アウディR8!! 勝負だぁーーッ!!)

 

 切羽詰まった状況下、頭の中で思考加速させながら高速で巡らせた結果。最終的に自分の選択に託し、迷うことなく右手を前に伸すが……

 

「んにゃあ!」

 

 勢い任せにカードを抜こうとした矢先、突如としてみこちゃんの膝の上で丸くなっていた筈の黒猫が鳴き声をあげてジャンプした事によって阻まれる。

 勝負に熱中していた事もあって不意を突かれた僕らは唖然と声を漏らし、意識の範囲外にいた乱入者を一斉に見合って困惑を露わにした。

 

「なっ⁉︎ な、なんだお前急に……ちょ、おまっ、爪立てんなッ!このレザー結構高いんだぞ!?」

 

 着地の衝撃で散らばったトランプが囲む猫ちゃんは、唖然としていた先輩に向かってダイレクトアタックを仕掛ける。

 襲撃を受けた先輩は慌てて振り払おうとするも、中々抵抗が強くどうにもうまく行かないようで。にゃーにゃー鳴きながら何食わぬ顔で身体を擦りつけたり、レザーコートに爪を立てながら甘噛みしたりと好き放題する黒猫の、あまりにも自由すぎる妨害行為に憤慨していた。

 それに対して僕は、まあまあ大きめな衝撃を受けた事で便意を一旦忘れ、彼らの奮闘と宥めようと……

 

「……ッ!! だ、ダメっ!離れて!」

 

「え……?」

 

 それよりも早くみこちゃんの声が上がり、一瞬そっちの方へ意識を向け。彼女の放った言葉が、僕ではなく彼らに──より具体的にいえば、黒猫の方へと注がれていた事を。

 すぐ側から絶え間無く充満していたコールタール臭が、先輩の下へと集まり始めたと同時に、理解した。

 

「だから……邪魔するなと……言ってるだろうがッ!

 

 そこから数秒後。先輩の怒号と共にコートに引っ付いていた黒猫が、首根っこを鷲掴む形で捕獲され宙づりになり。満月みたいな目を見開きながらジタバタと踠く暇もなく、教室の壁へ勢いよく放り投げられた。このままだと猫ちゃんが大なり小なり怪我を負うことは必須だろう。

 

「ぅおっと危なッ」

 

 まぁ当然そんな事案を見過ごす訳もなく。持ってたスペードのエースを咥え、危うく激突しそうになっていた猫ちゃんを抱き留めたが。物々しい雰囲気になった先輩はそのまま此方へと向き直り、ギリギリと歯ぎしりをしつつ血管が浮き上がるほどの憤怒を露わにする。

 

ッチ……ったくッ! 邪魔すんじゃねぇよ畜生が……!

 

 怒声を上げ黒猫を睨みながら舌打ちをする彼から漂う、凝縮された激臭に顔を顰めていたその時。猫ちゃんの口元から()()()()()、パラリと落ちるのが視界に入る。

 

「よ、洋太。その子、大丈夫……っ⁉︎」

 

「……にゃあっ」

 

「うん、大丈夫みたい」

 

 頬に雫を垂らしたみこちゃんが心配そうな面持ちで黒猫の安否を確かめんと駆け寄って来たので、元気そうな鳴き声を上げる猫ちゃんを預け。咥えてたトランプを手元へ持っていくと同時に、改めて席へ向かい先輩と向き合う。

 

「さて……中断して悪かったな、さっさと決着をつけようか」

 

「………そうですね。ちゃっちゃっと終わらせましょう」

 

 さっきよりかは薄らいでいるものの、依然として纏わりつく嫌な臭いを漂わせる先輩に内心辟易しながら。目の前に差し出された二枚のトランプに対抗して、此方も持っていたトランプを掲げ、そこに描かれている絵柄を見せつける様に机へ叩きつけた。

 

「……ッ!? そ、それは……っ」

 

「そういえば先輩。さっきチラッと見えたんですが、持ってたトランプが両方とも『ジョーカー』でしたよね? いくら僕でも、それを見逃すほど抜けているつもりはありませんよ」

 

「なっ。あ、が……ッ」

 

「ってコトで……ハートのエース、そしてスペードのエース。これで二番抜きですよ、先輩」

 

 元々持っていた一枚に加え、猫ちゃんが先輩と揉み合った際に持って来た一枚と合わせて出来上がった、エース同士で構成された二枚のトランプカード。

 余程腕に自信があったのか驚愕の色を浮かべて袖の中を弄る先輩と、黒猫を抱擁しながら安堵の微笑みを向けているみこちゃんを交互に見てから──緊張が解けた事で、さっきまで忘れていた便意が復活してきていた。

 

「……まさか、おれのトリックが見破られるとは……どうやら思ってた以上に、君を見くびってた様だ……」

 

「いや、普通に見えてましたよ。袖の中に隠してたカード」

 

「えっ」

 

(勝てた要因の大半が偶発的な部分に左右されていたものの)遊戯研究部のトップに君臨する人物。そんな相手との勝負を制してみせたことに若干興奮気味でありつつも、同時に猛烈な排泄欲に襲われていた僕は早々と切り上げるためにも話を区切ろうとしたが……

 

『キサマ まけたな?』

 

「……ッ!」

 

 先輩の背後から膨れ上がって漂って来た激臭。少し前にゲームをしていた二人組の男性らが負けた時と似た臭いが濃厚に香ってきており、みこちゃんもまた発生源らしき方向へ意識を向けて薄っすらと切羽詰まった表情を浮かべた。

 

『それじゃあ いただきます』

 

「あ、やば……んぐッ⁉︎」

 

 みこちゃんの顔から直感的に嫌な予感がして反射的に手を伸ばそうとしたが、下半身から伝わる圧迫感で身体が咄嗟に言うことを聞かず、足腰の踏ん張りが強張ってしまい……

 

「──いた!二人とも!」

 

 ガラッと戸が開く音がひとりの女子の声と共に轟き、やや薄暗かった教室内に新たな光源が入り込む。

 

『グルァアッ!』

 

 その瞬間、徹達と一緒にいた筈のユリア師匠の影から“野犬の臭いがするナニカ”が飛び出て来たと同時に、ぶっつりとコールタールの臭いが消え去った。

 

 

 卍 卍 卍

 

 

「はぁ〜い、それじゃあお大事にねぇ〜」

 

 養護教諭のお婆さんに「ありがとうございました」とお辞儀をした私は保健室を後にし、廊下で預かって貰った手提げ袋を足元に置いてたユリアちゃんと合流する。

 私の姿を認めると顔を上げ「えっと、どうだった?」と尋ねてきたので、腕の中で丸くなった状態のまま鳴き声を発する黒猫を軽く揺らしつつ「コレといった異常はないって」との旨を告げる。

 

「そういえばユリアちゃん、私達を探していたみたいだけど……何だったの?」

 

「ッ………えっと。じ、実は昭生先輩が、二人がかなりヤバイ状況に陥っているから手助けしに行って欲しい、って言ってたから急いでみこ達を探して……

それでさっきの教室から洋太の声とか聞こえたから、何かあったんじゃないかって慌てて飛び込んだんだけど……」

 

 安心したように息を吐き出したユリアちゃんは、気まずそうに俯きながら話し出したが。どうやら昭生さんから私達が陥っていた状況について聞いたらしく、ハナ達と別れて探しに来てくれていたみたいだ。

 そして案の定というか、あのヤバい奴は良くないものだったらしいが……

 

「まぁ来た時には既に終わったあとで。ワタシが居なくても大丈夫だったぽいし……洋太が急にお腹を押さえたと思ったら、ダッシュで何処か行った時は何事かと思ったけど……」

 

「そんな事ないよ!あの時ユリアちゃんが来てくれて、ほんとに良かったと思ってるから! ……あと洋太に関しては、大方トイレを我慢してたんじゃないかな」

 

「え……っ? あ、うん、そう……なんだ……?」

 

 な、何かしたっけ?といった具合にいまいちピンと来てないらしい彼女はどこか納得していない風に頭を傾げるも、それ以上はコレといった追求せずに別の話題へと移行していった。

 ……うん、確かに今の話し方だとユリアちゃんには何の事か分かんないよね。だって直接的に助けてくれたのは──

 

『グロロロォ……』

 

 現在私達の背後で唸りを上げてついて来ている、無数の目玉をギョロつかせる骨と犬を掛け合わせた様な化け物だったのだから。もちろんユリアちゃんは気付いていないし、私の方は多分今すごい死んだ目になっていると思う。

 こうなった流れを思い出すこと、今から数分前。遊戯研究部の部長さんがヤバそうな奴によって()()()をされかけた際、現れたユリアちゃんの影から飛び出してあっという間にヤバイ奴を叩き潰し、有無を言わす暇を与えぬまま喰ってくれた……それが“この存在”であったのだ。

 後ろの存在が何なのか、私には一切検討もつかない。だが仮にあの光景を素人目線で推測するとしたら、かつて邂逅した“ミセド横にいたヤバい奴”や“グァストのヤバい奴”みたいに、悪霊っぽい奴を回収?する役割を担う…系の類なのかもしれない。

 ……唸り声を轟かせながら自分達を追跡してくるので、尚更断言は出来ないけど。助けて貰ったのもあって──何でついて来てるの⁉︎ という至極当たり前の疑問に関しては、この際触れないでおこう。

 

「ところでこの袋、あの教室にいた人から貰ってたけど……何貰ったの?」

 

「……ゲームの景品にアナコンダ穴熊のグッズセットがあったから、洋太とそれにしようって」

 

「そこはネックレスじゃないんだな。まぁ君ら別にアベックってワケじゃないらしいが」

 

「うわっ⁉︎ あ、昭生さん……」

 

「……いつから居たんですか?」

 

「ついさっきだ。ひと仕事終えたところで彷徨ってたら、お前らの姿が見えてな」

 

 預かっていた手提げ袋を返して貰いながら交わした会話の最中、唐突ヌッと割って入り込んできた声掛けでビクリと肩を跳ね上がらせ。柱に寄りかかりながら此方を見据える声の主こと、昭生さんへ向けて一瞥する。

 

『グルァ……』

 

 すると長い尻尾をブンブン振っていた化け物は、瞳の中に昭生さんの姿を映ったのを認識するなり喉を唸らせ、私達を通り過ぎて彼へと近づいて行く。

 

「ようシリウス。その様子を見るに、お前の仕事は終えたみたいだな」

 

 だが昭生さんは迫り来るその巨体を目前にしても特に警戒する素振りを見せるでもなく、寧ろ慣れた感じで受け止めた。

 一方でシリウスと呼ばれた化け物は、彼の周りをグルグルと旋回しつつ何度も身体を擦り付け親愛の情を示すその様子は、大型犬のご機嫌伺いをしているかのようであった。

 当然私は、あんなに恐ろしく悍ましい見た目の化け物に対してああも堂々と接する姿に、ある種の尊敬が一周回って畏怖する想いで一杯になりながら見ていた。見えてないユリアちゃんからしたら何のこっちゃで、訳が分からないといった様子で首を傾げていたけど。

 

「……あぁ、そうだったな。今のは気にしないでくれ。昔からの付き合いのある友人と話してただけだ。それよりも災難だったな。会ったんだろ?黒くてデカいやつに」

 

「………えぇ、まぁ。でも洋太がいてくれたし、その……助けてくれたので…………あの、大丈夫ですか?」

 

「ははは、気にするな。ちょっとした戯れだ」

 

 化け物に頭から齧りつかれながら平然としている昭生さんの姿に心配を隠しきれず恐る恐る聞いてみるも。まるでペットに甘噛されて喜ぶ飼い主のような態度で平然と小さく笑って片手を挙げる彼の反応に、引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。

 

「──いや〜やばかったなぁ。まさかこの衣装の所為で、パンツを下ろす段階で苦戦する事になるとは……あ、みこちゃんみーっけ!」

 

 すると小言にも関わらず廊下に広く響き渡る声量に合わせて、昭生さんの上半身を飲み込んでいた化け物はピタリと動きを止めて目玉のみを声の方へと向けた。かと思えば、見るからに嫌悪感と拒否反応が混じった唸りを零し始め、咥えていた昭生さんから口を外して窓の下に出来ていた影の中へと潜り込んでいった。

 そんな事もつゆ知らず、バナナ柄のハンカチで手を拭っていた洋太は私達を見つけた途端、歩調を緩めることなく小走りで駆け寄ってくるのが見えた。当然、女装コスしたままだけど。

 

「あ、洋太。大丈夫だった?なんか景品貰った瞬間走り去ってたけど」

 

「でぇじょうぶだ問題ない。それで……

 

 

 さっきまでユリア師匠と、二人で何の話してたん?」

 

 

 笑顔でそう言い放つ洋太は、その場で棒立ちしていた昭生さんを避ける素振りを見せぬまま、()()()()()()()()()()

 

「…………………え? は、えっ?」

 

「………ん?どないしたのみこちゃん。東堂の純愛ペンダントを目撃した真人みたいな顔して」

 

 そんな一連の流れを傍観していた私は、思わず呆気に取られて立ち尽くしてしまう。

 

「──最初にあった時、30年前の隕石による崩落事故で50人近くの生徒教員が亡くなったと話したよな?』

 

 だって、今見た目の前で起こった光景が間違いじゃなければ。

 見えざる存在を知覚出来ない洋太の反応から察するならば。

 いまコイツの背後にいる昭生さんは恐らく……

 

『オレも、犠牲なった生徒のひとりだった。それだけの話だ』

 

 生きた人間では無いということに、なってしまうから。

 

『ふふっ、最初に言ったはずだろ? キミはもう少し、ヒトを疑う事を知った方が良い。

死者と生者との区別が難しいならば、特にな』

 

 昭生さんは悪戯気に笑いながら片目を瞑り指摘し終えた後。「それじゃあ、残りの文化祭も楽しんでくれ」と言い残すと、煙のように忽然と消えてしまった。

 

「え、なに、どしたの? 誰かいるの?なんか古い感じの匂いがしてるけど、それと関係あんの?」

 

「………ユリアちゃん。あまり驚いてなかったけど……もしかして、知ってた?」

 

「…………うん。あそこに来る前、昭生会長が他の人にすり抜けられるの見てびっくりしてたから……」

 

「ねぇ二人とも、マジで誰の話してんの? 昭生会長って誰??僕、そんな人知らないんですけど???」

 

 あとに残ったのは、驚きのあまり言葉を紡げなかった私と未だに事態を飲み込めず頭上に疑問符を浮かべるばかりの洋太、ここまで特に驚いた様子を見せぬままこちらをチラチラと見やってるユリアちゃんだけが取り残されてた。

 

 

 

 

「……二暮堂さん、なんか遅くね? いや女子ってこんなもんだっけ?」

 

「何だろ、便秘かな? ……あっ、レックスゾンびーになった」

 

「お、ホントだ。咆哮で物件ぶっ飛ばしたり、ウ●コの化石で道塞いだりするヤツ」

 

 一方。待ち惚けていた徹とハナは、イヤホンを互いに片耳へ着けた状態で『梨太郎電鉄』の実況動画を視聴していた。




●権藤昭生
実は過去に学校であった事故の影響で故人となった、昭和45年生まれの地縛霊。平成元年である1989年に卒業予定だったらしい。
地縛霊であるが故、学校の敷地内でしか姿を保てない。だが他の地縛霊とは違い、生前の生真面目な性格、そして怨念や強い欲が無いのも相まって、生前の自我を強く保つ事が出来ている。その代わり霊的なエネルギーが弱い為に、他者へ干渉を与える力も弱い。
映画の世界線だと、過去に男子校があった場所で発生した崩落事故によって、他の生徒や文化祭参加者諸共地縛霊になったが。この世界線だと、突如降ってきた隕石によって何人もの生徒教員と共にお釈迦となった……という独自設定&裏設定が加えられた。

●特級怪異『ケイビイン』
身体の至る所に目玉が無数についた、黒いドーベルマンの姿をした異形の化け物。昭生カイチョーからは『シリウス』という渾名で呼ばれている。
男子校内を見廻り、学校外からやって来た怪異や悪霊と化した地縛霊の生徒を喰らう、電車のアシュラマン系ヤバい奴やグァストの悪魔系ヤバい奴と類似した存在。ブラックサバスのように影の中へ潜って移動したりもでき、その間は限り無いレベルで気配を断つごとが出来る。
モデルは『ワンパンマン』の“育ち過ぎたポチ”と、『ナイトミュージアム』のティラノサウルス骨格。ハガレンのプライドとロボトミーの大鳥にある“目がいっぱい”要素も含まれてる。

●遊戯研究部を巣食っていたヤバい奴
緑色の炎を燃やす黒い人型ロウソクみたいな姿をした異形の人外。特級怪異で、外観モチーフにインクベンティ要素も取りれている。
ジョジョ三部のダービー兄弟みたいに、勝負に負けた人間の心の臓部分に手を突っ込み、そこに秘められている“ココロ”の一部を分捕って喰らう。“ココロ”を奪われた人間は所謂『心が欠けた』状態になってしまい、それによって性格に差異が出てしまう事がある。
また作中では会場として(勝手に)使用していた教室全体に強力な結界を張り、部外者の侵入を拒むと共に、結界内で参加者名簿に名前を記入した霊能者の力を制限・抑圧させていた。ただし馬鹿猿の三守神の力を制限・抑圧するのに予想以上のリソースを使った為、ユリアに開けて貰った扉からケイビインことシリウスがゴリ押しで侵入できるくらいには結界の強度が下がっていたらしい。

●猛戦郷潔
遊戯研究部の部長さんで、遊戯王の愛読者でのある。デュエルスタンバイ!
実は彼が入部する10年前。当時の部長が暇潰しでネットに書いてあった悪魔召喚儀式を試してみたのだが、その際に中途半端な知識と適当な手順で儀式を進めた弊害で、遊戯研究部員達に取り憑いて禍を振り撒くだけだけの、正に“百害あって一利なし”な存在が出現していた。
ちなみこの後、勝手に空き教室を使っていた事が風紀委員会にバレて、遊戯研究部員総員で反省文を書く羽目になった。
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