紫藤流星は"勇者"になる。   作:やままん

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かつての誇りと矜持を取り戻した少女。

武器を手に、"理不尽"に立ち向かう。

例え、敵わなくとも……立ち向かうことに、意味があるのだから。


第19話 誇りと矜持。

新生大赦から送られて来た緊急連絡。

その内容は…。

 

ー愛媛近郊に、邪神教団"十二星座の使徒"の一柱「射手座」の目撃情報有り。愛媛へ追悼に向かった楠芽吹・紫藤流星の両名は至急、向かわれたしー

 

…そう、書かれていた。

 

「射手座」…再び、奴が現れた。一体、何のつもりでここに来たのか不明だが、奴らが動くとなるとロクでもないことの前兆とも言える。

ましてや、ここには亜耶も居る。"神託"を受けた巫女と言うことも奴らには既に露見しているだろう。そして、この地を再び奴らの好き勝手にはさせない。そう思いながら、玲司と亜耶と合流した2人。玲司と亜耶もまた、新生大赦から連絡を受けていた。

 

亜耶「芽吹先輩、良かった…えと…緊急連絡が…!。」

 

芽吹「ええ、わかってるわ!。ここに戻りながら、内容を確認した!。奴が…「射手座」がこっちに向かってるようね…!。」

 

玲司は芽吹を見て、一声掛ける。

 

玲司「お前、やれんのか?。お前が力に固執しちまった原因が相手だぞ。ましてや、初めて接触した一柱だ。お前にとって、奴は因縁とも言える。今の状態でお前は…冷静でいられんのか?。」

 

その問いかけに、芽吹は……。

 

芽吹「やれるかは分かりません。今のままだと、力比べではきっと敵わない…それはやる前からわかってる事です。」

 

玲司「ならお前は…!。」

 

芽吹「だからと言って、彼1人に任せるのも違うと思います。私は防人の隊長…彼らを"守る"義務があります。」

 

その"目"を見た玲司。

先ほどの、"迷い"が全く無い…普段の彼女そのものであったことに。

 

玲司「そっか……吹っ切れたようだな?。どうやら、その坊主に自分の本当の強さを思い出させてもらったんだな。」

 

その言葉に、芽吹は少し顔を赤くしながら。

 

芽吹「……ええ、"弱い"私を受け入れてくれました。だから今は、あの「強化型」に拘りません。私の誇りと矜持…これを以て、奴を撃退します。行くわよ、"流星"!!。」

 

流星「はいっ!。国土さん、久遠さんと一緒に避難しててくれ。この街には近づかさせないから…!!。」

 

変身し、2人は街の外へと向かっていく。

 

玲司「は…いつの間にか名前で呼びやがって。心を許したようだな、さて巫女ちゃん。非戦闘者は足を引っ張らねェように遠くに避難してるぞ?。」

 

亜耶「はい…どうかお二人が無事に帰って来ますように……。」

 

手を合わせ、祈りを捧げる亜耶。ほんの一瞬だが、身体が淡い緑色に"光った"気がした。

 

玲司(………お前の努力は無駄にはならねェぜ?。その目を見せてくれたなら、俺も少しは"無茶"が出来るってもんだ。はぁ…こりゃ、減給は免れねェか。)

 

玲司の持つ端末……そこには「あるもの」が表示されていた。

 

…………………………………。

 

県境…そこの上空には「射手座」が高速道路を飛び交いながら愛媛へと向かっていた。

 

サジタリウス(…"神託"を受けた少女…奴こそが、"邪神様"の降臨に必要なピースだ。必ず確保を………。)

 

仮面の下で企む「射手座」。だがその時、"攻撃"を察知し咄嗟に身体を捻らせる。

通り抜ける弾丸…目の前には芽吹と流星が居た。

 

サジタリウス「…貴様達は…そうか、新生大赦も無能では無い…ということだな。」

 

芽吹「はあああああっ!!。」

 

銃剣を構えて突撃。一気に接近して距離を詰め、そのまま「射手座」もろとも高架に激突する。

 

サジタリウス「楠芽吹…性懲りも無く、また邪魔をするか!。」

 

芽吹「ええ…"凡人"らしく、泥臭くね…けど、お前の目論見通りにはならない!私達がここにいる限りっ!。」

 

立ち込める土煙の中、互いの「得物」がその身体を射程に捉える。

 

流星「「射手座」…!!。」

 

サジタリウス「しばらく見ない内に逞しい顔になったものだな、"血"を知った顔をしているぞ?。」

 

流星「なんとでも言え、お前達を止められるなら多少の"理不尽"なんてどうとでもなるっ!。」

 

サジタリウス「立派な事だ。「水瓶座」が言った通り、正義感を振り翳す物言いだな。」

 

芽吹「御託は良いわ、"十二星座の使徒"「射手座」。お前を拘束し、話を聞かせてもらう!。」

 

サジタリウス「この私を捕らえると?。はは…笑えん冗談だな?。そう言うのは…!。」

 

まるで消えるような速さ。対応が遅れた芽吹は辺りを見渡す。

 

サジタリウス「我らを超えてから言うのだなっ!!。」

 

背後に回り込んで銃を突きつける射手座。だが、まるで"分かって"いたかのように流星がトンファーを構えて眼前に居た。

 

サジタリウス「!!?。」

 

流星「うおおおおおお!!。」

 

その攻撃は当たりはしなかったものの、"完璧"に捉えたはずの攻撃の無力化に成功する。

仮面の下で舌打ちする「射手座」は、一旦距離を取って離れた。

 

サジタリウス(…"人の悪意"を感じ取れる超感覚…戦闘に表れるほど、研ぎ澄まされているか…それを、無意識では無く完全に分かりきって利用している…なるほどな、これは骨が折れる…。)

 

芽吹「流石ね、その感覚…とても便利だわ。」

 

流星「正直、要りませんけどね……知りたくもない"人の悪意"すらも分かってしまうので…!。」

 

サジタリウス「…やはり、人は"進化"の兆候を見せているか。この世界に未だ、神樹の影響が残っているのは本当だったようだ。」

 

芽吹「以前、お前達は邪神を呼んでこの世界が再び"過ち"を犯した時に現れる"天の神"を迎え討つと言っていたわね。それは、"人"の為にそうするの…!?。」

 

その質問に、「射手座」は鼻で笑う。

 

サジタリウス「何を言うかと思えば…違うな。過ちを犯す人間は愚かで低能だ。そんな者を擁護するために苦労していてはそれこそまさに"勇者"そのものだろう?。奴らは愚かだな…優れた力を持ちながら、無能共を守るためだけに使う。宝の持ち腐れというやつだ、神の力の一端を手にしたんだ、それはまさしく優れた人種…この先、必要な"正しい判断を下せる人類"に昇華出来るチャンスだと言うのに…わざわざ、退化する道を選ぶとは…。」

 

その瞬間、「射手座」の髪に弾丸が通り抜ける。撃ち抜かれた髪は地面にヒラリと落ちて。

 

芽吹「聞いた私がバカだったわ。つまり、お前達も"天の神"と同じで人を見下した存在…「自分達が優れているから弱者を淘汰出来る権利」を持っていると勘違いしている大馬鹿者よ。教えてあげるわ…神如きが人間を好き勝手にしていいはずがない…優れた者が劣等者を裁く権利なんて…誰にも無いっ!!。」

 

芽吹は再度飛び出し、近接戦闘に入る。射撃戦では奴に軍配が上がるだろう…奴の長所を潰してその"距離"を出させないようにすれば、僅かながら勝率が上がるはず…それに、自分は"元々"その方が真価を発揮できる。

努力して来た数は誰よりも多い…それは、あの無茶な鍛錬でもそうだった。この強者達に勝つために……その一心で鍛錬を積んできた。

 

それがようやく、実を結ぶ。

 

芽吹「はああああ!!。」

 

銃剣を突き立てて、「射手座」の距離を詰め続ける。その一撃が仮面を掠り、頬を切り裂く。

 

そしてその仮面が…落ちた…素顔を晒す「射手座」。

その素顔に、芽吹は……驚愕した…ーーー。

 

芽吹「なっ…貴女……"東郷美森"っ!!?。」

 

東郷美森。

"勇者"の1人であり、「最強」と言われた乃木園子とかつて肩を並べた"勇者"…その彼女とこの「射手座」は"同じ"顔をしていた。

だがその目付きはまるで違い、見るものを戦慄させるほどにまで鋭い目付き…そして"何かが"決定的に違った。

 

流星「…違う……。」

 

芽吹「…え……?。」

 

流星「俺、卒業式の時にしか見たことがありませんがコイツはあの人とは違いますっ!!。雰囲気がまるで違う…あんたは一体、"誰"だっ!?。」

 

流星があげたその声に、「射手座」は不敵な笑みを浮かべる。

 

サジタリウス「ククク…ハハハ…アーッハッハッハ!!。滑稽だな、私の素顔を見たときのお前達の驚く顔っ!。そうさ、私は"東郷美森"ではない…私は…その複製人間だ。」

 

芽吹(…複製人間…"クローン"ということか…待て、そんな技術…あり得ない……!。)

 

サジタリウス「もう素顔を見られたんだ、今更コソコソするのもな…前に説明したと思うが、"バーテックス因子"はその幼体である"星屑"のサンプルを利用して作り出したもの…それに適合した結果、邪教徒は人外の力を得た。これは、我々でいう"信仰心"だ。悪魔に魂を売るのだ…邪神様への信仰心が足りなければ当然、その身は滅ぶ事になる。そして、それを更に飛躍させたものが"ゾディアック・バーテックス因子"…私達"十二星座の使徒"が持つもの…そう、それらは全て"錬金術"を応用して作り出したものだ。」

 

芽吹「錬金術ですって!?。旧世紀の禁術の確立方法なんて誰も知らないでしょう!?。あれは神を冒涜するものよ、"本来の使い方"を捻じ曲げて"人の創造"を……はっ…まさか……っ!!。」

 

サジタリウス「そうさ、私はその成功体……そして先日、この愛媛を襲った"人造バーテックス"もその産物…我々、いや…"大司教様"は旧世紀古代の失われた禁術を現代に復元させることに成功したのだ…日本各地の土地神の集合体である"神樹"が消え、"天の神"は「高天原」へと帰って行った……そして、かの西暦の終焉から日本古来の"八百万の神々"もまた、姿を消している…そう、この世界は本当に神が居ないのだ。ただ1人、"天の神"を除いてな。」

 

流星「その"大司教"という奴が旧世紀の禁術の理論を復活させたなら、なんで「水瓶座」があの人造バーテックスを作り出せるっ!?。」

 

サジタリウス「…フン、その奥義は「水瓶座」を中心とした者達に伝授されている。元々、奴は大赦関連の研究者だった…詳しくは知らないが、"勇者システム"についてもそこそこの知識を持っていたようだな。それにより、我々は力をつけている…そう、全てはあの絶対的な力を持つ"天の神"を殺すために。」

 

芽吹「…そんな秘匿中の秘匿、どうして話す気になったのかしら…。」

 

サジタリウス「ああ…もう、隠す必要がないからだ。我々の計画は次の段階へと進んでいる……それはもうお前達も分かっているだろう?そう…全面戦争さ。」

 

…遂にその牙を完全に向けて来た…"巫女狩り"の次は、新生大赦を潰しに来たか。流星はそう思う。

 

サジタリウス「新生大赦も遅かれ早かれ、我々の事について調べ上げるだろう。秘匿事項というものは、守りきれないもの…なら、こちらから手の内を明かしてやればいい。明かしたところで、驚く必要もあるまい…準備は着実に進んでいるのだから。さぁ、御託はもう良い。腹の内を探られ、答えるのも面倒だからこうして語ってやったのだ。ここからは純粋な殺し合いさ。」

 

落ちたライフルを拾い上げ、ゆっくりと歩み寄るサジタリウス。あの東郷美森の複製人間だ…銃の腕前についてはこれで納得がいった。そう…自分達はまさしく"勇者"を相手にしているようなものだ。しかし、芽吹はそれ以上に許せないものがあった…それは、彼女達の"誇りと矜持"が汚された事だ。

 

芽吹「他に複製人間がいないかどうかを確かめたいところだけど…お前が"造られた人間"だというのなら、それはまさしく神への叛逆…敵対の意志がハッキリと分かるのは助かるわ…でも…!!。」

 

芽吹は地面を蹴って飛び出し、一気に接近。その瞳には強い怒りを宿していた。

 

芽吹「その顔で"人に仇なす"事が何よりも気に食わないっ!。私達がお前を倒して、彼女達の名誉を守らせてもらうわッッ!。」

 

……………………………end。




"勇者"の少女と同じ顔をした「射手座」。

その影響力を利用してか、これは心理的にも優位に立てる手法でもある。

しかし、"勇者"になれなかった少女は立ち向かう。
全ては…彼女達の名誉を守るために。そしてそれは、"力"となる。

次回
第20話 憧れから守護へ。
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