紫藤流星は"勇者"になる。   作:やままん

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…まさか、このようなことになるなんて…ーーー。

今までは何とかなると思ってた…けど…これが………。

"現実"なんだ…ーーー。


第22話 "運命"ー後ー。

峻輝「えっと…後、2週間後……"6月17日"だ!!。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。

 

それを聞いた瞬間、息が詰まりそうになった。どうして、その日なんだ……と。

久遠さんが言っていた「"神託"は必ず起こりうる事象」…その言葉を受けて、俺は何とかしないといけないと思っていた。けど、それはまさに最悪を意味する……どうして、"6月17日"なんだ…と。

 

……峻輝から、それを聞いて数日が経過した。時間は止まらない…刻一刻と、迫ってきている…そして俺は、次第に焦りを募らせる。なんとかして、試合の日を引き延ばせないだろうか…いや、無理だ。何の変哲もないただの中学生に何ができる…新生大赦に頼んでみるか?いや…これはもう、"逃れられない運命"なのだろう……。

 

「"神託"は必ず起こりうる事象」。

 

その言葉がずっと、頭の中でループしている。どうやったら、親友の晴れ舞台を守れるのか…俺に何ができるのか…そもそも、誰がどの規模でやってくるかもわからない…この間、現れた「獅子座」がやってきたりでもしたら…そんな"恐怖"すらも考えてしまう。分かっているのは、「3人」と多数の異形…それも恐らく、"人造バーテックス"だろう。

 

そんなことを毎日考えてはその「起こりうる最悪の事象」をどう回避するか…どうしようもないような事を覆したい気持ちでいっぱいになる。

 

亜耶「紫藤君?。」

 

亜耶はここ最近、ずっと怖い顔をしている流星が気になって声をかけた。当然、"6月17日"の事は防人メンバーにも周知済だ。彼女も知っている。

 

流星「……分からないんだ。どうすれば、あの"神託"を回避出来るのかが……。」

 

亜耶「紫藤君、"神託"は……。」

 

流星「わかってる!!回避は…出来ないんだろう?頑張れば、救える命が多くなるのは良いことだ…でも、アイツの晴れ舞台はもう帰ってこない…それが嫌なんだ…何も知らないアイツが、その為にずっと頑張ってるっていうのに…!。」

 

しずく「…紫藤、落ち着いて。」

 

やってきたしずくが、お茶を持ってくる。

 

流星「……すみません…。」

 

雀「で…でもでも…その"神託"ってヤバイってことなんだよね…?。」

 

夕海子「雀さん、彼の前でそんなことを言ってはいけませんわ。一番、気にしているのは……。」

 

雀「あ…ごめん…。」

 

流星「いえ……そう…ですよね…人命が優先だ……だから…。」

 

玲司「ちっ……あの堅物共が…!!。」

 

苛立ちながら、防人寮に帰ってきた玲司は椅子に座って頭を搔きむしる。

 

雀「ど…どうしたんですかぁ~…?。」

 

玲司「……"神託"の日、本殿の神官達は高知の支部に全員避難するんだとさ。つまり、ここ讃州市を守るのはお前たち、防人だけになる…本殿の陥落を避けたい気持ちは分かるけどよ…俺はお前らの"お目付け役"だ。あんな奴らのように尻尾を巻いて逃げるつもりなんてねェ。」

 

芽吹「…いいです、元々そのつもりでしたから。それに、私たちが守るのは本殿の神官達じゃない…ここに住まう全ての人々です。」

 

亜耶「芽吹先輩……。」

 

芽吹「亜耶ちゃん、貴女も本殿の神官達と一緒に…。」

 

亜耶「いえ、私も見届けます。"神託"を受けた身として、その現実から逃げるわけにはいきません。」

 

並みならぬ信念を込めた瞳…他の者は異を唱えられなかった。

そしてそれは、流星も。

 

流星(…そうだ…みんな、向き合っている…なら、俺は……。)

 

………時は経ち、"6月17日"。

 

讃州市では、サッカーの県大会予選が予定通り開かれる。

そして、"神託"に備え、流星を除く防人たちは、有事に備えて変身を済ませていた。

 

その数、総勢32名。全戦力が投入され、讃州市の至るどころに警戒網を敷く。

どこから来るか分からない…緊張感を張り巡らせる。

 

そして、流星は峻輝の居る試合会場にいた。

 

流星「峻輝。」

 

峻輝「おお、流星!来てくれたか!!。」

 

流星「ああ、約束だろ?。」

 

そう言って、流星は峻輝の肩に手を置く。

 

峻輝「お、お?どうした?。」

 

流星「峻輝、あのな……。」

 

…言おうとした。"神託"の事を。そして…"それから起こる事象"の事を。

でも……言えなかった。峻輝はこの試合でこれまでのサッカー人生の全てを賭けている。"それ"を言うことは、人生を賭けたこの瞬間を壊してしまうことになる。でも、避けられない事実…それは必ずやってくる。

……そう、あれから全員の意気込みを聞いて考えたが、最後まで踏ん切りがつかなかったのだ。今日という日がやってくるまで。

 

ずっと、葛藤と戦っていた。どうすればと、何通りもの考えを巡らせたが何も思いつかない。そして……。

 

流星「……頑張れよ?。後悔の無いようにな…?。」

 

峻輝「は…見とけよ?。でっかい花火、見せてやるからよ!。」

 

そう言って、スタジアムの中に消えていった。小さくなるその背中を見て、流星は……拳を震わせて、"泣いた"。

 

流星(ごめん、峻輝…本当にごめん……でも……せめて、お前の命くらいは……!。)

 

……それから、ボンヤリと試合を見ていた流星。試合の流れは讃州中学がリードしていた。

応援団として、"勇者部"も駆けつけている…近くに樹の姿が見えた。

 

…いつ、来るのか……いや、もしかしたら、このまま……。

そんな、現実逃避した薄い期待を込めて考えていた。そして、試合の流れを固くするそのボールは峻輝に回ってきて。

 

峻輝(…よし、このままシュートを決めたら確実に……!。)

 

相手選手をを悉く抜いていき、ゴールの手前まで一直線に躍り出た。

会場がざわつく、相手側の学校もその前向きなプレイに息を飲む。

勢いよく蹴られたボールは、軌跡を描くように一直線に向かっていく。誰もが、ゴールに入ったと思ったその時……。

 

流星「!!!。この感覚……!!。」

 

凍り付くような感覚…一瞬だけ、周辺の時が"止まった"かのように感じた。次の刹那、峻輝の放ったボールが"爆発"。キーパーの少年はその勢いで吹き飛ばされてしまう。

 

峻輝「な…なんだ……!?。」

 

……………………………。

 

防人全員の端末から「警報」が鳴り響く。この「警報」は“人造バーテックス"が現れる際に歪む空間を感知して鳴るシステムであり、これが鳴るということは"敵"が現れた証拠…そう…"神託"の内容通りの事態へと発展してしまったと言うことだ。そして、その場所は中学サッカー部の試合会場…そう、流星と峻輝の居る場所だった。

 

芽吹「!!。しまった、アテが外れたッ!!?。」

 

雀「…あわわわわ…み…見て……!!。」

 

雀が指を指す方向…空には巨大な異形が現れる。

 

美咲「…”人造バーテックス"っっ!!。」

 

シズク「この間のとは違うタイプだぞッッ!?。」

 

芽吹は防人全員に通達しようとする。だがしかし、そこへ赤色の振り子を首から翳した"人造バーテックス"が5体も落ちて来た。

 

雀「ぎぇええええ!!ご…五体!?。」

 

そこまで巨大ではないが、見たことのないタイプに加えて"オリジナル"により近い"種"が現れる。見た目はまさに拷問器具…腕と思わしき箇所からも小型の振り子が見えてくる。そして、その傍には「水瓶座」が立っていた。

 

アクエリアス「ククク…どうやら、僕達の動きを予期していたようだけど…最早,そこは問題ではない。さて…この"アルタイル・バーテックス"の実験相手になってもらおうかな?。」

 

芽吹(っ……流星……!!。)

 

………………………………。

 

試合会場は一気に、人々の阿鼻叫喚がこだまする。空に現れたあの異形からは無数の触手が放たれ、会場の人々に突き刺さる。それはまるで、生気を吸い取ってるかのようで、吸われた人々は次々と灰へと変わっていく地獄のような光景へと変貌していく。

 

峻輝「な…なんなんだよこれ…。」

 

目の前の現実を飲み込めない峻輝。その時、峻輝にもその"触手"が迫り来る。

 

峻輝「な……!?。」

 

「うおおおおおおおお!!。」

 

峻輝の目の前に、変身した流星が現れてはその触手をトンファーで弾き飛ばした。そして、ある程度の人々を避難させた樹もやってくる。

 

峻輝「流…星……?。なんだ…その姿は……?。」

 

流星「…ごめん。ずっと、秘密にしていたんだ……俺、"防人"なんだ。」

 

峻輝「は…"防人"?。お前、何言って……!。」

 

流星「…邪神教団…いや、人に仇成す奴らと戦う戦士の事だ。逃げてくれ峻輝…コイツは俺がなんとかする…!。」

 

峻輝「バカ言うんじゃねェよっ!。お前も見たろ、あの触手に刺さった人達が灰にされちまったのを!お前、あんなのを食らったら…!!。」

 

流星「いいから早くっ!。お前を死なせたくないっ!!。犬吠埼さん、峻輝を頼むっ!!。」

 

樹「わかった!。その…紫藤君、死んじゃダメだよ!?。」

 

流星「ああ…俺は…死なない…!!。」

 

峻輝「流星ェエエエエ!!。」

 

樹によって峻輝は会場の外へと連れ出されていく。そして、流星は覚悟を決めた。

 

流星(俺1人で何とかなるとは思えない…それに、この一瞬で何人もの人達が次々と殺されてしまってる……もしかしたら、俺も…でも……。)

 

どんどん姿が遠のいていく峻輝を見る流星。自然と、トンファーを握る手が強くなる。

 

流星(…親友を守るためなら……怖くない…!。)

 

意を決して突っ込む流星。だがその時、左右に気配を感じた。

その数、2人…。

 

「あらあら、まさかの"異例"の貴方1人なんてね?。」

 

「……そのまま、排除する。」

 

男と女の声…そして、流星はそのまま元いた位置まで吹き飛ばされてしまった。

 

流星「ぐああああッッ!?。」

 

吹き飛ばされる直前、その2人の仮面を見る。「乙女座」と「牡牛座」のマーク…"十二星座の使徒"が2人もここに現れて。

 

ヴァルゴ「初めまして坊や。私は"ヴァルゴ"。そして、彼が……。」

 

タウラス「"タウラス"だ。死ぬ前に覚えておけ。」

 

流星(ヴァルゴとタウラス…「乙女座」と「牡牛座」…2人もここに来るなんて……。)

 

頭から流れ落ちる血を拭い、弱々しく立ち上がる流星。呼吸が乱れ、状況を見る。

謎の異形に「乙女座」と「牡牛座」…最悪の組み合わせだ。勝ち筋なんてまるでない…いや、与えられてすらいない。

この絶望的な状況から、生還出来る道筋が見つからない。だが、それでも流星は戦う事を止めようとは思わなかった。

 

ここで踏ん張れば、芽吹達が来るかもしれない…それに、助かる命もあるかもしれない。何より、親友が助かればそれでいい…そう思って、立ち上がる。

 

ヴァルゴ「あらあら…この状況を打開する算段なんてありはしないわ。貴方はここで死ぬの、残念ね。」

 

流星「…それでも…俺は逃げない…っ!!。」

 

敵うはずもない、逃げた方がマジだ…そんな思考が巡るのが当たり前のこの状況に、流星は戦う事を選択した。

 

流星「ここで死のうとも…友達を助けるためなら……!!。」

 

その瞬間、流星の「加護ゲージ」が一気に輝き出す。

 

流星「な……なんだこれ……。」

 

ゲージが振り切れるほどに膨大なエネルギーが自身を包み込む。そして、端末には「限定解除」と書かれていた。

 

…何か、ヤバい気がする…だけど、手段を選んでいる暇は無い。

流星は引き込まれるようにその画面に触れる。

そして…画面が切り替わって。ただ一文字……こう、書かれていた。

 

"擬似・満開"………と…ーーー。

 

………………………………end。




"満開"…それは、大輪の花を咲かせる。
しかしそれは、後に散ることを意味するもの…。

かつての"勇者"達は"散華"により苦しみを与えられた。

だが、この少年の纏う"擬似勇者"の花は"人の思惑"に満ちていた。

それは……"破壊"の"満開"だった…ーーーー。

次回
第23話 破壊する者。
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