紫藤流星は"勇者"になる。   作:やままん

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花開く時、それは生命の力を意味する。
しかし、その先に待つものは燃え尽きた意思…散っていく花々。

"人が造りしこの花"は、"思惑"の塊だった。

そしてそれは……"人"を超えて"破壊"を行うもの…ーーー。


第23話 破壊する者。

「加護ゲージ」の異常な反応。そして、端末に現れた「限定解除」の文字。

最早、考えている暇なんて無かった。コレが何なのかは分からない。きっと、園子が言っていた「人の思惑で作られたコレの"理不尽"な機能」というのはこの事なのかもしれない。

 

だが…今のままではきっと嬲り殺しだ。芽吹達が来るまで保たない。

なら……"使おう"。この…"理不尽"な力を。

 

だが、この異様な力を感じ取った「牡牛座」が斧を手に走ってくる。

 

タウラス「その力を使わせる訳にはいかん!。ここで始末する!!。」

 

流星「来る…!?。っ…うおおおおおお!!。

 

切り替わった「擬似・満開」と書かれた画面をタッチ。その瞬間、花の嵐が吹き荒れて。

 

流星「…満開……!!。」

 

その姿を変える。

全身の装束から赤いラインが所々に入り、無骨な元のデザインはより鋭利なものに。まさに、もう1段階の「変身」。

 

トンファーも形を変え、開いたと同時に霊的エネルギーの刃が形成。背中には光輪を模したような輪を背負っていた。

 

ヴァルゴ「…"満開"ですって…!?。」

 

流星(擬似満開)「どけぇえええええ!!。」

 

エネルギー刃を形成したトンファーを振り翳す。

「牡牛座」は咄嗟に回避するが、その威力は凄まじく地面に刀傷が入る。

 

流星「はぁ…はぁ…はぁ……!!。」

 

流星(っ……頭の中でずっと"声"がする……"壊せ"…なんだ、この感情は…!。)

 

"擬似満開"の状態になった途端、流星の脳裏には様々な"声"が響く。

 

"壊せ"…"取り戻せ"…と言った、まるで"邪念"のようなものが。

長くは危険だ…そう判断するも、身体が勝手に攻撃を振り続ける。その"意思"に従うように。

 

ヴァルゴ「あの新型…やはり、"勇者システム"を模したものだったのね…。」

 

タウラス「危険度は「大」だ。最優先で撃破する。」

 

再度、突進を仕掛けてくる「牡牛座」。流星もまた、前に出てその斧とぶつかり合う。力は五分…流星は歯を食いしばる。

 

流星「ぐっ…うぅう……!!。」

 

タウラス「そのまま切り裂いて……!!。」

 

流星「うおおおおおお!!。」

 

タウラス「なんと…!?。」

 

赤いラインが強く輝くと、流星は強引にトンファーを振り抜いて「牡牛座」を弾き飛ばした。

 

流星「でえええええいッッ!!。」

 

左手のトンファーを突き付ける。そのエネルギー状の刃が「牡牛座」の右肩に深々と突き刺さった。

 

ヴァルゴ「どうやら付け焼き刃というわけではなさそうね…!!。」

 

流星「っ…うぅううう!?。」

 

迫り来る「乙女座」。彼女の持つ得物は剣だった。対応するも、流星の動きがおかしい。

 

流星(…くっ…頭が……!!。)

 

絶え間なく鳴り響く"声"に流星は一瞬、動きを止めてしまった。

そして、その間合いに入られる。逆袈裟に振られた剣は流星の身体を切り裂いた。

 

流星「がは…ッッ!?。」

 

斬られた箇所から灼熱感が襲う。がっつりと斬られたにも関わらず、痛みのみで傷は深くない。

 

ヴァルゴ「精霊バリア!?。こんなにも強固なものに!?。」

 

流星「はな…れろぉおおおお!!。」

 

手を開くと、目に見えない衝撃波を放って「乙女座」を吹き飛ばした。

絶大な力。"十二星座の使徒"を2人も相手にしてもなお、喰らいつけている。しかし、感じるのはこの力に対する"疑問"。

こんなにも強大な力を使うのだ、"何も無い"訳がない。それに、頭の中に響く"声"。その声から感じ取れるのは…"悪意"だった。

きっと、これを作った旧体制派の人間達の思惑がダイレクトに伝わっているのだろう。"人の世"を認めたくないその気持ちがこの声の"正体"なのかもしれない。

 

…本当に、これを使って良かったのか?。そんな後悔が今更、襲い掛かる。

 

少しすると、「乙女座」と「牡牛座」がゆっくりと立ち上がる。そこまで大したダメージは与えられなかったのだろう。

 

ヴァルゴ「…神の力を模した偽物の"満開"…フフ、その力そのものが神への冒涜ね…!。」

 

流星「何が…言いたい…!?。」

 

タウラス「それは"勇者"が使う神の力の一端…故に、神の力そのものだ。しかし、貴様の咲かせたその"花"は人の身でありながら、神の力を模した愚かな力だ。それが生むのは最早、"破壊"でしかない。」

 

流星「…破壊の力…それが…この"擬似・満開"?。」

 

自分の手のひらを見る流星。湧き上がる感情はただ、目の前の"人"を倒したいという感情だった。

…こんなはずじゃない、自分がこの力を手にした理由は決して"人"を傷付る為じゃない。怒りに呑まれそうになる。

 

流星(…元々、芽吹さんに渡るはずだったものだ…かつて、あの人が"勇者"に選ばれなかった"怒り"を増幅させるものなのかもしれない………その"怒り"の感情をトリガーに、この力はどんどん増加する…そうだ、俺も怒りに呑まれそうになった…この"花"は危険だ…"人"を強制的に"勇者"にする為のシステム…なんとなく、理解は出来た…………でも、今は…!!。)

 

流星は一歩、踏み出す。そして、その視線の先は…空に浮かぶあの"異形"。

 

流星「…あの異形を止めれば…!。」

 

タウラス「させん!!。」

 

跳躍した流星と競り合う「牡牛座」。2人は睨み合う。

 

流星「あの異形は一体、何なんだ!?。どうして、人が灰になる!?何をしているんだ、お前達は!!。」

 

タウラス「良かろう、教えてやる!!。あれは「貯蔵庫」。人の持つ生体エネルギーを保存するものだ!。」

 

競り合いの間に蹴りを入れられ、流星は墜落する。

 

流星「ぐうう!?。」

 

タウラス「"巫女狩り"だけではエネルギーが足りないのだ。そう、邪神様の降臨の儀に使うエネルギーがな!。」

 

流星「…その為に、この街の人たちを手にかけたのか……親友の…大切な大会を傷付けたのか…?。」

 

土を握り締める流星。そこに湧き上がるのはやはり…"怒り"だった。

そして、赤いラインがより煌々と輝く。

 

流星「ふざけるなよ!!何が"邪神降臨の儀"だ!何が"巫女狩り"だっ!!。そんな事の為に…一人の人生を賭けたこの大事な場面を崩したと言うのか!?。許せない…あんた達は絶対に…許さないッッ!。」

 

怒りに呼応するかのように、流星は立ち上がって突き進む。そして、「牡牛座」の猛攻に付いていく。

 

流星「もう、何もかもが滅茶苦茶なんだ!。人がどんどん死んで…やっと、化け物が居なくなったと思ったら今度はあんた達のような狂った奴らが出てくる!!。こんなの、人のやることじゃない!!。」

 

タウラス「だからどうした、それが"人"なのだ!。欲望に忠実で、保身に入る愚かな種!!同じ過ちを繰り返すような劣等種はこの世に必要ない!!。」

 

流星「それは…傲慢だ!!。」

 

格闘戦の最中で蹴り上げ、追撃を加える流星。その圧倒的な戦闘能力に「牡牛座」は仮面の下で表情を歪ませる。これは、彼自身の戦闘能力ではない。完全にこの「疑似満開」による跳ね上がりだった。

吹き飛ばされながらも、「牡牛座」は感じ取る…「"暴走"に近いもの」…だと。

それは、本人の薄々と感じていた。身体が勝手に動く、意思に反して。だけど、自身の戦闘能力ではこれを以てしても、きっと敵わない。ならば、敵を倒すための"最適解"であるこのシステムに身を委ねるほうがいいのかもしれないと。

 

……"倒す"?自分は今…何を考えていたのか……今、頭を過ったその感覚はまさに人を"殺す"感覚だった。

待て、確かにこいつらの所業は許されるものではない…だからと言って、"殺す"必要があるのか?。俺達は……"戦争"をするために戦っているんじゃない。

 

……知らずのうちに、"呑まれていた"。この"疑似満開"が引き起こす"人の悪意"に。これはまさしく……"敵を倒すためだけの力"。…神の力でも何でもない、今の時代には決して不必要な力だ。これを向けるべき相手は、"バーテックス"のような人の論理も何も通じない怪物のみ…"人の世"である今の時代でこの力を行使するのは…間違っている。

 

それに気付いた瞬間、流星の頭の中から"声"が消えた。状態は維持できている…でも、時間がない。

徐に、端末を確認する流星。そこには「65」と書かれていた。そして、少しずつその数字が減っていく。

恐らく、これは「発動時間」だろう。「0」になればきっと、強制的に解除されてしまう。そして、その後に来る代償はきっと、計り知れないもの…なら、猶予はない。やるべきことは…"アレ"の破壊だ。

 

視線の先は、「貯蔵庫」。「牡牛座」と「乙女座」を無視して、「貯蔵庫」に向かっていく。

 

ヴァルゴ「…コイツ、私たちを無視して!?。」

 

タウラス「やらせん!!。」

 

追いかけてくる二人。空に上がった流星は街の至るどころに上がっている黒煙と、吹き飛ばされた赤い異形…"アルタイル・バーテックス"を見る。

 

あそこできっと、芽吹さん達が戦っている…そう思うと、今回のこの襲撃の規模は相当なものだ。

しかし、自分の役目はこの"貯蔵庫"を破壊すること。

ただ、その一点のみに集中する。

 

流星「うおおおおおお!!!。」

 

魂からの叫び。何としても、この一撃で決める。

両手のトンファ―を向け、先端に装備された銃口にエネルギーが籠る。

 

流星「ここで……落とすっ!!。」

 

迫りくる「乙女座」と「牡牛座」。外せばきっと、機は無い。時間はあと…「10」を切った。

狙いを絞り、今。

 

…トリガーを勢いよく引いた。圧縮された霊力弾が轟音を上げながら放たれる。防衛本能なのか、触手を壁状に展開するが瞬く間に消滅させていく。そして、それは……「貯蔵庫」の中心を撃ち抜いた。

 

撃ち抜かれたそれは、表現しがたい音を立てながら崩壊。人々から奪った生体エネルギーは一気に周囲に飛散した。

 

タウラス「…不覚…なら、コイツだけでも…!!。」

 

「させないわ!!。」

 

一直線上に伸びたビームが横切る。

視線の先には、芽吹達が現れた。間に合った、他の防人達に後は任せて彼女たちはここにやってきた。

 

ヴァルゴ「「水瓶座」は何をしているの!?。」

 

芽吹「残念ね、彼は退いたわ。」

 

そう言って、銃を構える芽吹。しかし、彼女たちも満身創痍だった。その様子から激闘の様子を伺える。

芽吹、夕海子、シズク、雀が彼を守るように二人の前に立つ。

流星は使用時間に限界が来た"疑似満開"が強制解除され、その代償としてとてつもない疲労感で身体が動かない。

 

タウラス「多勢に無勢…「乙女座」、ここは退くぞ。作戦は失敗だ。」

 

ヴァルゴ「っ……次は無いわよ…!!。」

 

状況の悪化から、撤退した二人。しかし、被害は甚大だ。「貯蔵庫」による被害は計り知れず、犠牲者を多数も出してしまった。しかし、それでも全力を尽くして手にしたこの勝利は大きい…"神託"を乗り越えた。誰もがそう思っていた…ーーーー。

 

そして、その様子を陰から見ていた峻輝は現実を前に唖然としていた。

 

峻輝(流星が"防人"…それに、あれは新生大赦の……。)

 

その時、峻輝は"あるもの"を見てしまった。

それは………。

 

アクエリアス「貴様ぁぁぁぁぁああ!!。」

 

仮面が半分砕け、傷だらけの「水瓶座」が突如として現れ、流星に向かってくる。

芽吹たちにやられた傷の多さから、彼も満身創痍だ。しかし、執念とも言えるその憎悪は自らの最高傑作である「貯蔵庫」を撃破した流星に向けられていて。

 

流星「み…「水瓶座」…!?。」

 

まずい…体が動かない…芽吹たちも反応が遅れる。

そして「水瓶座」はその怒りのままに手に持った札を投げ、そこから可燃性の液体が濁流のように押し寄せる。

 

アクエリアス「そのまま消し炭になれェェっっ!!。」

 

起爆符を投げつけて着火させ、それは業火の大波へと化す。

もう、無理だ…そう思ったその時、駆けつけてきた少年が流星の肩を持って、そして……。

 

芽吹に向けて、投げた。

 

流星「な…峻輝!!?。」

 

峻輝「……はは、もう何が何だか…これ、夢じゃねェんだよな…?。」

 

時間の流れが遅く感じた。

必死に手を伸ばす流星。そして、全てを悟った芽吹は峻輝の覚悟を汲んだ。そう、友を助けるために犠牲を選んだことを。彼女は叫びながらもがく流星を抱き留め、その場から遠ざかる。

 

峻輝「…"あの時"の借り、返したぜ?ありがとな、"友達"でいてくれて。」

 

迫りくる業火を前に、峻輝は満足そうなその顔で。

 

……その中へと、消えていった……ーーーーー。

 

…………………………end。




…友に"守られた"。

守りたかったのに、最期に自分を救うために炎の中に消えていった。

そして、強固だったその心は……"折れた"…ーーーー。

次回
第24話 心の崩壊。
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