300年もの間、世界の歴史は"天の神"との攻防の繰り返しだった。
それは、時代と共に風化していき、そしてそこで力を尽くした少女達が人知れずに死んでいく者もいれば、嘆きと悔しさで次代に託した者もいた。そして忘れられた者、名を消された者も…ーーー。
……今こそ伝えよう、この世界が辿ってきた"歴史の真実"を。
彼女たちの…命の物語を知ってもらうために…ーーー。
~防人寮~
流星「…宗主様が明日、緊急の演説があるって言ってたけど…どういうことだ…?。」
あれから3日後、防人達だけに伝えられた園子の緊急演説。当然、その内容までは伝えられていない。
それは、他の神官達も然り…全員が思う。愛媛に続いて起きた讃州市のテロ事件の事だと。
亜耶「きっと、重大な事だと思うよ?。事前の通知では、四国全域に生中継で放送されるとのことだから…。」
夕海子「あの方は奇抜な発想をお持ちの方です。きっと、何かお考えがあるのでしょうね。」
雀「うぅ~…なんか不吉な予感がするよぉ~…。」
玲司「お前ら、でかい仕事だ。」
会議から帰ってきた玲司は全員の元へとやってくる。
芽吹「…例の"演説"ですか?。」
玲司「おう、話が早くて助かる。当日は宗主様の護衛だ。加えて、"旧勇者部"の面々もな。」
しずく「え…なんであの子達が?。」
玲司「さぁな。俺達はあの子らの"正体"を知ってるが一般人は分からねェ。宗主様…何を考えてんだ……?。」
流星はテレビを見る。そこに映る園子を見て。
流星(…明日…か……。)
………翌日、新生大赦本殿。
周辺にはテレビ局の車両が多数、空には中継用のヘリが。民衆も続々と集まり、その"演説"を聞きにやってくる。先日のテロの事か?それとも……っと、民衆達の考察が飛び交う。
護衛任務を受けた防人達も変身した姿で展開。流星もまた、変身を済ませて本殿周りに配置された。
流星は本殿を見る。そこには、巫女姿の亜耶と珍しく神官の正装をした玲司もいた。只事ではない…そんな雰囲気を感じとる。そして………。
流星(…来た…。)
本殿の中から園子がゆっくりと歩いてくる。同じく、正装姿。そしてその後ろには…"旧勇者部"のメンバーが。
「…あの子達ってもしかして…"勇者部"の子?。」
「宗主様の同級生といっても、この"演説"と何の関係が…?。」
…民衆の疑問は最もだ、自分もそう思う。
流星は護衛任務とは別に、民衆達と同じ気持ちを抱く。
そして…深呼吸をし、気持ちを整えた園子。今までにない真剣な眼差しで、口を開いた。
園子「お集まりの皆さん、本日は突然の演説にご参加くださり、誠にありがとうございます…ーーー。」
芽吹「………………。」
園子「本日、皆様にお伝えしたいことがございます。先日、讃州市で起きた邪神教団のテロ事件の事です。愛媛に続き、讃州市までもが彼らの標的とされました。その中で、犠牲になった者は83名。皆様も目撃された事でしょう、人智を超えた怪物の出現…そう、彼らはその怪物を創りだす事ができる技術力を持った…立派な「天災」です。」
流星(…峻輝……。)
83名。その中に、峻輝も入っているのだろう。結局、彼の遺体は見つからなかった。それもそうだろう、あんな業火に飲み込まれたのだ。骨ごと炭となったに違いない。でも…肉体を失ったあんな死に方をさせたのは自分だ。流星はまた、自分を責め始めた。だが、芽吹が流星の手を取る。
芽吹「…流星。」
流星「…わかってます。ありがとうございます、落ち着きました。大丈夫です、本当に…もう、大丈夫ですから…。」
園子「…この件を踏まえ、ここに宣言します。彼らを…邪神教団そのものを「特級天災」として認定することを。」
「特級天災」。それを聞いた民衆はざわめき出す。それは、新生大赦が「世界規模の脅威」と認めたことになるからだ。まだ、「外」の開拓だって進んでいない…救いであった"神樹"ももう居ない…そしてそれは…民衆達の不安と新生大赦に対する不満を爆発させた。
「と…特級天災だなんてッ!!。もうおしまいだ…そもそも、新生大赦は何をしているんだ!?。あんな化け物を駆逐する戦力なんて!!。」
「待ってくれ、俺は見たぞ…銃剣を持った32人の女の子達を!。でも、そいつらだってあの被害を止められなかったんだ!!。ただの人間が、あんなのに敵うはずがない!!。」
…飛び交うのは罵詈雑言。この宣言で、新生大赦に対する信頼が一気に落ちたとも言える。でも、園子はそれが分かっていた。だから敢えて、宣言したのだ。"現実"を伝えるために…旧大赦がこれまで隠してきた歴史の真実を…日の目に晒すために。ここまでは準備だ、そしてここからが……"本題"だった。
園子「…その32人の女の子達と1人の男の子が命を賭して、彼らを撃退しました。そう、彼女達には戦う力がある。だってそれは……!!。」
そこから先の言葉を察知したのか、多数の神官達が一気に立ち上がる。
「行けません、宗主様!!。」
「"それ"を語ればこの混乱は更に加速する!!。もう終わった歴史は…闇に葬るべきです!!。」
園子「そうやってずっと隠してきたからこそ、泣いてきた人たちが居たんでしょ!?。そして、今度はこの"防人"達に泣いてもらう気!?。そんなの…私が許さない!。そう…彼女達が覚悟を決めて"勇者"を継いだのだから!!だから私は世界中に発信したいんだ!!。今、目の前の脅威を退けるために必死に戦ってくれる人たちがいる事を知ってもらうために!!。今を生きるこの世界の人達が絶望しないように!今、話さなければいけないの!!。」
ーこの…"希望"を!ー
目を閉じて、園子は"隠されてきた歴史の真実"を語り始める…ーーー。
================
302年…この世界、いや…人類が歩んできた途方も無い戦いの歴史。
この世界…四国は隔離された世界。神樹様の消滅から現れた「外」の世界こそ、本当の世界。世界は一度、滅びました。四国に逃げ延びた僅か人類を残して。そしてそれを滅ぼしたのは、あなた達が歴史の授業で聞かされてきた「未知のウイルス」ではありません。愛媛と讃州市に多大なる被害をもたらした怪物…"バーテックス"です。
…そこから、長い長い戦いの歴史が始まりました。当初は、生き残った全人類にその怪物は認知されてました。そして、それを討伐出来る者…神に見初められた無垢なる少女達"勇者"も。
私の祖先「乃木若葉」もまた、"勇者"に選ばれた少女の1人…そして、そこから5人を加えて計6人の少女達が人類の希望としてその怪物と戦った。
…結果は……ご先祖様を残して5人が命を落としました。1人は名前を消され、そしてもう1人は……「友奈」と言う名前の起源となった。2人は最後まで寄り添って、生まれ変わったら姉妹に…そんな儚い思いを残して、若くして命を落としたんです。
それから、ご先祖様は次代に託すことにしました…いつか必ず、人類がバーテックスを退けてその世界を取り戻してくれることを信じて。一度は"奉火祭"によって、束の間の平穏が訪れました。でもそれは、数人の巫女を生贄としたもの…そう、"人柱"になった人達も居たのです。
…そこから、298年後…今から、4年前に"バーテックス"が再び、侵攻してきました。それに対するのはその時代に覚醒した3人の勇者……私と、隣に居る東郷 美森…そして……もう空に旅立ったかけがえの無い親友…"三ノ輪 銀"。とても、辛い戦いでした。やれると思ってた…けど、それでも現実はとても残酷で…怪我もいっぱいして……失ったものもとても、大きかった。
…2年後、ここにいる"勇者部"の子達が次代を担ってその戦いに身を投じました。たくさん泣いた、苦しんだ…悩んだ…でも、それでも"勇者"だからという誇りを持って、この四国を守り抜いたんです!!。
天の神は滅んでいません、今もまだこの空の上から私達を監察しています。大赦が隠し続けてきた事実は、これが本当の歴史!!。例え、神様がいなくなっても"人"を守るために自分の心に従って戦う"勇者"がまだこの世界にはいるんです!!。
たくさん傷付きながらも、誰かのために戦える人はとても強い!!だから、みんなはこの状況に絶望しないで欲しい!!前を向いて生きていて欲しい!私たちは約束します!必ず…必ず邪神教団を止めて平和な世界にすると!。亡くなった神樹様の為にも…この平和のために繋いできた先人達の"バトン"を落とさない為にも!!この時代を作るのは神様じゃない、私達…"人間"なんです!!!。
================
…園子の決死な"演説"。感極まったのか、涙の跡もある。
それを聞いた民衆は…黙りこんでいた。状況が飲み込めないのだろう、突然言われたこの世界が辿ってきた歴史の真実が。
園子「…ごめんなさい。現宗主である私が謝ります!!。皆様を騙していてすみませんでした!!。だから…だから…この状況を打開しようと戦う彼女達を知っていて欲しいんです!希望はある、私たちは前を歩いていける!!。みんなで作っていこうよ!!この新しい時代を!!。」
その言葉に…沈黙がこだまする。
そしてしばらくすると、1人が拍手をし始める。それに釣られるようにどんどんと…それは、映像で見ていた他の地域の人たちも同様だ。
「…そうだ…もう神樹様はいない…だから、俺達が頑張って生きていかなきゃいけないんだ…!!。」
「私達よりもずっと子供の女の子達が守ってきただなんて…ありがとう…今、生きていられるのはあなた達がいたからよ!だから今度は…大人達がしっかりとしないと!!。」
世界が"一つ"になった。そんな気がした。
流星もまた、その演説を聞いて無意識に拍手をする。
流星(すごい…その一言でみんなの気持ちが一つになった…感情が…すごく大きなものに…。)
手のひらを見る流星。そして…強く握り締めた。その時…ーー。
「泣かせる演説だ。だが…それを地獄に変えてやろう。」
響く男の声。見上げると、"十二星座の使徒"の1人…「蟹座」が現れる。
芽吹「奴は…!。」
キャンサー「乃木園子、貴様をここで討てばこの世界は…!!。」
アルタイルとベガ…2体の“人造バーテックス"が現れる。人々はパニックとなり、逃げ始める。しかし…ーー。
園子「それは…どうかな…?。」
園子を守るように飛び出した防人達。夕海子とシズクが迫り来るアルタイル・バーテックスを銃剣で切り裂いた。
シズク「全く、宗主は滅茶苦茶だぜ!。オレ達にデカい仕事を押し付けてよ!。」
夕海子「でも、その通りですわ!。私達には"力"がある!。それは…牙無き人を守るための牙…そうですわよね!?。」
続いて飛び上がったベガ・バーテックスが翼を広げて針状の羽を放つ。
雀「うぅうう……やりたくないけど行きまぁああああすッッ!!。」
盾を前面に展開させ、8枚の結界を形成。その攻撃を悉く弾いた。
雀「もう逃げられない…こんな大胆な宣言をしちゃったんだもん!私達、有名人になっちゃった!!嫌だぁああああ!!。」
芽吹「嫌と言いながらでも、前線に出られるならそれは最早、勇気よ。雀!。」
トリガーを引いて羽を撃ち抜く芽吹。ベガ・バーテックスはそのまま地面に叩きつけられた。
キャンサー「フン、なら我が相手だ!!。」
槍を突き付けて突っ込んでくるキャンサー。流星は、トンファーを握り締める。そして、ゲージが一気にマックスに。端末に「限定解除」の表示が現れた。
流星(…俺は1人じゃない…そうだろ…この力…"お前"が生み出されたのは人の思惑と悪意なのかもしれない。けど、それでも仮にも"お前"は"勇者"の名を継ぐシステムなんだ。"人"を守る"防人"でありながら、"人"の意思と思惑で生み出された"勇者"…そして、人の感性を感じる力を持った"俺"…偶然なんかじゃない…これは必然なんだ。)
「擬似・満開」の表示へと切り替わる。その瞬間、トンファーだけ赤いラインが入って。
流星(守るんだ…俺と"お前"で!もうこれ以上、アイツのような犠牲者を出さないためにも!!。そして……俺の「成すべき」事を成すために!!。呑まれるな、意思を強く…託された事の意味を示すためにもッッ!!。)
亜耶(リュウ君…!!。)
流星「俺の"意思"を力に変えろ!!。「満開」!!。」
咲き乱れる「アルストロメリア」の花。「擬似満開」を発動させ、その姿を変えた流星。しかし、それは完全に制御下に置いたものとなり最早、彼の"意思"に染まった花…"破壊の力"とは言わせないものに。
友奈(それが…君の選んだ"選択"なんだね?。とっても綺麗な花だよ…その花を咲かせられるのなら君も間違いなく…"勇者"だ…!。)
キャンサー「何だと…!?。」
流星(満開)「勝負だ!「蟹座」!!。」
………………………end。
もう、振り返らない。
だから、見ていてくれ。
この時代に相応しい"人"の勇者…それが…。
俺達だ!!。
次回
第27話 受け継ぐ"意思"。