紫藤流星は"勇者"になる。   作:やままん

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人の歴史から神の歴史へ、そして2年前に再び人の時代へと戻った。

世界は一つとなった。

守ろう、この…弱々しくも根強い人類を。


第27話 受け継ぐ"意思"。

〜新生大赦・本殿〜

 

流星(満開)「勝負だ、「蟹座」!!。」

 

再び、「擬似満開」を発動させた流星。でも、今度は飲み込まれる事がない。様々な思いを背負って今、この場に立っているから。

そして、その戦いはかつての"勇者"達も見守る。

 

キャンサー「その力…報告通りか…!。」

 

流星「おおおおおお!!。」

 

地面を踏み込み、一気に駆け出す流星。「蟹座」が構えた盾に突進し、互いに吹き飛んでいく。

 

シズク「アイツ、1人でやろうってか!?。」

 

その時、防人全員に通信が入る。相手は流星だ。

 

『コイツの相手は俺がします!。皆さんは宗主様と勇者部の人たちを"人造バーテックス"から守ってください!。』

 

雀「うぇえ!?本気なの!?。」

 

『本気です!。その人達は俺達に託してくれた人達です!!。コイツらの狙いは…その人達なんです!!。俺は大丈夫、もう…やれますから!。』

 

力強いその声に、芽吹はフッと笑みを浮かべて。

 

芽吹「わかったわ、なら任せたわね?流星!。」

 

『はいっ!!。』

 

そうして、通信が切れた。そして、2体の“人造バーテックス"…ベガとアルタイルが身体を起こす。

 

芽吹「…コイツらも複数、造られてるようね…一度退いた化け物なんて私達の敵じゃない!!。各位、最優先事項は宗主様と旧勇者部メンバーの護衛!!。当初の任務の延長戦だ、気を緩めるな!。」

 

「「「了解ッッ!!。」」」

 

芽吹「…宗主様が世界を一つにするために必死に訴えた"真実"…受け入れられない人がいたとしても、私達は"人"を守る防人だ!!。そしてそれは…"勇者"と同義!!。」

 

先陣を切った芽吹。

トリガーを引き、放った5発全てをベガに命中させた。

 

芽吹「これは…私たちの新たな"お役目"だ!!。」

 

夕海子「ええ、私達の力を見せてあげましょう!!。」

 

美咲(ここで、功を挙げれば…!!。)

 

………………………。

 

キャンサー「…凄まじい戦闘力だな…!!。」

 

流星と対峙する「蟹座」。槍とトンファーが激しくぶつかり合う。「疑似満開状態」であれども、「蟹座」は食らいついてくる…改めて、その戦闘能力の高さを感じさせられる。

しかし、流星は負けじと攻撃の手を緩めない。この強固な防御力を突破するには、今ある自分の最大をぶつけるしかないのだから。

 

流星「これまではお前たちに暮れを取ってきたけど、今度はこちらが攻める番だ!。」

 

キャンサー「フン…所詮、人は人よ。こうして、命のやり取りを躊躇無く行えるのだからな…!。」

 

互いに競り合う中、強引に槍を振り抜いて流星の振り払った。そして、互いに向き合って対峙する。

 

流星「そうだ。お前の言う通り、人は人…結局は自分の命が一番大事なんだ!。」

 

キャンサー「それが分かっていながら、人を守るか…矛盾した奴だ。」

 

流星「それでも!。」

 

最接近し、トンファーの先端から顕現した霊力エネルギーの刃を振るう。

 

キャンサー「ぬぅっ!?。」

 

流星「人が人を一方的に裁く権利なんて誰にもありはしないんだ!。お前達だって、人間だろう!?。」

 

キャンサー「違うな、我々は進化した人類……。」

 

流星「"新人類"だって言いたいんだろう!?でもそれは"神"じゃない!。」

 

競り合いを強引に押し切り、振るったその刃は「蟹座」の羽織るローブを切り裂いた。

 

流星「"神"でもなんでも、「生きたい」という願いを踏みにじる事なんて決して許されない!!。人が犯した過ちを正すのも人なんだ!。俺達は間違いながらでも生きていかなければいけない!。この世界に…二度と"神"を介入させないためにもっ!。」

 

キャンサー「それが出来たなら、"新生大赦"という存在も不要だろう?。出来ないからこそ、誰かが管理せねばならない社会が生まれる…そしてそれは、今も胡坐をかいてこの空の上から見ている"天の神"も感じている事だろう…「人は結局、何も変わらない」と。そこに関しては我々も同意だ。そして、見限った神は再び現れる。今度は"神樹"という後ろ盾もない状況だぞ?。守るだけでは何もならん。神すらも打ち倒せる力を身につけなければ、我々は虫けらのように滅ぶだけ…神との決別が出来ん弱き世界へと逆戻りするだけだ。」

 

流星「それでも…力で全てを解決させようというやり方は間違っている!。」

 

キャンサー「クク、馬鹿げたことを…2年前、"天の神"を退けたのも結局は"力"だぞ?。思いだろうが何だろうが、それを"力"に変えて追い返したのだ。神と人は一生分かり合えない…神に怯えながら生きていく世界はここで終わりだ。」

 

流星「お前たちが呼び出そうとしている"邪神"だって、神だろうにっ!!。分かり合えないなら、分かり合う努力をすればいいだけなんだ!。最初から否定したって…憎しみが増すばかりなんだよ!。」

 

互いに激突しながら、思い思いの事を口にしていく。

そう、「人と人」も分かり合えない種族なのだ。だからこそ対立と衝突が生まれ、それはやがて大きな戦い…"戦争"に発展する。

人が歩んできた歴史はいつだってそうだ。相互理解が出来ないことで生まれる"争い"の歴史。

だが、それは"神"も同じだ。人と神も相互理解が出来ない…そしてそれは、途方も無い年月を掛けても解決することの出来ない"課題"だろう。

 

…だからこそ、少しずつでもお互いに歩み寄っていかなければいけない。全てを否定して片方を潰すやり方なんて決していい方法ではない。考えることを、感じることを止めたということになる。

 

それは…"神"であれ"人"であれ同じことだ…ーーー。

 

キャンサー「"邪神"様は全てを滅ぼす神だ。感情も何もない…それは"自然"と同じ…考えることがないから、目の前の脅威を簡単に消し去れる唯一無二の存在なのだ。"天の神"が鎮座する限り、人類に自由などない…人類はまだ、神の管理下で生きているだけの有象無象なのだよ。」

 

流星「それでも、"対話"を諦めたら"争い"しかないっ!。"邪神"はそれを無視する神なんだぞ!?。」

 

キャンサー「それが、"今"の我々だろう?。」

 

流星「くっ…この、分からず屋がっ!!。」

 

格闘戦に入り、蹴り上げる流星。「蟹座」も反撃として槍の柄で腹部を殴る。

 

流星「がはっ…!?。」

 

キャンサー「我々も"覚悟"を以て、この現状を生み出した。狂信者と言われようが、貴様の言う「成すべき」事が我々のこの理念なのだ。貴様たちのそのエゴをぶつけていいはずがない…我々も"生き残る"為にこの答えを出したのだよ。"神を殺して真なる自由を得る"。」

 

その時、流星の目には「蟹座」が"大きく"見えた。

並みならぬ信念…その大きさはまさに"意思"の差。

 

だが………。

 

流星「俺達は……託されたんだ!!。先人たちから、未来を守る為のこの…"バトン"をっ!。」

 

駆け出した流星。しかし……。

 

流星(な…こんな時に…!?。)

 

「疑似満開」の発動時間に限界が訪れ、強制解除。渾身の一撃は届かなかった。

その隙を「蟹座」が逃すわけがない。背面に陣が現れ、"キャンサー・バーテックス"がその顔を覗かせた。

 

キャンサー「ならば、我々が分かり合うことはない。"勇者"と"バーテックス"は表裏一体…互いに殺し合いを重ねてきたのだから。」

 

指を鳴らすと、"キャンサー・バーテックス"の特徴的な反射板が左右に展開。そしてそのまま、流星を挟み込んだ。

その圧力に、たまらず意識が飛んで地面に落ちた流星。コツコツと、「蟹座」が迫る。

 

キャンサー「理解せよ。生き残り、勝利するためには一定の犠牲が必要なのだ。それは、この世界が歩んできた歴史そのもの…"勇者"と"巫女"という無垢なる少女たちの犠牲の上でこの世界は繋がれてきた。そう…"人柱"で成り立っているこの世界はいくら変わろうがその事実と歴史は覆らんよ。そう言う風習なのだ。」

 

流星「…だとしても…自分たちのやり方を正当化するなんてことがあってたまるかよ…!。」

 

キャンサー「正当かどうかなんて最早、どうでも良いのだ。ただ…劣等種は間引かねばならん。それは、人間達が動植物をそうしてきたと同じことだ。生態系を維持するために間引いてきたのなら、今度は人間がその対象となっただけのこと…"天の神"が再びやってくる前に、邪神様を降臨させてその抑止力とする…神には神をぶつければ良い。」

 

そして、矛先を流星の顎に負けて突き付ける「蟹座」。流星は歯を食いしばる。

 

キャンサー「残念だ、実に残念だよ。貴様も人の悪意を感じ取れる感覚を身につけた、いわば進化した人類…我々と同じく、"新人類"だというのにその道は違えている。やはり、相互理解は出来んと言うことだ。さらばだ。」

 

喉元にまで迫り来る槍。絶体絶命…しかし、その時……亜耶が声を上げた。

 

亜耶「ダメェエエエエッッ!!。」

 

戦場に似つかわしくない少女の声。その瞬間、光に満ちた蔓がキャンサーの槍にまとわりついた。

 

キャンサー「何だこの蔓は…!?。」

 

流星「…亜耶…?。」

 

ふと、亜耶の方を見る。

すると、彼女の身体が眩い光に包まれては光を帯びた蔓がどんどん伸びていく。

 

願うように、祈るように両手を握り合うように目を閉じる亜耶。その祈りの強さに比例しているのか、キャンサーにまとわりついた蔓はその身体を拘束し始めた。

 

キャンサー「この力…まさか…あの"巫女"か…!?。」

 

そしてその様子は、園子達も見ていた。

 

美森「そのっち、あれって…!?。」

 

園子は、小さく息を吐いた。そして、少しだけ険しい顔をする。

 

園子「…先生、やっぱり…"彼女"なんだね…?。」

 

安芸「ええ……出来れば、そうであって欲しくないとばかり願っていたけどこれで確実へと変わったわ。そう…あの子…"神格化"へと変化していっている…。」

 

神格化…そう聞いた友奈は自分の胸に手を当てた。

 

友奈「……私と同じで"神様に好かれた少女"…あの力は、"神樹様"なんだね…?。」

 

樹「そ…そんな!だったら、亜耶ちゃんは前の友奈さんみたいに!?。」

 

園子「そうだね…ゆーゆ程、厄介な事にはならないと思うけど時代が時代なんよ。旧体制派の"神格社会主義"の礎にされる可能性だってある……それよりもっと危険なのが…。」

 

そう言いながらも、キャンサーを見る園子。

 

園子「…邪神教団にあの子の力が露見しちゃったこと…かな…。」

 

風(っ……あの子を助けるって言ってたけど…!。)

 

キャンサー「くっ…動きが……!?。」

 

亜耶「今だよリュウ君!そのまま…あの人を!!。」

 

流星「うおおおおおおおお!!。」

 

満身創痍となったその身体を押して突撃する流星。

 

キャンサー「っ……!?。」

 

そのまま全力でトンファーを叩きつけた流星。その力は凄まじく、キャンサーの防御力を簡単に突破。ローブの隙間から鎧のようなものの破片がポロポロと落ちてきて。

「蟹座」は仮面が砕けてそのまま大の字に倒れ込んだ。まともに受けた為、意識は一発で刈り取れた。その素顔は30代半ばくらいの男の顔だった。

 

芽吹「…っ…確保!!。」

 

”人造バーテックス"を退けた防人達が一斉に「蟹座」に向けて拘束用の祝詞を唱える。そして、貼り付けられた札が輝いてそのまま拘束された。

 

亜耶を包み込んでいた光は消え、何事もなかったかのように振る舞う。

 

亜耶「皆さん、お怪我はありませんか?。」

 

夕海子「え…ええ……。」

 

園子(…問題は山積みだけど…でも……。)

 

傷だらけでも、この場を鎮圧した防人達を見る。

 

園子(私達の"魂"はちゃんと受け継がれてる…今度は"神様"を守るんじゃない…"人"を守る……私達の"お役目"は…これからだよね…見てて、"ミノさん"。貴女が守りたかった人たちも全部、守ってみせるから…みんなで一緒に…。)

 

……………………………end。




"意思"は受け継がれ、歴史の真実を明かした少女。

人々はそれを受け入れ、人として強く生きようと心に決める。

手にした勝利…そして、「蟹座」への尋問が始まる。

…彼は、何を語るのか……。

次回
第28話 "神"への恨み。
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