紫藤流星は"勇者"になる。   作:やままん

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"邪神降臨"。

それは、天の神に対抗するため。

彼らもまた…"神"という概念に翻弄された者たちだった…ーーー。


第28話 "神"への恨み。

園子の演説から、世界は"神"に対する思考を改めることとなった。

 

この世界に"神"はいない。

 

その事実を突きつけられた人類は、自分の足で歩くことを決意した。

様々な思いはあるかものしれない…一概に、一つになったとは言い難いのかもしれない。でも、それでも目の前の現実を受け入れることで人は前へと進める。

 

そう…人の持つ"可能性"を示すことで、神の介入を防ぐ。

この世界に神による介入が二度と起こらないように…そして、"人"と"神"が一定の距離を保って互いに尊重し合うように。

 

人は神に近寄りすぎず、神は人に干渉しないように。

 

今の人類の課題は…自らの持つものを神に示し、認めてもらうこと。

 

人類に課せられた課題は…とても大きいものだった…ーーー。

 

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翌日…新生大赦・本殿にて。

 

芽吹「…拘束した「蟹座」はなんと…?。」

 

先日、流星と亜耶の力によって"十二星座の使徒"の一柱である「蟹座」を倒した新生大赦。

本人は「重要参考人」としてその身柄を拘束され、今は別室に隔離されている。

 

…どんな力を行使して来るか分からない…念のため、強力な霊力を込めたお札を貼り、「蟹座」の能力を封じ込めるようにした。警戒を高め、周辺には数十人の神官・巫女による結界を施し、交代制で祝詞によって効力を維持し、下手な動きをしないようにしていた。

 

園子「う~ん、依然として黙秘を貫いているね~。根幹的な部分は何も話してくれないよ。ま、当たり前だよね。」

 

美森「…敵に口は割らない…か…こうなれば、自白剤を……。」

 

風「コラそこ~?。物騒なことを考えない~。」

 

流星「…戦っている中で、奴は"神を殺して真なる自由"を得ると話していました。その中で感じたんです。奴らは"神"…いや、"天の神"に対して"恨み"を抱いていると。」

 

夏凛「…神を恨むって…なによそれ、この時代の人間が"天の神"を知っているなんてこと…ついこの間まで、私たちだって知らなかったことなのよ?。」

 

樹「…もしかしたら、邪神教団は旧大赦の人たち…ってことなのでしょうか…。」

 

夕海子「だとすれば、宗主様がすでに把握されていますわ。1年前の"大掃除"に体制を一気に変えたんですもの。」

 

"大掃除"。

それは、園子が宗主として就任した時に行った「大改革」の事だった。

"神樹消滅"から、混乱に陥った旧大赦をまとめあげるべく、所属神官達の詳細を全て洗い出してその管理下に置く「強引」な手段。大人たちに対抗するには、彼女は家名を利用するしかなかった。

 

それ程、この世界における"乃木家"という看板は大きいものなのだ。

まだ年端もいかない16そこそこの少女の夢みたいな考えに、古い体制に縛られた大人たちが同意するはずもない。だが、放置すればその混乱に乗じて"大赦"という組織が機能しなくなる…それを危惧した彼女。

 

実態は何であれ、"人の世界"を統治していたのは事実、"大赦”であった。その大赦がまとまらないようじゃ民衆はさらに混乱に陥る…あの時、"大掃除"によって去っていった神官達に申し訳ない気持ちが彼女にはあった。

だが、"統治"というものは誰かがその業を背負わなければならない。この道に往くと決めた時から、彼女はそうなることを覚悟していたのだ。だからこそ、中途半端なことは出来ない…やり方が何であれ、支えてきた人間を切り捨てたのだ。

 

そして、もっと大きくなってこの世界を"統治"によって守っていかなければいけない…消えた神樹に替わって。

 

夕海子は「ない」というが、その"大掃除"の時に去った神官達が"邪神教団"なる組織を設立したことは否定できないのかもしれない。"天の神"を知り、そして人という存在を信じきれない集団…事実、「水瓶座」はその一人でもある。旧大赦関係者が数名居たって、おかしくはない。だが、それでも"引っかかる"事がある。

 

それは………。

 

園子「…ねェ、流れ星(流星)君?。君たちは前に「射手座」と対峙した時、その素顔を見たんだよね?。」

 

素顔…そう言われて、当事者である芽吹と流星は東郷の顔を見る。

 

芽吹「……ええ…奴は東郷美森と同じ顔をしていた…そして、自分で言ったのよ。「自分は、東郷美森の"複製人間"」だって。」

 

"複製人間"。

西暦世界で「禁忌」とされてきた禁呪「錬金術」を応用したもの。

 

人の手で"人"を造る…それは、自然の摂理ではなくて"望む形のもの"へと。

それは"神"の領域であるとともに、"生命"という概念を否定した禁呪…「錬金術」本来の理論を捻じ曲げた要因でもあるこの技術は歴史と共に風化していき、その術と理論を知るものはどこにもいないとされていた。

だからこそ、その手法を知っている人間が新生大赦内に存在したこと自体が考えずらいものなのだ。

元居た神官達と袂を分かつことになったとしても、彼らも"神樹"を信仰していたことに変わりはない。故に、それに背く行為はまさしく『異端』となる。

 

……『異端』…?。

 

その単語に、園子は何か閃いたような表情となる。

 

園子「……私…分かっちゃったかも…。」

 

友奈「…え…?。」

 

園子はPCを開いて何かを探り出す。

 

園子「……数年前に、"反大赦団体"という集団が迷惑行為を繰り返していたことは知ってるよね?。」

 

流星は目を開く。

 

流星(それって……峻輝の両親が所属していた団体の事じゃ…。)

 

風「それがどうしたって言うのよ?あんなの、ただの迷惑集団でしょ?。」

 

園子「…それが、今の"邪神教団"だとしたら…?。」

 

夏凛「ちょっと待ちなさいよ、それは少し無理があるんじゃ……。」

 

園子「もちろん、推測の域だよ?。彼らだって、"神樹様"を信仰していた…けど、当時の大赦がその恵みを管理していたせいで彼らは大きな勘違いをしていた…『大赦が"神"を独占しているんじゃないか』って。」

 

夕海子「だとしても、それが真反対の思想に染まった"邪神教団"になりうるなんて…。」

 

園子「……あれほど、大赦に対して執念深かったんだよ?。その当時、明確に敵意を露わにしていた彼らは単に大赦に対して敵対意識を持っていただけじゃないと思う…きっと、『歴史の真実』を知っちゃったんじゃないかな…。」

 

雀「で…でも、歴史を知ってもこんなに大きな力を得ることなんてできないよ!?たった数年でさ!?。」

 

園子「……「水瓶座」かも。」

 

「水瓶座」…そう、以前に「乙女座」と「牡牛座」が彼の出自について話したことがあった。

彼は、元"大赦"の神官だった…そして、園子はその狂った性格と似たような性格をした神官に心当たりがあった。彼は自分がまだ"勇者"になる前の事…親に連れられて大赦の本部に行ったときに見たことがあった。その当初から、"神"を超えるための研究に没頭し、そして"勇者システム"の構築にも加担した人物…。

物事の全てを"実験"と称し、時には非人道的な研究理論を提唱することもあったという…そして、彼が何よりもテーマとしていたのは『人の身に"神"に等しい力を注入する』といった、常軌を逸した研究だった。当時、彼の研究は狂っていたことから多くの神官達を初め、前宗主からも受け入れられていなかった。

 

そんなこともあってか、彼は自らの意思で大赦を脱退した…だが、その経緯が明らかとなっていない。その「水瓶座」が"邪神教団"に所属しているのだ。"バーテックス"の因子を発見し、実用したのも恐らく彼だろう。そして、園子の仮説通りにかの"反大赦団体"が今の"邪神教団"だとしたら、『歴史の真実』を知った彼らが、世界を"神"の意のままに動かされていたことに反感を抱いても可笑しくはないだろう。そう…信じていた"神"に裏切られ、そして仮初の世界で何も知らされずに生きてきたことで"神"に対して"恨み"を抱いた…その結果、"神を殺して真なる自由"を得るといった言葉が出てきても不思議ではない…。

 

彼女は、そう考える。

 

園子「…あくまで私の想像だけどね?本当の事は「蟹座」が知っている…でも、彼からは大した情報を得られそうもないね。私としては、歴史の陰に葬り去られた『錬金術』を組織内に広めた"大司教"という人が一番気になるから。」

 

流星(……「蟹座」…か…。)

 

………その夜、流星は園子に許可を取り、「蟹座」と話すために彼が閉じ込められている部屋の前へとやってくる。その後ろから亜耶が走ってやってきた。

 

流星「亜耶?どうして…。」

 

亜耶「はぁ…はぁ…私も…彼と"対話"したいと思って…。」

 

流星「……俺と同じ考えを……。」

 

亜耶「フフ、どうしてか分かっちゃうんです。きっと、リュウ君はあの人とお話がしたいのかなって。」

 

流星(あの時、「蟹座」を止めた光を放ってから、亜耶もまた……。)

 

「……そこにいるのは分かっているぞ。全く、敵の前だというのに警戒心も何もないんだな。」

 

扉越しに、「蟹座」の声が響く。神官達が一斉に警戒するも…。

 

キャンサー「…安心しろ。貴様たちの祝詞のせいで私は力を行使できない。フン、通りで他の"使徒"達が容易に仕掛けられんわけだ。私は何もしない、だから訪れたそこの少年と少女の意見を聞かせろ。」

 

その言葉に、神官達は引き下がった。そして、扉が開かれて「蟹座」との面会が始まる。

 

流星「…俺達はあんたと話がしたい。」

 

キャンサー「……語ることは何もない。それは変わらんぞ?。」

 

亜耶「…いいです。私達が貴方とお話がしたいのは教団に関することじゃない…あなたが何故、"神"に対して恨みを抱いているのか……。」

 

キャンサー「…何を言う、それは教団の理念……。」

 

流星「違う。それはあんたの本音でもある。戦っているときに感じたんだ…あんたのその"覚悟"を。」

 

「蟹座」は黙り込み、しばらくの沈黙が響く。

そして……。

 

キャンサー「…私は、この世界の真実を知ってから、"神"に対して疑問を抱いた。」

 

流星「…疑問…?。」

 

キャンサー「そう、私達人類は"神"の赴くままにこの命を管理されてきたようなものだ。それをひた隠しにした"大赦"も然り…この世界は"嘘"で塗り固められている。そんな世界で何を信じろというのだ?。」

 

流星「それは……。」

 

キャンサー「つまり、そういうことだ。我々も"覚悟"を以てこのような戦いを引き起こしたのだ。お前達は"人の世"である今をどう生きるか、考えていくと言ったな?。しかし、真の自由というものを得るには、我々は超えていかねばならんものがある。それが、"神"だ。今は静観を決め込んでいるのかもしれないが、その気になればまた干渉してくるだろう。そうなれば、人類はもうお終いだ。お前たちはそれを受け入れるというのか?。だとすれば、我々は何のために生きている?何のために存在している?。"神"に気に入られなければ消えていくというのか?。そんなもの……生きているとは言えん。」

 

亜耶「……それでも…。」

 

流星「…?。」

 

亜耶「私たちはちゃんと"生きています"。貴方の言い分も分かりますよ?。確かに、常に見られているのなら私たちは本当の意味で自由なんかじゃない…神様の顔色を伺いながら生きているということになります。それでもやっぱり、人と神様はお互いに分かり合わなければいけないと思うんです。」

 

キャンサー「分かり合う?何を馬鹿なことを…。」

 

亜耶「誰かが諦めちゃったら、全部が終わっちゃいます。そんなの、私は嫌……人は成長します。間違いを起こしながら、少しずつでも…無理矢理進化させちゃっても意味がないんです。私たちが向かう進化の先は誰かを打ち負かす力なんかじゃない……"心"です。」

 

流星(……"心"……そうだ…俺達は……。)

 

亜耶「だから、私達はあなた方の事をもっと知る必要があります。その"恨み"の理由をちゃんと……ただ、敵対しても何も進まないから………。」

 

亜耶が放ったその一言。

「蟹座」は何も言い返せなかった。

 

"心"を進化させる。

最も否定し続けたその言葉にどこか……共感したいと感じたから…ーーー。

 

……………end。

 




"恨み"。

"人"は誰しも、その感情を抱く。

そして時には……哀しみさえも生み出す。

次回
第29話 「双子座」。
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