紫藤流星は"勇者"になる。   作:やままん

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アルストロメリア。
花言葉は「持続」「未来への憧れ」。
それは、起動させた少年の心を表すもの…。

"今"を持続させたいが、それでいて"未来"に憧れる。

そして……新たな"芽"がこの世界で誕生した。


第2話 アルストロメリア。

亜耶(防人システムが反応してる…まさか、彼は……"勇者"の素質がある人…?。)

 

"勇者"。

それは、神に見初められた無垢なる少女達。神の力を行使する素質を持ち、世界の為に戦う戦士の事。しかし、"神樹"が消えてしまった現在では彼女達の"お役目"は終えたことになる。そして、かつて世界を崩壊に導いた真の存在である"バーテックス"も消滅し、この世界において"神"という概念は去っていったはず。

 

それに' "勇者"は本来、女性にしか成り得ないもの。故に、その素質も女性にしか開花しない。

 

だが、目の前にある現実はこれまでの常識をいっぺんにひっくり返した。

 

邪教徒「どうなっている、勇者システムはもう起動しないはずだぞ!。」

 

流星「これ…どうすれば……!?。」

 

戸惑う流星。それもそのはず、彼は"勇者"の存在を知らない。そして、かつての世界の"真実"も。

 

玲司(…何がどうなってるかも分からねェが…この状況を打開するには楠の到着を待つよりもアイツに託すのが合理的だ…しかし…それを起動させちまうとコイツはもう"日常"に戻れねェ…くっ…不甲斐ねェな……いつの時代になっても、少年少女に委ねないといけねェなんて…でもよ……っ。)

 

玲司「坊主っ!。それは"大赦の真実"と言っても過言じゃねェっ!。その量産仕様の新型だが…それを起動させたとなるとお前には"勇者"としての素質があるっ!!。「心に従え」っ!。それを手に取るのはお前の"意志"だっ!!。」

 

流星("勇者"?"大赦の真実"?。何を言って……。)

 

流星は座り込む亜耶を見る。

…ボロボロだ。制服も所々破れており、血が滲んでる場所もある。それに…心なしか、怯えている。

 

なら、自分が出来る事は何なのか…このまま見過ごして邪神教団の"巫女狩り"を黙認するのか?。今、危険に晒されてるのは交流はないにしろ同じクラスメイト…それに、怯えているじゃないか。ならば…今は……。

 

流星「…やります、やってやりますよっ!。国土さん、離れて!。」

 

アプリを起動。周囲に花が咲き乱れる。

真っ白な装束に身を包み、流星は「防人」の姿となる。バイザーが上がると、流星の目付きはグッと変わる。両手には、大型のトンファーを携え、その姿は従来の"防人"とは違う…どちらかと言うと''勇者"の姿に近かった。

 

邪教徒「何…変身しただと…!?。」

 

玲司(…問題無ェか……くっ…"こうなっちまった"以上は俺もコイツを無視するわけには行かなくなっちまったな…。)

 

流星「この…ここから出ていけよ…っ…!。」

 

地面を蹴って飛び出す流星。そのあまりの身体能力の向上に身体が反応せず、まるで吹き飛ばされたかのように突っ込む。驚きながらも、邪教徒に向かっていきそのまま体当たり。2人はそのまま校舎裏のフェンスを突き破っていく。

 

亜耶「え…ぇええええ!?。」

 

玲司「アイツ、制御出来てねェっ!無理も無ェか、訓練をまともに受けてねェんだしっ!!。巫女さん、すぐに楠が来るはずだっ!校舎に隠れてろっ!。」

 

亜耶「…いいえ、私も見届けます。あの人を巻き込んだのは…私のせいですから……。」

 

玲司「っ…他の邪教徒も来るかもしれねェしその方がいいか…よし、立てるなら俺から離れんなよ!?。」

 

亜耶「はいっ…!!。」

 

……………………………。

 

その頃、変身した流星は砂浜で邪教徒と戦いを繰り広げていた。驚くべきは邪教徒の方だ。見た目は普通の人間…だが、防人に変身した流星と互角の勝負を繰り広げている。初めてとはいえ、普通の人とは違う身体能力を得たのにも関わらず、まるで"戦い慣れている"かのように。

 

流星(コイツら、ただの狂信者じゃないのかっ!?。邪神教団…一体、何なんだ…!?。)

 

邪教徒「お前が何なのかは分からないが、新生大赦に加担するなら我らの敵だ。粛清してやる、この偽善者共が…!。」

 

手に持った銃から砲撃のような弾が放たれる。突然の攻撃に、流星は反応が遅れた。

 

流星(しまった……っ…!!。)

 

避けることもで出来ずに直撃を受けてしまう。あの威力を受けてはバラバラになってしまう…邪教徒は"勝ち"を確信した。だが……。

 

流星「…なんとも…ない……?。」

 

自身を包み込むように"結界"が作動。全くの無傷だった。しかし、腕の甲にある花の模様が一つ、消耗していた。

 

玲司「あんまり攻撃を受けすぎるなよッ!?。そりゃ、「加護ゲージ」だっ!そいつが全部消費しちまうと、攻撃を受けたらまともにダメージを受けちまうぞっ!。」

 

流星「…っ…わかりました…っ…!。」

 

再び構えを取る流星。戦闘の恐怖からなのか、少し体が小刻みに震えていた。

 

亜耶(…紫藤君……。)

 

流星「お前達はどうしてこんなことをするんだっ!?。"巫女狩り"なんてことをしてっ!。本気で「邪神」を降ろす気なのかっ!?。」

 

邪教徒「ほう…我らの"お役目"を知っていたか…そうだ。この世界は人の世に戻ったが、それは全くの無意味だ。人は愚かな生き物であり必ず同じ過ちを犯す。そうすればまた、天から「天災」共がやって来てはこの世界を蹂躙するだろう。それは避けられない事実…だが、神樹のような守護を目的としたものは何の意味ももたらさない…今度は力で対抗すればいい。人類の生存圏を拡大させつつ、天の神を…殺せば良いのだ。邪神様ならそれが可能…理解したか?。」

 

何を言っている?。全くもって現実から掛け離れた言動だ…そんなもの、出来るはずもないし許すわけにもいかない。そして何より…そんな歪んだ思想のために巫女達が使われるというのか?。そもそも…利用された巫女達はどうなるんだ…?。

 

邪教徒「巫女は神に最も近い人類とも言える。神の声を聞く事が出来る奴らは「降臨の儀」に必要不可欠…天の神の怒りを鎮められる「奉火祭」を執り行うことも出来るその霊力をかき集めれば、邪神様の降臨も必ず可能となる。これは喜ばしいことなのだ、巫女は神の為に身体を捧げ、その贄として役目を全う出来る。さぁ、あの小娘を渡せ。そうすれば、この場は見逃してやる。」

 

…その言葉を聞いた流星に湧き上がるのは…"怒り"だった。

 

流星「ふざけるなっ!そんな狂った思想のために国土さんの命を犠牲になんて出来るかっ!それに、攫った巫女達やその候補生達にも先の未来があるんだぞっ!巫女だからと言って、望んで神の贄になりたいだなんて思うわけがないだろっ!!神の世は終わったんだ、今は…"人の世"だっ!!。」

 

トンファーの持ち手にあるトリガーを引くと、そこから霊力の籠った弾丸が放たれる。それは、邪教徒の右肩を撃ち抜いた。

 

邪教徒「ぐぬっ!?。」

 

流星「はあああああッ!!。」

 

トンファーをクロスさせたまま突撃。その突進力は周辺の砂浜を巻き上げた。

 

邪教徒「ぬううううおおおお!?。」

 

その突進を受けた邪教徒は砂浜を激しく転がり、波打ち際までふきとばされる。銃を手放した瞬間、それは砂のように散っていった。

 

邪教徒「ぐふっ…ごは…なんて…威力だ……。」

 

弱々しく立ちあがろうとしたその時、身体が拘束されて動けなくなった。

 

「全く…予定地より随分と離れてくれたお陰で少し遅れてしまったわ。」

 

その場に響く少女の声。それを聞いた亜耶は表情が明るくなる。

 

亜耶「芽吹先輩っ!!。」

 

芽吹「亜耶ちゃん、随分と酷い怪我を…コイツはただではおかないわ。早く立ちなさい、邪神教団の邪教徒。"巫女狩り"の現行犯でその身を拘束させてもらうわ。」

 

凛々しいその立ち姿の女性の名前は「楠 芽吹」。新生大赦の防人でありその隊長を務めている。亜耶を傷付けられたことで鬼の形相を浮かべていた。

 

玲司「うわ、おっかねェ……。」

 

芽吹「久遠さん、私が合流するまでは亜耶ちゃんと動かないでと言ったはずです。戦闘力のない神官が奴らから逃げ切れるなんて考えられません。それに……。」

 

芽吹は流星を見る。その身に纏うのは自分が纏うはずだったもの。そして、その"異例"に表情は自然と険しくなる。

 

芽吹「貴方、その「戦衣」は……。」

 

流星「無我夢中でやったことです。すぐにお返しします…やれることをやっただけですから…。」

 

芽吹「警戒しないで、貴方が亜耶ちゃんを守ってくれたのでしょう?。"私個人"としては感謝するわ。でも、"新生大赦の防人"としては貴方から色々と聞かなければならない。一緒に来てくれるわよね?。」

 

流星「………はい。」

 

流星は芽吹の申し出に答える。そして、戦衣を解いて下を俯いていた。

 

亜耶「あの、芽吹先輩っ!。」

 

芽吹「大丈夫、悪いようにはしないわ。でも、彼には説明しないといけないの。これまでの"真実"と…私達の新たな"お役目"を。」

 

……それから数十分後。新生大赦の人間が数名やって来ては邪教徒を連行していった。戦闘の跡とその騒音は彼らが首尾よく対応してくれる。

そして、芽吹に連れられた流星は今日のことが"今"に起きた事じゃない事を悟っていた。そして、芽吹から告げられる"真実"と"お役目"。

 

現実志向の彼にとってはとても信じられないことになるだろうと腹を括る。

 

〜新生大赦・防人寮「芽吹の部屋」〜

 

芽吹「遠慮なく座って頂戴。今、お茶を出すから。」

 

怪我の具合はそこまで酷くはなかった。道中、移動しながら手当を受けていたので話くらいは問題なく聞けそう…そう思って、その場に座る。

亜耶と玲司も同席だ、そして流星は思った。「自分以外は新生大赦の関係者だ」と。

 

流星「それで、話ってなんですか?。やはり、"これ"を起動させたこと…ですよね。」

 

そう言って、机の上に端末を置く。芽吹がそれに手をかざすと、何も反応しない。

 

芽吹「…やっぱりね。もうそれは、貴方の"もの"よ。」

 

流星「…えっ……?。」

 

芽吹「その「防人システム」はより"勇者"に寄せられたもの…つまり、"素質"のある人間が起動させてしまえばもうそれはその人にしか纏えないの。」

 

流星「そんな…じゃあ俺、どうなるんですか…!?。」

 

芽吹は辛辣な顔をする。その表情から察するに、彼は"日常"を手放さなければならない。

 

芽吹「…新生大赦…いえ、私達「防人」に加わりなさい。そして、貴方には私達の"お役目"を共に遂行してもらう必要があるわ。それは…神樹様のいない"今"の世界で唯一、"勇者"としての力を発揮できるもの…それは人を守る力よ。」

 

それを聞いた流星は納得のいかない表情で反論する。

 

流星「そんなの、身勝手過ぎますよ!。こんなもの、俺は要りません!今日の事も誰にも話しませんし、それに…戦いだなんて俺には無理です!。下手をすれば今日の奴だって死んでたかもしれない!。俺はただ、無我夢中で…!。」

 

玲司「……すまねェが、お前に"勇者"の適性が見られた以上、邪神教団の奴らも目くじらを立てて狙うことになる。お前の身の安全のためにも、ここは楠の言う通りにして欲しい。無論、新生大赦が全面的にお前の事をバックアップする。だから……。」

 

流星「…俺に…人殺しをしろと言うんですか…?。」

 

玲司「違うッ!。あいつらを野放しにしてるとこの世界はまた……!。」

 

流星「…そんなの、"真実"を知らない俺にとっちゃ同じことです…。」

 

それだけを言うと、流星は何も話さなくなった。

 

亜耶「…紫藤君…ごめんなさい…私の…私のせいで…。」

 

その部屋に漂うのは…ただただ、沈黙のみだった…ーーー。

 

……………………………end。

 




少年は"拒絶"する。その"今"を。
少女は"願う"。その"未来"を。

四国に蔓延る"人の悪意"は徐々に不穏な空気を作り出していく。

…そして、その悪意は…"牙"を剥く。

次回
第3話 無垢なる少女。
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