紫藤流星は"勇者"になる。   作:やままん

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「大葉刈」を巡り、激突する防人達と"黒百合"。

"神具"と言われた初代勇者たちの武器は、300年経った今でもその効力と影響は語り継がれていた。

現存するものは奪われた「生太刀」とここにある「大葉刈」のみ。

死守せよ、神に見初められた少女達の"意思"を――――


第33話 世界から"捨てられた"者。

黒百合「―――ふんっ!!。」

 

稲妻のような太刀筋。

受けは両断を意味するようなその踏み込みに、避けながら流星は活路を詮索する。

芽吹たちも「戦衣」を纏い、応戦。

 

「五対一」の構図だが、それほどにまで"黒百合"の戦闘能力が高いことが分かる。

事実、この数の差を感じさせないほどにまで彼の攻勢は凄まじく、有効な手段がまるで見い出せないでいた。

 

芽吹と流星が近接攻撃を仕掛けるが、黒百合は余裕があるように見える。

挟み撃ちも通じない……この強敵をどう攻略するか、攻撃を加えながら芽吹は冷静に考える。

 

黒百合「ハハハッ!。どうした、この世界を守る次代の"勇者"なんだろう、お前たちは!。」

 

斬撃の合間に蹴りを入れ、芽吹は吹き飛ばされる。

 

芽吹「くっ…ぅうう…っ!?。」

 

黒百合「討ち取ったぞ、楠芽吹!!。」

 

「生太刀」の切っ先を突きつけ、芽吹の懐を捉える。

 

夕海子「…やらせはしませんわっ!!。」

 

地面を蹴って飛び出し、二人の間に入った夕海子。

『防人システム』に表示された「強化装束」を起動。武器が戦槌に変化し、黒百合の攻撃を受け止めた。

 

黒百合「それがかの噂の「強化装束」か…。」

 

夕海子「…これでぶちのめして差し上げますっ…!。」

 

強引に戦槌を振り抜き、黒百合を弾く夕海子。

流石にその一撃は捌き切れず、壁に叩きつけられる…そして、追撃を掛ける為に夕海子は再度、飛び出す。

 

両腕に目一杯の力を込め、渾身の一撃を振りかざす…―――――

 

 

―――――…だが…。

 

 

夕海子「…なっ…!?。」

 

黒百合「…素晴らしいな、"神具"とやらは…。」

 

戦槌を「生太刀」で受け止めた黒百合は片手で容易く弾く…その力は強く、彼女は思わずのけ反ってしまった。

 

黒百合「まずは一人…!!。」

 

強烈な袈裟斬りが繰り出される。

避け切れないと判断した夕海子は崩れた態勢のまま、戦槌を盾にしてその刀身を真っ向から受け止めた。

 

だが、想定を遥かに上回るその腕力に負け、左肩を激しく切り裂かれた。

舞う鮮血…夕海子は痛みで顔を歪めてその場に崩れ落ちる。

 

黒百合「…判断がいいな。力負けすると分かって、芯をずらしたか…。」

 

夕海子「っ…ぅう……その神聖な刀で殺められる…訳にはいきませんもの……。」

 

シズク「下がってろ、弥勒っ!。」

 

シズクの怒声と共に横切る弾丸は黒百合の頬を掠めていく。

 

黒百合「次はお前か?。」

 

シズク「余裕ぶっこいてんじゃねェ、仮面野郎っ!。加賀城、弥勒を連れて後方で待機してろ!。止血してやんねェとその傷、危ねェぞ!。」

 

雀「わ…分かった…!。」

 

轟く銃声。しかし黒百合は弾丸の軌道が見えているのか、照準をずらした動きでシズクに接近する。

そして、芽吹と流星も後に続く。

 

黒百合「三対一か……。」

 

芽吹「安心なさい、私たちは誰も殺めない……でも、お前を拘束させてもらうわ!。」

 

銃剣二刀流で競り合う芽吹。その脇から、シズクの狙撃が黒百合の虚を突いた。

 

黒百合「これは……想定外だな……。」

 

芽吹「今よ流星!!。」

 

流星「はあああああ!!!。」

 

頭上に現れた流星は振り回したトンファ―を振りかざす。

回避行動に移った黒百合は、上空からのその攻撃を避けたが、流星は次の行動に移っていた。

 

流星「―――そこっ…!!。」

 

左腕のトンファ―を反転させて、反対側に取り付けられた銃口を向けてトリガーを引く。

 

黒百合「む…っ!?。」

 

放たれた霊力弾は見事に直撃。黒百合は吹き飛ばされ、黒煙に包まれながら地面を転がっていく。

 

玲司「やったか…!?。」

 

戦闘の影響で、床はボロボロだ。武器を構えながら、黒百合が倒れている場所へと近付く。

 

だが、その時……。

 

亜耶「くぁっ!?。ぅううう……っ!!。」

 

亜耶が突然、頭を押さえてその場に崩れてしまう。

この異変に、三人は一瞬だけだが警戒を解いてしまった。

 

その隙を突いて、黒百合は態勢を立て直した。着ていた戦装束は所々に破けが見られるが、仮面までは砕けていない……直前で身を引いたのだろう、幾分かは直撃のダメージを軽減させていたのだ。

 

芽吹「しまった!。」

 

シズク「おい、どうしたんだ国土っ!?。」

 

亜耶「ぅうう……何かすごい……"怨嗟"を感じます…っ。」

 

流星「"怨嗟"だって!?。」

 

辺りを見渡す流星。亜耶が感じたその"怨嗟"は、神官である玲司も感じ取っていた。

 

玲司「…これほどにまで、"恨み"を抱えてやがったのか……この"神具"は…!。」

 

玲司が見る方向…そこには、安置された「大葉刈」があった。

先ほどまでとは違ってどこか禍々しい雰囲気を放っており、その場の空気を凍り付かせるほどの寒気すら感じさせる。

 

そして……"声が聞こえた"。

 

――――…どうして。

 

"少女"の声が聞こえる…―――。

 

それと同時に、亜耶と玲司を襲う頭痛がより強くなる。

他の一同には頭痛と少女の声は聞こえない…雰囲気のみ、どこかおかしいことを感じる。

これが"怨嗟"?。

 

人が持つ"感覚器官"が超越している流星ですら、その感覚だけは掴めない。

そして、黒百合は仮面の下で笑みを浮かべて「大葉刈」を見る。

 

黒百合「…やはり、"お前"も俺と「同じ」か…。」

 

流星「な…何を…?。」

 

黒百合「今に分かる。この「大葉刈」は、「生太刀」と真逆の運命を辿っていることが。」

 

その時、黒百合の持つ「生太刀」が強く発光する。

こんな現象…史実でも見たことも聞いたこともない。

目の前で起きている現象は、人智を遥かに凌駕した現象…どうなるか、誰も想像がつかない。

そんな中、玲司だけはその現象に警鐘を鳴らす。

 

玲司「不味い…今すぐにコイツを追い払え!!。」

 

芽吹「えっ……!?。」

 

玲司「「大葉刈」と「生太刀」が相反する神力を放ってやがる!!。長い年月を経て、この二つの"神具"は超常的な力を内包したんだ!。何が起こるか分からねェっ!!。」

 

シズク「神具ったって、ただの武器のようなもんだろっ!?。"初代勇者"の逸話がそうさせてるだけで……!!。」

 

玲司「言ったろ!?これらには"意思"があるって!。"初代勇者"達が”勇者"として神に認められた直接的な要因はこの"神具"達を覚醒させたからだ!!。ただの武器なもんか、"神具"は神が鍛造した武器なんだ…俺達の範疇なんて余裕で超えてくる「遺物」なんだよ!!。」

 

その瞬間、「生太刀」からは白い光が…「大葉刈」からは黒い光が放たれてお互いにぶつかり合う。

その時、一同の脳裏に「ある光景」が映し出された。

 

 

 

――――――――――――――

 

―――降りしきる冷たい雨。

 

蒼い戦闘装束を纏った少女は、血だまりに沈む黒髪の少女を抱えて大声で泣き叫ぶ。

その少女は懸命に、黒髪の少女の「名前」を呼ぶ。

 

――…しかし、その「名前」は聞き取れない。

その少女の叫びだけが聞こえる……黒髪の少女の瞳は虚ろなものとなり、命の炎が尽き掛けていた。

…何かを伝えているのだろう……言われた少女は首を大きく横に振り、血に染まる衣に絶望の表情を浮かべる。

 

そして…"声"が聞こえた…――――。

 

「死ぬなっ!"■■っ"!。私を独りにしないでくれっ!!頼む…っ!!。」

 

「……馬鹿ね……私なんかの為に………最期のお願いよ……"彼女"に…伝えて……。」

 

 

 

"ありがとう……“って…―――――。

 

 

 

 

…その瞬間、脳裏に浮かんでいる「黒髪の少女」だけが消えていった。

だが、戦闘装束を纏った少女だけは、何もないはずの血だまりに顔を埋めて必死に呼びかける。

そこに落ちているのは、画面が真っ黒になった「端末」のみ…。

だが、戦闘装束を纏った少女には見えているのだろう、まだ必死にその"何か"を呼んでいた―――。

 

 

……………………………………………。

 

そこで、光景は途切れた。

 

…これはきっと、「大葉刈」と「生太刀」に刻まれた"初代勇者"達の記憶だろう。

そしてあの黒髪の少女こそ、「大葉刈」の持ち主…・・「歴史から抹消された"勇者"」なのだろう。

…存在そのものが、消された少女……他の"4名"については、長い歴史の中でも風化することなく、語り継がれている…それも、歴史の授業で必ずと言ってもいいほどよく聞く"名前"だった。

 

"真実"については捻じ曲げられていたが、語り継がれているこの"4人"の功績は本物だ。

しかし、今見たあの黒髪の少女だけは何も知らない…何故、"名"を消されてしまったのか……そして、「大葉刈」が放つこの"怨嗟"は一体、何なのか…もしかして、歴史から消されたことによって抱いたあの少女の"恨み"なのか…?。

 

そう思っていた防人達…しかし、亜耶は全てを理解したように、無意識に涙を流しながら声を絞り出す。

 

亜耶「……これは…「大葉刈」が記憶したあの人の記憶…そして、この"怨嗟"は……少女を「消した」この世界と神樹様に対して抱いた「大葉刈」自体の"怨嗟"……この神具はきっと、その少女の事をずっと思っていたのかもしれません……。」

 

その言葉に、黒百合は納得したように声を出した。

 

黒百合「そう。これは「大葉刈」自体の"恨み"だ。神に見捨てられ、世界にも見放された孤独な少女をただただ思っての事。」

 

玲司「……武具は使い手の意思に応える……神具なら尚更だ……例え、神と世界から見放されても最期まで共にあるつもりだったんだろ……そして、「生太刀」は世界から崇められ、"初代勇者"唯一の生き残りであり、後の"大赦"を牽引して来た"乃木若葉"が手にしていた神具……だから、「大葉刈」が"拒絶反応"を起こしたんだろう…。"真逆の運命"を辿った神具がそこにあるから…。」

 

その時、黒百合は「大葉刈」に向かって歩き出す。

 

流星「何をする気だッ!?。」

 

黒百合「分からないか?。もう、この神具はお前達の手に負えるようなものではない…見ろ、この放たれた"瘴気"を。」

 

凄まじい寒気…そこから放たれるものはまるで、自分達を切り裂かんとする強い"恨み"。

 

黒百合「叶えてやろう。かつての主が見れなかった世界を見せてやる。それが、お前の"望み"なのだろう?。」

 

「大葉刈」を手にした途端、その"瘴気"がより一層、激しくなる。

「生太刀」もまた、光を浴びるが黒百合の"邪気"に呑み込まれ、その刀身が黒く染まってしまう。

 

亜耶「ダメ……ッ……!!。」

 

玲司「…おいおい…これは夢か…最悪の事態になっちまった……現存する神具の二つが奴の手に…しかも……。」

 

黒百合は刀と鎌…その二つを携えてゆっくりと構えを取った。

 

玲司「全員、退避ッッ!コイツ、高知支部を丸ごと吹っ飛ばす気だッ!!。」

 

芽吹「なんですって…!?。」

 

黒百合「…まずは手始めに、この支部の者達を皆殺しにしよう。」

 

"呪具化"した2つの神具…「生太刀」と「大葉刈」。

その二つを手にした黒百合は自らの纏う"邪気"をその刃に乗せて。

 

――――振るう。

 

 

……………………………………。

 

………大雨降り頻る中。

瓦礫と化した『高知支部』"だった"ものを見る防人達。

…そこに、神官達の遺体は無い…文字通り、跡形も無く吹き飛ばされたのだ。

命からがら、何とか黒百合の一撃から生き残った防人達。

亜耶は玲司が唱えた防護の祝詞により、何とか守られていたが当の玲司は傷だらけとなっていた。

そのまま、タバコを咥えて火を付けるが雨に濡れたタバコに火は付かない。そして、深いため息を吐いて瓦礫に座り込み、額から流れる血をゆっくりと拭いながら…――。

 

玲司「……任務失敗だ。帰投しよう、これからの事を…考えなきゃ行けねェ。」

 

…何も出来なかった。

この2ヶ月間、死に物狂いで戦って来たが突如現れた1人の敵によってその全てが否定されたかのように、成す術も無く二つの神具が奪われてしまった。

それだけじゃない……神格化された武具そのものが、"呪具"へと化してしまったのだ。

 

……防人達は…"敗走"という結果に、悔しさを交えながら玲司の指示に従って、香川へと帰投するのであった…――――。

 

……………………end。




黒百合によって奪われた「大葉刈」は、その"恨み"を利用されて“呪具化"してしまう。それだけじゃない、「乃木家」から奪われた「生太刀」もまた、同じことに……。

そして、追い討ちを掛けるように今度は"十二星座の使徒"『最強』と呼ばれる"使徒"…「獅子座」が現れて…――――。

次回
第34話 漆黒の炎。
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