紫藤流星は"勇者"になる。   作:やままん

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"大赦"と"邪神教団"。

それは相反する者同士…しかし、共通するものが一つだけある。


―――"神"を崇める事。

そう…彼らは、"神"という唯一無二の至高の存在に縋るのだ―――


第40話 虚神。

玲司「……『三神官』が描いた…"脚本"だと…?。」

 

 

―――突如として、本殿に現れた黒百合。そして何故か、『水瓶座』も連れてこられていたのだ。

しかし、彼の仮面は砕けボロボロに…恐らく、今回の一件は教団側でも物議を醸していたのだろう。

 

そして、『水瓶座』は彼によって粛清されたのだ…こうして、この場に連れてこられたという事は、これから語ることは何となくだが分かる。

自分達が疑ってきたこと…今回の作戦の真意……そう…"邪神教団"と"新生大赦"…いや、『三神官』の"繋がり"について。

 

黒百合「安心しろ、今から語ることはこの場に居る者にしか伝わらん。お前達、"防人"には知る権利がある。あの空間での借りを返しに来たとでも捉えればいいさ。何せ、これはこっち側(教団)にとっても、有利な事なのだからな。」

 

アクエリアス「『三神官』様!私は…私は……!。」

 

…あの傲慢な『水瓶座』がこうも情けない声を上げるとは、思いもしなかった。

彼…黒百合の登場で、全ての歯車が狂い始めてきた…彼は台風…今のこの状況を良くも悪くも荒らす大きな"嵐"だ。

 

そして、この『水瓶座』は俺の……"怨敵"だ。

親友…峻輝を殺した張本人だ。

恨みが無い…と言えば嘘になる。しかし、今は私情を挟むわけにいかない。

 

ここは、耐えるしかない…そう思って黙認する。こんなにも取り乱しているのだ。黒百合の話を聞こう。

 

黒百合「此度のあの罠を作り出したのはコイツだ。コイツは旧大赦の元神官……そして、コイツを"邪神教団"に送りつけたのはこの『三神官』だ。」

 

『三神官』は何も言わない。そして、「水瓶座」を見下すように。

 

須佐之男「……潮時か。」

 

月読「…はぁ、三日天下も良いところだよ全く。こんなに早く、嗅ぎつけられるなんて。」

 

天照「良いでしょう、時期が早まっただけです。」

 

『三神官』が指を鳴らす。

すると、「水瓶座」が突如として苦しみだした。

 

アクエリアス「ぐうぁ…!?。ああああああああっ!!?。」

 

流星「な…何が起きて……!?。」

 

"黒百合"以外、状況が呑み込めない。

…なんだこの状況は……一体、何が起きている…?。

 

玲司と流星、そして陰で見ていた芽吹は言葉を失う。

 

黒百合「……"バーテックス因子"を暴走させたか……。」

 

須佐之男「"バーテックス"とて、神が創り出した至高の存在…"人"の身でありながらその力を飼い慣らすことなど出来やせぬ。」

 

天照「黒百合、貴方のその考察はとても素晴らしい。しかし、足りんせんね?。」

 

黒百合「…何…?。」

 

月読「君、私達がコイツをあんた達のところに送ったって言ったね?。残念、その考察は間違いなんだな……そう、私達こそが……。」

 

 

"邪神教団"の「大司教」なのだから…―――――。

 

 

玲司「……は……?。」

 

『三神官』が語ったその言葉…当然、理解が追い付かない。

これまで謎とされてきた「大司教」と呼ばれる存在……"巫女"の候補生が何人も犠牲になったこの事件の発端者……。

 

"邪神教団"の「大司教」…これが、この『三神官』だという。

加えて、彼らは"新生大赦"の最高神官の地位を持った人物。

 

つまり、味方の中に真の敵がいたという事だ。

ならば……――――。

 

玲司「…宗主様を襲ったのも……!。」

 

須佐之男「そう。彼女が表舞台に立たれては困るのでな……そちらの黒百合を使って襲わせてもらった。」

 

それを聞いた黒百合は、静かに拳を震わせる。

 

流星「黒百合……。」

 

黒百合「…言い訳はしない。俺は指令を受けて行動したまでだ。自分が利用されたなんて最早、どうでもいい…しかし……。」

 

スルリと、「生太刀」を抜く黒百合。

その殺気は本物だ。

 

黒百合「人を使ったんだ、それ相応の報いは覚悟出来ているだろうな…?。」

 

天照「残念ながら、貴方は我々を討つことなんて出来ません。そのシステム……「疑似勇者システム」の管理権限はこちらにありますから。」

 

流星「ちょっと待て…「疑似勇者システム」だって!?。」

 

月読「そうだよ?。"黒百合"は君の持つそれと同じもの…ま、君のを元に構築したものだけどね?。それ、表向きには"旧体制派"が作ったことになってるけど、そもそも私達が主導で作ったものなんだ?。つまり、君のその力だって、私達の目的の為に作ったもの。本当は楠芽吹に使ってもらうつもりだったんだけどどういう偶然か、"神樹様"の御加護を受けた君の手に渡った……驚いたよ、本来あるはずだった管理権限が死んだんだもの。どうやら、君の「疑似勇者システム」は私達を拒絶したようだ。」

 

須佐之男「我々はこの世界にもう一度"神"を降臨させる。"人"が犯す過ちはどんなに時を重ねても同じ結果となることは明白なのだ。"天の神"の圧倒的な力による蹂躙は終わらせなければならない。"真の自由"を手にするには、"神"を以て"神"を討つ…人が成せる事は無いのだ。その為に"邪神教団"という、もう一つの活動拠点を造り出したのだからな。」

 

天照「"反大赦団体"の方たちも快く受け入れてくれました。"旧大赦"の隠してきた事実を知り、嘘で塗り固められたこの世界を変える為に我々に賛同してくれた。」

 

玲司「……それが"邪教徒"というわけか…。」

 

そして、暴走状態に支配された「水瓶座」は"半バーテックス化"し、最早、人としての形は失われていた。

 

黒百合「…フン。愚か者の末路というやつだな。紫藤流星、身構えろ。死にたくなければな。」

 

流星「…っ……!!。」

 

流星は「疑似勇者システム」を起動。"戦装束"を身に纏う。

 

流星「…とりあえず、言いたいことや聞きたいことは山ほどあるけど……今は時間が無いんだ!。その間にあの時間軸に取り残された弥勒先輩が……!。」

 

そう言いながら、"半バーテックス"状態の「水瓶座」に突っ込んでいく。

 

アクエリアス「うがああああああああ!!。」

 

流星「…「水瓶座」…お前を許す事なんて出来ないけど、同情するよ。"神"という存在に振り回された"被害者"だってことに…!。」

 

須佐之男「…計画は順調に進んでいる…"巫女"の候補の者を狩る意味も最早、無くなったといえよう…そう、我々は確信した。」

 

天照「…"神"が消えたこの世界で唯一、"神託"を受けられる者……その力は我の想像を遥かに凌駕する。」

 

月読「あの子こそ、この世界に"神"を呼び込める力を持った"巫女"なんだ。」

 

 

―――「国土亜耶」…彼女こそ、"神樹様"に代わる新たな神を降臨させるに相応しい"巫女"―――――

 

 

それを聞いた流星は、激昂する。

何となく、予想は出来ていた……しかし、化けの皮が剥がれたコイツ等のエゴの為に彼女を犠牲にするわけにはいかない…守って見せる、助けると……決めたから―――

 

 

流星「限定解除ォォォっ!!。」

 

「疑似満開」を発動。周辺に花びらが舞う。

 

黒百合「……これが…お前の咲かせた"花"か…。」

 

流星「――――はあああああっ!!。」

 

霊的エネルギーが刃となり、トンファ―を突きつけて「水瓶座」を切り裂く流星。

手ごたえあり…しかし、"バーテックス"の再生力がそのダメージを癒し始める。

直後、「アクエリアス・バーテックス」の能力が発揮され、圧縮された高圧水が放たれる。

それは最早、刃物…避けたその先が瞬時に切り裂かれた。

だが、流星は止まらない……すぐに攻勢の手に切り替える。

 

流星(迷いは無い……それに、俺は"恨み"の為にこの力は振るわない……この力は…"人"を救うための力なんだから……!。)

 

「疑似満開」の赤いラインが変化。"信念"と"心"を体現させるかのような、淡い「蒼」の輝きへと変化する。

 

玲司「…色が…変化した…!?。」

 

流星「もう……眠れぇぇぇぇえっ!!。」

 

右手を薙ぎ払うと、蒼い光のエネルギーが一直線に放たれる。それを受けた「水瓶座」の変貌した身体は崩壊を始める。

 

アクエリアス「……私は………ワたSIはぁ亜ぁぁ亜ああああっ!!。」

 

崩壊と共に「水瓶座」は断末魔を上げる。その末路は……あまりにも、あっけないものだった。

その時、「水瓶座」の身体の中から球状の物体が現れる。

 

玲司「なんだこりゃ…。」

 

須佐之男「"疑似御霊"と言われるものだ。これが、"バーテックス因子"の正体……これがあれば、「水瓶座」の代わりなどいくらでも……。」

 

須佐之男が「疑似御霊」の回収に、手を伸ばす。

 

――――だが、その時……。

 

「させないわ。撃ち抜くっ!!。」

 

一発の銃弾が、「疑似御霊」を的確に撃ち抜いた。

その弾痕は正確無比な狙撃力を体現するかのように、中心を捉えていて。

 

そして………。

 

「……目標に命中。ふぅ……なんとか間に合ったわね?。」

 

本殿の入り口からゆっくり歩いてやってきたのは「東郷美森」。

その手には大型の狙撃銃を手にしていて、一番目を見張るのはその姿だった。

 

"勇者"の戦闘装束でいて、どこか"防人"を彷彿させるかのような戦装束……両耳には通信機のような端末を付けたその姿。

 

だが、この人達はもう"勇者"としての力は無いはず……戦いから程遠い「日常」へとようやく戻れたと言うのにこの姿は一体…?。

 

『三神官』を見ると知らなかったのか、驚愕を浮かべた表情がその仮面越しでも分かるくらいにまで取り乱だした様子が伺える。

そして、続いて"彼女"が…――帰ってきた。

 

 

「やっと、尻尾を出してくれたね?。おかげで大怪我を負った甲斐があったというものだよ?。」

 

柔らかな、それでいて全てを見透かすかのような威圧すら感じられるその声…

 

"新生大赦"宗主「乃木園子」。

 

その本人が…帰ってきた――――

しかし怪我の代償は大きく、車椅子での登場だった。その傍らには腹心の安芸も居て。

 

 

月読「…宗主……何故、ここに…!?。」

 

園子「君達の事は少し前から怪しいと思ってたんよ。でも、流石にショックだったな……これまでずっと、大赦を陰から支えてくれた君達『三神官』が造反するだなんて……。」

 

天照「……貴女の判断次第では、造反するつもりなんてございませんでした。しかし…この世界は我々が物心ついた時からずっと"神"という存在と隣り合わせで生きてきた…我々の名乗るこの『名』も、遠い時代から脈々と受け継がれてきたもの…それを今更変えるなど、これまでの生き様を否定されたも同然なのです。」

 

園子「そっか……君達は、今の時代を受け入れられない…ということだね?。これも、私の力不足かな…ごめんねとしか言いようが無いよ。」

 

自分の無力さに少し悲観的になる園子。しかし、すぐに凛と表情に切り替わって。

 

園子「でもそれはそれ。君達がやってきたことは黙認出来ないんよね…その行動でどれだけの人が犠牲になったと思う?。明日を奪われた人…大切な人を奪われた人…未来を閉ざされた人…日常が壊れた人…たくさん、居るんだよ?。君達の掲げるその理念のせいで泣かなくても良い人がたくさん、泣いてるんだ。苦しんでるんだ…。」

 

 

園子は強い眼差しで見つめて…―――

 

 

園子「――――絶対に、許さないんだから。」

 

それと同時に、月読が何かを唱え始める。だが、それを見逃さないのが……東郷美森だ。

 

美森「――――そこ。」

 

躊躇なく、引き金を引く美森。その弾丸は月読の持っていた札を撃ち抜いた。

 

月読「くっ………!。」

 

須佐之男「我々の実態を晒した時点で幕引きだ。"新生大赦"は諦めよう。だが……我らの考えは覆らない。また、会おう。」

 

『三神官』は砂のように消え、その場から去っていく。

手を伸ばした玲司が握り締めていたのは、枯れた葉だった。

 

玲司「クソっ!。敵の本丸はすぐそこだったってのにっ!。」

 

安芸「良い、深追いは禁物よ。それよりも、やることがあるのでしょう?。」

 

流星「……そうだ、弥勒先輩を迎えに行かないと……!。」

 

園子「待って、無暗に行動したって、君まで帰って来れないかもしれない。」

 

流星「しかし……!!。」

 

園子「私を信じて?確実に戻って来れる策を講じちゃうんだから。」

 

 

ウインクしながらそう言う園子。

そして……始まる。

 

―――弥勒夕海子の救出作戦……。

 

―――もう一度、"二年前の時間軸"へと。

 

 

………………………end。

 




…もう、誰も死なせない。

…もう、何も手放さない。

だから、立ち上がるんだ…――――。

"絶望”を乗り越えて…――――。

次回
第41話 "希望"という名の花。
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