紫藤流星は"勇者"になる。   作:やままん

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防人…それは、勇者になれなかった少女達。
防人…それは、"代替"が利く"消耗品"。
防人…それは、影の立役者。

そして……決して折れない32人の少女達の事を言う…。


第6話 "お役目"。

 

…俺が"防人"の一員になってから数日が経った。邪神教団は幾らかの信者が捕まったせいなのか、ここの所は"巫女狩り"と言う巫女の拉致事件を起こしていない。流石に、新生大赦が警戒しているせいなのか、楠先輩によると事件の勃発が6割ほど減少していると言う。

 

……奴らは、国土さんの"巫女"としての能力に着目している。どうやら、彼女は普通の巫女よりもより高い霊力の持ち主らしい。

その"霊力"とやらが何なのかはさっぱり分からないが、久遠さんによるとそれは「神と対話する為」の力に加えて、防人達の戦力を格段に挙げられるほどの特異な力らしい。ゲームでいう「バフ」というやつだ。彼女が祝詞(のりと)を唱えると、元々ある防御システムが限界を超えてその性能がとんでもなく跳ね上がるらしい。まぁ…それだけではない"もっと重要"な力があるらしいが…流石にそれは新生大赦の上層部と彼女にしか分からないと言う。当然、一番距離の近い楠先輩ですら知らないことだ、"誰にも話せない事情"とやらがあるのだろう。

 

…そして、当の俺は……今日もまた、山伏先輩にしごかれている。実戦形式の訓練だと言うが…流石に生身でやるのは違うんじゃないかと少しだけ、思ってしまう。

 

シズク「オラァァァァァァッッ!!。」

 

流星「ちょっと待って…タンマ…ぐわぁああああああッッ!?。」

 

竹刀で激しく叩かれ、流星はその身体が吹き飛ばされる。もう何度目なんだろうか、流石に怪我も幾つか見られる。打たれた場所が激しく腫れ上がり、まるで不良に絡まれて殴られたかのようにズタボロとなって。

 

そして、亜耶はワタワタとしながら止めに入ろうとするが芽吹がそれを許さない。

 

芽吹「さっき私が言った事を忘れたのかしら?。猛攻撃に対しては視線を逸らすなと言ったでしょう!?。何度"死ねば"気が済むのッ!?。」

 

流星「うぅ……ッ……!!。」

 

亜耶「紫藤君ッ!。えと…芽吹先輩、もう少しレベルを落としてあげることは出来ませんか…?。彼、凄い痛そうで……。」

 

芽吹「実戦では痛いだけじゃ済まないの。命を落とす危険だってある…怪我で済めば御の字よ。いつだって、死ねば何もならない。」

 

芽吹(そう…彼は"異例"。私達(新生大赦)に取っても、邪神教団に取っても…そして、"神"に取っても。だから、心を鬼にして強くしなくちゃいけない…彼が死なないように…殺されないように…。)

 

…………………………………。

 

シズク「…もうやめだ。これ以上はただのイジメだぜ?。」

 

傷だらけになりながら地面に倒れて息を切らす流星を見ながら、流石のシズクでも手を止めた。

 

芽吹「………計24回。」

 

流星「はぁ…はぁ…えっ…?。」

 

芽吹「計24回、貴方は"死んだの"。この意味は分かるわよね?。」

 

流星「実戦なら死んでるって事…ですか。」

 

芽吹「ええ、そうよ。貴方の知らないところで私達はずっと戦ってた。それが今、また起ころうとしている。邪神教団の脅威はただのカルト教団じゃなかった…その本質はこの世界にまた戦いを呼ぶもの…止めなければいけない。"勇者"達が命を燃やして終わらせたあの地獄の再来を起こすわけにはいかないの。だから……。」

 

流星「もう一度、お願いします…!。」

 

流星はガクガクになりながらも立ち上がった。

 

シズク「おいおい、大丈夫なのかお前!?。」

 

流星「はいッ…まだやれます…お願いします…!!。」

 

…それから1時間。流星は何とかくらいつくも結局はシズクから一本も取れなかった。だが、その表情はやり切った顔をしていた。

そして、亜耶から手当を受けている。

 

流星「いててっ!。」

 

亜耶「ひゃあ!ごめんなさい!!。」

 

玲司「何謝ってんだよ、傷に染みるのは生きてる証拠だ。ありがたく思え?。」

 

タバコに火を点けて、椅子にドカッと座る。手には何やら書類を持っており、そこには新生大赦を現すマーク…「豊穣」を意味するかのような稲穂と鍬の印が押されていた。

 

しずく「…タバコはダメって…。」

 

玲司「細かいことは気にしなさんな、堅っ苦しい会議で疲れちまったんだよ。」

 

芽吹「…それ……"お役目書"ですか…。」

 

玲司「お察しの通り。防人の皆さんに"お役目"が言い渡されました。つっても、少人数の任務だけどな?。さて…読み上げるぜ?。」

 

ーーーーーーーーーーーー

通達。

防人の以下3名に命ずる。

命 邪神教団のロッジ跡を調査せよ。

 

名 楠芽吹、山吹しずく、紫藤流星。

 

以下3名による作戦とする。なお、戦闘は認められたし。

 

承認 乃木園子。

ーーーーーーーーーーーー

 

芽吹「……まさか"宗主様"直々の任務だなんてね…廃棄されたロッジの調査…か…どうやら、新生大赦の本殿も邪神教団の本質に気付いたようね。」

 

流星「本質……"バーテックス"とかいう化け物の事ですか…?。」

 

芽吹「ええ。バーテックスがまた関係していると言うことで調査に踏み切ったのでしょうね。そこに残る資料なんて無いだろうけど………恐らく、"巫女狩り"に関するものがあるかどうかを調べろって事でしょう。」

 

しずく「ん……邪神を降ろす為の儀式の痕跡…とか…?。」

 

芽吹「ええ、そうね。しかもここは最近、廃棄されたロッジ…"弥勒さん"が潰した場所だわ。」

 

流星「そこに何があるのか……。」

 

流星はそのお役目書を見る。自分の名前が入ってる辺り、今回の"お役目"は初めての参加となる。学校は新生大赦の根回しにより休みにしてもらっている。この事情を知られるわけには行かないからだ。

 

亜耶「紫藤君のお名前が入ってますね、これ…持っていってください。」

 

亜耶は手製の猫のお守りを渡す。

 

流星「…これ…お守り…?。」

 

亜耶「はい。無事に帰って来ますようにとお祈りを込めておきました。本当は、訓練でお怪我をされないようにと願ったのですが…渡す前に訓練を始めちゃうものだから。」

 

流星はそのお守りを自分の端末に付けた。そして、それを亜耶に見せるように今出来る笑みを浮かべる。

 

流星「ありがとう、行ってくるよ。」

 

亜耶「はい、いってらっしゃいませ。芽吹先輩としずく先輩もお気をつけて。」

 

芽吹「ええ。久遠さん、ここはお願いします。」

 

しずく「…お土産、買って帰ってくるね。」

 

玲司「おう、巫女ちゃんは任せとけ。距離はそこそこある…時間も時間だから移動中に寝ておけ。いいか、変身してさっさと行こうとするなよ?。お前らの過激な訓練でズタボロの野郎がいるからな。」

 

流星「えっと……。」

 

芽吹「わ…わかってますよ。タイミングが悪かったわね…でも、いい機会だわ。何が出るか分からないからこそ、神経を研ぎ澄ませなさい。いいわね?。」

 

流星「わかりました…!。」

 

そして、新生大赦から受けた"お役目"のために3人は出発する。場所は瀬戸内海に点在する小さな島の中。そこに行くには船を使って行かなければならない。だから、移動には約1日を要した。

 

翌日……。

 

芽吹「…ここね。」

 

船から降りて寂れた港に足をつける芽吹。周囲に人の影は無い。そして、その山の中に見えるのは焼けこげた建物…まさに、戦闘の跡そのものだった。

 

しずく「弥勒、派手にやったね。」

 

芽吹「ええ…余程、嫌なことがあったのか許せないことがあったのか…この様子じゃ、収穫は臨めないわね。」

 

先を歩く2人。その時、流星は頭の中で何かが走ったかのように違和感を感じる。

 

流星(っ……なんだこの感覚は……2人はなんともないのか?。)

 

端末の時間を見る流星。亜耶からもらったお守りが目に入った途端にその"違和感"は和らいでいった。

 

流星(少し楽になった…これが祝詞の力?。)

 

しずく「紫藤、早く。置いていくよ?。」

 

流星「す、すみません…!。」

 

……………………………………………。

道中、何が起こるか分からない。念の為、変身を済ませた3人。

そして件のロッジの前までやってくる。

 

流星「…なんだ…この銅像……丸い化け物…?。」

 

目のない、大口を開けた見たこともない異形。それを見た芽吹はまるで"怒る"ようにその銅像を粉々に砕いた。

 

芽吹「…これが"バーテックス"よ。この個体は無数の個体…呼び名は"星屑"。奴ら、本当にここでバーテックスの研究を…?。」

 

流星(こんなのが2年前までこの四国に溢れていたのか?。)

 

それから、ロッジの内部をくまなく調査していく3人。記録や機材らしきものは全て壊され、手掛かりという手がかりはまるで無かった。襲撃の際に記録系統は移設されたのだろう、現にここの鎮圧を担当していた「弥勒夕海子」が持ち帰って来たのは、巫女の候補生の個人情報のみ。そこから推測されるのは…認めたくないが、新生大赦に"内通者"がいる可能性だって考えられる。

 

じゃないと、ここまで拉致事件が大きくなるなんて思えない。それに、候補生や巫女を的確に調べ上げた上で事件を起こしている。だが、宗主の「乃木園子」直々にここの再調査を命じたのだ、きっとまだ調べ上げられていないものがあるのかもしれない。

 

そう思いながら、3人は地下に続く扉を見つけた。

 

シズク「おい、なんだこの扉…なんか書いてあるぞ…?。」

 

扉に描かれた「六芒星」。そして、その塗料は……血だった。

 

流星「うわっ!?人の血っ!?。」

 

シズク「騒ぐんじゃねェよ…邪神なんかを崇拝しているカルト教団だぜ?。こんなもの、ベタ中のベタだろうが。」

 

芽吹「……ここからは覚悟を決めた方が良さそうね…恐らく、"ここから先"の調査を命じたんでしょう。鎮圧後に発見された可能性だってある。総員、気を引き締めなさい。」

 

そう言いつつ、芽吹は手に持った銃で扉を破壊。すると、吐き気を催すような強烈な"違和感"が3人を襲う。

 

流星「っ…ここに来た時の"違和感"の正体はこれだったのか!?。」

 

シズク(このオレが…震えている…?。)

 

芽吹「っ…内部に突入する…私の後ろに続いて…!。」

 

只事じゃないものを確信した芽吹は、先行する。その後に続く2人。だが、"違和感"は徐々に強くなっていく。そして……。

 

〜邪神教団第3ロッジ地下・「研究区画」〜

 

芽吹「!!?。これは…!!!。」

 

地下の終点に位置するこの"研究区画"にやって来た3人はその目の前に広がる後悔に息を飲む。それは……白骨化した人の遺体の上半身部が"星屑"と融合した"異形"。この世のものではない、"怪物"が5体ほど床に転がっていた。

 

流星「うぅっ!?。す…すみません…!!。」

 

そのあまりにも凄惨な後悔に、流星は区画の端まで走って胃の中のものを吐き出してしまう。

 

シズク「…おい…なんだよこれ…まさかこれ…"巫女"の死体か!?。」

 

「…違うな。それは信仰心の足りなかった信者の末路だよ。」

 

その場にこだまする女性の声。自分たち以外の何者かが現れた事に一気に臨戦態勢となる。

 

芽吹「誰だッ!?。」

 

暗がりから歩いてくるその姿は黒装束と仮面を身につけた女。そして、その仮面には十二星座の「射手座」を現すマークが刻まれていた。

 

シズク「テメェ、邪神教団の関係者か!?。」

 

「そうだ。そして…新生大赦の犬どもを始末しに来た。餌にかかったのがまさかの防人とは…運がいい。」

 

そう言って、大型の黒いライフルを取り出す。その雰囲気は邪教徒のものとは全然違う。

 

芽吹「…ちょうどいいわ、お前を拘束して洗いざらい話してもらうわよ!!。」

 

サジタリウス「やってみるがいい。私の二つ名は「射手座」…"サジタリウス"だ。貴様達はここで骸となり、邪神様の贄にしてくれよう!!。」

 

…………………………end。





その"狂信者"は黄道十二星座の「射手座」名前を名乗る。

防人達はこの狂信者の力を思い知る事に。

そして、これが…邪神教団の"真の戦力"を意味する。

次回
第7話 "十二星座の使徒"。
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