ハリーポッターとエーデルシュタイン家のシンデレラ   作:とあるにわかのハリポタ好き

2 / 2
ホグワーツ特急と組み分けの儀式のお話。
今後、どこかでステラの設定について書きたいと思ってます。


組み分けの儀式

ホグワーツの入学式当日、朝の日程確認の職員会議では多くの教職員と管理人のフィルチが不安そうな面持ちで話していた。

 

 

「そして最後にステラ・エーデルシュタイン。以上が今年の新入生です。」

 

 

マクゴナガルが最後の新入生の名を告げると、教員の一人でホグワーツの司書を務めるマダム・ピンスが訝しげな顔で疑問を口にした。

 

 

「……エーデルシュタインって聞いた事があるファミリーネームですね。」

 

 

マダム・ピンスは何かを思い出すように目を閉じているが、結局思い出せずに諦めたようだ。そしてそんな彼女見て、ダンブルドアはステラ・エーデルシュタインについての説明を始めた。

 

 

「エーデルシュタイン家は、イギリスがまだイングランドの頃から続く貴族家の名じゃ。今回新入生となったステラ・エーデルシュタインは前エーデルシュタイン伯爵の一人娘じゃったが、彼女が7歳になった頃に屋敷に侵入した強盗によって夫妻は殺されてしまった。現在は乳母と2人広いロンドン郊外にある屋敷にて生活しているそうじゃが、どこかの貴族家の後援を受けているらしいのう。」

 

 

ダンブルドアがつらつらと説明をすると、彼の話を聞いたマクゴナガルはコクリと頷いた。

 

 

「その通りです、アルバス。私は彼女の住む屋敷へ訪問しましたが、彼女の住む家はとても没落したとは思えない程煌びやかで、美しい調度品に溢れていましたよ。」

 

 

マクゴナガルはそこまで言ってから、彼女が杖の問に「ステラがどこの貴族の後援を受けているのか」について聞き忘れたことを思い出した。ダンブルドア校長ならば知っているかもしれないと思い、聞いてみる。

 

 

「それにしても驚きましたね。彼女の家の繁栄ぶりには目を見張りました。ああ、そういえば彼女の後援者とは一体何者なのでしょうか。」

 

 

マクゴナガルの問いかけに答えたのはアルバス・ダンブルドアだった。

 

 

「後援者か。確かに妙じゃのう。どれだけ調べても一切情報が出てこない。しかし、彼女の家の繁栄ぶりを見れば、そやつは社会的地位の高い人間の様じゃのう。」

 

 

ダンブルドアはマクゴナガルから視線を移し、テーブルの上に置かれたステラ・エーデルシュタインの調書を見つめる。

 

 

「……ワシは一つ気になる事がある。」

 

 

「ほう?何ですかな。」

 

 

スネイプが聞き返すと、ダンブルドアは調書をトントンと人差し指で叩いた。

 

 

「この調書じゃが、違和感があるのじゃよ。」

 

 

ダンブルドアの言葉にマクゴナガルは首を傾げた。ダンブルドアの直感は時に鋭く研ぎ澄まされている事を彼女は知っていたからである。そんな彼女に言い聞かせるようにダンブルドアはゆっくりと言葉を紡いだ。

 

 

「ワシが感じた違和感……それはこの子の母親についてじゃ。」

 

 

ステラ・エーデルシュタインの母の名はカペラ・エーデルシュタイン。何処にでもいるような平凡な伯爵夫人だ。しかしその美貌は普通という言葉には当てはまらず、彼女はイギリス社交界で美女と評判の令嬢だった。

 

 

しかし、カペラはただの貴族令嬢では無かった。彼女は11歳の時孤児院に預けられ、預けられてから三日後に未亡人である子爵夫人に引き取られ、養女として迎え入れられた。つまり、貴族の青い血は引いていないのである。にも関わらず、高位貴族に位置するエーデルシュタイン家に下級貴族の平民の血がが流れる娘が嫁いだというのは不自然だ。いくら美女と名高くとも、血筋と伝統を重視するエーデルシュタイン家の人間が彼女を快く迎えるとは到底思えなかった。

 

 

「……伯爵夫人は、11歳の誕生日を迎えてからすぐ孤児院に入れられている。そして孤児院に入れられてから三日後に子爵夫人に引き取られており、このスピードはいくらなんでも異常じゃ。それに11歳といえば、魔法使いにとっては重要な年でもある。何故なら、11歳になった魔法使いの子供は魔法や魔力の制御方法を学ぶ為に魔法学校へ通う事になる年じゃからな。」

 

 

ダンブルドアの話を聞いた教員達は皆顔を見合せ、恐らく同じ考えを抱いているのだと理解した。そして彼らの代弁者としてスネイプが口を開いた。

 

 

「ダンブルドア校長先生、貴方の発言ではまるで、エーデルシュタイン伯爵夫人はスクイブで、魔力を持たない子供だったから孤児院に入れられたと言う様にしか聞こえませんな……そして、彼女がすぐに子爵家に迎え入れられているという事からも、まるで子爵家に迎えられる事が決定していたかのように感じます。」

 

 

スネイプは遠回しに『カペラ・エーデルシュタインは魔法界の名家のスクイブで、名家に生まれたが故にマグル界の貴族家に引き取られた』のだと言ったのだ。もっといえば、スクイブと分かったら追放する様な家……聖28一族の純血主義の名家の出身だと彼は思っているのだろう。そしてスネイプの真意を汲み取ったダンブルドアはこう言った。

 

 

「……伯爵夫人は美しく豊な黒髪にエメラルドの様な美しい瞳を持っていたとされておる。もしかしたら───」

 

 

───ブラック家の血が濃く流れているかもしれぬな。

 

 

ダンブルドアはそこまで言うと、それ以上語るつもりはないとスネイプに目で語りかけた。それを感じ取ったスネイプは舌打ちでもしそうな顔をしながら、ギロリとダンブルドアを睨んだ後黙り込んだ。

 

 

ブラック家───その名は魔法界では知らぬ者などいないと言われる程の名だ。その血族であるという事だけで様々な憶測や噂が飛び交う程である。ブラック家は聖28一族に連なる多くの家系と血が繋がっており、元を辿ればブラック家の血が混ざっているという魔法使いは大勢いる。

 

 

かつてジェームズ・ポッターはブラック家の貴公子であるシリウス・ブラックと親友だった。そして今、ジェームズの息子である英雄、ハリー・ポッターはホグワーツに入学しようとしている。そして、今回の入学で一人、ブラック家の血を引いている可能性のあるマグル生まれの魔女がホグワーツにやって来る。

 

 

「……魔法界が変わる日も近いやもしれんな。」

 

 

そう呟いたダンブルドアの声は誰に聞こえる事も無く、静寂に解けて消えた。

 

◇◇◇

 

 

 

ホグワーツ特急の中でこの物語の主人公である少女───ステラ・エーデルシュタインは空いているコンパートメントを必死に探していた。しかし、空いているコンパートメントがなかなか見つからない。数分後、ようやく空いているコンパートメントを見つけたステラは扉に手をかけ中に入った。ステラがコンパートメントの中に入り椅子に腰かけたタイミングで、コンパートメントの扉が2回ノックされた。

 

 

「どうぞ。」

 

 

「ここは空いているか?他はもうどこもいっぱいなんだ。良ければ相席させて貰えないだろうか?」

 

 

コンパートメントの中に入ってきたのは、ステラと同じぐらいの歳の少年だった。彼は自分の意見が通る事は当然と言わんばかりの少し傲慢な態度を見せてはいたが、その態度は逆に高貴な家柄の少年だという事を感じさせるには十分だった。

 

 

「もちろんです。私は構いませんよ。」

 

 

「ありがとう、では失礼するよ。」

 

 

少年はそう言ってステラの向かい側の椅子に腰かけた。そして彼は鞄から1冊の本を取り出した。その本のタイトルは『中級呪文学理論』と書かれており、初級や入門の上を行く本を読んでいる事から、彼が魔法界で生まれ育った、或いは魔法族の息子だという事が予想出来る。

 

 

ステラは少年が本を読み始めたのを見届けて、鞄から一冊の本を取り出した。その本は入学用品を買いにダイアゴン横丁へ行った時、紳士に特別にプレゼントして貰ったラテン語の文法書だった。

 

 

ステラはラテン語の文法書を開き、勉強を始めた。それから数時間後、少年は読んでいた本を座席に置くと私に向かって声を掛けてきた。

 

 

「何故、君はラテン語の文法について勉強をしているんだ?」

 

 

「えっと……実は入学前にラテン語で書かれた古代魔法集の本を買って貰ったんですが、生憎私はラテン語について学んだ事が無くて。この本を読む為にはラテン語を習得しなければならないんです。だからこの本を読んで学んでいるところなんです。」

 

 

ステラがそう答えると、少年は一瞬面食らったような表情を浮かべたがすぐに表情を戻し言葉を続けた。

 

 

「そうか……君は勤勉なんだな。それに古代魔法を学ぼうとしている点からも、どうやら君は魔法界育ちの様だな。僕はセオドール・ノットだ。失礼で無ければ、君の名前を教えてくれないか?レディ。」

 

 

ステラは少年───ノットの紳士的な態度に関心しながらも、なんと名乗るべきか考える事に必死でなかなか言葉を口にできなかった。しかし目の前に座るノットはステラを急かす事もせず、彼女の言葉を待っていた。ステラはこれ以上この高貴な出で立ちの少年を待たせる訳にはいかないと考え、腹を括り名を告げた。

 

 

「……私はステラと申します。宜しくお願いします、ミスター・ノット。」

 

 

「ステラか……こちらこそ宜しく。」

 

 

その後、ノットはステラを訝しげに見ながらも、数秒後手に持っている本に視線を移した。どうやらノットはステラへの興味を失ったようだ。

 

 

ステラは心の中で深く溜息をつき安堵した。ノットは高貴な家柄の少年だ。そして魔法界についても深い知識を備えているように窺える事から、純血主義者である可能性は高い。屋敷を出る前に紳士からスリザリンに入るなと念を押されていた為、ステラは名前を名乗る際に慎重にならざるを得なかったのだ。

 

 

ステラはほっとしながら再び自分の勉強に取り掛かった。それから2時間後、そろそろホグワーツに到着する時間が近付いてきたとノットが言い、ステラから先に制服に着替える事になった。

 

 

「僕は廊下にいるから、着替え終わったら声を掛けてくれ。」

 

 

「分かりました。」

 

 

ノットはそう言うと、コンパートメントから出て行った。ステラはノットの紳士的な対応に感謝しながら、鞄の中から制服を取り出し、着替え始めた。そして制服に着替え終わった後、ノットに声を掛けた。ノットはコンパートメントの扉を開け、中に入ってきた。

 

 

「もう、着替え終わったのか?」

 

 

「ええ、終わりました。お待たせして申し訳ありませんでした。」

 

 

ステラがそう言って頭を下げると、ノットは少し面食らった様な表情を浮かべたがすぐに表情を戻し口を開いた。

 

 

「いや、大丈夫だ。ではコンパートメントを借りるぞ。」

 

 

ノットはそう言うと、コンパートメントの中に入っていった。そして数分後、彼は再びコンパートメントの扉を開き、ステラに中に入るよう促した。

 

 

「……君はホグワーツで入りたい寮はあるか?」

 

 

ステラはノットの質問に面食らった。ステラはマグル生まれの魔女で、魔法界については紳士が与えた知識しか知らない。ホグワーツは全寮制の学校なので当然寮がある事は知っていたが、名前が違うだけで寮は全て同じものだと考えていた。しかし、目の前の少年はどの寮に入りたいのかと質問しており、寮には何か明確な差があるという事が推測できる。ステラは各寮について詳しい情報は知らず、また寮の名前も紳士に禁止されたスリザリン寮しか知らない。つまり詰んでしまったのである。

 

 

「……特に希望する寮はありません。どの寮でも学習内容は同じですから。」

 

 

ステラは決して勉強が好きなわけではない。しかし、こう言えば勤勉で真面目だとアピールする事ができ、寮について知らないという事を悟らずに済む。

 

 

「……そうか。君は本当に勉強にしか興味が無いんだな。」

 

 

ノットはそう言うと、また本を読み始めた。ステラも同様に勉強を再開する事にしたが、ホグワーツにすぐ到着してしまった為、中々集中できなかった。その後生徒達は船に乗り、湖を渡ってホグワーツ城へと移動した。ハグリッドという大男に引率され、ステラ達新入生は大きな大広間へとやってきた。そこには四つの長テーブルが置かれており、上級生達が座っている。そして天井には星空が映し出されていた。新入生達が広間に入ると、マクゴナガルがやって来て、一年生を二列に並ばせた。ステラは前から4番目の位置だった。ノットは7番目の位置にいた。

 

 

「皆さん、ホグワーツへの入学おめでとうございます。」

 

 

マクゴナガルが入学祝いの挨拶を行うと、目の前の椅子の上に置かれた帽子が歌い出したのを聞いてステラは少し驚いたが、すぐに歌に集中した。

 

 

『私はきれいじゃないけれど

 人は見かけによらぬもの

 私をしのぐ賢い帽子

 あるなら私は身を引こう

 山高帽子は真っ黒だ

 シルクハットはすらりと高い

 私はホグワーツ組み分け帽子

 私は彼らの上をいく

 君の頭に隠れたものを

 組み分け帽子はお見通し

 かぶれば君に教えよう

 君が行くべき寮の名を

 

 グリフィンドールに行くならば

 優希ある者住まう寮

 勇猛果敢な騎士道で

 他とは違うグリフィンドール

 

 ハッフルパフに行くならば

 君は正しく忠実で

 忍耐強く真実で

 苦労を苦労と思わない

 

 古き賢きレイブンクロー

 君に意欲があるならば

 機知と学びの友人を

 ここで必ず得るだろう

 

 スリザリンではもしかして

 君はまことの友を得る

 どんな手段を使っても

 目的遂げる狡猾さ

 

 かぶってごらん!恐れずに!

 興奮せずに、お任せを!

 君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)

 だって私は考える帽子!』

 

 

帽子が歌い終わると、マクゴナガルが生徒の名前を一人ずつ呼び、組み分けの儀式が始まった。呼ばれた生徒は椅子に座り、座った生徒の上に帽子を被せる事で帽子は生徒の寮を宣言する。そして生徒は決まった寮の生徒が座るテーブルに向かう。これがホグワーツの寮を決める儀式の流れだ。

 

 

「アボット・ハンナ」

 

 

「ハッフルパフ!」

 

 

「ボーンズ・スーザン」

 

 

「ハッフルパフ!」

 

 

最初の組み分けで名前が呼ばれた生徒は、広間の右側にある四つの長テーブルから自分の寮の生徒が集まるテーブルへ向かい、そこへ着席する。そして次の生徒も一番目の生徒と同様、ハッフルパフのテーブルへ向かって歩いて行った。それから何人もの生徒の名が呼ばれ、一人の少年の名が呼ばれた時、大広間に緊張感が走った。

 

 

「マルフォイ・ドラコ」

 

 

組み分け帽子を頭に被せられる少年は、星のように輝く金色の髪がよく似合った育ちの良さそうな美少年だった。彼は余裕のある笑みを浮かべながら優雅な所作で椅子に座る。

 

 

「スリザリン!」

 

 

周りの生徒が拍手する中、金髪の美少年

は当たり前だと言わんばかりの態度でスリザリンのテーブルに向かって歩いて行った。彼がスリザリンのテーブルに着くと上級生の生徒に歓迎され、彼は自慢気に笑った。

 

 

「マルフォイ家の子息がスリザリンに来てくれるとは、監督生としてとても誇らしいよ。歓迎するよ、マルフォイ。」

 

 

「歓迎、ありがとうございます。」

 

 

そして他寮の生徒達は、スリザリンに選ばれたマルフォイについてコソコソと噂をし始める。彼は魔法界では有名人のようだ。特急の中で出会ったノットと似た空気を纏っており、彼もおそらく純血主義者なのだろう。スリザリンに選ばれるのは魔法界において血筋の良いとされる家の子供が第多数を占めていると、紳士が話していたのだから。

 

 

「ノット・セオドール」

 

 

特急で同じコンパートメントを使った少年が遂に名前を呼ばれた。彼の態度、そして所作や話し方から溢れ出す品の良さはたった今組み分けられたマルフォイと似ている。ステラの予想ではこの少年もきっとスリザリン寮に選ばれるはずだ。

 

 

「スリザリン!」

 

 

組み分け帽子はノットが椅子に座ると、間髪入れずにそう叫んだ。ステラは予想通りの結果に少し残念だと思いながらも、予想が当たった事には安堵した。そして彼は他のスリザリン生がいる席に向かって歩いて行った。そして次の生徒の名が呼ばれる。

 

 

「ミスター・ノットもやっぱりスリザリンなんだ……」

 

 

ぼそりと呟いたステラの声は組み分け帽子の大きな声で掻き消された。

 

 

「グリフィンドール!」

 

 

そしてまた次の生徒の名が呼ばれた。

 

 

「ポッター・ハリー」

 

 

彼の名が呼ばれた時、大広間はまた静まり返り、ここに集まった全ての人間が彼の一挙手一投足を注意深く観察する。ポッターと呼ばれた少年は緊張しながらもゆっくりと椅子に腰掛けた。そして帽子を被せられた。

 

 

「グリフィンドール!!」

 

 

組み分け帽子は数秒間考えた後そう叫んだとがわかるほど大きな声で叫び、グリフィンドールのテーブルに向かって歩き出した少年を見送った。彼がグリフィンドールの生徒達に歓迎されているのをステラは眺めていたが、彼女がふとスリザリンのテーブルに座るノット見ると、彼の隣に座っているマルフォイはポッターの方を睨み付けていた。マルフォイはどうやらポッターの事がお気に召さないらしい。

 

 

そしてそれからステラを除いて最後の生徒が組み分けされ、遂にステラの組み分けの番がやって来た。

 

 

「エーデルシュタイン・ステラ」

 

 

ステラは緊張な面持ちでゆっくりと椅子に向かって歩いた。そして静かに椅子に座り、帽子を被る。

 

 

『……おや、これはこれは貴族の令嬢が組み分けされるなんて、何年ぶりかな。しかし、どうやら魔法族の血も引いているようだね。それもとても高貴で強い力を。』

 

 

突然頭に流れ込んできた声にステラはビクリと身体を震わせる。誰かに話し掛けられたのかと思い、周囲を見渡すが私に話し掛けていると思えるような人物は見当たらなかった。そして声の主はステラが震えている事などお構い無しに、ステラに話し続ける。

 

 

『君はとても真面目で知的好奇心に溢れている。本が好きで、小説、思想学、史学と様々な本を読んできたようだね。きっと、レイブンクローに進めば君は素晴らしい賢者へと成長するだろう。しかし……』

 

 

流れ込んで来る言葉を考えると、どうやらこの声は帽子から発せられているようだ。ステラの脳内に帽子が話し掛けているという事は、もしかしたらステラの脳内さえもこの帽子は覗き見る事が出来るのかもしれない。ステラはそう結論付け、寮の組み分けについて考え始めた。

 

 

ステラは入学前に後援者の使いである紳士に『スリザリン寮に入ってはいけない』と念を押されていた。そしてその理由も理解している。であれば、帽子が言ったレイブンクロー寮に入るのが良さそうだ。ステラはひたすらレイブンクロー、レイブンクローと脳内でひたすらこのワードを繰り返し連呼した。

 

 

『……ほう?ならば、君の寮は───』

 

 

「スリザリン!」

 

 

帽子がステラの寮の名前を言おうとした瞬間、ステラは帽子を被せられた頭頂部に向かって叫んだ。その瞬間、ステラは人生で二度目の絶望の味を知った。その味はとても苦くて、嘔吐いてしまいそうなほど不味かった。

 

 

「えっ。」

 

 

ステラは帽子の言葉に思考が停止していた。この帽子はスリザリンと宣言した。そして今椅子に座り組み分けを待っていたのは他の誰でもない、ステラ・エーデルシュタインである。ステラはひたすらレイブンクローに入りたいと願い、帽子もレイブンクローに適正があると話していた。であれば、ステラはレイブンクロー寮に組み分けされるべきだ。しかし、帽子はスリザリン寮を宣言した。つまり、ステラは────

 

 

 

───スリザリン寮に組み分けられてしまったのだ。

 

 

「ほら、早く行きなさい。ミス・エーデルシュタイン。」

 

 

マクゴナガルはステラにスリザリン寮のテーブルへ向かうよう促した。

 

 

ステラは絶望した。何故マグル生まれの自分がスリザリン選ばれてしまったのかと。何故、紳士の言い付けを守れなかったのかと。これから、マグル生まれの分際でどう生きて行けば良いのかと。今日の瞬間、ステラは人生で初めて神は存在しないのだという事を悟った。

 

 

「ようこそ、スリザリンへ。さあ、空いている席へ座ってくれ。」

 

 

上級生の一人がそう言い、ステラに空いている席に座るよう促した。ステラはこれでもれっきとした貴族の娘だ。有名な女学校に通い、それなりの地位のある家の子供と交流してきた。だからこそ、ここで嫌そうな顔を見せるなんてはしたない真似はせず、言われた通りに静かに席に着いた。それからすぐ、校長────アルバス・ダンブルドアの有難いお話が始まった。

 

 

「コホン……ええ、新入生諸君。入学おめでとう。これから、ホグワーツで様々な事を学び、今後の人生に役立てて欲しい。……さて、幾つか連絡事項があるので手短に話そう。まず───」

 

 

ダンブルドアは、禁じられた森に入ってはいけない、3階の廊下に近付いてはいけない、廊下で魔法を使用してはいけないといった内容を伝え、その後晩餐会が始まった。大人数での食事は約2ヶ月ぶりで、少し新鮮な気分だ。しかし、大人数での食事を楽しめるような精神状態では無かった。

 

 

紳士との約束では、スリザリンに入ったらセルウィンと名乗らなければいけない。しかし、組み分け帽子は私の本名を述べていた。つまりもうステラはセルウィンという姓を名乗る事は出来ない。どうにか、魔法族の魔女だと誤魔化す方法を考えなければならないが、その方法が全く思いつかなかった。

 

 

「ステラ。」

 

 

思案しながらも平成を装いながら食事を始める為、テーブルの上に置かれたパンプキンパイを取り皿に乗せようと手を伸ばした時、ステラの向かい……斜め右の席に座るノットに声を掛けられた。

 

 

「まさか君がスリザリンに選ばれるとは思いもしなかったよ。これから宜しくな、ステラ。」

 

 

ステラは絶望と困惑、戸惑いを隠すように品の良い笑みを浮かべてノットの言葉に頷いた。

 

 

「ええ。こちらこそ宜しくお願い致します。」

 

 

そんな2人のやり取りを見ていた1人の少年が、2人の会話に突然割り込んで来た。

 

 

「……エーデルシュタイン、か。聞かない名だね。セオドールの知り合いかい?」

 

 

「ああそうさ、ドラコ。ホグワーツ特急のコンパートメントで知り合ったんだ。彼女はどうやら古代魔法に興味があるそうでね。恐らく、純血旧家のどこかの出身なんだろう。」

 

 

2人の会話に突然入ってきた少年の名はドラコ・マルフォイ。先程スリザリンに組み分けられた時、スリザリンの上級生に盛大に歓迎されていた少年だ。彼はノットと似たような空気を纏っており、魔法界の上流階級の出身である事が窺える。

 

 

ノットはたまたまだろうが、ステラをフォローするような発言をしてくれた。ステラは古代魔法に興味があるとはいえ、ただの人間界育ちの少女だ。だから、ここでマルフォイがステラを魔法界育ちの魔女だと勘違いしてくれれば好都合である。

 

 

「へぇ?古代魔法に関心があるのか。なら魔法界育ちのようだね。……僕はドラコ・マルフォイだ。君のような勤勉なレディと同じ寮に選ばれて嬉しいよ。これから仲良くしようじゃないか。」

 

 

どうやらマルフォイは、ステラを魔法界の旧家育ちのレディだと勘違いしてくれたようだ。ステラは魔法界の名家の御曹司と思われる少年がこれ以上生まれを言及せず、友好的な態度を示してくれたという事実にそっと胸をなでおろした。

 

 

「こちらこそ宜しく。マルフォイ家の御曹司であるミスターと同じ寮になる事が出来て、こちらこそ光栄ですわ。」

 

 

品良く微笑み、丁寧な言葉でマルフォイとの友好的な関係を築いたステラを見てノットは冷たい視線を彼女に向けた。ノットはきっと、純血名家のお嬢様がマルフォイ家のような名家に上手く取り入ろうとしているのだと考えたのだろうが、実際は権力を持つ人間に睨まれないように必死なだけなのだ。ステラは力を持たない、人間界育ちの平凡な孤児なのだから。

 

 

「ねぇ!少し良いかしら?」

 

 

「……ええ。どうかされました?」

 

 

突然隣に座る少女に声を掛けられ、ステラは戸惑いながらもそれを悟られない様に気丈に振舞った。

 

 

「貴方、ノットとドラコと仲が良いみたいね。私はパンジー。パンジー・パーキンソンよ。良かったら仲良くしない?」

 

 

ホグワーツに来て友人とは言えないが、男の知り合いは出来た。しかし、女友達はまだおらず、共学の学校という狭いコミュニティで同姓の友人がいるのといないのでは、絶対的に後者の方が生きにくいはずだ。ステラは女子校育ちなので想像でしか語る事が出来ないが、友人や知り合いは多いに越したことはない。よって、彼女の提案を快く受け入れる事にした。

 

 

「……勿論ですよ。私はステラ・エーデルシュタインと申します。気軽にステラと呼んでください。」

 

 

「まあ、嬉しいわ!私の事もあるパンジーって呼び捨てで呼んでちょうだい。これから仲良くしましょうね!ステラ!」

 

 

「え、ええ。宜しくね、パンジー。」

 

 

パンジーはそう言うとステラの右手を両手で握り、ぶんぶんと上下に振った。彼女が友好的な態度を取ってくれる事にステラは内心安堵し、そんなパンジーに釣られるように微笑んだ。

 

 

 

「じゃあ、スリザリンの生徒達は全員着いて来て。はぐれないように注意してね。」

 

 

晩餐会が終わると、生徒達は監督生と呼ばれる上級生のリーダーの指示に従って、寮に向かう。スリザリン寮は何故か地下牢にあるらしいが、窓の外からは湖の中が見通せるらしく、その光景はとても美しいそうだ。ステラは湖の下に位置するスリザリン寮に胸を弾ませながら向かっていった。スリザリン寮の前に着くと、監督生は全ての新入生がいる事を確認してから、口を開いた。

 

 

「寮に入るには、合言葉を言わなければならないわ。合言葉は定期的に変わるけど、談話室のボードに書かれているから、それを確認して。そして、スリザリンには敵が多いわ。だからこそ、この場所や合言葉が外部に漏れないよう最新の注意を払ってちょうだい。……じゃあ、今から私が合言葉を言うから、これから寮に入る時は私の真似をして合言葉を言ってから入るようにね。」

 

 

そう言うと監督生は『純血』と言った。すると寮の扉は自動で開き、監督生はその中へと入っていった。新入生達も遅れないように急ぎ足て寮の中へと入る。寮の内部は、地下牢とは思えないほどお洒落で豪奢な空間が広がっていた。まるでどこかの貴族の屋敷のようだ。しかし、他の生徒達は慣れたものなのか全く気にする素振りを見せず、談話室へと向かっていく。

 

 

「まあ……とっても素敵だわ。」

 

 

ステラは目の前に広がる光景に思わず感嘆の声を漏らした。スリザリンの窓からは湖の中が見える。今は夜だから談話室の灯りに照らされた場所しか見えないが、夜が明け日の光が差仕込めば美しい湖の中を見渡す事が出来るだろう。

 

 

「スリザリン寮にようこそ、私達は君達新入生を心から歓迎するわ。スリザリンでは、同じ寮に入った生徒を家族のように大切にする文化があるの。この伝統は貴方達のご両親が在学中の時も受け継がれていたものよ。この伝統を忘れず、スリザリン生である事を誇りに思って学校生活を送ってちょうだいね。」

 

 

監督生はそう言い、新入生達に向かって微笑んだ。新入生達は監督生の言葉を重く受け止め、真剣な表情で彼女の話を聞いていた。

 

 

「では、これから寮内の部屋分けについて伝えるわ。学校側からは最低限必要な家具等は揃っているとの事だけど、何か足りないものがあったら、すぐに教えてちょうだい。……後、ベッドの寝心地は最悪よ。だから、我慢出来ない者は早目に家に連絡して、寝心地の良いベッドを送って貰うよう頼む事をオススメするわ。」

 

 

スリザリンは談話室を挟むように2つの宿舎が存在する。談話室に入って右が女子寮、左は男子寮となっている。ステラは当然女なので、女子寮で生活する事になる。

 

 

「じゃあ女子からね。パンジー・パーキンソン、ダフネ・グリーングラス、ステラ・エーデルシュタインは入ってすぐの部屋を使って。次にトレイシー・デイビス、ヘスティア・カロー……」

 

 

監督生は生徒達の部屋とルームメイトになる者の名前を述べていく。ステラは先程仲良くなった少女、パンジーと同室のようだ。もう1人同室の少女がいるが、ダフネ・グリーングラスとは一体どのような生徒なのかと、気になって仕方がなかった。

 

 

「じゃあ、全員言われた通り自分の部屋を確認して。何かあったら談話室にいる上級生を頼ってね。」

 

 

監督生はそう言い残し、女子寮の中へ入って行った。それからすぐステラとパンジーは互いに顔を見合せ笑った。

 

 

「ステラと同じ部屋なんてツイているわ!それにダフネも同室なんてラッキーね。気を遣わなくて済むわ。」

 

 

「ええ、私も貴方と同室になれて嬉しいわ。……そういえば、貴方はもう1人のルームメイトとお知り合いなの?」

 

 

 

「ああ、ダフネの事ね。勿論知ってるわ。彼女はダフネ・グリーングラス。聖28一族のグリーングラス家の娘よ。……ああ、勿論安心して。聖28一族の人間だから、勿論あの子は"純血"よ。」

 

 

「……そう。それはとても素敵ね。」

 

 

ステラは当たり障りのない感想を述べた。ステラが今まで関わってきた生徒は、全員スリザリンに組み分けされている。そして、何度も純血という単語を聞いてきた彼女は、その単語の持つ意味を理解はしていないが、とても重要であると感じていた為、彼女は即座に純血という単語に反応し、彼女の言葉に好感を持っている事を示して見せる事が出来たのである。

 

 

「……パンジー、同じ部屋みたいね。宜しく。私はダフネ・グリーングラスよ。よろしくね。名前を伺っても良いかしら?」

 

 

「ええ、勿論よ。私はステラ・エーデルシュタインよ。こちらこそ宜しくね。良かったら、気軽にステラと呼んでください。」

 

 

「分かったわ。ステラ。私の事はダフネと呼んでちょうだい。」

 

 

それからすぐ、私達はこれから生活する寮の部屋に向かった。しかしそこはとても簡素な作りだった。談話室とは違って、豪華な調度品も置かれておらず、ベッドは家の何十倍も硬い。シャワールームが着いているが、人1人がギリギリ入れるほどの広さで、とても狭く、人数分の机も傷が着いており、かなり古くから使われている物だという事が分かる。

 

 

「な、何これ!こんなの物置同然じゃない!もっと広い部屋が良かったわ!すぐに家に頼んでベッドも変えてもらわなきゃ!」

 

 

「落ち着いて、パンジー。」

 

 

ダフネはサバサバとした性格なのか、パンジーの様に妙に甘ったるい声を上げたり、愚痴愚痴と文句を言う事は無かった。それどころか、文句を言い続けるダフネを必死で宥め、落ち着かせようと奮闘していた。ステラはダフネに好感を持ち、ほんの少しだけ親しみやすさを感じたのだった。

 

 

「……とりあえず、荷物を整頓しましょう。」

 

 

そしてそんな2人を他所に、ステラは荷物の整頓を始めた。組み分けの儀式は最悪だ。しかし、これから卒業までこの寮で過ごさなければいけない。ステラは不安を抱きながらも、ホグワーツ出の生活が良いものになるよう、心の中で神に祈った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。