貞操逆転世界で俺はチョロ可愛いをしてるらしい 作:黒鉄48号
そしていつの間にかUA50000、お気に入り700人、おまけにしおりが300件を突破しました。
多くの方々に読んでもらえてありがたいかぎりです。
「織斑くん、三上くん、おはよー! ねえ、転校生の噂聞いた?」
翌朝。席に着いて一夏と1限の予習をしていると女子に話しかけられた。
入学からの数週間でセシリアさん以外とも会話できるようになったのは大きな前進と言えるだろう。
「「転校生?」」
俺たちの言葉がダブる。まだ4月なのにわざわざ転入とは変な話だ。
なにせIS学園の転入試験は通常よりも遥かに難しく……なにより国の推薦が必要らしい。
「んで、その子は中国の代表候補生なんだってさ」
「ほへー」
「中国、か……」
一夏が苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。恐らくあいつのことを思い出したのだろう。
彼女とは険悪とまでは行かないものの、100%仲良しとも言い切れない関係だったのだ。
「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」
「だが、このクラスに来るわけではないのだろう? 騒ぐほどのことでもあるまい」
ここぞとばかりに会話へ入り込んでくるセシリアさんと箒さん。2人ともだいぶ距離があったはずなのだが、何か技術でも学んでいるのだろうか。
にしても新たな代表候補生とは。セシリアさんと同じぐらいに強いのは前提として、どんな性格か気になる。
出来ればフランクな性格で人付き合いが上手くあってほしい。訓練の相談相手が増えるに越したことはないのだ。
「それに、だ。一夏、今のお前に女子を気にしている余裕があるのか? 来月にはクラス対抗戦だぞ」
「ああ、そうでしたわね。織斑さんが負けるとは考えにくいですが、実践的な訓練をしましょう。相手はわたくしと勇さんで務めさせていただきますわ」
彼女はそう言ったあとに「よろしいですか?」と聞いてきたが、もちろん首を縦に振った。俺自身の経験も積めてwin-winである。
それに、訓練機を使うとなると申請手続きや許可・事前整備などで丸一日かかってしまうのだ。
「まあ、やれることはやるさ」
「やるだけでは困りますわ。織斑さんには勝っていただきませんと」
「かっこいいとこ見せてくれよ~」
「あとデザートのフリーパスね!」
最後の女子のセリフにクラス中の生徒がうんうんと頷いた。
やはり価値観が色々変わっても女性というのは甘い物好きなようで、クラス対抗戦の優勝賞品である半年フリーパスを誰もが欲しがっているのだ。
「つっても余裕じゃない? 専用機持ちがいるのって
「じゃあもう優勝確定やないか! Vや──」
「「そのフラグはやめろーっ!!」」
やいのやいのと楽しそうな女子一同をぽけーっと眺めていた時のこと。
「──その情報、古いよ」
「なにっ」
教室の入り口から突然声が聞こえてきた。
……おっかしいなぁ、すげえ聞き覚えあるんだけどこれ。
「2組も専用機持ちが代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
腕を組みながら片膝を立ててドアにもたれかかっていたのは、ツインテールが特徴的な少女だった。
「り、
「そうよ、中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」
彼女はふっと笑みをもらす。そして切れ長の目をすーっと細め──
「──やーっっと会えたわね勇ぅ~!!」
「おわぁーっ!?」
肉食獣が得物に組みかかるような勢いでこちらに飛びついてきたのだ。両手足をがっちりと絡ませ、顔をぐりぐりと擦り付けてくる。
「1年も離れててマジで辛かったんだから! 相変わらずいい匂いね~~!!」
「ちょっ、おま馬鹿やめっ……」
「いい感じに筋肉もついて抱き心地最高じゃない! やっぱりあたしの目に狂いはなかったわ!」
必死に振り払おうとするがまるで離れる気配がない。
というかしれっと頭身が上がってやがるぞこいつ。去年は俺とどっこいどっこいだったのに!
「あ~~、このままくっついててもいい?」
「いいわけあるか馬鹿! というか色々……その……」
「ん、何か気になる~?」
鈴が体を近づけてくる毎に、服で覆われた柔らかいモノの感触が確かになる。同年代と比べたら非常に慎ましいが、それでも俺の手のひらぐらいはあるようだ。
「なっ、なぁっ……!?」
「は、破廉恥だぞ貴様ぁ!」
周囲が固まる中箒さんだけ彼女を非難するが、その程度じゃこのセクハラ女を止めることはできない。
もしやるとしたら──
「──勇から離れろ、
「アギャアアー!?」
メリメリと人体から鳴ってはいけない音を立てながら、彼女の頭を掴み引っぺがす一夏。
今までにないほどキレているせいか額に青筋を浮かべており、声もドスが効いている。
「ギブギブギブ! ごめんゆるして!」
「ごめんで済んだら警察はいらないよな? あぁ?」
「い、一夏、そこまでにしておいてあげようぜ」
このままだと冗談抜きで鈴の頭がザクロになりかねない気がしてきたので止めにかかる。
しかし彼は相当頭に血が上っているようで。こっちの言葉なんざ耳に入らないようだ。ゆすったり腕にしがみついても無反応である。
「……おい、なんだこの騒ぎは?」
「あ、織斑先生! 実はかくかくしかじかで」
ギリギリのタイミングでやってきた先生にあらましを伝えると、彼女は額を抑えた。
「まったく、問題行動が多いとは聞いていたが……織斑、替われ」
「──分かりました」
一夏はようやく鈴を解放し地面へ雑に降ろす。
彼女はほっと一息するのもつかの間。目の前で仁王立ちになっている女傑を見て、ピシッという音が聞こえるほど見事に固まった。
「ち、ちちっ、千冬さん……!」
「よくもまあ初日に問題を起こしてくれたなぁ、
「えっ、あ、そのー」
「返事は『はい』だからな?」
「アッハイ」
そうして彼女は織斑先生に連れられて教室外に行き、俺はクラスメイトからの質問攻めを捌くはめになるのだった。
「待っていたわよ、勇!」
昼休みの食堂。いつも通り料理をに受け取ってから席に向かおうとしたら鈴に立ちふさがられた。背後にいる一夏たちは眉をひそめており、周囲の生徒もざわついている。
さもありなん、今の彼女は転校初日にいきなりド級のセクハラをぶちかました問題児なのだ。良くも悪くも注目を集めているわけである。
「とりあえず、いい感じの席あるし来てくれない?」
「……どうする?」
「まあ、いいんじゃないかな。俺も気になることがあるし」
「わたくしもご一緒しますわ。箒さんは?」
「い、一夏が行くなら私も」
そんな流れで俺たちはテーブル席まで移動し、座るや否や会話が始まった。
「鈴、いつ日本に帰ってきたんだ? おばさん元気か?」
「代表候補生にはいつ頃なられましたの?」
「一夏とはどんな関係性なんだ貴様」
「ちょっとちょっと、質問ばっかしないでよ。順番に答えるからさ」
鈴は大盛りのラーメンをズルズルとすすりながら返事をする。食いながら話すな食いながら。
「まず、こっちに来たのは昨日で母さんは元気。代表候補生は半年ぐらい前よ」
「……ん? ってことは半年未満で専用機貰ったのお前?」
「ま、そうなるわね。結構楽勝だったわ」
「なっ!?」
さも当然のように言い放つ彼女にセシリアさんがフリーズした。
年単位の努力の果てにブルー・ティアーズを手に入れた彼女からすれば、鈴の言葉は信じられないものなのだろう。
しかし鈴はそれを気にも留めず、今度は箒さんの質問に答えた。
「そうねー、一夏とは……うーん、親友?」
「いや、腐れ縁の間違いだろ」
「はぁー!? 言うに事欠いてそりゃないでしょあんた!」
「──なるほど。杞憂だったか」
ギャーギャー言い争う2人を見て箒さんはほっと胸を撫でおろしていた。
恐らく彼らが恋愛関係にでもあると思っていたのだろうが、俺の知る限りそんな兆候は全くもって0だ。
────というかそもそも、鈴は非モテである。
下ネタ好きのセクハラ女ということで大体の男子からは距離を置かれているし、そうでなくとも恋人にしたいと考えるやつは皆無だった。
俺としても見た目と料理の腕前『だけ』なら普通に
「ま、あとはそうね。一応幼馴染よ」
「……オサナナジミ?」
ギギギ、なんて擬音が聞こえてきそうなぎこちない動きで一夏の方へ顔を向ける箒さん。
彼は一瞬ぽかんとした表情を浮かべるも、すぐさま切り替えて口を開いた。
「あー、えっとだな。箒が引っ越してったのは小4の終わりだっただろ? 鈴が転校してきたのは小5の頭でさ。ついでに中2の終わりで国へ帰った感じ」
「ってことは、このデカパイがあんたの言ってたファースト幼馴染ってことね」
「で、デカパイ!?」
あんまりにもあんまりな呼ばれ方で彼女は反射的に胸を隠す。……却って強調されるせいで目のやり場に困るな。
とりあえず飯の方に集中するとしよう。今日は豚塩焼肉丼に味噌汁とサラダ、そこにひじき煮といった感じだ。
ちなみに一夏は日替わり定食、箒さんはきつねうどん、セシリアさんは洋食ランチだった。後ろ2人はいつもこればっかり注文してるなぁ。
「あ、そういえばだけどさ。一夏がクラス代表だっけ?」
「おう、成り行きでな」
「ふーん……」
鈴はどんぶりをもってごくごくと豪快にスープを飲み干す。そんなことしてたら太るぞお前。
「それでさ──ISの操縦、見てあげてもいいけど?」
「「なっ!?」」
「……」
彼女からの意外な定番に1組女子2人は驚愕し、一夏は渋い表情を浮かべた。
鈴は2組のクラス代表であり、今度の対抗戦の相手となるので手の内を明かすリスクがある。
しかし、噂によれば彼女のISは接近戦を想定した代物らしい。となると、セシリアさんとの訓練よりも上質な学びを得られる可能性が高い訳だ。
果たして彼はどっちを優先するのだろうか。
「……鈴」
「ん? 訓練する?」
「いや、断わらせてもらう」
一夏は彼女の方をちらりとも見ずに言い放った。流石に想定外だったのか鈴は一瞬目を丸くし、すぐさまそれを鋭くする。
「敵の施しは受けないってこと? 言っとくけど、あたしのことをあんたが知っても勝敗は変わりゃしないわよ」
「さあな。案外、俺が勝つかもしれないぞ?」
「……そう。せいぜい足掻いてみなさい」
鈴はすっと席を立って離れていった。あからさまに不機嫌そうだったが、たぶん1時間後にはいつものセクハラ脳に戻ってるだろう。
「いいのか一夏? あんなのでも友人だぜ?」
「……悔しいですが、ブルー・ティアーズは遠距離機体。あの話には乗るべきだったとわたくしも思いますわ」
「いや待て。白式は並のISとはまるで別物、訓練にならなかった可能性もあるぞ」
三者三葉の意見が飛び出てしまい、そのまま長話にもつれ込む。
──まあ結局、明確な結論が出る前に織斑先生のどやしが始まってしまい有耶無耶になったのだが。
「え?」
放課後の第3アリーナ。いつも通り一夏と一緒にセシリアさんからIS操縦を学ぶ予定だったのだが、予想外の人物がやってきた。
「な、なんだその顔は……おかしいか?」
「いや、その、おかしいというか──」
「ほ、箒さん!? どうしてここにいますの!?」
そう、俺たちの目の前にいたのは箒さんだった。しかも『打鉄』を装着、展開した状態である。
「こうして纏うのは入試以来だな。随分と待たされた」
「……なあ箒、確か訓練機の予約って数分で満杯になったって話なんだが」
「ふっ、私が1番乗りだっただけだ」
彼女は誇らしげに胸を張る。ISスーツによって輪郭が強調されたそれは極めて目に毒であり、俺たち男子は思わず目を反らした。
「それに、近接格闘戦の訓練が足りていないのだろう? なら私の出番だ」
「……確か、箒さんのIS適性はCだったのでは?」
「あんなもの単なる目安だと千冬さんが言っていただろう。なにより、私は剣道全国大会の優勝者だぞ?」
「なるほど……では、お手並み拝見させていただきますわ」
セシリアさんに合わせて俺もすっと引き下がる。向かい合った一夏と箒さんは互いに刀を抜き、剣道の要領で得物を合わせた。
そして静寂が訪れ──
「参るっ!」
「はああっ!」
目にも留まらぬ速さで剣戟が行われる。宙に散る火花と鳴り響く金属音だけが、それの激しさを物語っていた。
しばらくすると鍔迫り合いになり、機体スペックの差によって白式がじりじりと押し迫っていく。
「うおおお!」
「──甘いっ!」
しかし箒さんは冷静さを失うことはなく、逆に力を抜くことで一夏の体勢を崩し後ろに回り込んだ。
そして思いきり振り上げて斬りかかろうとするが、後方加速した白式によって弾き飛ばされる。
「くっ!」
「動きが固いな箒! ISには慣れてないか?」
「ええい、調子に乗るな!」
彼女は刀を構え直すと、打鉄の代名詞である大型浮遊盾を前面に置いて突進する。
量産機の持つ防御装備の中では1,2を争う強度を誇るそれの扱い方としてはかなり上手い部類だろう。
……しかし、白式にはそれに対する明確な『回答』があるのだ。
「──どりゃああ!!」
「なにっ!?」
一夏の握る巨大な刀──近接ブレード《
彼はそれを強く振るうと、1秒と経たずに打鉄の盾を溶断してしまった。そしてそのまま本体に斬りかかり、ISが一瞬激しく光る。
それを見たセシリアさんは血相を変え、慌てて2人の間に割り込んだ。
「そこまでっ!」
「なっ……オルコット、私はまだ戦えるぞ!」
「問題は織斑さんですわ! 訓練中に
「あっ……すまん、熱くなりすぎた」
流石に気まずいのか一夏はかりかりと頬をかく。一応訓練なのだから加減してほしいものだ。
──そういえば、まだ
これは一般的にISと操縦者が最高状態の相性になった時に自然発生する能力のことだ。
そもそもISの歴史が短いことであまり数がないものの、例としては『風を操る能力』や『異常な加速度を与える能力』。あと、変わり種だと『跳弾を制御する能力』なんてものもあるらしい。
そしてついさっき一夏が使ったワンオフの名前は『
その内容はシールドバリアーを始めとした『あらゆるエネルギーを無効化する』性質をもったビーム刃を生み出すといったもので、対ISにおいて最強の武器の1つである。
そもそものスペックの高い白式がこれを持っているので鬼に金棒──と言いたい所だが、実は重大な欠点があった。
それは、この能力を発動すると機体のエネルギーを馬鹿みたいに消費するということだ。
以前クラス代表決定戦で俺が使った朧雪よりかは流石にマシだが、それでも気軽には使えないらしい。
あと、バリアーを無効化する性質がシンプルに危険極まりないものなのでそこも欠点と言えるだろう。
セシリアさんにこってり絞られた一夏はしょぼーんとしながら俺の方に飛んでくる。こいつのこういう姿は珍しいので目に焼き付けねば。
「ごほんっ! 先ほどの戦い、双方見事でした。特に箒さん、とても初心者とは思えない動きで驚かされましたわ」
「いやなに、一夏の動きが単純だったからどうにかなっただけだ。最後は視界を捨てたせいでああなったしな」
「……まさか、見えていれば避けられたとでも?」
「そうだが?」
箒さんの返事にセシリアさんがピシっと固まっている。
ちなみに俺はたぶん避けられない。どうにも一夏の攻撃に対しては危機感知が鈍るのだ。
「と、ともかくですわ! 今から組み合わせを変えつつ特訓をします。そして最後に2対2という形でよろしいですか?」
「問題ない」
「おう、分かった」
「やるぜやるぜー!」
こうしてテンションを上げたまま訓練を始め、超回避のコツを根掘り葉掘り聞かれるトラブルこそあったものの恙なく進行したのであった。
ちょっとコメディ色強めの回でした。
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ムフフなif、読みたいですか?
-
いる
-
いらない
-
そんな物より本編優先して♪