貞操逆転世界で俺はチョロ可愛いをしてるらしい   作:黒鉄48号

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 お久しぶりです。学業に追われたり新しいバイトを始めたり、ついでに夜間救急に駆け込むハメになったりと色々あって投稿遅れました。

 そして、しばらくお休みさせて頂いた間にUAは7万越え、お気に入りは900間近まで伸びていました。これからも拙作の応援、よろしくお願いします。


第十一話 2つ目の約束

 鈴の転校から数日が経過した。

 第一印象こそセクハラ騒ぎのせいであまりよろしく無かったが、どうやら持ち前のコミュ力で汚名返上できたようだ。休み時間の度に女子が集まり、色々な話をしているのをよく見かける。

 

 

 横からチラホラと耳にした程度だが、その多くはやはり彼女の専用機についてだった。

 何せ、同じ国家代表候補生であるセシリアさんが1年以上かけてようやく手に入れた代物を、鈴は半年足らずで勝ち取ったのだ。

 多くの生徒が『もしかしたら自分たちも?』と思って聞きに行くのは道理である。が、しかし────

 

 

「そうねえ~、まずあっち(中国)行った時はそりゃあもうアホほどいびられたわ。他のメンバーが権力者の娘だアスリートの娘だなんだのって所に、いきなり日本育ちの田舎娘よ?」

「服を破かれるのはしょっちゅうだったし、酷い時にはISスーツに小細工して“事故”を起こそうとされたこともあったわ」

「んでもそこはあたしだからさぁ。めげない・しょげない・へこたれない! って感じで耐えきったわけよ」

「そんでまあ、毎日とにかくガムシャラに訓練してたらあのクソババ──んん゛っ、国家代表に目ぇ付けられてさ?」

「今までが天国かって思うぐらいのシゴキ食らって、それでもナニクソーッって食らいついて……いつの間にか()()よ!」

 

 

 ──以上、鈴の語りの抜粋である。

 とかく中身と言える中身がほぼなく、肝心の訓練内容や国家代表さんとのやり取りは皆無。とはいえ、堂に入った喋り方のせいか女子はかなり楽しげに聞いていた。

 …………ここまでなら良かったね、で済むわけだが。そうは問屋が卸さなかった。

 

 

「勇、あんた相変わらず可愛いわね~♡」

「……鈴」

「まぁまぁ、落ち着けよ一夏」

 

 

 隙あらば際どいスキンシップを図ってくる鈴とそれにイラつく一夏、ついでに挟まれる俺。この構図がまあ日に何度も起きるせいで心労が半端ないわけだ。

 彼女に貸したハンカチを全力で吸われた日なんて、流石にご飯のおかわりが出来なかったほどである。

 総じて鈴の立ち位置は『時たまトラブルを引き起こすムードメーカー』という絶妙なものとなり、先代クラス代表兼ルームメイトのティナさんも胃を痛めているようだった。

 

 

 さて、そんなこんなで結局一週間ぐらいが過ぎてクラス対抗戦が目前となった頃。

 アリーナを試合用に設定するとのことで、特訓は実質今日で最後だ。もはや見慣れたものとなった第三アリーナから見上げる夕焼けに思いをはせつつピットに向かっていく。

 

 

「いやー、最初の時はもう二度とやりたくないって何度も思ったけど……いざ最後ってなると、なかなか来るものがあるなぁ、一夏?」

「あぁ……暫くは胃を傷めずに済みそうだ」

「…………色々お疲れさん」

 

 

 時たま魔が差して一線を越えようとするセシリアさんを窘めてくれる(ボコれる)親友には、とてもじゃないが頭が上がらない。箒さんは初心なせいかこういうのだと頼りにならないし。

 そうしてアリーナまでやって来たのだが、隔壁の向こうから僅かに声が漏れ出していた。耳をそっと当ててみると、どうやら女子が言い争っているようだ。

 

「──から、──しが手伝ってやる──」

「きさ──なんて──、受け取れ──」

「そもそも──らしくな──、信用でき──」

(…………やばいなこりゃ)

 

 

 すぐにでも肉体言語へ移行しそうな雰囲気を感じ取り、慌ててドアセンサーに手のひらを押し付ける。指紋と静脈を瞬きよりも早く読み取り、パシュッと小気味よい音を立てながら扉が開いた。

 言い争っていた面々──セシリアさん、箒さん、そして鈴──が一斉に振り向き、わざとらしい笑みを貼り付けてこちらに話しかけてくる。

 

 

「ず、随分と遅かったじゃないか2人とも! 日が暮れてしまうかと思ったぞ!?」

「え、えぇ! ティータイムでも設けようかとしていましたわ!」

「そ、そうね! 折角だしみんなで仲良くしようとしてたのよ! そうよね!?」

 

 

 わちゃわちゃする彼女らの姿になんとなく青春を感じている最中、一夏だけは大きくため息をついたあとにゆっくりと口を開いた。

 

 

「で、なんでお前がここにいるんだよ、鈴」

「あ、あたしは関係者よ! 勇の関係者、だから問題なしでしょ?」

「……相変わらず嘘が下手だな」

 

 

 必死に言い繕うとする鈴の努力を彼はあっさりと見抜き、かつかつと彼女の元へ歩み寄る。女子を見下ろす男子という久しく見ることのなかった構図は、やけに息苦しさを感じるものだった。

 

 

「お前のことだ。どーせ『最終日だし、あたしも仲間に入れなさいよ~』とか、そういうのだろ」

「ええ、そうでしたわ。一言一句、声色も全く同じ感じで」

「いやいやいや、そこまで猫撫で声じゃないでしょ!?」

 

 鈴は一夏たちのあんまりな言い草に腹を立てたものの、やけにジットリとした目で見つめられると続く言葉を飲み込まざるをえなかった。

 険悪な空気が漂う中、そろそろ仲裁に入るべきかと口を開こうとしたその瞬間────

 

 

「鈴。1つ、賭けをしないか?」

「……はっ?」

「一夏!?」

 

 

 おおよそ彼らしくない一言に意表を突かれた鈴は素っ頓狂な声を漏らし、箒さんも目を見開いて驚いている。

 そんな2人を他所にセシリアさんはかなり渋い表情を浮かべており、眉間に皺が何本も出来ていた。

 

 

「失礼ですが織斑さん。厳正なる勝負に、そのような物を加えるのはいかがなものかと」

「ただ食いが景品になってる催しだろ、元々? それがちょっと増えたぐらい問題ないだろ」

「そっ、それは……」

「待て一夏。ただ食いじゃなくてフリーパスだ」

 

 

 反射的に両者の会話へ割り込んでしまう。何せバイト先の五反田食堂があった地域は微妙に治安が悪く、片手で事足りる数とはいえ食い逃げ犯が出没したこともあったからだ。

 ……それに何より、俺とて学園食堂のスイーツはいくらでも食べたい程に好きなのだ。

 

 

「…………言い方が悪かったな。ともかく、元から景品があるんだったら1つぐらい個人間のやつが増えても大丈夫だろ?」

「えぇ、そうね。例えば、『勝った方が負けた方になんでも1つだけ言うことを聞かせられる』とかどう?」

「却下。絶対ろくでもないことに使うだろお前」

 

 

 一夏の提案にノリノリな鈴とは対照的に、言いだしっぺの本人は妙に冷静だった。恐らく彼女の口の上手さを警戒してのことだろう。

 かつて俺と弾を含めた仲良し4人組でだるま市へ屋台料理目当てに繰り出した際、ついでのように値切り交渉で全員分の達磨を半額にしてみせたのは記憶に新しい。

 

「ちっ、相変わらずケチなんだから……じゃ、そうね。勝った日から1か月、毎日あたしの料理を食べてもらうとか?」

「っ、待て! そんなことは私が認めんぞ!!」

「はぁ? なんであんたが…………ははーん? さては()()()()()()~~?」

「な、なにを──ッ~~~~!?」

 

 

 ニヤニヤとあくどい笑みを浮かべる鈴に対して箒さんは一瞬戸惑うものの、少し遅れてボッと赤面した。……薄々感じ取ってはいたが、やはり彼女は原作通り一夏に対してかなり強めの恋愛感情を抱いているようだ。

 ちなみに彼の方はと言えば、鈴の生み出す独創的()な料理を想像してげっそりしている。

 

 

「……あの時みたいに、ズタボロの肉食わせるのはやめてくれよ?」

「えー、何よ? 舞茸とパイナップルと玉葱に漬け込んだだけじゃない」

「アレは本当にやばかったな、うん。ソースすら不味いってどういうことなんだよほんと……」

 

 

 なまじ料理の腕前自体はしっかりしているが故に、好奇心のストッパーが容易に吹き飛ぶんだよなこいつ。重曹までぶち込もうとして止めたのは正解だったとは思う。

 

 

「その、なんだ。だったらいいんじゃないか、それでも」

「わたくしも同意ですわ。敗北はリスクが付き物ですもの」

「あ、もちろんあんた達にも振る舞うわよ?」

「「…………」」

 

 

 安全圏から一気に引きずり落とされて絶句している女子2人に思わず同情する。特に舌が肥えてるであろうセシリアさんは相当苦しむんじゃなかろうか。

 そんなことをボケーっと考えていると、ついに一夏がゆっくりと口を開いた。

 

 

「……なら、次は俺が勝った場合を話そうじゃないか」

「んー、それこそなんでもいいわよ? 天地がひっくり返ろうが、そんなこと起きやしないんだもの!」

「なんでも、か。じゃあ、鈴──」

 

 

「────1ヶ月、勇と俺に関わらないでくれ」

 

 

 深呼吸のようにゆっくりと吐き出されたその言葉は、一瞬でピットを駆け抜ける。振動が鼓膜を震わせ、段々と嫌な汗が全身から湧き出したことでようやくそれが現実だと実感した。

 両の目をかっぴらいて微動だにしない鈴を他所に、彼は続けざまに喋り出す。

 

 

「お前が転校してきた時、実を言えば期待してたんだ。お転婆で加減を知らない鈴は大人になって、立場相応の振る舞いを身に付けた凰鈴音となったんじゃないかって」

「……けど、そうじゃなかった。脳みそ真っピンクでセクハラばっかりの、どうしようもない馬鹿のままだった」

「そりゃ、変わってないなぁって安心もしたさ。曲がりなりにも友人だったからな」

「…………とはいえ、ここ最近は少々目に余る。ともすりゃあ、ISを手にしたせいか昔より高慢ちきになったぐらいだ」

「だから1ヶ月、たーっぷりと頭を冷やして……反省して欲しいなぁ、ってよ?」

 

 

 いつも通りの朗らかさに交じる、全てを突き刺す氷柱のように酷く冷ややかな声色。実際に周囲の気温が数℃下がったかと錯覚するようなそれは、俺の知らない織斑一夏そのもだった。

 

 

 誰にも口を挟まれずに言い切った彼はふぅ、と一息ついて笑みを浮かべる。適当なグラビアから切り取ってきたようなそれは、しかし目だけが一切笑っていなかった。

 その異質な雰囲気に全員が黙り込み…………それを破ったのは、若干震えながらもハツラツとした聞き覚えのある声。

 

 

「──分かったわ、一夏。その条件で行きましょう」

「……てっきりゴネると思ってたんだが」

「あんたが売って、あたしが買った。それにこっちから条件を先に出したんだもの。それを前言撤回するなんて、女が廃るわよ」

「そうか。じゃ、試合当日にまた会おうぜ」

 

 

 一夏はそう言い残すと制服を脱がずにISを展開し*1、一足先にアリーナの中に飛び去ってしまった。あんまりな態度に呆れていると、今度は鈴がエアロックの方に歩き始めた。

 

 

「おいおい鈴。本当にあんな話を呑んで良かったのか?」

「なによ勇? もしかしてあんた、あたしが負けるとでも?」

「……はっきり言って、一夏はかなり強いぞ。最近じゃあレーザーも平気で避けられるぐらいだ」

「ふふふ、そんな程度じゃあ勝ち負けに影響しないわよ。それにあたしの相棒は……っと、これはその時までの秘密だったわね」

 

 そこまで言った彼女は「じゃあね~」と手を振り、素早い動きで立ち去ってしまう。残された俺と女子2人はしばらく顔を見合わせ、とりあえず訓練をした方がいいと考えたのかほぼ同時にアリーナの方へ動きだすのだった。

 

 

 

 そして翌朝。ついに張り出されたトーナメント表……その1回戦は、奇しくも1組対2組────即ち、一夏と鈴の試合であった。

*1
エネルギーを無駄に使うものの、制服を量子変換してISスーツに着替えさせてくれる機能が専用機には搭載されている。




 今回は若干短めです。ここから少しずつ物語の流れも変わっていきます。

 感想・評価をカンフル剤にこれからも頑張って行きます。

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