貞操逆転世界で俺はチョロ可愛いをしてるらしい   作:黒鉄48号

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 寝て起きたら総合日間4位になってました。なんならお気に入りが1000を突破してました。アリガットウ、アリガットウ!
 高湿度な一夏が想像以上に皆様から人気で驚いてます。本当に嬉しい限りです。


第十二話 龍と獅子、まみえて

 試合当日、第二アリーナ第一試合。対戦カードは俺と鈴。

 片や初の実戦で代表候補生を破った第二の男と、もう片方は入学よりも遥かに厳しい編入試験を潜り抜けた噂の新入生。

 そんな2人の戦いとあってアリーナは全席満員。それどころか通路にまで立ちっぱなしの生徒がひしめき合っていて、もはや人のいない所はどこにもないレベルだ。

 ついでに言えば、会場入り出来なかった生徒や関係者はアリーナ外部に取り付けられたリアルタイムモニタで鑑賞しているらしい。

 

 

(……ま、そんなこと気にしてもしょうがないか)

 

 

 俺の視線の先では、鈴とその専用IS『甲龍(シェンロン)』が試合開始を今か今かと待っているのだ。

 先日戦ったブルー・ティアーズと同じく非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)が特徴的であり、2つの巨大な棘付き肩アーマーが攻撃的な主張をしていた。一瞬アレを爆速でぶつけてくるのかとも思ったが、そんな安直なことは恐らく無いと思考から排除する。

 

 

(しっかし、シェンロンねぇ……)

「言っとくけど一夏、緑のアレとはなーんにも関係ない名前だからね」

「…………相変わらずの勘の良さだな、ほんと」

「あんたが顔に出やすいだけよ」

 

 

 開放回線(オープン・チャンネル)で彼女と言葉を交わしていると、スピーカーから『両者、規定の位置まで移動してください』とアナウンスが流れた。それに促されて空へと浮かび、5メートルで鈴と向かい合う。

 

 

「どうする鈴? 今からでも期間を短くしてやろうか」

「へっ、そんなこと言ってせいぜい1日ぐらいでしょ。そんなのいらないから、全力で来なさい」

「あぁ、勿論そうさせてもらうさ」

 

 

 売り言葉に買い言葉、俺たちは同時に得物を呼び出した。相変わらずヒトガタが振るには少々大きすぎるであろう雪片を握り締めつつ、相手の武装を観察する。

 鈴が両手に備えていたのは青龍刀……というよりかは、巨大な刃のついたバトンだった。如何にも中華チックなチョイスだと感心しつつ、石突側には連結用のジョイント的なパーツも見て取れた。

 かつて勇と一緒に見たヒーロー番組──1度死んだ少年が、蘇る為に様々な敵と戦うという内容だった──にも合体する巨大武器はあったので、恐らくロマンというやつだろう。

 

 

「一応言っておくけど、ISの絶対防御も完璧じゃないのよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 それは脅しでも何でもなく、純全たる事実だった。IS黎明期ではロボットアニメに着想を得た『操縦者だけにダメージを与え、意識を刈り取る装備』なんてものもあったのだ。

 しかも、その1つが人命に関わる重大な事故を引き起こしたせいで今やそういう類の代物は競技規定違反──事実上の開発禁止にまでなっている……が、しかし。

 

 

「今更そんなことに怯えるかよ。どいつもこいつもスパルタで、散々痣作ったからな」

「……そう。その言葉、忘れないことね!」

 

 

 言い終わった瞬間、ブザーと同時に試合開始のアナウンスが鳴り響く。観客たちが一気に叫び出す中、俺と鈴は同時に動いた。

 初撃は雪片弐型と案の定両刃に合体した青龍刀──白式曰く名称は《双天牙月(そうてんがげつ) 》──がかち合い、双方が弾き飛ばされる。オルコットから教わった三次元躍動機動(クロス・グリッド・ターン)をどうにかこなし、相手を正面に捕らえた。

 

 

「ふうん。今のを防ぐなんてやるじゃない。けど──これはどうかしら!」

 

 

 彼女はパレードの指揮者が如く得物を縦横斜めに角度を変えながら切り込んでくる。しかも武器が高速回転しているせいで、捌くのにも一苦労だ。

 何より白式は燃費が悪い。消耗戦を避ける為に一度距離を取らねば……

 

「──甘ぁいッ!!」

 

 

 鈴が叫ぶと同時に肩アーマーがスライドして開く。未知の攻撃を予感して大きく右に跳び────俺は見えない衝撃に()()()()()()()()()()()()()

 無論その隙を見逃す訳もなく、「今のはジャブよ」と笑いながらより強力な衝撃。それによって地表へ叩き付けられる。

 

「ぐあっ!」

 

 

 嫌な痛みがシールドバリアーを貫通して届いており、エネルギーも一気に76減らされていた。やはり、鈴とその専用機は侮れない敵のようだ……。

 

 


 

 

「避けたのに当たった!?」

「というか、なんだあれは……?」

 

 

 ピットでリアルタイムモニターを見ていた俺の横で、箒さんが呟いた。その問いに答えるは、同じくモニターを見つめているセシリアさんだった。

 

 

「『衝撃砲』ですわね。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ちだす──」

 

 

 ブルー・ティアーズと同じ第三世代兵器ですわと続いた言葉は、しかし俺の耳を素通りしていた。

 いくら衝撃……すなわち不可視の攻撃だからといって、結局その速度は音速を少し超える程度なのだ。それより遥かに高速のビームを用いる機体と訓練をしてきた一夏が、果たして簡単に食らうだろうか?

 

 

「……うむ。恐らくだがあの女、一夏の回避パターンを読んでいるな」

「へっ?」

「よく見てみろ。今のところ、一夏は必ず()()()()()()()()()()()()()()。聞いた話によれば彼女も武術家、そういった芸当はお手の物だろう」

「なる、ほど……?」

 

 

 箒さんが言うならきっとそうなのだろう──なーんて、なるわけないだろうがよ!

 要するにFPSの置きエイムと似た原理。しかしながら、遮蔽も無しの真っ向勝負でずっと読み勝ちなんてとてもじゃないが人間業じゃない。

 そもそも、そんなことを鈴が出来るのなら転校初日のアイアンクローだって避けることが出来たはずだ。

 

 

「……お言葉ですが箒さん。普通、人間は未来を予測出来ませんのよ」

「そうなのか? 父上は私の攻撃をいつもどこに来るか分かってるかのように避けていたんだが……」

「もしかして人外の家系でいらっしゃる?」

 

 

 色々と規格外過ぎて本当に当てにならんなこのメインヒロイン……なんなら原作かアニメでロッカーを素手でぶっ壊してたのを思い出したぞ。

 とにもかくにもその場で先読みかましてる線は無いとしていいだろう。ならハイパーセンサーが無茶苦茶優秀なのか、或いは誰かが一夏の回避データを流したとかなんだが……

 

 

「セシリアさん。アリーナで俺たちを見学してた人たちの誰かが、一夏の回避データを集めてたって可能性は」

「いえ、不可能ですわ。何せISは最強の機動兵器、その動きを正確に記録するとなれば据え置き型の装置が必須ですもの」

「そうですよねぇ……このモニターの映像とか、箒さんぐらい巨大なカメラで撮影してるみたいだし」

 

 

 全く全く、どこかに手頃なサイズでISの一挙一動を補足出来て、ついでにそのデータをひっそりと渡せる道具でもあればなぁ。とはいえそんなもの、それこそISぐらいしか──

 

 

「……待てよ? そういや図書館に保管されてる試験映像って、IS視点のもあったような」

「ああ、確かにな。実に素晴らしいものだったぞアレは……お陰で私もかなりの学びを得られた」

「つまり────I()S()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことか」

 

 

 一夏とISで何度も戦い、その回避データを十二分に集めることが出来た人物……一夏にほの字な箒さんは言わずもが論外で、残されたのは俺とセシリアさん。そしてこちらはあの日以降、鈴とまともに会話を出来ていないとなれば…………

 

 

「……申し訳ございません、勇さん」

「ん? どうしたんだセシリア」

「……鈴に、一夏のデータを?」

「はい」

 

 

 彼女は一瞬だけ申し訳なさげな表情を浮かべたものの、すぐさま普段の優雅な笑みに戻って答えた。あんぐりと口を開いている箒さんを他所に、セシリアさんは更に喋り続ける。

 

 

「言い訳がましいかもしれませんが、理由をお話ししても?」

「……お願いします」

「はい。では────」

 

 


 

 

 織斑さんと(ファン)さんが”賭け“を取り決めた翌日のこと。放課後にわたくしは彼女の部屋を訪れました。

 出迎えたのは同居人のティナ・ハミルトンという方で、三上さんたちも知っての通り本来なら2組のクラス代表を務める筈だった人物です。

 

 

「えっと……失礼ですが、イギリスの代表候補生がどんなご用件で?」

「凰鈴音さんと話をする為に。ただいまいらっしゃいますか?」

「んー、何よ?」

 

 

 わたくし達の会話を聞きつけたのか、凰さんはすぐさまこちらへやってきました。ベッドで寝転びながら菓子でも食べていたのか顔にも服にも滓が付いていて、髪も大分とぼさついているように思えるほどでした。

 

 

「対抗戦について、少しばかりご相談させていただきたいことがありまして。お時間頂けますでしょうか」

「……まあ、聞くだけ聞いてみましょうかね。入っていいわよ」

「では、失礼して」

 

 

 促されるままに彼女たちの部屋(わたくし達のものより少々雑然としていました)に入り、本体と袖の分割された改造制服が脱ぎ捨てられた凰さんのベッドへ腰掛ける。

 代表候補生同士の対話という状況に戸惑っているハミルトンさんに対し、凰さんはいつも通りの自然体で全く緊張していませんでした。

 

 

「で、話っていうのは何よ」

「────単刀直入に言いましょう。わたくしのブルー・ティアーズに記録されている織斑一夏との戦闘データを、あなたに提供いたします」

「……はぁーッ!?」

 

 

 相当に驚いたのか凰さんは胡瓜を見かけた猫の如く跳び、すぐさまこちらに掴み掛かって大慌てで語りかけてきます。

 

 

「ちょっとあんた、何言ってるか分かってんの!? 専用機のデータだけは絶っっっ対に何があろうと第三者に渡すなって、それを貰う時に嫌というほど教え込まれたんじゃない!」

「ええ、その通り……ですので勿論、渡すのはあくまで()()()()()()。こちらの稼働データは1bitも含まれておりません」

「あーなるほど、なら大丈夫──な訳ないでしょうがこの縦コロネ!」「縦コロネ!?」

 

 

 奇怪な罵倒に一瞬呆けますが、やはり彼女とて代表候補生に選ばれた逸材。なんだかんだリテラシーは身に付けていることがうかがえました……逆になんであんなセクハラしまくるのか、より理解不能にもなりましたが。

 閑話休題。一通り言い尽くして落ち着いたのか、肩で息をしながらも鈴さんは改めて口を開きます。

 

 

「ま、よーするに! 一夏の戦闘映像をあたしにくれるってことでいいのよね?」

「はい、そういうことですわ」

「……バレたらあいつとデカチチだけじゃなくて、勇も怒りそうだけど?」

 

 

 ──勇さんに怒られる。つまり、保護者面の一夏さんがよくしている光の消えた目を浮かべ、それをわたくしに向けられる?

 ああ、いけませんわ勇さん。彼ならまだしも貴方の体躯でそれをやろうものなら、それはまるで威嚇するレッサーパンダ。わたくしの淑女が貴族主義に目覚めて当主の役目を果たしてしまいそうに────

 

 

「おーい、戻ってこーい?」

「……はっ!? し、失礼いたしましたわ」

「いやまあ、すっげえ分かるわよ。ああいう可愛い男の子をワカラセたいのは全人類の夢なんだもの」

「もしかしてまともなの私だけ???」

 

 

 もう片方のベッドで頭を抱え何かを呟くハミルトンさんを他所に、わたくし達の会話は元の話題に戻って続きます。

 

 

「……確かに、勇さんはいい顔をしないでしょうね。ですが、ミドルスクールからの親友同士が仲違いするよりはよっぽどマシですわ」

「ふーん。つまり、あたしら3人の友情の為に汚れ仕事をやってくれるって?」

「ええ。友がいないことほど、辛いものはありませんから」

 

 

 お父様とお母様がご存命の頃は、それこそ両手両足でも数え切れないほどの信頼できる“友人”がわたくしの傍にいました。

 ですが、2人が亡くなってからは一人一人と離れていき、遂にはメイドのチェルシーだけになってしまった。そんな悲しい思いを、勇さんにはさせてあげたくないのです。

 

 

「…………じゃあ、そうね。お返しに中学時代の勇の写真を渡す感じでいいかしら?」

「勇さんの、写真……!?」

「ふふふ、選りすぐりの()()()なラインナップよ。例えばこれとか──」

 

 

 そう言って凰さんが見せてきたスマートフォンに写っていたのは、体操服を着た勇さんでした。しかも運動会の最中なのか、顔が火照って汗を流しており……

 

 

「20出しますわ」

「小切手ぇ!?」

「鼻血流しながら言うことじゃないよオルコットさん」

 

 

 …………まあ、そんなかんなで色々ありつつも。わたくしは何枚かの写真を入手し、代わりに織斑さんの映像記録を()()()に渡したのでした。




(その後の一幕)
「どこから突っ込めと?」
「オルコット、貴様まで道を踏み外すなど……!」
「あるのがいけない、あるのがいけないのですわ!」
「「なわけあるかァッ!!」」「ぶべぇ!」


 感想・評価で気が高まる……溢れるゥ……!!

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