貞操逆転世界で俺はチョロ可愛いをしてるらしい   作:黒鉄48号

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 思った以上に筆が乗ったので連日投稿です。お気に入りが1100個を超えた上に、しおりが600枚とかいう見た事ない量になってて腰を抜かしてしました。
 久方ぶりの本格バトル回、需要があったらいいなぁ。

──追記
 対抗戦が長引きそうなんでサブタイトル変えました。


第十三話 爪よ唸れ、拳よ咆えろ

「あはは! なっさけないわねぇ一夏!」

「くぅ……」

 

 

 試合開始から6分と少し。彼とてただ的にされるようなことはなく、衝撃砲《龍咆(りゅうほう)》の真後ろに移動するなど思い付く限りの回避策を試していた。

 しかしながら、それは甲龍の設計段階で想定済み。装甲の展開はあくまで力場を生み出すだけであり、砲身は球の表面全てに形成可能なのだ。それに発射速度も申し分なく、並のISでは衝撃を食らった後にようやく空間の歪みを検知できるぐらいになっている。

 用いている原理の関係で一直線にしか飛ばせないという欠点こそあるものの、本国でビシバシ鍛え抜かれたあたしが使えば無問題(モウマンタイ)なのだ!

 

 

「ほらほらほら! 今ならギブアップも受け入れて──」

「──鈴」

 

 

 あげるわよ、と続けようとしたその時。一方的に攻撃され続けている人間とは思えないほどに強い“意志”を宿した目がこちらを射抜いた。飛び道具を何1つ持っていない相手のはずなのに、その気概に押されて責め手が止まってしまう。

 

 

「本気で行くからな」

「そっ、そんな当たり前のことを!」

 

 

 弱気が微塵も見えない声色に警戒を高め、得物を構え直しつつ砲身を形成。コンマ数秒にも満たないその瞬間を狙ったかのように、凄まじい爆音と共に白式(一夏)がグンと勢いづく。

 機体性能に物を言わせたシンプル極まりない機動に呆れつつ衝撃弾を撃ちだし──直後、彼は勢いを一切殺さずに()()()とそれを避けて見せたのだ。

 

 

「うそッ!?」

「しゃ、おらぁァ!!」

 

 

 呆けている間に真白なブレードが逆袈裟で勢いよく振りぬかれ、そこから飛び出す光刃に負けない程に甲龍のバリアが激しく明滅した。

 反射的に両腕の小型衝撃砲《崩拳(ほうけん)》と龍咆を同時発射して大きく距離を取りつつシールド残量を確認すれば、今の一撃で半分以上のエネルギーが持っていかれていたのだ。

 

 

「──ていうか一夏、あんた何やってんのよ!」

「ははっ、気づかれちったか……」

 

 

 悪戯が上手くいった悪ガキのように笑う彼は、さり気なく自身の胸板を手で庇っていた。息も普段よりあがっており、明らかに尋常な様子ではない。

 それに遅れて気が付いたのか会場もにわかにざわめき出し、一時的に攻撃を止めて睨み合いとなる。

 

 

「……今の、瞬時加速(イグニッション・ブースト)よね。いつの間に覚えたのよあんた」

『────そうだな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ッ!?」

 

 

 プライベート・チャンネルに切り替えて告げられた一言に驚いていると、一夏は「やっぱりそうか」と予想通りかの如く呟いた。

 

 

『この前の昼食、妙にニコニコしてたのを怪しんで後ろから見てみたら……お前しか持ってないはずの勇の写真が何枚かスマホに写っててな』

(なんちゅう場所でエロ妄想繰り広げてんのよあのエロ淑女ー!!)

 

 

 セクハラばっかりのあたしが言うなと思われるかもしれないが、これでも時と場所はしっかり弁える主義なのだ。そういうことはベッドの中かトイレの個室でやりなさいっての。

 

 

「……ま、そんなことは置いといてだ。俺らの担任は非常~~に教育熱心でな。アレコレ理由付けてアドバイスしてくれたってわけ」

「あーね。そういやソレって千冬さんの得意技だったわ」

 

 

 瞬時加速──いや、厳密には『高速二連瞬間加速(クイックブースト)』と呼ぶべき技術。それは1度目の加速後に残留するエネルギーが拡散する前に2度目を発動することで、本来よりも多量のエネルギーを用いた超加速が可能という代物だ。

 ……ちなみに、初期はシンプルに『2段QB』という名称を用いる予定だったらしいのだが、なんか色々とトラブルがあったらしくてわざわざ別の名前をあてがう羽目になったらしい。

 

 

 閑話休題。そんな世界最強(ブリュンヒルデ)ですら武器として重宝する程に強力な技能を一週間程度で身に付けたことも驚嘆に値するが、問題は先程の一夏の使い方だ。

 瞬時加速は膨大な慣性エネルギーが発生する関係上、PICを持つISですら発動時は直線的な機動しか出来ない。ついでに言えば途中停止も不可能である。

 それを目の前の男は、あろうことか発動中に軌道を捻じ曲げやがったのだ! 一歩間違えれば内蔵破裂、最悪の場合は手足が捥げる大惨事になるような危険行為を!!

 

 

「あんたさぁ、もしかして馬鹿?」

「あぁ、そうだな。勇のロマン馬鹿がうつったに違いねえ!」

 

 

 そう言って彼はゲラゲラと笑いのけてみせた。そこから視線を観客席に移してみれば、司会者が危険行為の詳しい説明をしたのか酷く静まり返っている。

 そんな中、笑いきって落ち着いたのか一夏近接ブレード(雪片弐型)の切っ先をこちらに向けてきた。その目はいつになく真剣で、思わずこちらも双天牙月を構えてしまう。

 

 

「さて。そろそろ試合再開といこうじゃないか、鈴。そっちも本気で来てくれよ」

「……へぇ、言うじゃない。調子に乗ったこと、後悔させてやるわ!」

 

 

 そう叫ぶと同時に互いが得物を振るい、再び刃同士がかち合う。しかし今度は弾かれることはなく、武装マニピュレータという得意な兵装で追撃してきた。

 紙一重でそれを避けて距離を取ろうとするものの、大型ブースターの推力に物を言わせて逆に詰められてしまう。

 

 

「ちょっとあんた、いきなり脳筋が過ぎるわよ!?」

「『自分の武器を全力で押し付けろ』って色んな奴に言われてるんでなぁ!」

 

 

 先程までの小細工が噓のようなゴリ押し──しかし、それがこちらにとって最悪なのも事実だ。

 甲龍のコンセプトは『実用性と効率化』であり、他国の第三世代ISと比べて安定した運用を可能にしている。しかし、それは裏を返せば『実用性を度外視した一点物には劣る』ということなのだ。

 もしこれで一夏がペラペラの初心者であれば普通に勝てたかもしれないが、相手は初戦闘で代表候補生を下したジャイアント・キリング。ピーキーな機体を乗りこなし、こうしてあたしにも肉薄するほどの強者。

 

 

「ほんとッ、姉弟揃ってとんだ化け物よねあんたたちは!」

「褒めたって勝たせちゃやんねえよ!」

 

 

 皮肉と一緒に放った龍咆の一撃は高周波クローに容易くかき消される。莫大なエネルギーを持つビームを水のように切り裂く映像は散々見てきたが、こうして現実で目の当たりにすると改めて驚異的だ。

 そうやって思考が逸れたせいだろうか。遂に右肩の龍咆──奇しく彼を地に叩き付けた方──に掴みかかられ、全体が細かに()()()

 反撃とばかりに両刃の青龍刀を突き立てて追い払うも、時既に遅く高周波と電磁波によって衝撃砲は内部をズタズタに破壊されていた。

 

 

「ったく、シールド無視に装甲無視って……まるで兵器じゃない、そいつ」

「……兵器、か。白騎士以外のISは、それこそ全てそうだと思うんだが?」

「やぁねえ、一応『スポーツ』目的なのよ? あんたが最初に戦ったイギリスの青いのも、この甲龍もね」

 

 

 ──もっと踏み込んで言えば、衝撃砲の根幹技術たる空間干渉は本来()()()()()()()()()()()()なのだ。

 科学者たち曰く、宇宙というのはあまりにも広すぎるらしい。この世界で最速の光ですら何万何億年とかかる広さで、それより遅くしか動けないあたしたちでは到底その中を移動するのは無理なんだとか。

 しかしながら、あくまで光速を超えられないのは『物体』だけであり『空間』はその制約から逃れらるのだと彼女らは語った。

 イメージとしては。テーブルの上に乗った皿だけを勢いよく動かす速度には限界があるが、テーブルごと動かす場合はもう少しばかり速く動かせるといった感じなんだとか。

 

 

 ────で、何故こんなことを語ったかというと。()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 機械の五指をギュッと握り込み、大きく振りかぶった。当然一夏は距離を取ろうとするが……その表情はすぐさま驚愕に変わる。

 

 

「油断したわね? この距離は、あんただけの間合いじゃないのよ!!」

 

 

 腕部の崩拳をフル稼働させることで空間を湾曲。白式と甲龍は互いに引き合う形となり、そこから放たれる攻撃は確実に絶対防御を引き出す!

 あたしが考え、技術屋たちが実用化し、クソババア(中国国家代表)によって“業”へと昇華させた超絶技巧。その名もずばり──

 

 

激龍拳(ジーロンチェン)ッ!!」

「がっ、ハァッ!?」

 

 

 シールドバリアによって瞬間的に硬度を増した拳が一夏の顔面に真っ直ぐ突き刺さり、しかし首から下は全く動かず頭部だけが激しくゆさぶられる。

 本来ならば全身でアリーナの隔壁までぶっ飛んでいくのを、空間操作で無理やり阻害することでロスなくダメージを与えるという技なのだ。

 

 

(ふっふーん、どうよどうよ! きっと全員が『凄いぞ鈴!』って褒めたたえて──)

「きゃあああああーッ!?」「何やってんだよチビ!」「なんちゅうことしてくれたんじゃワレェ!!」

「……あれ?」

 

 

 予想とは裏腹に飛んできたのは非難轟々の声ばかり。戸惑いつつ前を見れば…………そこには、顔を血で真っ赤に染めた親友の姿。

 

 

「…………ぇ?」

「────」

 

 

 現実を受け入れられずに呆けていると、白式のクローが力なく開き……がらん、とブレードが地に転がった。

 その音を聞いて、ようやく理解する。あたしのミスか単なる不運か、或いはその両方によって絶対防御は不発だったことを。シールドを突破した致命的な一撃は織斑一夏を直に襲い、意識──ともすれば命を刈り取ったのだと。

 

 

「なん、で。こんなこと、今まで一度だって──」

「ふざけんじゃねえぞおめぇ!」「織斑くん、織斑くーん!?」「一夏、目を覚ませ一夏ァ!!」

「っ、ハァッ……!」

 

 

 足元以外の全てからあたしを蔑む声が聞こえる。人殺しを見るような視線が注がれる。管制室の千冬さんは言わずもがな、他の子たちからもありったけの殺意を感じ取れてしまう。

 パニックによる身体の乱れを甲龍が必死に調整して治そうとするものの、何故だか吐き気が止まらない。遂には事態を見かねた教師陣がIS格納庫に向かおうと動き始め──

 

 

「大丈夫ッ! 大丈夫だぞ鈴ーッ!!」

「……ゆ、う?」

 

 

 下手な女子よりも甲高い声が響き渡り、全員の視線がその元へと集まる。人形のように可愛らしい少年は一瞬たじろぐも、見たこともないようなきりっとした顔つきで叫び続けた。

 

「一夏は、勝とうとしたんだ! だからそうなったんだ!!」

「……どういう、こと」

「絶対防御が発動したら、半分以上は持ってかれるだろー! そうなったら一夏は──」

「──大正解だ、勇」

 

 

 小さく呟かれた言葉にばっと振り返る。白い機体の左腕に粒子が集って大振りなブレードを形成し、右の甲はべっとりと赤がこびりついていた。

 そしてその間にいる操縦者──織斑一夏は、ひどく嬉しそうにはにかんでいたのだ。

 

 

「殴りに対してとれる択は3つ。シンプルに避けるか……前後にずらして受けることだ」

「いち、か……」

「まさか引き寄せながらの打撃とはな。咄嗟にポイント外した筈なんだが、シールドが引っ掛かるのは想定外だったぜ」

 

 

 説明を続けながら彼は右腕を部分解除し、ISスーツで改めて額を拭う。そこを観察してみると確かに傷こそあるものの、浅く短く切れた風であった。

 ──冷静になって考えてみればなんてことはない。俗にスリッピングアウェーと呼ばれる手法を使っただけなのだ。

 

 

「……思った以上に多芸よね、あんた」

「通ってた道場じゃ格闘技も少しやっててな。そん時に教えてもらったんだ」

 

 

 さも当然のように言ってのけるが、ISの戦闘では滅多に起きない徒手空拳での戦闘技術を即座に引き出すとはかなりとんでもないことだろう。あたしだって同じことをやってみろなんて言われたら、たぶん半分ぐらいの確率でお陀仏だ。

 

 

「で、お互い切り札は出した訳だが……まだやるか?」

「へっ、分かってるくせに……勿論YESよ!」

 

 

 互いに残りエネルギーは1/3近く。そう遠くないうちに決着がつくに違いないことを確信しつつ、三度構える。そして振りかぶった瞬間────激しい揺れがアリーナ全体に走ったのだった。




・激龍拳
 だいたい某目隠ししてる方の五条が使ってた引き寄せパンチ。ただし、あちらほど柔軟には使えない。実験台にされた中国のIS操縦者曰く『内蔵を引っぱられつつ押し潰される感覚』とのこと。

 書いてるうちに一夏が相当なレベルに成長してました。スペックごり押しは実際強い、ソースは〇PEX。
 感想・評価がとても支えになってます。いつも本当にありがとうございます!!

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