貞操逆転世界で俺はチョロ可愛いをしてるらしい 作:黒鉄48号
前回薄めだったあべこべを気持ち多めに盛り込んだ回となっております。真ん中部分だけ三人称になっていますのでご了承ください。
────ズガォォォォン!!
「「!?」」
突如鳴り響いた轟音によって思わず停止。すぐさまステージ中央を見ればもくもくと煙が上がっている。どうやら“それ”が遮断シールドをぶち破って落ちてきたようだ。
「……なんだアレ?」
『一夏、試合は中止よ! すぐにピットに戻って!!』
あたしの勘がビンビンに反応している。アレはヤバい、今すぐここから逃げなければと。そしてそれを裏付けるかの如く、ISのハイパーセンサーが緊急通告を発した。
──熱源を検知。所属不明のISと断定。ロックされています。
「なっ……」
(嘘でしょ!?)
アリーナの遮断シールドはISのそれと同一のものである。
言わずもがなの緊急事態であり、観客席も逃げ惑う生徒とそれを制御しようとする教員で酷い有様だ。
『一夏、早く!』
『お前はどうするんだよ!?』
『あたしが時間を稼ぐから、その間に逃げなさいよ!』
敵に情報を渡さないためにプライベートで言葉を交わす。白式と甲龍、現状のエネルギー残量でより長く動けるのは後者だ。
『別に、あたしも最後までやり合うつもりはないわよ。こんな異常事態、すぐに先生たちがやってきて事態を収拾──』
「あぶねえ!!」
唐突に一夏がこちらを抱きかかえてさらい、文句を言おうとした直後。先程までいた空間が極太の熱線で撃ち抜かれていた。
「ビーム兵器かよ……しかもオルコットのISより出力が上じゃねえか」
「ちょ、ちょっと馬鹿! 離しなさいよ!」
「おい、暴れるな。──って馬鹿、今殴ってる場合じゃねえだろ!」
「う、うるさいうるさいうるさいっ!」
彼は侵入者に気を取られて気付いていないようだが、現在あたし達はほぼ密着状態なのだ。鍛え抜かれた極上の肉体と密着し、激しい戦闘で流れた汗が極上のフェロモンを醸し出している。
特にやばいのが顔だ。女性ですらガチ恋勢を量産する千冬さんのイケジョフェイスを搭載した男子なんて、もはや存在自体が兵器みたいなもの。それが今、ほんの少し首を傾けるだけで頬擦り出来るほどの間近にあるのだ!
(そりゃーあたしが好きなのはどっちかと言えば勇よ? でもさあっ、こんな全世界の女の理想をそのまんま現実にしたようなやつと肌1枚なんて! 冗談抜きに興奮しすぎて死ぬ寸前なんだけど!?)
「…………思ったより平気そうだな」
一夏が呆れてため息を吐いていると、ようやく煙が晴れて敵ISの姿が露わになった。
──しかし、それは文字通りの“異形”。深い灰色をしたそれは手が異常に長く、つま先よりも下まで伸びている。しかもサイズが半端じゃなく、先程の極太ビームを発射機構を搭載していることが伺えた。
そして何より特異なのは《
それに対して件のISは操縦者の露出が1mmもなく、頭部パーツには不規則に剝き出しのセンサーレンズが並べられている。ついでに全身各所、余すところなくスラスターだらけでもあった。
「あんた、何者?」
「…………」
意を決して質問を投げかけるも返答は無し。その代わりとばかりに腕部から細めのビーム──それでも並の量産機の装甲を容易く穿つ熱量──をばら撒いてきた。
一夏はあたしを抱きかかえたままそれらを難なく避けるものの、アリーナの壁に出来た溶解痕に思わずぞっとする。
『織斑くん! 凰さん! 今すぐアリーナから脱出してください! すぐに先生たちがISで制圧に行きます!』
通信に割り込んできたのは山田とかいう1組の副担任。時たま生徒に揶揄われているのを何度か見たが、心なしかその時より威厳を感じる。やはり腐ってもIS学園の人間なんだなと感心しつつ了承しようと──
「──いや、先生たちが来るまで
「……はぁ!? 何言ってんのよ一夏!」
「あのISは遮断シールドを突破してる。ってことは、フリーにしたら観客席の人たちに被害が及びかねないだろ」
いいよな、と彼はこちらをじっと見つめながら言い放った。ますます顔が近くに感じられたせいか、思わず部分解除で懐から抜け出してしまう。
あたしだけで十分と言いたくなるが……男女で肩を並べて侵入者退治というのは、よくよく考えるとひじょ~に画になるのではなかろうか。そんな不埒な妄想がついつい思い浮かんでくる。
『織斑くん!? だ、ダメですよ! 生徒さんにもしものことがあったら──』
通信はそこまでしか聞けなかった。傍観していた敵ISがいきなり体を傾けて突進し──2人合わせて見事に避ける。そのままあたしと一夏は横並びになってそれぞれ得物を構えた。
「一夏。あたしが衝撃砲で援護するから突っ込みなさい……本当はこっちが前衛貼りたいんだけど」
「ま、俺は近接しか出来ないからな。それでいくか」
キンッと互いの切っ先を当てる。それを合図にあたしたちは即席コンビネーションで飛び出すのだった。
「もしもし!? 織斑くん聞いてますか!? 凰さんも! 聞いてますー!?」
一方的に切られた回線へなおも喋り続ける
「なぁに、本人たちがやると言ってるのだから、やらせてみてもいいだろう」
「お、お、織斑先生! 何をのんきなことを言ってるんですか!?」
「全くその通りですわ!」
ピットから全速力で駆け抜けやってきたセシリアも真耶に便乗し大声で叫ぶ。既にISスーツへ着替えており、恐らく許可をもらったら即座に援軍へ向かうためだろう。
「落ち着け2人とも。とりあえずコーヒーでも飲め。糖分が足りないからイライラするんだ」
「そんな泥水を啜る暇なんてございません!」
「……というか、先生。それ塩ですけど……」
「………………」
千冬はぴたりとコーヒーに運んでいたスプーンを止め、白い容器に戻す。よくよく観察してみれば、それには大きく“塩”と書かれていた。
「なぜ塩があるんだ」
「さ、さあ……? あ、ちなみにこっちが砂糖です」
「うむ、感謝するぞ山田君」
「漫才やってる場合じゃないでしょう!!」
弛んだ空気に遅れてやってきた箒の怒号が染み渡る。惚れた男が事態の渦中にいるとあって、相当に焦っていることが見てとれた。
「箒さんのおっしゃる通りですわ先生! わたくしにIS使用許可を! 今すぐにでも出撃できますわ!」
「私もそうしたいところだが──これを見ろ」
千冬はブック型端末の画面を数回叩き、表示される情報を切り替える。その数値はこの第二アリーナのステータスチェックだった。
「遮断シールドがレベル4に設定……? しかも、全ての扉がロックされて──あのISの仕業ですの!?」
「そのようだ。これでは避難することも救援に向かうこともできないな」
実に落ち着いた様子でそう話す彼女だったが、よく見ると苛立ちを抑えきれないとばかりに画面を何度も叩いている。目に入れてもまっったく痛くない大切な弟の晴れ舞台を台無しにされたことが、相当頭に来ているようだ。
「で、でしたら! 緊急事態として政府に助勢を──」
「やっている。現在も三年の精鋭がシステムクラックを実行中だ。遮断シールドを解除できれば、すぐにでも教員部隊を突入させる」
言葉を続けながら、益々募る苛立ちに千冬のマユがぴくっと動く。いくら世界最強とて、今では専用機はおろか通常のISを使うことも不自由な身分なのだ。
そんな彼女の憤怒を感じ取ったセシリアは、頭を押さえながら椅子に座った。
「はぁぁ……。結局、待っていることしかできないのですね」
「何、どちらにしてもお前は突入させないから安心しろ」
「な、なんですって!?」
さも当然のように放たれた言葉で一気に頭へ血が上ったのか、セシリアは千冬に掴みかかる。しかし、彼女は全く動じることなく淡々と説明した。
「お前のISの装備は一対多向きだ。多対一ではむしろ邪魔になる」
「そ、そんなことはありませんわ! むしろフレキシブルで確実な援護を──」
「IS本体の移動、ビットの移動と攻撃、フレキシブル……
「──気付いていましたか」
セシリアは両手を揺らして“降参”のポーズを取る。それと同時に、たった2試合──時間に直しても1時間未満──でその弱点を見抜いたブリュンヒルデの観察眼に舌を巻く思いだ。
「……はぁ。言い返せない自分が悔しいですわ」
「まあ、なんだ。時間をかけて克服していけば問題ないさ」
深いため息を漏らすセシリアを労わっている最中。箒は周囲をキョロキョロと見回しつつ、ぽつりとつぶやいた。
「……ところで、三上はいつになったら来るんだ?」
「あら、言われてみればそうですわね」
「…………」
同じく見回し始めたセシリアとは対照的に、千冬だけは先程までとは真逆の異様に鋭い視線をしている。しかし、現時点では誰もそれに気がつかなかった。
「くっ……!」
一撃必殺の間合い。全身全霊で刃を振るうものの、それはするりとかわされてしまう。これで合計4度目だ。
「一夏! ちゃんと狙いなさいよ!」
「狙ってるっつーの!」
普通ならかわせない速さと角度で攻撃しているものの、敵ISは全身に付けたスラスターの出力が尋常じゃないのだ。零距離から離脱するのに1秒とかからない。
しかも、どれほど鈴が猛攻を加えていようとこちらの攻撃には必ず反応して回避を優先する。はっきり言ってジリ貧だ。
(にしても、参ったな……)
シールドエネルギー残量は極僅か。零落白夜を用いた攻撃はよくてあと1回だろう。そんなことを考えていると鈴から通信が飛んでくる。
「一夏っ、離脱!」
「おう!」
咄嗟にブースターを蒸かした次の瞬間、でたらめに長い腕を振り回した敵ISが突っ込んできた。まるでコマのような動きだが、おまけとばかりにビーム砲撃までしてくるのだから手に負えない。
「ああもう、めんっどくさいわね!」
鈴が焦れたように衝撃砲を展開し発射──が、しかし。敵の腕は見えない筈の弾を当たり前のように叩き落とした。これももう7度目である。
ともあれ彼女の支援でどうにかヤツの射程距離から抜け出せた。わかったことといえば、あの回転状態ではビームの距離が大体半分になることぐらいだ。
「……鈴。あとエネルギーはどのくらいだ?」
「100を切ったところよ」
あんたのせいでね、という余計な言葉を聞き流しつつ考え込む。シールドエネルギーは攻撃で消費されない──つまりゲームのHPみたいなものだ。しかしながら、俺の《雪片弐型》はそれをゴリゴリに利用する仕様なのがきつすぎる。
「いやー、ちょっと……っつーかだいぶ厳しいわね。現在の火力であいつのシールドを突破して、
「ゼロじゃなきゃそれで十分さ」
「あっきれた! 確率とおっぱいはデカイほどいいに決まってるじゃない。アンタっていつも健康第一っつーかジジくさいけど、根本的には宝くじ買うタイプよね」
「うっせーな……あと下ネタはやめろ」
ちなみに宝くじは買ったことがない。何せ俺は賭け事に弱いんだ。それで中学時代、弾と勇に何度ジュースを奢ったことか。
「──で、どうすんだ鈴。いっそ逃げるか?」
「ば、馬鹿にしないでくれる!? あたしはこれでも代表候補生よ……それに男を残して退散なんて、大陸のやつらに合わす顔がないわ」
「そうかい。じゃ、背中ぐらいは守ってやるか」
「へぁっ!? あ、う、うん……。ありが──」
何故か赤くなった彼女の横をビームが掠める。しまった、今は戦いの真っ最中なんだった。油断してたわけではないが再度気を引き締めねば。
「……そういや、鈴。あいつの動きって何かに似てないか?」
「ベ〇ブレードとか言うんじゃないでしょうね」
「あんな殺傷能満載の児童向け玩具があってたまるか。あー、なんていうかな。人型ロボットというか…………機械じみてる?」
「……何言ってんのよあんた」
馬鹿にしたような目で鈴は俺を見つめてくる。うーむ、こういう時に勇がいればイイ感じの喩えを出してくれるんだが。
……なんて、そう思ったせいだろうか。ハイパーセンサーが敵ISの背後にあったピットより、新たな熱源を感知したのだ。
──コアネットワークより照合。ISネーム『メイルシュトローム』。操縦者……
「い、ま、だぁぁぁーッ!!」
勢いよく隔壁を突き破ってきた轟音と、それに負けず劣らずの大声。この場にいる全員が予期しなかった2人目の乱入者のエントリーである。
そんな異常事態は流石に敵ISも予期していなかったらしく、彼の構えた大型刺突ブレード──銃剣を巨大化させたような形状だ──の一撃をもろに食らっていた。そのまま反対側の壁まで吹き飛ぶ中、勇は見事なまでのドヤ顔を俺たちに向けてくる。
「よう、待たせたな! 助けにきてやった──」
「「馬鹿ッ!!」」
「あべし!?」
白と桃色の拳が濃紺の装甲に突き刺さる。「ボディーは無しだろボディーは!」と喚く勇に対し、すぐさま鈴が掴みかかった。
「なんで来ちゃったのよ勇! さっさとピットに戻りなさいよ!!」
「えー、そこはこうさぁ、『よく来てくれたわね!』じゃねえの~?」
「んなわけあるか馬鹿。というか教員部隊はどうなってんだ」
「あー、あの人たち? なんか格納庫に個別でハッキングかけられてるとかで、あと30分は来ないぞ多分」
さらっと絶望的な事実が彼の口から放たれる。とてもじゃないがそれまでISの稼働時間が続くわけがなく、実質の敗北宣言だ。
それをいち早く察したであろう鈴が青ざめているのに対し、勇は何故か余裕綽々といった風だった。
「なーに、そう悲嘆する必要もねえ。俺たち3人であのISをぶっ倒す、そうすりゃ万事解決だろ?」
「……なにか作戦でもあるのか」
「おうよ! あ、それとなんだが一夏──」
──アレ、無人機。
そうやって彼が何気なく言ってのけた内容に、再び俺たちはフリーズするのであった。
勇が母性をくすぐるタイプの男性なのに対し、一夏は通りすがった人々が思わず振り向くタイプの美青年といった感じです。『イケメン』という記号を具現化したようなイメージ。
感想・評価いつもありがとうございます! どんな些細なことでもいいんでガンガン送ってきてください。
ムフフなif、読みたいですか?
-
いる
-
いらない
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そんな物より本編優先して♪