貞操逆転世界で俺はチョロ可愛いをしてるらしい 作:黒鉄48号
時は流れて4月は第2月曜日の放課後。試合会場である第3アリーナのAピットで俺はリヴァイヴの最終確認を行っていた。
先週までの訓練データを見せたことで整備課の人たちは大分好意的になってくれたため、ネックであったビット対策装備の導入に成功したのだ。
「スモークとチャフの装填よし、ミサイルのセンサーよし、ナパームの混合よし! 全装備問題なーし!!」
「……わざわざやる必要あるかしら、それ?」
助っ人として来てくれた鬼月先輩がジト目でこっちを見てくる。そもそもここへ搬入する前に彼女や部下たちがチェック済みなのでこの行為は全くの無駄だ。
しかし自分の使う道具はきちんと確認したいし──なにより、武装読み上げってかっこよくない?
「勇曰く『メカにはロマンがあってなんぼ』らしいですよ、鬼月
「なるほど、そういうものなのね一夏くん」
これまた助っ人として参加してくれた親友が先輩に対して説明してくれた。試合当日になっても専用機が来ないということで手伝いに来てくれたのだから本当に頭が上がらない。
そんなこんなで最終確認が完了したのでISに乗り込む。馴染みきったおかげか初搭乗した時の金属的な感覚は無く、まるで元々体の一部だったかのような安心感を覚えた。
「様になってるじゃないか、勇」
「だろ~? なんだかんだ十数時間は一緒にいたんだ、もはや相棒と呼びたいくらさ」
「……相棒、ねぇ」
一夏がどこか拗ねた表情を浮かべたのをハイパーセンサーがしっかりと写し取る。生身じゃ分からないちょっとした差も、こいつにかかればちょちょいのチョイだ。
「なぁに、お前も同じだよ。後は昨日の
「……アレってなにかしら?」
「あー、うん。見てからのお楽しみってことで!」
鬼月先輩からの詮索を慌てて躱しながらピット・ゲートに進む。スキーみたいに体を前に傾けるだけでスーッと進んでいくのは何度やってもワクワクさせられる。そして解放直前の扉に近づけばオルコットさんの情報が映し出された。
──戦闘待機状態のISを検知。操縦者セシリア・オルコット。機体名『ブルー・ティアーズ』。第三世代の中距離射撃型。未知のエネルギー反応あり、警戒を推奨。
(…………なんか楽しくなってきたな)
そんな子供っぽい考えを胸に閉じ込めながらアリーナへと飛び出す。瞬間、数百を超える視線とごちゃ混ぜの大歓声が俺を出迎えた。
「おっ、三上くん出てきた!」「リヴァイヴってことは操縦上手いのかな?」「どうして股間を隠してるんじゃー!!」「ほう、へそ出しですか……」「猫耳みたいでちょっと興奮してきたな」「試合が終わった後のISスーツ嗅ぎたいね」「その気持ち、分かるわキサラ!」
(魑魅魍魎か何かで???)
思わず頭を抱えそうになるのを我慢して視線を前に向ける。その先にはオルコットさんが佇んでおり、彼女の碧眼のように真っ青な装甲は優雅さを醸し出していた。
「あら、少し遅かったですわね。もしやトラブルでも?」
「いやいやいや、一切合切問題無し! 順風満帆絶好調!! このまま
「……そうですか」
興奮半分強がり半分の俺の言葉に対し彼女はちょっとだけ距離をとる。そして人間よりも大きなビームライフルを虚空から
「最後の確認をさせていただきますわ」
「確認?」
「わたくしの勝利はほぼ確実。それでも三上さんは決闘を受け入れますか?」
その言葉と同時にオルコットさんの左目が射撃モードに移行したことをリヴァイヴが告げる。もちろん、答えは1つしかない。
「こうやってあなたの前に現れたのだから、断るわけがないでしょう」
「……それを聞いて安心しました。では──」
試合開始のブザーと同時に銃口が上げられ、急速にエネルギーが収束していく。
「あなたの努力を見せてくださいな!」
キュイン、と耳をつんざくような音と共に閃光が走る。刹那のうちに近づいてきたそれは、しかし俺ではなくアリーナの壁を焦がした。
紙一重で攻撃を避けたものの遅れてやってきた衝撃波に右肩が千切られるように引っ張られて、嫌な痛みが稲妻のように走る。
「ぐっ……!?」
「これを避けるとは流石ですわね──では、踊りなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる
彼女の高らかな声に合わせて背部の4枚羽が分離しクルクルと周囲を回りだす。そして銃口に青い光を灯したと思った瞬間、弾雨のごとき攻撃が開始された。
痛みから回復した俺はすぐさま左腕を大きく振って反動で初弾を回避。続く光の雨を時に防ぎ時にわざと受けながら腰部ハードポイントへ
「俺は上品にゃ踊れませんからね──我流で行かせてもらいますよ!」
「なっ!?」
装置から2種6個の
本来のハイパーセンサーであればこんなもの全く意味をなさないのだが、試合用設定であれば有効な手段である。
観客席から響くブーイングを無視しながらナパームランチャーも展開。スラスターを切ってPICのみでゆっくりと移動すれば、オルコットさんは俺を見つけることなどできやしない。
『くっ、まさかここまでやるとは…………ですが三上さん、これではあなたもわたくしを見つけることなど──』
「できるんだなぁ、それが」
「……は?」
彼女からの
それに対してオルコットさんもビットとライフルからありったけの光弾をばら撒いてくるが、スモークで視認性が上がっているので楽に避けられた。
(……今のところは計画通りだな)
俺の作戦は極めてシンプル。ビーム兵器を使う度に稼働時間が目減りしていくブルー・ティアーズ相手に、とにかく無駄撃ちさせるというものだ。合間合間にナパームやミサイルでちょっかいをかけて更にシールドエネルギーを削っていく。
そして、肝心要のオルコットさんの位置は彼女の付けた香水で把握している。普通の人間なら煙のせいで鼻が麻痺してしまうのだろうが、これでも人並み以上に五感が優れていると自負しているのだ。
『エリートなのに命中率低いなぁ。もしかして視界不良は想定してないんですか~?』
『こ、の……!』
煽りをかまして冷静さを取り戻さないように誘導する。何故ならこの作戦はリヴァイヴの稼働限界ギリギリまで試合を引き延ばせる前提のものであり、最初のカス当たりですら本来は避けるべきだったのだ。
もしここから1発でも本命を食らえばアウト、勝てる確率はほぼ0になると言っていい。……まあ、ここまでの流れからしてそんなことは起きないだろう。
ビームとレーザーは限りなく真っ直ぐ進むのだから、射線に入らなければ当たりようがない。
『……ここで使うつもりはなかったのですが、しかたないですわ』
『ん?』
不意に攻撃が止まる。それと同時にチャフと煙幕が消えかかり始めたので慌てて次弾を装填し発射──しようとした時だった。
「今っ!」
「なっ!?」
放たれたのは5条の光線。それらは見当違いな方向に飛んで行ったかと思いきや、ぐにゃりと曲がってこちらに向かってきたのだ。
想定外の事態に硬直して回避が遅れナパームランチャーとディスチャージャー、更にはミサイルまでもが撃ち抜かれてしまう。
「なんでっ、ビームが曲がるわけ──」
「
「…………は?」
なんだそれは。そんなもの、どの資料にも存在していなかったぞ。
血の気がスーッと引いていき、胸に氷の杭をねじ込まれたような冷たさと痛みを感じる。すぐさまISの生体補助機能によってそれらは治されたが、頭には嫌な感覚が未だに残っていて。
そんな俺の様子を遠くから見ていたオルコットさんは、微笑みながら口を開く。
「これを実戦で使ったのは今日が初めて。誇りなさい三上さん、あなたは
「……お褒めにあずかりまして」
──んなわけあるかこの野郎! 第二形態はゲームでしか許されねえんだよ!!
ありったけの罵倒を吐き出したい気持ちを押しとどめながらリヴァイヴのステータスを確認する。
シールド残量は300ちょっと、6基あるハードポイントのうち3つがエラー。幸いにもシールドやスラスターは無事だ。
……とはいえ、状況は最悪の一言に尽きる。さっきの会話の間に彼女はビットに補給を済ませていたようで鈍っていた動作が元通り。
対してこちらは武器の大半を喪失、残っているのは
「そろそろ小休止は終わりです。さぁ、わたくしと踊ってくださいな!」
「ちぃっ!」
オルコットさんはそう言い放つと同時にビットを引き連れてこちらに飛んでくる。一瞬遅れて距離を取るも推力は専用機たる相手の方が上回っており、じりじりと詰められていく。
そして射撃が行われ曲がるものと曲がらないもの、レーザーとビームをごちゃ混ぜにした激しい攻撃が降り注ぐ。人間が操作しているのである程度の予測こそできるものの、経験値の差か読み違えがだんだんと増えていく。
「そっちだけダンサーが多くないですかねぇ!?」
「そう言う三上さんはダンスがお上手ですわね! フレキシブルを捌けるなんて、本国の技術者が腰を抜かしてしまいますわ!」
「そんなに褒めたってなにも出ませんよ!!」
もはや俺はハイパーセンサーで加速しつつある脊髄反射にまかせて体を動かしていた。ビームを盾で防ぎながらレーザーに弾丸をぶち当て減衰させ、反動を利用して曲がる光線をギリギリ避ける。
想像よりも上手く動けていることにちょっとばかし驚くが、どんどん目減りしていくシールド残量によって脳内が恐怖に染められていった。
こちらの射撃はオルコットさんに殆ど当たらないし、
そんな迷いが表情に出ていたからかだろうか。攻撃が益々苛烈になると同時に彼女は俺に語りかけてきた。
「なんて顔をしていらっしゃいますの三上さん! わたくしに勝つため努力をしてきたのでしょう! ここで諦めてどうしますの!!」
「……!」
発破をかけられた瞬間、一気に意識が澄み渡った。疲労で歪んでいた景色が本来の緻密さを取り戻し、少なくない観客が俺のことを応援する声が聞こえてくる。そして──
『……勝て、勇!』
「…………そりゃずるいぜ、一夏」
数百メートル離れたピットからの言葉。本来届かないはずのそれは、しかし確かに心を奮い立たせてくれた。ここまできたら
光の雨を避けながら地面に降り立ち、左腰に光の粒子を集める。当然その隙を見逃さず5本のビームとレーザーが飛んでくるが、ギリギリまで引きつける。
そして当たる直前に思いっきり跳躍しながら
「っ、初心者がクイックを──」
「しゃおらあああっ!」
勢い任せで振りぬいた右手に握られているのは一見すれば何の変哲もない刀。しかし、それはにわかに光ったかと思えば、刀身の倍近い光刃を生み出して相手に襲い掛かる。
「きゃああっ!?」
「──これぞ、朧雪!」
それは、かつて
ほんの数秒しかビーム刃を形成できないこいつに、しかし俺はロマンを感じていた。リヴァイヴの拡張領域があまったから数合わせに突っ込んでみたのだが、まさか本当に使う羽目になるとは。
ダメージが治まったオルコットさんは訝しげな表情を浮かべ、それは告げられた音声によって驚愕に変わる。
『試合終了。勝者──セシリア・オルコット』
「……どう、して?」
(……まあ、そうなるよな)
朧雪が整備室の奥底にぶち込まれていたもう1つの理由──それは異常なまでのエネルギー効率の悪さであった。
こいつはおよそ1秒で機体貯蔵量の半分近くを食らうため、1回攻撃できれば御の字なのだ。そんな代物を残りエネルギー3割程度で使えば、それ即ち敗北である。
……しかし、これ以外に当てられる攻撃手段が無かったのも事実で。いまいち状況が飲み込めていないオルコットさんの元へふわふわと近づき、すっと部分解除して右手を差し出す。
「ありがとうございました。やっぱり代表候補生は強いですね」
「えっと、その……ええ、ありがとう、ございました」
彼女も同じく右手だけ解除して握手をする。俺より1回りほど大きなそれは、オルコットさんと自分の間にある差を如実に表しているのだった。
「よっ、ただいまー!」
「お疲れ様、勇」
試合終了後ピットに戻ると真っ先に一夏が出迎えてくれた。この後すぐ試合だというのに、他人を気遣えるのは流石の一言だ。
ハンガーにリヴァイヴを置いてから離脱しピット内を見渡す。遠くの方にチラッと白いIS──恐らく一夏の専用機──が見え、そこに山田先生や整備班が集っているのが分かる。きっと大急ぎで準備しているのだろう。
「いやー、やっぱ代表候補生って強いな! こっちの攻撃がまともに当たらねえもん!」
「……勇」
「ビームとレーザー曲げるのとか反則だろもはや! 普通はロボアニメのラスボスとかが使う装備だろ! 勝てるわけねえって!」
試合の感想を語っているうちに、ふと視界が滲んでいることに気づいた。頬には生温い雫が伝っていて、心臓も妙に脈拍が早い。
「……勇、悔しいか?」
「──うん。やっぱ、悔しいわ」
一夏の胸板に頭を押し付けて涙声を抑える。彼もそれを避けようとはせず、逆に優しく抱きしめてくれた。
そんなことを数分続けた頃だろうか。織斑先生がやってきて「機体の準備ができた。さっさと乗れ」と促してくる。それに従ってISの方へ向かう一夏の左手を、俺はいつの間にか掴んでいて。
「勇?」
「……勝ってくれよ、一夏。オルコットにぎゃふんと言わせてやるんだ」
「────ああ、分かった」
彼は俺の目線までしゃがみ込むと笑顔でそう言った。そして白い機体の方へ向かう足取りはなんだかいつも以上に嬉し気だった。
ビームブレードの失敗作ってありそうですよね(オリジナル武器を生やしながら)
今回はちょっと貞操逆転・長身女子要素が薄めだったので次回でバランスを取ります。お楽しみに!!
感想、お気に入りが来たらめちゃくちゃ喜びます。
ムフフなif、読みたいですか?
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いる
-
いらない
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そんな物より本編優先して♪